長日月の守護者

嘉禄(かろく)

初めて見るもの、初めての振る舞い

いつも夕食を食べる大広間に着くと、家族のぶんの食事が広がっていた。

やっぱり、こいつの分は用意されてないよな…

そう思った俺は台所に向かおうとした。
そしたら父さんに声をかけられた。


「どこに行く、もう夕食の準備は整ってるぞ?」
「…守護者曰く食事が必要らしいんですが、予想通り用意されてないみたいなので俺が用意してきます。なので、先に食べていて下さい。」
「…分かった。」


父さんが頷いて各々食べ始めたのを背に俺は台所に向かった。
着いて色々食材を出してから守護者に問いかける。


「お前、どんな料理が好みとかあるのか?」
「どんな料理…何でも食べます、今まで美味しいものからそうでも無いものまで色々食べてきたから…」


…なるほど、歴代の主でも待遇が違ったと。

何でも、と言われたので俺は和食を作ることにした。
俺の得意料理だし、それに洋食などはこいつは食べるどころかもしかしたら見たこともないかもしれないと思ったからだ。

作っている間、守護者は俺が野菜を刻んだり炒めたり煮たりしているのを興味深げに眺めていた。
その様子はさながら母親が料理を作っているのをしげしげと見ている子どものようで少し微笑ましかった。

三品ほど作り終え、余っていた白飯を茶碗に出して運んでやる。
大広間に着くと、みんな既に食べ終えたのか姿は無かった。


「さ、出来たぞ。箸の使い方は分かるよな?」
「…わかります、今まで使ってたから…」
「ならいい、じゃあいただきます」


俺が手を合わせて食べ始めると、同じように守護者も手を合わせて食べ始めた。
俺の家では食事作りは当番制なので家族に料理を振舞ったことはあるが、それ以外の存在に食べさせるのは初めてなので口に合うかどうか少し不安で守護者の様子を伺った。

少しの間守護者は黙々と食べていたが、すぐに目を輝かせた。


「…美味しい、こんなの久しぶりに食べた…」
「そうか、口に合ったならよかった。」


俺はその言葉を聞いてほっと胸を撫で下ろしてからやっと食べ始めた。
一応味見はして、不味くないことは確認したものの合う合わないは確かにあるから合って何よりだった。

その後はお互い何を話すでもなく黙々と食べ、終わってから食器の片付け方を教えつつ洗って部屋に戻った。

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