異世界物語〜銃を添えて〜

八橋響

ソロクエストpart2〜ヒール草と芋虫を添えて〜

 森の中をずんずんと進むこと数十分。途中キュアと出会った池で小休憩を取りながら、俺たちは森の奥地へ向かっていた。
 アリシアの森は奥に行けば行くほど森が深くなっていき、舗装されている道も険しいものへと変わっていくようだ。歩く足にしっかりと力を入れなければ、足首をひねったりしてしまいそうだ。
 森の木々からは、太陽の光が差し込み神秘的な雰囲気を醸し出していた。
 その中を歩いて行き、森の奥地の別れ道に到着した。本日のクエストは右側に行くことで出会えるグランドキャタピラーと、ヒール草。なので、右側の道に向かう。

 ここから先は、ヒール草を探しながら歩かないといけないため、少し歩くペースを落とす。
「キュア、ヒール草が見つかったら教えてもらえるかい?」
「キュ?キュイ!」
 俺だけだと、全部は見きれないので、キュアにも手伝いを頼む。
 いいよ!と言うふうにする、キュアの頭を撫でながら、ゆっくりと進む。
 道端には、様々な草木が生い茂り、名も知らない木の実がなっている。時間があれば、どう言うものかなどを調べるためだけに、アリシアの森まで出向くのもありだ。

 そうして歩いていく事数分、「キュア!」と唐突に、キュアが鳴き声をあげた。
 警戒音とは違う声をあげながら、俺の頭をペシペシと叩いてくる。
「どうしたの?キュア」
「キュッキュイ!キュッキュ!」
 短い足を使いながら、キュアが指差すその先には、ハートの形をした葉を持つ草──ヒール草が生えていた。
 ヒール草は、群生するものらしく一つ見つければ辺りにも同様に生えている。ただし、それら全てを採取してしまうと、次からそこにはヒール草が生えなくなってしまう様なので、1つだけは必ず残してください。とギルドの受付嬢から言われた。

「キュアお手柄だね!」
「キュッキュイ!」
 えっへんとばかりに胸を張る愛くるしいキュアの頭を撫で、ヒール草を採取する。ここに生えているものだけで、依頼の10個と言うのは解決できそうだ。
 一つ一つを土から引っこ抜く様にして、ヒール草を次々と採取していき、最後の一つだけを残して終了させる。
 今のだけでももう既に12個のヒール草を入手できた。これでクエストクリア条件は満たした……が、もう少し採取して少しでも稼ぐ事にしよう。
 入手したヒール草を革袋に詰め、カバンに入れる。

 膝についた土を払いながら、立ち上がり、道へと戻る。後はこのままヒール草を探しながら、グランドキャタピラーを探すだけだ。
「よし、じゃあ行こうかキュア。もし魔物の気配がしたらすぐに教えてくれよな」
「キュイ!」
 元気よく返事をしたキュアと、道を進んでいった。

 それから20分程歩いたぐらいだった。順調にヒール草は集まり、今では50個ほどのヒール草が革袋にパンパンに詰まっていた。
 これだけあれば、多少なりとも大きい金額になるのではないかと、少しホクホク顔で道を進んでいた時───
「キュイッ……キュ…!」
 警戒音ではなく、小さく声をあげたキュアは、前足で俺を叩き指さしをする。
 浮かれたいた表情をやめ、キュアが指差す先を見ると──そこには、体調3メートルぐらいの大きな土色をした芋虫が3体ほど道外れで食事をしていた。遠目からだったのではっきりとは分からなかったが、奴らが食しているのは多分ヒール草だ。
 ヒール草を集めている際に、ところどころ何かに食べられた様に無くなって生えているヒール草を見つけていた。ある場所では、ヒール草を一つ残らず食べられているところもあった。
 土色の芋虫、ヒール草を食す害虫……間違いない、アイツらがグランドキャタピラーだ。

「ありがとうキュア。あれがグランドキャタピラーだな……?」
「キュ…?」
 グランドキャタピラーを確認できたので、戦闘態勢に入ろうとしていた時、ふと3体の奥からもう1体何かが近づいて来ていた。
 ソイツが近づくたびに、地面が少しずつ揺れ動く。
「キュルルルルルゥ!」
 キュアが警戒音を鳴き散らすが、その警戒音が要らないぐらいに俺は警戒していた。
 何故何かが近づいて来た。としか分からなかったのか、その理由がわかったからだ。グランドキャタピラー達は、ソイツの姿を見つけると、すぐさま横に避け道を作っていた。

 ソイツは───グランドキャタピラーの倍以上はあるであろう体躯と、黄土色の身体をずるずると引きづりながら、森の中に響くような鳴き声をあげる───芋虫だった。

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