観測者と失われた記憶たち(メモリーズ)
再会
「ねえ、アリスさん。さきほどの現象、それにこの街の変化も、何かご存知なのですか?」
「それは……」
必死な表情で聞いてくる久遠にそっと視線を逸らしてしまう。
どうして久遠が黒い世界に入れたのかは分からないし、街は変わってしまったのに久遠までは変わっていないのか、それも分からない。けれど、巻き込んでしまった心苦しさが顔に出てしまう。
「知って、いるのですね?」
そんな私に、久遠は確信を得た瞳で聞いてきた。黙って過ごす、というのは出来そうにない。
「実は。いや、でも。信じられないわよ」
「それでもいいです、教えてください」
まるでホワイトに尋ねる私と対面したようだ。今の久遠は普段の穏やかとは違い、必死さが感じられる。当然だ。
こんな事態に遭遇して、必死にならない方がおかしい。久遠の気持ちを、私は自分のことのように理解出来る。
「……分かった。信じられないと思うけど、一応話す。無理して信じようとしなくてもいいから」
そう前置きして、私は自分の知っていることを久遠に説明した。黒い世界。メモリー。観測者。
意識世界。
話していて、自分でも突拍子もないことだと思う。馬鹿馬鹿しいと、胸中では呆れそうになりながらも私は口を動かした。
案の定、久遠は驚いた。次に疑問と不審が混ざったような眼差しを私に向けてきた。
「アリスさん。それは、本当におっしゃっているのですか? その……」
「うん。分かってる。信じられないよね。だから大丈夫。無理しないで」
私の言葉に久遠は俯いてしまった。きっと私に失望しているのだろう。久遠にそんな思いをさせたくはなかったけれど、事実である以上、こういうことしか出来ない。
私も暗くなり、気持ちと一緒に肩を落とした。
「私、信じます!」
「え?」
しかし、久遠は顔を上げたかと思うと力強くそう言ってきた。驚いた。こんな話、誰も信じないと思っていたから。
「信じるって、こんな話を? でも、説明しておいてあれだけど、めちゃくちゃじゃない?」
「では、アリスさんは嘘つきさんなのですか?」
「いや、そうじゃないけど」
あと嘘つきさんって……。
「なら決まりですわ」
潔い久遠に私の方が戸惑ってしまう。久遠は、笑顔まで作ってくれた。
「だって、こんなことすでにあり得ないことではないですか。ではあり得ないなんて根拠になりませんわ。それは、正直に言いますと、わたくしも半信半疑です。ですが、アリスさんのことは信用しています。仮に嘘であっても、わたくしのためだと信じています」
「…………」
久遠は笑顔で私にそう言ってくれる。それはきっと私の不安を減らすためだと思う。ありがとう。でも、私にはまだ余裕がなくて、表情は暗く、返事をする気力は起きてくれなかった。
「アリス!」
「え?」
そこで声が聞こえた。男の人の声。慌てている大きな声で呼ばれ、私は背後を振り向いた。
「ホワイト!」
そこにいたのはホワイトだった。彼には珍しく必死な表情で駆け寄って来る。
すぐに私は久遠の手から離れホワイトの元へ近づいた。ようやく来てくれた、私は安心してホッと胸をなで下ろす。だが、すぐに安心は苛立ちに変わった。
「遅い! なんで来てくれなかったのよ!?」
「アリス……」
「それは……」
必死な表情で聞いてくる久遠にそっと視線を逸らしてしまう。
どうして久遠が黒い世界に入れたのかは分からないし、街は変わってしまったのに久遠までは変わっていないのか、それも分からない。けれど、巻き込んでしまった心苦しさが顔に出てしまう。
「知って、いるのですね?」
そんな私に、久遠は確信を得た瞳で聞いてきた。黙って過ごす、というのは出来そうにない。
「実は。いや、でも。信じられないわよ」
「それでもいいです、教えてください」
まるでホワイトに尋ねる私と対面したようだ。今の久遠は普段の穏やかとは違い、必死さが感じられる。当然だ。
こんな事態に遭遇して、必死にならない方がおかしい。久遠の気持ちを、私は自分のことのように理解出来る。
「……分かった。信じられないと思うけど、一応話す。無理して信じようとしなくてもいいから」
そう前置きして、私は自分の知っていることを久遠に説明した。黒い世界。メモリー。観測者。
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話していて、自分でも突拍子もないことだと思う。馬鹿馬鹿しいと、胸中では呆れそうになりながらも私は口を動かした。
案の定、久遠は驚いた。次に疑問と不審が混ざったような眼差しを私に向けてきた。
「アリスさん。それは、本当におっしゃっているのですか? その……」
「うん。分かってる。信じられないよね。だから大丈夫。無理しないで」
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私も暗くなり、気持ちと一緒に肩を落とした。
「私、信じます!」
「え?」
しかし、久遠は顔を上げたかと思うと力強くそう言ってきた。驚いた。こんな話、誰も信じないと思っていたから。
「信じるって、こんな話を? でも、説明しておいてあれだけど、めちゃくちゃじゃない?」
「では、アリスさんは嘘つきさんなのですか?」
「いや、そうじゃないけど」
あと嘘つきさんって……。
「なら決まりですわ」
潔い久遠に私の方が戸惑ってしまう。久遠は、笑顔まで作ってくれた。
「だって、こんなことすでにあり得ないことではないですか。ではあり得ないなんて根拠になりませんわ。それは、正直に言いますと、わたくしも半信半疑です。ですが、アリスさんのことは信用しています。仮に嘘であっても、わたくしのためだと信じています」
「…………」
久遠は笑顔で私にそう言ってくれる。それはきっと私の不安を減らすためだと思う。ありがとう。でも、私にはまだ余裕がなくて、表情は暗く、返事をする気力は起きてくれなかった。
「アリス!」
「え?」
そこで声が聞こえた。男の人の声。慌てている大きな声で呼ばれ、私は背後を振り向いた。
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そこにいたのはホワイトだった。彼には珍しく必死な表情で駆け寄って来る。
すぐに私は久遠の手から離れホワイトの元へ近づいた。ようやく来てくれた、私は安心してホッと胸をなで下ろす。だが、すぐに安心は苛立ちに変わった。
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