俺、元日本人のガチ神だけどY◯uTuberになるね!

慈桜

第62話



 ボビー・クニオ前大統領の活躍もあって、早々に日本パラオ間のBAT開通が決定した。

「ほら、蒼月そうげつ子供達を連れてご飯を食べにお行き」

「ガウッ!!」

 月読が青い竜の首筋を優しく撫でると、唸り声のような鳴き声をあげて、中型犬程度の亜竜達に集合をかける。

「いいねぇ、パパしてるねぇ」

「島の子供達だけでは手に余る存在だからね」

 尻尾が生え変わった青い竜が、小さなワイバーン達を引き連れて太平洋の彼方へ飛んで行く。
 これは竜達のお食事タイムである。
 竜とワイバーンの世話は全面的に月読に任せてしまっているので、俺たちは既にパラオに用事などないのだが、日本は血生臭いニュースばかりで嫌な気持ちになるから、相変わらず南国でグダグダしている。

「はいネモさん。ココナッツミルクだよ」

「おー、サンキューキンタロー」

 アラレちゃんは南国に飽きちゃったらしく、クーラーガンガンのホテルの部屋でカタカタと執筆活動、アレックスは地元住民に聞き取り調査、ナナオと玉ちゃんは仲間に呼び出されて名古屋に帰って行った。

 二週間近く過ごせば飽きるのも仕方ない。

「いやぁ、ネモさん。本当にありがとうございます。これでパラオは産ませ為替でみせます」

「生まれ変わる、ね」

 何はともあれ、これまで再利用が難しかったペットボトルが100%再利用できるんだから経済効果が半端ないってのは間違いない。

 後はノリでドイツ人集めちゃえばって言ったら、国内で外来種ガーってみんなが騒ぎ出しちゃったのをどうするかだな。

「スマホ鳴ってますよ」

「ん? あ、山野さんから着信だ」

 山野さんはアレ以来も普通にアニメスタジオで働いてくれてるんだけど、俺が営業に行ってないからブチギレているらしくて、毎日着信を入れてくるんだけど、とりあえずブチってます。
 最初の3日ぐらいは良かったけど、マジで面倒になってきたから、留守電にゴーでござる。

 ピー『また留守電か。お前がそんなにサボりたいのならこちらにも考えがある』

 ピー『過去の名作を現代作画にリメイクしまくってやるからな!』

 ピー『どうだ? 恐ろしいだろう。古き良きを汚してやる』

 ピー『声優もこちらで勝手にオファーしてしまうからな』

 やばい。ブチるって決めてるのに次掛かってきたら出ちゃいそうな気分だ。
 でも負けない、俺の鋼の意思はこんな事では揺らがない。

 ピー『いいんだな? ジャン◯作品の時間稼ぎの間延びも全て排除し、劇場版のクオリティで仕上げて本家を超えてやるからな。効果音静止画15秒とか絶対無しだ「もしもし? ごめんごめん。携帯落としちゃっててさ、やっと見つかったんだわ、コレが」クソが。お前の行動など手に取るようにわかりやすい!』

「いやぁ、本当ごめんね。パラオにもBAT開通決定したから、それが済んだら日本に戻る予定なんだよ。だから声優に関してはちょっと話し合いたいなぁ『黙れ。お前は指を咥えて見ていればいい。それが嫌なら働け。ちゃんと仕事を持ってこい』…………」

 ガチャっと切られちゃいました。
 だから仕事に関してはパラ子に丸投げだと何度言えばいいのだろうか。
 韓国とフィリピンの一件のお陰で外注が中国以外の分はウチに集中してるから、それなりに忙しい筈なのに、なんでこんなに仕事に飢えてるんだろう?

 確かに日本中から優秀な人材掻き集めてハイヒューマン化、絵描きの才能マックスのロリエルフとパラ子アンドロイドで打線組んでるから無敵なのはわかるけど、もっとまったり仕事しろください。

 でもリメイクはいいよな。
 昔の絵も味があって好きなんだけど、やっぱり現代風に洗練された物も見てみたい気もする。
 そして昔のアニメの熱さってのも、もっと知れ渡って欲しいし、作画のせいで忌避感のある作品も数多く存在している以上はリメイクにも意義がある。

「どうせなら映画作ればいいのに」

「どうしました? 映画ですか? 映画はいいですよねぇ。私は太平洋の翼とかが好きですねぇ」

「しらねぇよ、なんだよそれ」

 スタジオの代表作みたいなアニメがあれば、今後も仕事がしやすくなると思うんだよな。
 あんな凄いアニメが作れるのに、下請けで動画もやってくれるなんて! 的な。

「昭和の銀幕見てないのです? 凄く面白いよ。ミフネさんかっこいいよです」

「なんでお前がそんなの見てるかの方が気になって話が全く入ってこない」

 あぁ……最近、南国で遊んでる動画しか撮ってない。
 パラ子が日本国内のパチンコ屋の跡地にフルダイブVRのギアを設置したりと色々急ピッチで準備を進めてくれてるみたいだから、それが落ち着いたらゲーム実況でもしようかな。

 アラレちゃんのコス友とかも呼ばせて萌え声配信とかしたら新規のファン開拓できそうな気がする。

「おーいツクっちー、レビテーションループ浮かべていくからコースチェックしてみてよ」

「ヤタ……あくまでも君と僕は五分だよね? なんで雑用ばかりやらせようとするのかな?」

「俺だるがりなんだよねぇ。嫌なら天照呼ぶけd「わかった。竜に化身して実際に走行した場合も兼ねての確認もしておこう」うん、ありがとう」

 なんかね、昔々に口からどんな食べ物でも出せるびっくり箱みたいな神がいたらしいんだけど、口から出した物を食えと差し出されて月読がブチギレて斬り殺しちゃったらしく、それが実は天照の友達で……的なドロドロの展開になって以来、彼らは超絶仲が悪いらしい。

 月読はもうお前の前には現れないよと拗ねて、天照はいつまでもおこている、私はおこている! 状態らしく、何も好転せずままに今日に至るとかなんとか。

 太陽神と月神だから仲が良くても困るけど、どっちもどっちな話だと思うのは俺だけかな?
 結果として天照の名前を出せば何でもやってくれるから、俺としては兄弟喧嘩に感謝しかないけどね。

 神力で竜の姿を象った月読が宙に浮かぶ輪っかを次々と潜り抜けて行く姿を見ながらにココナッツミルクで喉を潤す。まさに至福の一時である。

「ふぅ……直線から一つ目のカーブはもっと緩やかな方がいいね。あそこで大減速してしまうからスリルがなくなる。でも第三コーナーからの急降下からのヘアピンは良く出来てる。ブレーキが出来なければ海にドボンだから、度胸が試される場面でもある」

「了解。じゃあ、それを踏まえた上で、月読プロデュースでコース一つ作ってみよう。俺は第一コーナーを直すから」

「……はぁ、それが狙いか。でもいいよ、これは面白いからね」

 ワイバーンレースも月読とクニオに任せておけば問題ないな。

 後はパラオのBATの販売品だな。
 翻訳飴はいつも通りだけど、治安はそんなに悪くないから武装は必要ない。
 水中で呼吸ができる飴……いや、これは時間限定にしよう。
 ミントタブレットを舌の下に入れておけば、1時間は水中で自由に行動できる。お値段なんと一粒五百円! 爆売れの予感しかない。

 地元のダイビングショップにも卸してあげよう。
 これが原因で潰れたりしたら困るしな。

「うーん、こんなもんかな」

 アラレちゃんはワイバーンレースだけで大丈夫って言ってたけど、これでイケるかな? 石油、樹脂のリサイクルとワイバーンレース、それと水の中で呼吸できる不思議なタブレットだけで、旅行先に選ぶかな……やっぱり日本でカジノが開けなくなるぐらいに大規模なギャンブルのメッカにすべきでは?

「じゅうぶんですよ。竜の迫力と速さを一目見れば、みんな淫行間違いないです」

「淫行? ちょっと何が言いたかったのかすらわからない」

「む? エキサイティングです! 肛門! そうです肛門ですね!」

「あ、うん。肛門ね。みんな肛門間違いなし」

 興奮だけどな。もう直してやんない。
 こんなのが始まりでブラジャーが乳バンドになったりしたのかな。

「無理して日本語使わなくていいよ。二週間過ごしてみて分かったけど、お年寄りとか、クニオとかキンタロウみたいな体に流れる日本の血や、由来する名前が自己証明の一部になっている奴がいるのもわかったけど、若者達はビジネス親日で内心日本人嫌ってるじゃん? だから、どうせなら、ちゃんと日本人と仲良くなれるようにしてやりたいなんて思ってたりするんだ」

「ノォー。ビジネス親日、確かに完全には否定しないね。メリケンの暫定統治時代の反日教育と、パラオに移住した朝鮮人達の反日活動で、戦争直接関係ない若者達には日本嫌いな奴もいるよ。でもネモさんのお陰でみんな目が覚めたよ。パラオには月読様がいた! それを知れて、若者達反省して祈ってるね」

 パラオ語になると途端に独特な口調になるな。いや、日本語の時でも独特か。いいや、気にしないでおこう。

「どちらかと言えば、君に対する恐怖で祈ってる感じだけどね」

 蒼月が帰ってくると、ワイバーン達は一回り成長しているのが面白い?
 どれだけのペットボトルを食べているのかはわからないが、凄まじい成長速度である。

「グエェェェ!!」

「おー、よしよし。じゃあ子供達、ワイバーンをトイレに連れて行っておいで。蒼月はこっちね」

 月読が青い竜を撫でながらに謎のウインクを飛ばしてくるのでシカト。
 どうやらサクッと新コースを作ったから、次は蒼月に走らせるみたいだな。

「まぁ、恐怖ごときで改宗とか安くて結構な話だけどな」

「君らしい発言だよ。畏れが重要なのは否定しないけどね」

「はは、違いない。てかクニオ、別にビジネス親日でも構わないんだよ。それはビジネスなんだから誰もがそうするだろうよ。俺が言ってるのはそうじゃなくて、親日とか反日とかじゃなくて、日本人とパラオ人が一人間として友達になって仲良くなれるようにしたいって話」

 その為にも沢山の日本人が旅行に来て貰いたいんだけど、ワイバーンレースだけじゃ弱いんじゃないかってのが、この話し合いの核の部分。

 物は試しに日本、台湾、インドネシアとこれから開通予定のフィリピンからも観光客は訪れるだろうとは思うけど、リピーターになるかどうかが重要であって、一度目の集客で喜んでいても仕方がない。

 そうなってくるとやっぱり食だよな……。
 滋賀に赤目ハタのおかげで世界中から人が集まりまくってるのは周知の通りで、やっぱり【食】ってのはかなりデカイと思う。

 そこでしか食べられない最高の味。

 感性に訴えかけるよりも胃袋を掴んでしまう方が話が早いのは間違いない。

 てなわけで、異世界の高級チキンである翡翠鶏をリリースしてやろうかと思う。
 見た目は鶏だけど、そのトサカが翡翠のように美しい謎鶏だが、その肉の味は極上の一言に尽きる。

 ぶりんぶりんのじゅるんじゅるんである。
 本来飼育には小魚の粉末などが好ましいのだが、海水や葉っぱなどで生活できるようにしておけば、なんら迷惑にはならないだろう。

 特殊効果に空きスペースがあるから、美肌効果でもいれておこうか。
 コラーゲンならぬ魔改造であるが、これでマダムにも人気になる事間違いないだろう。

「わ、わわわ。なんですか? なんですかこの鶏は」

「翡翠鶏っていう鶏だ。その肉は極上の味わいで、更には美肌効果もある。海水や葉っぱなんかで生きていけるようにしてるから、繁殖させて特産にするといい」

 繁殖力も強いから野生で放置しとくだけでいいんだが、乱獲して絶滅なんてのもつまらんから一応注意しておこう。

「あぁ、ありがたやありがたや」

「これでなんとかやってみてよ。駄目そうなら別の方法も考えるし」

 魔法陣から翡翠鶏さん行ってこいしまくっても、天照や月読から貰った神力が余りまくってるから、何のダメージもない。
 新しい生命の創造に月読が頭を抱えてるけど、一応五分の盃交わしちゃってるから諦めの境地だよね。

「私は良くても他の者達はうるさく言ってくるはずだからね。十分気をつけた方がいい」

「わかってんよ。ツクッちに関してはパラオだったから無茶しただけであって、本土で高天原に喧嘩売るような事はしたくないからね」

 俺は普通に好き勝手にユーチューバーしたいだけだからね、何度も言うようだけど。

「ふぁぁ……ヤタさん担当に呼び出されたから日本に送って欲しい……」

 って、そんなタイミングでアラレちゃんが眠たそうに登場したので、姫のご下命の通りに日本に帰りたいと思います。

「主よ! ご覧下さい!! 量産型エヴァみたいな生物を見つけましたぞ!」

「それオキゴンドウってやつだから! かわいそうな事しないで逃してあげてくれください!!」

 探検してきますだの、住民に聞き取り調査をしてきますだの言っておいてクジラ? デカめのイルカ抱っこして帰ってくるとか頭おかしい。

「む? 日本ではこれらを美味しく頂くのではないのですかな?」

「やめろぉ! なんか色んな団体わいててくるからやめろぉ!」

 オキゴンドウさんは、無傷で優しく逃してあげましたのでご心配なく。
 アレックスの奴め、海の哺乳類を捕まえるのにハマってやがるな……。
 次はツッコマずに無視してやる。

「ネモ様……あの……」

 そんなタイミングでワイバーンの騎手にするべく卵を強引に預けて面倒を見させてる色黒のクセ毛アフロのチミっ子が声をかけてくる。

「お前は確か……なんだっけ?」

「マルタです。あの、ワイバーン達が卵を産んだんですけど……」

「ん? うん。ワイバーンって鶏と同じで玉紐があるから定期的に産むよ?」

「え、でも、まだちっちゃいのに」

 少年は何が言いたいのだろうか?
 小さな体でも体内で卵が形成されたら排出するしかない。
 動物としての摂理であるし、既に大型犬より大きいぐらいなんだから卵ぐらいは産むと思うんだが。

「食えるかどうかの話か? 勿論食えるぞ。むしろご馳走の類だ」

「あいや、赤ちゃんは産まれないんですか? 島のみんなもワイバーンを育てたがってるから、その……」

「あぁ、そんなのも教えてなかったな。じゃあちょっと案内しろ」

 単純にワイバーンの卵やるから育てろとしか言ってなかったので、交配の方法なんかを教えるのを忘れていた。

 この少年マルタの家に行くと、黒い鱗のワイバーンが自分の卵の周りを興味深そうにクルクルと回っているので、まずは卵を預けるように頼ませる。

「コクリュウ、僕に卵を預けてくれないかい?」

 するとワイバーンは首を傾げながらにクルルと喉を鳴らして、卵から一歩二歩と距離を置く。
 マルタとコクリュウの間にパスが繋がっているからこそ、安心して預けてくれるのだ。

「後はオスの所に持って行って、飼い主に命令させるだけだ、ほらあの赤い奴でいいだろう」

「コシバ! セキレイにこの卵に命を吹きこめって言ってくれ!」

 後は股に挟んで、なんかをしたら完了である。
 そう、交尾をしないのだ。
 まさかのぶっかけ仕様である。

 何故こんな人間本意の交配方法にしたかというと、亜竜とは言え竜種の端くれであるワイバーンは、ただでも強い類の生物であるので、そのまま奴等の意思に任せていたら、いつまで経っても交尾などしないからである。

 強者であるが故に生存本能が鈍いので、パスを繋いだ人間の意思に任せるように設定し直したのだ。

「これで一肌で温めてたら2、3日で孵るよ」

「ありがとうございます! これで仲間達にも竜が渡ります!」

「あんま調子乗って増やし過ぎんなよ」

 今は全然足りないけど、毎日増やしまくったら手がつけられなくなるから、その辺のバランスはよくよく考えて欲しいものだ。

 後は本当にワイバーンのレースなんかで人が集められるかどうかって所だけど、こればっかりはやってみないことにはわからないな。

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