自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体はいつのまにか最強になっていたようです〜
第16話:別にびびっちゃいねぇよ。チビってもいねぇし!この歳でちちちちびるなんてねーし!
それから塔は順調に攻略が進んだ。
望んでいたお宝は特に見当たらなかったが、危なげなく進んでいるのは幸いだろう。
塔の攻略……いや冒険者として命が1番大事だ。
これを落としちまったら二度と拾えねぇ。
だからこの状態は順調なんだ。
第12階層に到着すると、道が一気になくなった。
いや反対側に道は見えているんだが、今目の前には何もない。
フロアごと道が消滅しており、下の階が見えている。
「ケイド?何もないけどどーするの?」
「いやこりゃまいったな」
トラップの類ならなんとか突破口が見えるはずだが、ここには何もない。
以前にも同じような場所に出たことがあるが、どうやって攻略したのか……。
あ、フレイの浮遊魔法でそのまま向かったんだ。
ダメだな。そんな魔法は流石にない。
とりあえず何かあるはずだと近くを漁ってみた。
「ん?なんだこれ?」
道が途切れてる1番奥に手を乗せるような跡がある。
その手の跡の周りには魔法陣が描かれており、乗せると何かが発動しそうだ。
「んー、怪しいがこれ以外になさそうだしなぁ」
「ケイド何ブツブツ喋ってんのー?」
「あぁすまんすまん。これが多分道になりそうなんだが……」
リムが不思議そうに俺の背後から覗き込んできた。
いや違うな。覗き込むのを利用して俺の背中にもたれ掛かっている。
流石に休憩なしでここまで来たからな。一度休んでもいいだろう。
「よし、一回ここでご飯にしようか。それからこれに手を当ててみるよ」
「あ、ほんとだー!リムがやるー!」
「あ、おい!ちょっ!」
俺が迂闊だった。
リムは好奇心の塊だ。
話したら飛びつくに決まってるだろう。
リムが俺の制止も聞かずに手を乗せてしまった。
ウォン……
何かが発動した音がした。
俺はすぐに身構え、何が来ても大丈夫なように周辺を警戒する。
…………何も起きない。
「あわわわわ。ケイドぉぉ。しゅごいよこれぇぇぇ」
俺が振り返るとリムが小刻みに動いている。
先程乗せた手の周辺は光り輝いており、魔力を吸収しているらしい。
その光が前の何もない空間に道通して輝き始めた。
「なんだよこれ……」
突如現れた空中の道。
恐る恐る足を伸ばしてみると……乗れた。
どうやら魔力によって道を作るらしい。
俺は光の道から降りると、リムをその場所から動かした。
道ができるほどの魔力だ。すぐに吸い尽くされてもおかしくない。
「リム、大丈夫か?」
「うんー!なんか面白かったよー!」
魔力を吸い出されて面白かったと言えるのはリムぐらいだろう。
常人なら魔力を吸い出されると極度の疲労感と体のダルさに動けなくなる。
試しに俺も手を置いてみるか?
……やってみるか。
俺が出来なきゃリムを向こう側に送ることも出来ないからな。
俺は意を決してその場所に手を置いた。
魔法陣が光ったと思えば、すぐに体内の魔力を持ってかれ始める。
なんだこれ。こんなに……こんなに気持ちいのか!?
「ぬほぉぉぉぉ!こんにゃろぉぉぉぉ」
俺の少ない魔力がどんどん外に吸い出される。
視界の端には光の道が出来ているが……それどころじゃない。
圧倒的な気持ち良さに脳まで持ってかれそうになる。
このまま永久に魔力を……あ、終わった。
「ぷはぁ!」
急に気持ち悪さと疲労感が俺を襲って来た。
頭が痛い。気持ち悪い。腹が痛い。視界が揺れる。
最悪だ。さっきまではあんなに気持ちよかったのに。
「ケイド?大丈夫?」
「あ、あぁ……すまんが魔力回復ポーションを……取ってくれ」
「うん!」
リムが俺の荷物から取り出してくれた。
苦い。まずい。だが飲むと少し楽になる。
これは……最悪なトラップだな。
「リムは平気だったのか?」
「うんー!大丈夫だよ?」
やっぱリムはすごい。
多分俺と比較にならないほどの魔力を持っているのだろう。
あの快感にも負けない精神力と大量の魔力。
俺はどっちも持っていない。
「ケイドー?リムが道作るから先に行って?」
「いや俺がポーション飲んで道を先に作るよ。だからリムが先にーー」
「リムなら大丈夫だよー!ほら!」
リムが戦闘モードに変化した。
そうだ。リムは飛べるのだ。
背中から生えた翼がより存在感を増している。
「そうだったな……」
「でしょ?だからケイドから先に行ってね」
お言葉に甘えて俺は先に渡る事にした。
リムが手を置くと先程の場所が光り始める。
一歩……二歩……大丈夫だ。崩れるなどのトラップはない。
念のため慎重に歩いているが、これなら問題なく到着しそうだ。
「リムー?こっちは大丈夫そ……リム!後ろだ!!」
どっから湧いてきたのか。
リムの後ろに大きな斧を持ったレッドオーガが出てきた。
俺の呼びかけにリムもすぐ応えて応戦。
不意打ち気味だったが、切り返しが早くすぐに霧散させることができた。
「ケイドー!ありがとぉぉ!!」
リムが手を振りながら俺に呼びかけてきている。
無事で何よりだ。
俺もすぐに気づけてよかった。
……待てよ?
今リムは手を離している。
となると俺の立っている場所は……。
下を見ると階下がよく見える。
どうやら透明な道が出来ており、あれはその道をわかりやすく見せるためらしい。
俺は胸をなでおろした。万が一落ちてたら……怪我で済めばマシな方だろう。
もう一度リムが魔力を流してくれた。
俺が反対側に到着すると、リムも飛んで合流。
塔攻略には1人では絶対に無理だ。
心底リムがいてくれてよかったと思うよ。
「よし、もうそろそろ頂上だからな!休憩したら気合い入れて行くぞ!」
「おー!」
◇
プロテオンの塔、最上階。
ここは分厚く高い壁に覆われている。
フロアの広さは階下と遜色がないが、天井はない。
壁にはいくつもの松明が飾ってあり、その他にも燭台並んでいる。
下り階段から真反対に位置する場所に祠が建てられていた。
扉には厳重に封印を施している跡があり、それを守るように悪魔が鎮座している。
その近くにはもう1人の男がいた。
その男は青白い肌をしており、筋肉隆々の体格。
頭からは2本の立派なツノが天を指すように生えている。
顎髭は髪の毛と同じように紫色をしており、鋭い眼光を持ち合わせていた。
彼は魔王。
この世界を魔族が住みやすくするために人間へ侵攻を続けていた。
自分達が住みやすくするため。彼は魔族を代表して戦争へ身を投げていたのだ。
それには邪魔者がいた。
恐ろしい力をもったその邪魔者を倒すために何人もの仲間が犠牲になった。
だがその犠牲に見合う成果は手に入れた。
邪魔者とその取り巻きを封印することが出来たのだ。
それから彼は邁進した。
何人もの冒険者を葬った。
魔族の領地も少しずつ増えていった。
だがそれも急に終わりを迎えた。
信頼していた部下は撃破され、封印が次々に解除されているのを知った。
相手は神出鬼没。彼が向かった頃には封印が解除されている。
最後の封印場所で待ち構え、邪魔者と共に葬ろうと画策していた。
「残るは……ここだけか」
彼は魔族の繁栄のために動いていた。
だがそれも終わりを迎えてしまうかもしれない。
何人もの強敵を倒して来ても、終わることのない争い。
人間とは時に恐ろしい力を持ちうる。
「ふっ。私としたことが」
彼が自嘲気味に笑うと、近くにいた悪魔が首を傾げた。
言葉を理解する悪魔であり知能も高い。
その悪魔の名はベリアル。彼は魔王の配下にて最高戦力でもある。
そしてこの封印地最後の防衛者だ。
「大丈夫だ。今回は私も参戦する」
「……私も尽力致します」
魔王の言葉にベリアルが返す。
邪魔者がこの塔に入って来たのはわかっている。
そして別に冒険者も入ってきた。
その邪魔者たちを倒せば魔王の懸念は無くなる。
2人は静かにその時を待つことにした。
望んでいたお宝は特に見当たらなかったが、危なげなく進んでいるのは幸いだろう。
塔の攻略……いや冒険者として命が1番大事だ。
これを落としちまったら二度と拾えねぇ。
だからこの状態は順調なんだ。
第12階層に到着すると、道が一気になくなった。
いや反対側に道は見えているんだが、今目の前には何もない。
フロアごと道が消滅しており、下の階が見えている。
「ケイド?何もないけどどーするの?」
「いやこりゃまいったな」
トラップの類ならなんとか突破口が見えるはずだが、ここには何もない。
以前にも同じような場所に出たことがあるが、どうやって攻略したのか……。
あ、フレイの浮遊魔法でそのまま向かったんだ。
ダメだな。そんな魔法は流石にない。
とりあえず何かあるはずだと近くを漁ってみた。
「ん?なんだこれ?」
道が途切れてる1番奥に手を乗せるような跡がある。
その手の跡の周りには魔法陣が描かれており、乗せると何かが発動しそうだ。
「んー、怪しいがこれ以外になさそうだしなぁ」
「ケイド何ブツブツ喋ってんのー?」
「あぁすまんすまん。これが多分道になりそうなんだが……」
リムが不思議そうに俺の背後から覗き込んできた。
いや違うな。覗き込むのを利用して俺の背中にもたれ掛かっている。
流石に休憩なしでここまで来たからな。一度休んでもいいだろう。
「よし、一回ここでご飯にしようか。それからこれに手を当ててみるよ」
「あ、ほんとだー!リムがやるー!」
「あ、おい!ちょっ!」
俺が迂闊だった。
リムは好奇心の塊だ。
話したら飛びつくに決まってるだろう。
リムが俺の制止も聞かずに手を乗せてしまった。
ウォン……
何かが発動した音がした。
俺はすぐに身構え、何が来ても大丈夫なように周辺を警戒する。
…………何も起きない。
「あわわわわ。ケイドぉぉ。しゅごいよこれぇぇぇ」
俺が振り返るとリムが小刻みに動いている。
先程乗せた手の周辺は光り輝いており、魔力を吸収しているらしい。
その光が前の何もない空間に道通して輝き始めた。
「なんだよこれ……」
突如現れた空中の道。
恐る恐る足を伸ばしてみると……乗れた。
どうやら魔力によって道を作るらしい。
俺は光の道から降りると、リムをその場所から動かした。
道ができるほどの魔力だ。すぐに吸い尽くされてもおかしくない。
「リム、大丈夫か?」
「うんー!なんか面白かったよー!」
魔力を吸い出されて面白かったと言えるのはリムぐらいだろう。
常人なら魔力を吸い出されると極度の疲労感と体のダルさに動けなくなる。
試しに俺も手を置いてみるか?
……やってみるか。
俺が出来なきゃリムを向こう側に送ることも出来ないからな。
俺は意を決してその場所に手を置いた。
魔法陣が光ったと思えば、すぐに体内の魔力を持ってかれ始める。
なんだこれ。こんなに……こんなに気持ちいのか!?
「ぬほぉぉぉぉ!こんにゃろぉぉぉぉ」
俺の少ない魔力がどんどん外に吸い出される。
視界の端には光の道が出来ているが……それどころじゃない。
圧倒的な気持ち良さに脳まで持ってかれそうになる。
このまま永久に魔力を……あ、終わった。
「ぷはぁ!」
急に気持ち悪さと疲労感が俺を襲って来た。
頭が痛い。気持ち悪い。腹が痛い。視界が揺れる。
最悪だ。さっきまではあんなに気持ちよかったのに。
「ケイド?大丈夫?」
「あ、あぁ……すまんが魔力回復ポーションを……取ってくれ」
「うん!」
リムが俺の荷物から取り出してくれた。
苦い。まずい。だが飲むと少し楽になる。
これは……最悪なトラップだな。
「リムは平気だったのか?」
「うんー!大丈夫だよ?」
やっぱリムはすごい。
多分俺と比較にならないほどの魔力を持っているのだろう。
あの快感にも負けない精神力と大量の魔力。
俺はどっちも持っていない。
「ケイドー?リムが道作るから先に行って?」
「いや俺がポーション飲んで道を先に作るよ。だからリムが先にーー」
「リムなら大丈夫だよー!ほら!」
リムが戦闘モードに変化した。
そうだ。リムは飛べるのだ。
背中から生えた翼がより存在感を増している。
「そうだったな……」
「でしょ?だからケイドから先に行ってね」
お言葉に甘えて俺は先に渡る事にした。
リムが手を置くと先程の場所が光り始める。
一歩……二歩……大丈夫だ。崩れるなどのトラップはない。
念のため慎重に歩いているが、これなら問題なく到着しそうだ。
「リムー?こっちは大丈夫そ……リム!後ろだ!!」
どっから湧いてきたのか。
リムの後ろに大きな斧を持ったレッドオーガが出てきた。
俺の呼びかけにリムもすぐ応えて応戦。
不意打ち気味だったが、切り返しが早くすぐに霧散させることができた。
「ケイドー!ありがとぉぉ!!」
リムが手を振りながら俺に呼びかけてきている。
無事で何よりだ。
俺もすぐに気づけてよかった。
……待てよ?
今リムは手を離している。
となると俺の立っている場所は……。
下を見ると階下がよく見える。
どうやら透明な道が出来ており、あれはその道をわかりやすく見せるためらしい。
俺は胸をなでおろした。万が一落ちてたら……怪我で済めばマシな方だろう。
もう一度リムが魔力を流してくれた。
俺が反対側に到着すると、リムも飛んで合流。
塔攻略には1人では絶対に無理だ。
心底リムがいてくれてよかったと思うよ。
「よし、もうそろそろ頂上だからな!休憩したら気合い入れて行くぞ!」
「おー!」
◇
プロテオンの塔、最上階。
ここは分厚く高い壁に覆われている。
フロアの広さは階下と遜色がないが、天井はない。
壁にはいくつもの松明が飾ってあり、その他にも燭台並んでいる。
下り階段から真反対に位置する場所に祠が建てられていた。
扉には厳重に封印を施している跡があり、それを守るように悪魔が鎮座している。
その近くにはもう1人の男がいた。
その男は青白い肌をしており、筋肉隆々の体格。
頭からは2本の立派なツノが天を指すように生えている。
顎髭は髪の毛と同じように紫色をしており、鋭い眼光を持ち合わせていた。
彼は魔王。
この世界を魔族が住みやすくするために人間へ侵攻を続けていた。
自分達が住みやすくするため。彼は魔族を代表して戦争へ身を投げていたのだ。
それには邪魔者がいた。
恐ろしい力をもったその邪魔者を倒すために何人もの仲間が犠牲になった。
だがその犠牲に見合う成果は手に入れた。
邪魔者とその取り巻きを封印することが出来たのだ。
それから彼は邁進した。
何人もの冒険者を葬った。
魔族の領地も少しずつ増えていった。
だがそれも急に終わりを迎えた。
信頼していた部下は撃破され、封印が次々に解除されているのを知った。
相手は神出鬼没。彼が向かった頃には封印が解除されている。
最後の封印場所で待ち構え、邪魔者と共に葬ろうと画策していた。
「残るは……ここだけか」
彼は魔族の繁栄のために動いていた。
だがそれも終わりを迎えてしまうかもしれない。
何人もの強敵を倒して来ても、終わることのない争い。
人間とは時に恐ろしい力を持ちうる。
「ふっ。私としたことが」
彼が自嘲気味に笑うと、近くにいた悪魔が首を傾げた。
言葉を理解する悪魔であり知能も高い。
その悪魔の名はベリアル。彼は魔王の配下にて最高戦力でもある。
そしてこの封印地最後の防衛者だ。
「大丈夫だ。今回は私も参戦する」
「……私も尽力致します」
魔王の言葉にベリアルが返す。
邪魔者がこの塔に入って来たのはわかっている。
そして別に冒険者も入ってきた。
その邪魔者たちを倒せば魔王の懸念は無くなる。
2人は静かにその時を待つことにした。
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