小さき蒼雷の魔法使い

柊木凪

第五十七話「シエルの選択」

「さて、では今回の件の話……報酬も含めて話をしようか。」


 バルトが三人の対面に座り話を切り出した。

 ウィドもバルトの横に座った。


「まずは、改めて私から御礼を言わせてくれ。

娘を子供たちを助けてくれた事に感謝する……ありがとう。」


 バルトはライガ達に深々と頭を下げて御礼を言った。

 その様子を見てあっけにとられた。


「俺は大した事は全くしてないから頭をあげてくれ!」


「そうか?しかし、どんな経緯であれ助けてくれた事には変わりないのだ。

そこで、私はライガ君たち三人に報酬を用意させてもらった……受取ってくれ。」


 そう言ってバルトは、机の上に小さい袋ときれいに畳まれている布が置かれた。


「これは?」


「この小袋には、白金貨が5枚と赤金貨5枚が入っている。」


 …………えっと、白金貨が5枚で50万円で、赤金貨が5枚……550万!?


「そして、こちらの布だが簡単に言えば魔法道具だ。

一応マントになっているから身につけられるようになっている。」


「魔法道具?」


「そうだ。君たちは三人とも魔導師系統の戦闘スタイルだとウィドから聞いている。

だから、これを三人に送らせてもらおうと思う。」


「貰えるならありがたく貰う事にしよう。

それで、効果は?」


 ライガはバルトが布の効果について中々教えてくれないから素直に聞いて見た。


「効果は色々あるけど、身につけている者の認識を目だなくする事が出来る。

つまり、どこにでもいるような人に感じるようになるんだ。


まあ、自分より大幅に力が強い者には効果はないけどね……ライガ君たちには関係ないかな?」


「ど、どうだろうな……。因みに他の効果は?」


 ライガは強さについて聞かれそうな予感がしたので話を先に進めることにした。


「このマントは自分の周りの気温を自動調節してくれたり、サイズを任意で変える事ができるよ?

後は、破壊不能が付いてる。」


「…………は!?」


 バルトの説明を聞いていたライガは最後の言葉で今までの事が吹き飛んだ。

 破壊不能と言えば反則級の装備だとライガは思ったのだがこの世界では違うのだろうか。


「ん?やっぱり驚くよね……これは私の父上が若い頃冒険者をやっていたらしいのだけど、ある日に迷宮に仲間と挑んだんだって。

これは、その時の戦利品らしいんだ。

今現存している中で高難易度の迷宮で名をフォレストって言われてる。

その中層付近で手に入れたって聞いてるよ。」


 この回答によって破壊不能はあるにはあるが珍しい物だと分かったライガは何故今回の報酬にこんなにも希少価値の高い物を用意したのか気になった。

 しかし、バルトは報酬の話は終わったと言うように別の話題に移した。


「ところで、ライガ君?話は変わるけど、昨晩、三人の冒険に娘が一緒に行きたいと言って来てね。

私は正直言って反対なのだが、ライガ君、シオンさん、カレンさん三人の意見というより三人はこれを聞いてどう思っているのか聞きたいのだ。」


 バルトの表情は真剣そのものだった。

 それも当然と言えるだろう……自分の、それも貴族の娘が凄腕の新人冒険者に一緒について行動するなど誰もが反対だろうと思う。

 実力が違うと足を引っ張る可能性もあることに加えて父親としては色々と心配事が増えてしまうのだ。

 それ故に、ライガ達の意思と娘……シエルの選択を父親としてしっかりと聞かなければならなかった。


「シエルが一緒に行きたいと決めたのなら断る理由はないと思っている。」


「そうですね。私もご主人と同意見です。」


「えっと、私はシエルと一緒に冒険してみたいかな~なんて。」


「そうか。誰か手の空いている者いるか?」


 三人がそれぞれの反応を見せ、後はシエル本人の口からもう一度聞く事に決めたバルトは、手の空いている使用人を呼んだ。


「はい。お呼びでしょうか?」


「シエルを呼んで来てくれるか?」


「かしこまりました。」


 使用人はバルトの要求を聞くと直ぐに退室した。

 その後あまり時間の経たない内に扉は再び叩かれた。


「入れ。」


 バルトが許可を出すと扉を開けシエルが室内へと一歩入り静かにお辞儀をした。


「失礼します。お呼びだと聞き、参りました。お父様。」


「ああ、こちらへ来て座りなさい。」


「わかりました。」


 バルトはシエルを椅子へと座るように促した。

 シエルがバルトとウィドの方の椅子へと座るのを待ってから口を開いた。


「シエル、ライガ君たちと共に行きたいと言っていたな。

今でもその思いは変わらないのか?


ライガ君たちは冒険者である以上一緒に行けば当然危険も伴うぞ?」


「はい!分かっているつもりです。」


 バルトの言葉を一つ一つしっかり聞き、その上でハッキリと返事をした。

 その返事にはしっかりとした意志が感じられた事でバルトも一つの答えを出した。


「シエルの気持ちは分かったし、ライガ君たちにならシエルを任せてもいいだろう。」


「それじゃあ!」ただし!条件がある。」


 バルトからの許可が出た事に喜びを感じるが直ぐ様、真剣な表情へと戻った。


「条件ですか?」


「ああ、条件だ。今からの条件が合格の基準に至ったなら許可する。」




皆様、柊☆黐です。


本日もお読み頂きありがとうございます。

そして、ブックマークとポイント評価、コメントを残して下さった皆様本当にありがとうございます。

まだの方は是非ブックマークとポイント評価の方をよろしくお願いします。


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さて、次回は第五十八話「条件」でお会いしましょう。

お楽しみにっ♪

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