君と俺の一年

星河☆

奇跡を願って・・・

 朝、学校に着き、昨日の夜の前田の伝言通り、学校へ来ると直ぐに職員室に向かった。




 「失礼します。前田先生、お呼びでしょうか?」
職員室のドアをノックした後に中へ入り、前田の前へ行き聞いた。


 「お~。ちょっと来てくれ」
そう言って職員室から連れ出されて会議室に連れてこられた。


 「何ですか?」
俺が聞くと前田は笑顔になって
 「鈴木! 募金が500万いったぞ! これで手術が出来るんだろ?」
募金が集まった………
 前田の言葉が頭の中でグルグルと回っている。
 信じられない……
 だってまだ数万しか貯まってなかったはずだ。


 「何でそんなに貯まったんですか?」
やはり気になってしまい、聞いた。


 「うん。実は先生方がビラ、チラシを駅などで配布してたんだよ。俺の知り合いも頼って知り合いの会社でも募金してもらったりしてな!」
前田が誇らしげに言った。
 この時ばかりは前田がカッコよく見えた。
 「先生。本当にありがとうございます!」
深く、深く頭を下げて心を込めて『ありがとう』を言った。
 「けど、ここからが本当の勝負だろ?」
前田は真剣な顔に戻りそう言った。
 確かにそうだ。
 まりあを助けるためには手術が絶対条件だ。
 しかし、まりあ程病魔が進行していると手術での成功率は5%程なのだ。


 「鈴木! 行ってこい!」
前田はそう言って俺の背中を強く叩いた。


 俺は学校に荷物を置いて学校を出て病院に向かった。






 「まりあ!」
病室を勢い良く開けてまりあの名前を叫びに近い声で言った。


 病室の空気が重い……
 何なんだ?
 まりあのお母さんが立ち上がって俺の前に来た
 「星河君……いらっしゃい。まりあね……寝ちゃってるの」
寝てる?
 何でそんなに悲しい顔をしてるんだ?


 今気づいたがまりあのお父さんも居た。
 まりあのベッドの隣に座って俯いてる。
 どうしたんだ?


 俺がゆっくりまりあに近づくと言ったとおりまりあは寝ていた。
 ただ、いつもの眠りとは違って呼吸器を付けている。
 呼吸は一定して安定している。
 何なの?


 「星河か……」
お父さんがやっと俺に気づき言った。
 やはりお父さんも暗い顔をしている。


 「まりあな………植物状態なんだって………」
植物状態…………
 そんな………
 昨日まであんなに笑って……
 まりあを見るとただ寝ているだけだ。
 まりあの腕の中には俺があげたぬいぐるみがある。


 「今日気づいた時にはもう植物状態だったの………でも星河君がくれたぬいぐるみを抱えてた……」
お母さんがそう言って泣き始めた。


 まりあ……
 でも、希望はあるよな………




 「お母さんとお父さんにお話があります。良いですか?」
俺が言うと二人は頷いて聞いてくれた。


 「実は僕、募金活動をしてたんです。学校側にもそれが伝わって学校も協力してくれたんです。それでお金が集まりました。まりあに負担をかけさせたくなくて言っていませんでした。500万程集まりました。まりあの手術をして下さい」
俺は必死で頭を下げた。
 せっかく募金が集まったのに……


 「星河君そんな事してくれてたんだ……でも手術の成功率は5%くらいしかないの……それに植物状態から手術すると成功率はもっと下がるみたいなの」
お母さんはそう言って涙を拭った。
 俺はそれでも諦めたくない……
 まりあは生きたいはずだ!
 絶対に!
 「それでも、0じゃない! お願いします!」
今度は土下座をしてお願いした。
 何としてでも俺はまりあを助けたい。
 正確には俺が助けるわけじゃないが、その気持ちはある。
 このお金でまりあに手術を受けて欲しい。


 「先生と相談してみるね……星河君。まりあの傍に居てあげて?」
お母さんはそう言ってまりあのお父さんと病室を出た。


 まりあが眠っているベッドの隣に座り、聞こえるはずはないが、話しかけた。


 「まりあ……俺ね、まりあに一目惚れだったんだ。会ってから色々あったね……最初はまりあは恥ずかしがってばっかりで……それでも俺を信頼してくれて、傍に居てくれて………」
そこで言葉を詰まらせた……
 涙が止まらなかった。
 止める気もない。
 まりあに想いが届いて欲しい。


 「キャンプ楽しかったよね……治ったらもう一回行こうね話したよね? 覚えてるよね? 俺は約束守るよ。小説家になるよ……だからまりあも約束を守って? お願いだから……」
お願いだから………
 まりあの手を取って祈るように願った。


 まりあ……俺はずっと傍に居るよ………
 いつも……これからも………
 何十年後も何百年後もずっと………




 病室のドアが開いた。
 「星河君。その募金……使わせてもらっても良い?」
お母さんとお父さんが入ってきて言った。
 当たり前だ……
 「勿論です! 使ってください!」
俺はそう言って頭を下げた。
 お父さんとお母さんも頭を下げてありがとうと言った。




 まりあ………俺は信じてるよ…………
 まりあ………俺は待つよ………




 成功率は0に近い。
 けど0じゃない。
 一筋の希望の光を信じて俺は祈った………


 神様……まりあを助けてください………
 まりあを見捨てないで下さい。




 まりあ………


 俺はまりあが大好きです………

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