俺、元日本人のガチ神だけどY◯uTuberになるね!

慈桜

第64話



「おっす! お久しぶりですネモだよっ! 最近サボりすぎてアレックスとかパラドックスが代わりに動画投稿してくれてたみたいで感謝の限りですっ! 今更お前いらねぇよとか無しの方向でお願いします!」

 オウドゥ、シュビドゥバァ。
 久々の動画撮影ですはい。最後に俺が出てる動画投下したのっていつかな?
 パラオの南国配信とかBATの説明とかドラゴンレースや翡翠鶏なんかも、アレックスが超優秀って感じで自撮りでやっつけてくれちゃったら、俺の出番全く無かったんだよね。

「ビーチで寝そべるボス、クーラーの効いた部屋で爆睡するボスなんてテロップ入れて寝てる姿晒されるのはもう嫌だって事で、今日はアラレちゃんとアレックスと共に、秋葉原は万世橋のVRZONEに来ております。つまりアレね、夢のフルダイブVRができちゃうショップってヤツね」

 もちろん特権を活かして先行入場してやった。
 だから俺はゲーム配信者になって動画の撮り代を稼いでやろうって算段である。

「しかし見事に干物が集まったな」

「うん、すごいね。マスクとサングラスしてる人とか、被り物してる人とかは配信者さんとかなのかな? 普及の為に優先して当選させてるんだよね?」

「そうかもしれないし、並々ならぬ努力の末に家から一歩踏み出した夜の住人達かもしれないし」

「基本引きこもりって言葉使わないよね。夜の住人ってコンビニぐらいは行くぜベイベェな話でしょ?」

 ふん、何もわかっていないな。
 アラレちゃんも基本は引きこもり体質であるが、寂しさに耐えきれずにSNSなどで知り合った女性達とレイヤーに興じるなど圧巻のコミュニティ能力も持っているからな。

 闇夜のカラスとして生きるが真の平和であると理解できる領域にはいないようだ。

 む? なればその領域を改変するのも面白いかもしれんな。

「ヲタ専用のコンビニを作るのはどうだろうか? 出張秋葉原のような展開で、夕方18:00より早朝6時まで営業的な」

「なんの話をしてるの?!」

「DQN避けに窓には全て萌え嫁を飾り、ドリンクはコーヒー牛乳、コーラとドクペをメインとし各種飲料を豊富に取り揃え、オーブンのちんピザにはチーズトッピング自由、駄菓子コーナーはもちろんのこと、プラモコーナー、トレカコーナー、コミックコーナー、ブルーレイコーナー、同人18禁コーナー、アニメグッズ各種、アニメくじ、イートインスペースにはPC共に野良絵師用にペンタブも完備。まさに一大ムーブメント」

「いや、それなら漫喫行くでしょ。むしろみんな照れて来ないよ。それにみんな自宅でその環境整えてるって」

 わかっていないなアラレちゃん。
 彼らには共通の趣味をゆっくりと語り合える空間が必要なのだよ。
 今期を区切りにと自らを殺めるような窮地に救いの手を差し伸べる切っ掛けにもなる。

 見ず知らずの共通の趣味を持った人間にであらば、誰にも言えない胸の内を明かせる可能性もあるからな。
 強がる必要性に辟易している人間は、自身の弱さを誰かに吐露したいものである。
 言った後の後悔は勿論あるだろうが、偽りの自分を演じれば演じる程、人間は殻にこもりたくなるもの、特別な空間の存在は恥も醜聞も晒して本音で付き合える人間関係の構築にも役立つはずだ。

 アラレちゃんが孤独に苦しんでいた時に読者さん達の言葉に助けられたように、誰しもが誰かと自身の非生産的な言葉の投げ合いをしたいものだ。

「金はたらふくあるけぇ、実行あるのみじゃ。のうパラ子よ」

「誰!? てか絶対無駄だよぉ」

「引きオタはみんな金があると思うなよ。三百円あれば幸せになれる空間があってもいいじゃないか」

「それは私が一番よくわかってるつもりだよぉ……。でも本当に作るなら、せめてラブホテルみたいな立地条件にした方がいいよ。大通り沿いだと寄り難いだろうし」

「なるほどな。それも一理ある。うん、パラ子、早速オギちゃんに連絡入れておいてくれ」
『既にメールにて報告しております』

 仕事が早くてよろしい。
 その地方地方に聖地があるから、邪魔にならない程度に展開してみよう。
 試験運用って奴だな。
 すぐ潰れる夜中までやってる本屋みたいになったら残念でしたってことで。

『はいっ! それではフルダイブ VRについてのご説明の方はじめさせてもらいまぁす!』

「うわぁ……」

 VRZONEの順番待ちしてたのは言ったよな? それでやっとオープンして中に入れたまではいいんだが、何故かキャンペーンガールのお姉さんと一緒に、サイボーグパラ子が俺たちの案内につく謎の事態に陥った。

 しかも俺が作ったナチュラルなアンドロイドではなく、メカメカしい箇所が見え隠れしちゃってる劣化版だ。

『人手不足なので急場凌ぎでハリボテをリリースしたのです。医療スタッフや食堂スタッフは完璧ですが、VRのサポートには私が必要な段階なのです』

「なるほどね。まぁ、宜しく頼むよ」

『では、まず座席にお掛けください』

「なんか随分と大仰な席を用意したもんだな。ヘッドギアだけでいけるような設計だったろ?」

 案内された個室には、白ベースの宇宙船にでもありそうなコクピット的なリクライニングシートがあり、電気信号の送受信の影響か機械的な虹色の光が次々と迸っている。

『本体としてはヘッドギアだけです。それから快適性を追求した形がこちらです。本体の違和感による仮想体でのラグを取り除く為の努力ですね』

 どうやらそういう事らしい。
 自分が自分じゃないと把握できてしまうラグってのも逆に気になるけど、酸素濃度や空調なんかで個々に応じたリラックスできる環境を整えるのだとかなんとか。

『では、ダイブされる仮想世界をお選び下さい』

「おわっ、結構あるんだな」

 透明なカバーが締まると、目の前にディスプレイが浮かび上がり、仮想世界の一覧、つまりはゲームソフトの一覧が表示されるが、サービス開始直後であると言うのに、かなり豊富に取り揃えられている。

『既存のゲームソフトを改良するだけの簡単なプログラミングなので、制作会社の許可さえあれば、児戯に等しいものです━━アラレ様より通信です』

『ヤタさーん! これやろ! この陰陽師ロワイヤル!』

『うわー、これまたダッサイ名前だなぁ』

 アラレちゃんの強い要望で決まった謎の陰陽師ゲーを選択すると、ヘッドギアの装着指示が出たので装着。
 ポスポスポスとナノマシンが撃ち込まれ、咄嗟に弾いてしまいそうになるが、慌ててそれを受け入れると、脳の中に展開して行くのが感じ取れる。

 これを感知できる者はいないだろうけど、知っていたら忌避感があるだろうな。

『それでは睡眠導入と同時に、仮想世界へのリンクを開始します』

 これもまたうまくできている。
 濃厚な酸素と柔らかいマッサージでリラックスさせられているように感じるが、その実は睡眠中枢から強烈な眠気を送る。麻酔のような強制睡眠に導入する感覚がよくわかる。

 俺ならば起きたまま並行存在にて中の世界を楽しむことができるが、普通の人間ならば、死を迎えるその日まで眠らせておくことができそうな仕組みである。

 脳みそに直接信号を送りまくってるせいか、目を瞑っているのにリアルで鮮明な幾千もの光が通り過ぎて行く。

 その光が次第に渦となり、歪な構成となって、文字を持たない質問形式である事を理解するが、答える間もなく思考の映像が次々と具現化されて行く。

 りんご、ゴリラ、ラッパ、パナキ、ぱなき? 思考の映像化が超倍速で行われて行くと、気がつけば何も無い畳張りの空間で、霊体にでもなったかのように俯瞰で存在している自分に気がつく。

『陰陽師ロワイヤルにダイブしました。それではキャラ作成をどうぞ』

「お、おう。えーと、キャラメイクは面倒だから俺はリアルモジュールでと……」

 うへー、すごいな。
 鏡で映し出したように俺そのもののキャラがパンツ一枚の姿で畳の間に現れた。
 特にいじるところもないので、そのまま完了とすると、俯瞰で見ていた自身のキャラに吸い込まれるように視界が切り替わる。

「おお、五感がすごい。創造体よりはるかに人間って感じだな」

『ヤタ様には難しいかもしれませんが、臍の中あたりにチャクラを感じ取れるようにしてあるのですがわかりますか?』

「うん、わかるわかる。腹筋に勝手に力がはいるような締め付けられる感覚」

『それがプレイ要素で重要となる呪力の残高です。その締め付けがなくなるとお腹が緩くなり下痢を伴うような腹痛と共に全身の力が抜けて行きますのでご注意ください』

 やけにリアルに作ってやがるな。そこはゲージ表示でもいいんじゃないかとも思うが、あまり文句を言うのもアレなので口を噤んでおこう。

『百聞は一見に如かずとも言いますので、実際にプレイしながらのチュートリアルとしましょう』

 目の前の小上がりにある掛け軸がバサッと垂れると、マッチング中と表示される。
 実にシュールな仕掛けだが、リアル過ぎる空間がゲームであると再認識できる悪くない演出だ。

 視界がガッと強制的に停止すると、百人のパンイチ姿の老若男女が、何本もの蝋燭で照らされた和風な講堂の中で一堂に会する。

「よくぞ参られた選ばれし術師達よ! これよりは泰山府君より認められし皆伝の術師の選定にはいる。100名の術師同士で殺し合い、最後の一人となるまで戦え。勝者には泰山府君との謁見を認めよう」

 目の前で仮面をつけた黒い式服姿のおっさんが高らかに宣言をする。
 つまりゲームの内容の説明ってやつだろう。
 泰山府君って天部の神の一柱なんだけど、勝手に語っていいのかね。
 知ったこっちゃないけど。

「では、検討を祈る! 」

 おっさんが腕を振ると、再び視界がガッと止まり、上空からの自由落下が始まる。
 普通の人なら心臓止まるんじゃってぐらいの仕打ちだけど、俺は何処か冷静だ。

『アラレ様、アレックス様、そして私からの共闘申請です。許可してください』

「いいけど、最後の一人になるまで戦うゲームじゃないの?」

『最大四人までPTが組めますので、チームで生き残れば最後の一人との判定がされます』

「設定ガバガバだな」

『そうでもしないとボッチ専用ゲーになりかねませんから』

 半ば呆れながらにも共闘申請を許可すると、長い紫髪紫眼に黒縁眼鏡をかけたスポブラ、ボクサーパンツ姿の少女が俺の元へと飛んでくる。
 年齢は12歳程までに若返っているが、見て明らかに彼女はアラレちゃんだろう。

「えらいロリッたなアラレちゃん」

「少女は正義だからね!」

 何故かドヤ顔である。そして次に飛んで来たのが黄金色の狐耳にモフ尻尾を生やしたガチムチの偉丈夫である。
 本人とはかけ離れた見た目になっているが、明らかにアレックスだろう。

「お前だれかわかんねぇわ。なんでモフ男なんだよ」

「課金とやらを試したのでありますよ我が主よ。狐耳と尻尾は呪力の最大数が0.9%上昇するのです」

「今回こっきりかもしれないゲームに課金とか、お前狂ってんな」

「自分はゲームでも負けたくはないのですよ。どんな汚い手を使ってでも勝ちたいのです」

 わからんでもないけどっ、とアラレちゃんとアレックスと空中で談笑していたら、俺をちっこくして5歳ぐらいの幼女にしたちんまいのが飛びよってくる。

「こうやって対面すると、きもいな」

「ひどいですよ創造主様。こうして共に歩める日を夢見てVRを激推ししていたのですから」

「いや、別に創造体作ればいいじゃん」

「それは不便だから否定です」

 彼女はパラ子のようだ。
 機械越しでなく肉声で話している姿は違和感があるが、何故こいつも更にロリッたのだろうか? やはりビルドアップなやぬロリドアップは正義なのだろうか? 俺とアレックスが保護者で、アラレちゃんとパラ子が娘的なパーティになってるけど、アリなのかな? 俺もショタ化した方がいいの?

「では、そろそろ着陸位置を決めましょう。地上に見える屋敷や城は全て廃屋ですが、中には攻撃に必要な呪符がありますので、まずはそれを集めなければなりません」

「まるで某隣国のFPSだな」

「ゲームシステム自体は同様のものです。ただ、銃火器での殺し合いなのか、陰陽術での殺し合いなのかの差です」

「じゃあ、あの大きな城がある街に行こうよ!!」

 アラレちゃんがノリノリで行き先を指定したので、それに従う形で飛んで行くと、地面に近づくにつれて魔法陣のような五行の呪印が速度を緩め、体がふわっと浮かびあがる。

「では漁りましょう。呪符は霊弾を撃ち出す起動符、地雷として使う起爆符、式神を使役する鬼符、騎獣を召喚する召喚符、回復用の護符、大技を繰り出す龍符に大きくわかれます」

 本来はばらけて集めるんだろうけど、一先ず四人一緒に屋敷の中を荒らすと、札が麻紐で縛ってまとめられている状態でみつかる。

「これが起動符です。霊弾一発につき一枚消費されてしまいますので、大量に確保しておく必要があります」

 パラ子が丁寧に説明をしながらに、次々と漁ると、お次は白い式服がみつかる。
 式服着物、袴、水干のちゃんとしたセットだ。

「式服は色分けでレベルが変わります。白、黄、青、緑、赤、紫、黒の順になりますが、現時点では緑までしか実装されていません。防御力と呪力の微増量と考えてください」

「なら、みんなで式服を探そう! 備えあれば憂いなしだよ!」

 そこからみんなで楽しい式服捜索隊となったが、結果としては二着だけしか見つからず、遠方から黒い壁が迫り来るので逃げなければならない時間となってしまった。

「オープンワールドなので、ちゃんと殺しあうように、時間制限で活動区域が限定されます。あの黒い壁は公式では深淵と呼んでいて、飲まれたら即死します」

「即死? それはちょっとシビアじゃねぇの? 某ゲームみたいに微ダメージ継続で良かったんじゃ?」

「これから神に謁見し、選ばれし術師になろうとするモノが、そんな初歩的なミスをするぐらいなら死んでしまえという事です」

 中々シビアである。
 シビアすぎるゲームは総じてクソゲーと判定されるが、フルダイブVRである強みなのか、一切の変更はないらしい。

「それじゃあ騎獣を召喚して安全地帯に急ごう!」

 アラレちゃんは終始テンションがヤバすぎるぐらいに高い。
 彼女自体も作家としてVRモノを書いた事があるぐらいだし、きっと夢が叶ったような気分なのだろう。

「召喚獣は鳳凰、応竜、麒麟、霊亀の四種であり、それぞれにメリットデメリットがあります。鳳凰は最速でありますが、空を飛ぶのです狙い撃ちされたら詰みます。応竜は速く強く最強でありますが、目立つので四方八方の多数のパーティから狙い撃ちされたら詰みます。麒麟は速度としては三番目でありますが、森のショートカットなどができるので、作中最も重宝される騎獣ですが、騎乗中は呪符の一切の使用が不可能となるので、狙われてしまえばノーガードで詰みます。霊亀は移動速度こそ遅いですが、時間内は龍符以外の攻撃は全て無効とし、中から無双で攻撃できるので、戦車的な役割ですが、召喚時間が短いので消えると同時に狙い撃ちされると詰みます」

「全部狙われたら詰むじゃねぇか」

「そういうゲームですので」

 召喚に必要な詠唱時間も上記の順のようなので、急いでいる俺たちは麒麟の召喚を行なって、森を突っ切ってのショートカットを利用して安全地帯へ急ぐ。

 しかし当然、他のプレイヤーも安全地帯に集まっているわけで、一足遅れた俺たちは、森をでると同時に爆炎と共に弾き飛ばされて即死した。

「町の方角からのプレイヤーを待ち伏せする検問と言ったプレイングですね。物資を効率よく集める為に、町で散々蓄えたプレイヤーから回収する攻略法です」

「なるほどね。これで俺たちが走り回って回収した呪符はこいつらに盗まれちゃうわけだ。つか、サービス開始直後なのに、奴ら強すぎないかい?」

「そして倒した相手の呪力も奪えます。強すぎるから否かについてはゲーマーとは総じてそのような存在ですと申し上げる他ありません」

 気がつけば、再び畳の間にいたが、少し違うのはパーティメンバーもそこに揃っていた事だ。
 アラレちゃんは体育すわりで落ち込んでいるし、アレックスは四つん這いで畳をガンガンと殴っている。
 パラ子は困ったように眉尻を垂らして、禁断の一言を放つ。

「もう一回やりませんか?」

 こうして俺たちはバトロワ系の泥沼にハマっていく事となる。


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