異世界に転生したら最強魔書使いになってました

星河☆

異世界転生

 俺は氷河夏樹、十八歳。
 俺が死んだのは高校の卒業式の後だった。


 卒業式からの帰り道居眠り運転のトラックに轢かれて死んだ。


 俺の十八年間あっという間だったな――。ん?








 俺は草原の中心にいた。
 ここは天国か?
 学生服姿の俺は辺りを見回した。
 しかし大草原で辺りには何もない。




 すると上からボトンと一冊の本が落ちてきた。
 黒く、表紙には見た事のない字が書いてある。
 日本語ではない。
 恐る恐る近づくと何と先程まで読めなかった字が読める。
 『七人の賢者セブンセイジ
 七人の賢者? 何だこれ。
 ページをめくってみた。
 明らかに日本語ではないが読める。
 『七人の賢者セブンセイジは火、水、雷、土、風、光、闇の七人の賢者が封印されている』
 なんのこっちゃ――。






 「きゃー」
 後ろの方で叫び声がした。
 俺の他にも人がいるのか?
 声がした方に行くと女性が一人蹲っていた。
 息を切らしている。
 「どうかしましたか?」
 すると女性はビクッとして俺を見た。


「良かった! 人がいた! 魔物に追われてるんです! 助けてください!」
 は? 魔物? 何言ってんのこの人。いい歳して――。


 「ウガー!」
 え? 何あれ。きぐるみ?
 肌がごつごつしたゴジラみたいなモノがこっちにやってくる。
 撮影でもしてるのか?
 だったら俺どかなきゃじゃん。


 去ろうとした瞬間きぐるみが襲ってきた。
 俺の首を絞め、持ち上げた。


 苦しい――。きぐるみじゃねぇのかよ――。人間業じゃねぇ。


 生き返ったと思ったばかりなのに――。


 意識が――。
 『七人の賢者をお使いください……。我らは共にいます』
 まずい、意識が薄れてくのに空耳まで――? 七人の賢者? どっかで聞いた事のある名前……。
 そうだ!


 「七人の賢者セブンセイジ!」
 すると俺の手の中に本が出てきた。


 ページをめくり、一番最初にあった火を呼び出した。
 「ファイヤー!」
 すると俺と魔物の周りに炎がドラゴンのようにグルグルと回り始めた。
 さらにページをめくり、火の呪文を唱えた。
 「ファイヤーピストル!」
 何と俺の右手の人差し指に炎が纏った。
 これを打ちゃ良いのか?
 あぁ! どうにでもなれ!
 本物のピストルを撃つようにすると炎が指から発射され、魔物に命中し、吹き飛んだ。


 「苦しかったぞ! お前は許さない! せっかく蘇ったのに? 確証はないけど――。とにかく俺はお前を倒す」
 俺はビシッと人差し指を魔物に向けた。


 「ウゥー」
 魔物は立ち上がり、俺をロックオンした。


 何故か俺は自信に充ち溢れていた。
 「サンダー! サンダーボルト!」
 雷を呼び出し、雷が魔物に降り注いだ。
 魔物は大きな叫び声を上げて倒れた。


 やった? のか?




「ありがとうございます! まさか魔書使いだったなんて」
「はは、余裕です――よ……」
 そして俺は倒れた。












 気が付くとそこは和風の部屋の布団だった。
 ここはどこだろうか。


 七人の賢者がなくなってる!
 あ、呼び出せば手元に来るんだっけ?
 「七人の賢者セブンセイジ!」
 すると俺の手元に七人の賢者が戻ってきた。
 良かった――。






 「起きたんですね」
 部屋に入ってきたのはおじいさんだった。


「ここは?」
「ここは村の寺、勝縁寺です。あなたは予言の使者氷河夏樹君ですね?」
「予言の使者?」
「はい。この世界には予言者がおり、その予言に、世界が狂いし時一人の使者が舞い降りる。その名は氷河夏樹。魔書使いと」
「そうだったんですか。俺は転生したって事ですか?」
「左様」
 本当に転生したんだ――。




「夏樹君、君はまだ修行が足りません。なのでこの寺で修行しましょう」
「どういう事ですか?」
「あなたは魔書使いですが魔力が足りていないので戦いの後意識を失ってしまったんです。予言では一カ月程の修行であなたは一人前の魔書使いになれるとあります。みっちりしごきますからね」
「は、はぁ」
「ともかく孫を救ってくれてありがとうございます」
「い、いえ」
 修行か――。何するんだろう。


 まぁ修行は明日からだろう。
 今日はゆっくりやすも――
 「早速今日から始めますよ」
 ですよね。はい。






 連れてこられたのは崖ののりめんが正面にある広い広場だ。
 崖下というのもあり声がかなり反響する。




 俺が声を出して反響音を楽しんでいるとおじいさんがベシッと俺の頭を叩き、集中しなさいと言って離れた。


 「そう言えばおじいさん名前は何ていうんですか?」
 俺がそう言うと
「今日の修行が終わったらお教えします」
「はい……」
「さて今日の修行はこの崖に向かって全力で魔書を使って崖を崩してください」
「分かりました」




 俺は集中して魔力が高まるのを実感した。
 何かがじわじわ上がってくる感じ。
 「七人の賢者セブンセイジ! ファイヤー!」
 俺の周りにドラゴンのように炎が回っている。


 「ドラゴンファイヤー!」
 すると炎を纏ったドラゴンが崖に向かって行く。
 崖にぶつかると激しい衝突音と共に崖の破片が飛び散った。




 崖は少しヒビが入った程度でびくともしていない。
 しかし俺の疲労度は半端じゃない。


 「サンダー! ファイヤー! ファイヤボルト!」
 誰に教わった訳でもないのに技を組み合わせて使った。
 炎の柱が電気を纏って崖にぶつかった。


 すると先程よりも大きな爆発音がして破片も多く飛び散った。


 砂煙が去り、崖を見ると大きなクレーターが出来ていた。


 それを見たと同時に俺は意識を失った。

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