話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

全財産百兆円の男

星河☆

株主総会

 亨は朝ご飯を食べていた。
 今日の朝ご飯はフレンチトーストとエッグベネティクトとスムージーだ。
 朝食を食べている途中でシェフの西岡裕也がやって来た。
 「亨さん、今夜の夕食なんですが橋本さんに聞いたところ外で召し上がると聞いたのですが夕食はメイド、執事の分だけで宜しいですか?」
 今日の夜は仲の良い株主仲間と会食があるのだ。


「あぁ、構わない。けど夜食に軽いもの作っておいてくれ」
「分かりました。フレンチトーストで宜しいですか?」
「夜食にまでフレンチトーストは嫌だな」
「ではハムマヨフレンチロールで宜しいですか?」
「それ良いな。頼むよ。十一時頃に帰ってくるから」
「かしこまりました」
 西岡は頭を下げて下がっていった。




 亨は食事を終え、薬を飲み、自室に戻った。


 現在午前七時四十分。
 今日は株式会社SS工業の株主総会が十時から行われる。


 コンコン――。


「はーい」
「西田です。そろそろ出発の準備をお願いします」
「分かってるよ」
「では車でお待ちしております」
「あいよ」
 亨はオーダーメイドスーツを着てネクタイを締めて外に出た。






 西田が後部座席のドアを開けていてそのまま亨は乗った。


 西田は車を発進させ、敷地を出た。


「西田、今日の総会の場所ってどこ?」
「足立区です」
「会食場所は?」
「銀座になります」
「りょーかい」
 すると亨はタバコを吸い始めた。
 亨が吸っているタバコはメビウスだ。






 「到着しました」
 西田はそう言ってドアを開けた。


 二人は足立区にある総合会議場にやって来た。
 入り口の前には『株式会社SS工業株主総会』と書いてある。


 中に入ると職員らしき人が二人の前にやって来た。


「株主総会でやってこられた方々ですか?」
「はいそうです」
 西田が答えた。


「お名前とご住所をカウンターでお書き下さい」
「分かりました」
 西田がまたも答え、カウンターにやって来た。
 株主総会に出られるのは株主のみと決まっているが、秘書等も参加する株主の後ろに立ち、参加しても良い。
 但し発言権はない。
 株主の助言等に必要とされている。




 必要事項を記入し、会議が行われる三階へ向かった。




 「ようこそお越しくださいました。お名前をお聞かせ頂けませんか?」
 SS工業のバッヂを付けている社員が聞いてきた。


「甲斐亨です」
「甲斐様ですね。こちらへどうぞ」
 社員は会議室のドアを開け、二人を椅子まで案内した。
 亨の椅子は一番上座となっている。
 つまり亨は大株主であるという事だ。






 それから三十分程経ち、続々と株主がやって来た。




「おぉ、亨君! 久しぶり!」
「あ、雅さん。お久しぶりです。今日の夜楽しみにしてますよ」
「こちらこそ」
 亨の株主としての先輩、中川雅之が亨に声をかけた。
 一言、二言亨と話した後中川は自分の席に行った。




 それからさらに三十分程して株主総会が始まろうとしていた。




 「社長の白谷でございます。本日はお忙しいところ本総会にお集まり頂き誠にありがとうございます。定款第八条の定めによりまして私が議長を務めさせて頂きます」
 SS工業の社長、白谷庄司が挨拶すると、株主が拍手をした。
 拍手は株主総会の恒例となっている。


 「 ありがとうございます。それでは、ただいまより、第二十四期定時株主総会を開会いたします。本日の会議の目的事項といたしまして、お手元の書類に記載してあります通り本総会に提出いたします」
 白谷がそう言うと頭を下げた。


 「また、議事の秩序を保ちますため、ご発言につきましては私の指示に従って頂けますようお願い申し上げます」
 白谷が頭を下げてそう言うと株主は拍手した。


 「それでは、本総会におけますご出席株主数ならびに、その株式数をご報告申し上げます。本総会におきまして、議決権を有する株主数は八十二名、その議決権株式数は七千六百株でございます。本総会にご出席の株主数は、委任状をご提出いただきました方を含め百三十名、その議決権株式数は八千五百二十株でございます」
 白谷が株主数報告をした。


 「従いまして、定足数の定めのある各議案を審議する為に必要な定足数を満たしております」
 白谷が充足宣言を行った。
 すると株主は『異議なし』とハモり、拍手をした。


 「それでは営業報告ならびに各議案の審議に入ります前に監査役会より監査報告をお願い致します。小久保監査役どうぞ」
 白谷が小久保博監査役の紹介をして、小久保が立ち上がり、株主に一礼した。


 「常勤監査役の小久保博でございます。監査役会を代表いたしまして、私から監査報告をさせていただきます。当監査役会は、第四期営業年度における取締役の業務執行全般について監査を行なって参りましたが、監査役会の監査報告書の謄本に記載致しました通り、法令・定款に違反する事項および不当な事項はございません。また、会計監査人である広島監査法人の会計に関しての監査方法、およびその結果につきましても相当であります。また、会計以外の業務につきましても、法令・定款に適合いたしており不当な事項はございません。また、本総会の各議案および書類に関しましても、法令・定款に違反する事項および不当な事項はございません」
 小久保が監査報告を行い、再び議長の白谷が立ち上がった。


 「それでは平成三十一年十二月一日から平成三十二年三月二十五日までの第四期の営業報告書についてご報告申し上げます。お手元の書類四頁から七頁に記載の通りでありますが、その概略につきましてご説明申し上げます」
 亨は手元にある書類の四頁を見た。
 営業報告が書いてある。


 「当社と致しましてはお客様第一の使命を自覚し、積極的な営業方針のもと、高度化、多様化するユーザーニーズにきめ細かく応えていく所存でございます。今後ともなお一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。
次に、貸借対照表の内容につきましてご説明申し上げます。お手元の招集ご通知の五頁をご覧いただきたいと存じます」
 賃借対照表の説明を白谷がしている中亨はある事に気づいた。


 「報告事項につきましては以上でございますがこれまでの事項に関しましてのご質問をお受け致します。ご発言を希望される方は挙手をお願いしたいと存じます。ご質問はございませんか?」
 白谷がそう聞くと亨が手を挙げた。


 「そちらの株主様、出席票の番号とお名前をおっしゃってください」
 白谷が亨をさし、亨は答えた。


「一番の甲斐です」
「甲斐様、ご質問をどうぞ」
「はい。賃借対照表の経営指標についてですが、流動比率が八十パーセントしかありません。SS工業の短期支払い能力は通常二百パーセントが当たり前ですが大丈夫なのでしょうか?」
 亨が質問した流動比率とは流動資産÷流動負債×百で計算されるもので二百パーセント以上が妥当とされている。
 つまりSS工業の八十パーセントの数字は短期支払い能力が低いと考えられる。


 「その件につきましては担当取締役からご説明申し上げます。高島専務取締役どうぞ」
 白谷は高島郷専務取締役を指名した。


 「高島専務取締役です。ただいまの質問にお答え致します。我々も流動比率の低さには改善をしなければならないと考えております。改善方法と致しましては流動資産を単に増やすだけではリスクがあると考えます。なので流動資産のうちの当座資産を増やす事が肝心だと私共は考えます。これから当座資産を増やす為に有価証券を増やしていきたいと考えております。以上、ご説明申し上げました」
 亨は納得したように頷いた。


 「他にご質問はございますでしょうか?」
 白谷は株主を見渡した。


 「質問がないようでございますようなので、議案の第一号議案の審議に移らせていただきます。お手元の書類の八頁に記載してございます決議事項の第一号議案の内容をご説明申し上げます。お手元の書類九頁をご覧下さい。利益処分案と致しまして、利益準備金三百五十万円。利益配当金三千五百万円」
 白谷が説明を続ける。














 「以上をもちまして本総会を閉会致します。本日は誠にありがとうございました」
 白谷が株主に一礼すると、役員も全員立ち上がり、株主に一礼した。




「やっと終わった」
「結構長引きましたね」
「そりゃあ亨君が質問ばかりするからだろ」
 株主総会が終了し、中川が亨に声をかけた。


「このまま銀座に向かいます?」
「そうするか」
「じゃあ他のメンバーにも声かけますね」
「頼むよ。俺は一足先に店行ってるから」
「分かりました」
 中川は会議室を出ていった。


 亨も西田と一緒に会議室を出て投資家仲間に電話をかけた。






 「そうだ、西田ー、週刊文秋の佐藤さんも誘っちゃおうか」
 亨がそう言うと西田は苦笑しながら答えた。


「佐藤さんですか。狙ってるんですか?」
「まぁな。美人だし」
「良いんじゃないですか」
「じゃあ誘っちゃおう」
 亨はそう言うと佐藤から以前貰った名刺を取り出して電話した。


『もしもし、佐藤です』
「あ、佐藤さん? 甲斐ですけど」
『甲斐さん、どうされたんですか?』
「今日これから投資家仲間と飲み会するんですけど佐藤さんも一緒にどうですか?」
『私なんかが行って良いんですか?』
「勿論大歓迎ですよ」
『分かりました。すぐに向かいます。どこですか?』
「銀座の魚玉本店です」
『分かりました。すぐ行きます』
 電話を切り、西田に報告して亨はウキウキしながら車に乗った。




 一時間後。
 「皆さん、遅くなりました」
 亨は魚玉に着き、先に着いていた投資家仲間に挨拶した。
 後ろには佐藤もいる。
 「週刊文秋の記者の佐藤です。この度はこのような席にお招き頂きありがとうございます」
 佐藤は一礼し、席に着いた。


 今日集まっている亨の仲間は中川雅之、大板翼、秋山幸二、中井正春、そして亨と佐藤だ。


 「先輩、最近どうっすか?」
 大板が亨に尋ねた。


「最近は調子良いよ。株価も安定してるし体調も良いしね」
「俺なんてこの前三千万の大損出しちゃいましたよ」
 大板は笑いながらそう言うと中井が俺もだよと言って皆笑った。
 しかし佐藤だけは金持ちの分類ではないので三千万という大金をなくした事を笑っているこの五人に絶句していた。






 こうして頭と体力を使う一日は終わった。

「全財産百兆円の男」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「現代ドラマ」の人気作品

コメント

コメントを書く