俺、元日本人のガチ神だけどY◯uTuberになるね!

慈桜

第58話



「うおわぁー!! ヤタさん見て見て! 凄く綺麗だよ!!」

 おっぱい大きくて腰細くてお尻がプリっとしてるから、水着が似合うのは当然だと思う。

「でもアラレちゃん。なんでスク水なの?」

「え? コスなら恥ずかしくないからだよ? 」

 なんか枝垂ほた◯さん的なコスプレだったのに、白シャツとハイウエストのスカートとタイツをパージしたと思ったら、紫ボブのヅラ装着のままスク水になって走り回ってるんですけど、あの人。

 アラレちゃんって基本紫系のヅラが似合うんだよな。

「やたひゃん、うまひぼー食べりゅ?」

「あ、たこやき味がいい」

「ひょっひょ、まっへね!」

「おい乳から出すな!」

 日頃モヤシのような生活をしているから南国の太陽に焼かれて天元突破のナチュラルハイに突入してしまったようだな。

「いぃぃやっほぉぉおい!!」

「あ! てめぇ、待てこら!!」

 そして何故かナナオと玉ちゃんも付いてきてしまった。
 飛行バイクで海面に水飛沫をあげながらに玉ちゃんの車に水をかけまくっているのは無視。

 こいつらも来るなら滋賀の連中も連れてこようかと思ったが、全身もげる程忙しいから無理と断られてしまった。

 琵琶湖には世界中から赤目ハタを求めて人がやって来るらしいから納得だけども。

「イラッシャーイ!」

 てなわけで到着しました、パラオの人口の7割が集中してるコロール島とやらにネモ降臨。
 ここはお土産屋さんかな?

 最近動画もロクなの投下してないし、二週間ぐらい動画更新もしてないし、そろそろ真面目にユーチューバーしなきゃだな。

 一応アレックスがつきっきりで撮影してくれてるんだけど、コレと言ってネタも無いし、一般投稿の戦場の動画ばっかり再生回数稼ぐから放置気味だったんだ。

「ユーアーメリケン?」

「ノー。でも、こいつはメリケン」

 面倒なやり取りはアレックスに丸投げだ。こら、アラレちゃん、ココナッツオイル爆買いしないで。絶対いらないでしょ。

「どうも、こんにちわ。私はアメリカ人ですが、彼らと共に日本からやってきています」

「おお! パラオ語上手ですね! しかも日本!! 日本からなら歓迎です! 他のビジネス愛日のパラオ人とは違いますよ! 私の祖母はペリリュー島の出身です! ナカガワ! ナカガワタイサの話知ってます! 私はキンタロウ! キンタロウです!」

 なんてキンタロウとアレックスの会話を聞いてしまえば、見た目はクソ外人の俺でも愛国心が爆発してくる。

「よし、アラレちゃん、店の商品全部買おう。全部だ」

「え、やった。あの仮面もいいの? あの変な仮面」

「あぁ、勿論だとも」

 パラオでは普通にUSドルが使われているから、アレックスのアジトから適当にレンガの百ドル札をバックパックに詰め込んで来た。

「全部? リアリー? ノット安くないよ! パラオは普通に物価高いよ?」

「いいから全部だ! 」

 小さい土産屋だから楽勝かと思ったけど、2万4000ドルって……。
 全然足りたけど、小さい店の商品全部で大方240万円ってはっちゃけすぎだろ。

 サンゴのアクセサリーとか山盛りあったけど、南国以外で需要ねぇよ。
 お土産でもらったら鍵掛けの肥やしになるやつだよ。
 ハワイのキーホルダーと小樽水族館のイルカのアクセサリーと時代村の木刀ぐらい需要ない。
 貰って困るやつ! 配るけどね!

「ヤタさんが大体何考えてるかわかる」

「うん。でも、このマグカップとかはいいかもね」

「ほんとだね。ハートついてるし」

 ぶっちゃけやってしまった感が凄いけど、アメリカドルなんて腐る程あるから気にしない。

「このメインストリート沿いの空き地の持ち主とかって誰になるかわかる?」

「ワオ! あなたもパラオ語喋れるんですね。下手くそな英語で話してたのが恥ずかしい」

「旅行に行くのでテンション上がって勉強したんですよぉ。はは」

 嘘だがな。俺は元々話せるし、他のみんなには翻訳飴を食わせてるだけの話だが、パラオ愛してるぜオーラ全開の放出系で行く。

「キンタロウ感激です。ならば私が是非にも長の所に案内しますよ」

「ネモ嬉しいです。じゃあお願いします」

 ちょっと日本人的な特徴もありつつ、ふっくらファットなおデブちゃんのキンタロウに案内されたのは、普通に馬鹿でかい屋敷だ。
 長の所に案内するなんて言われたら村長さん的な土人のジジイが出てくるのかと思ったのに、ビシッとスーツを着込んだ凄く偉い人っぽいおじいちゃんが出てきた。

「うぉぉぉおおお!! ウェルカムネモォォォオオオ!!」

「お、おう」

 なんだこいつすげぇハグしてくる。
 なんでココナッツミルクの匂いするんだろ。加齢臭仕事しろ。

「申し訳ない。私はボビー・クニオ。パラオの前代表と言えば分かりやすいかな? 」

「あ、前の大統領ね。つか日本語めちゃくちゃうまいな」

「当たり前だよ!私はヤマトジンだからね!ははは!恥ずかしいけど元ダイトウリョウ! 全然〝大〟じゃないのだけどね。ああっ! 私とした事がこんな所で立ちんぼ話だなんて! ささ、入って下さい! まだまだスコールも降るですから」

 立ちんぼ? 太平洋諸島人って感じのおじいさんに屋敷の中に案内されると、即座に冷たい飲み物が用意される。

 空調もバッチリでWi-Fiすら完備してるし、洋館なのに小上がりに掛け軸とかあって、なんか笑えてくる。

 しかもアマテラスのスクリーンショットを拡大コピーして壁にかざってるんだけど……あのチビ呼んだ方がいい?

「今の大統領はドラゴンマネー中国資金やキムチマネーにやられて、慰安婦の碑文なんかを受け入れてしまってるけど、あいつらはパラオを何もわかってない。天照大神様のご友人でかまらネモ様には本当に申し訳が立たないよ」

「でかまら? いや、俺日本贔屓だけど、日本の神じゃないから、そんなに畏まらないで。さっきまでのフランクな感じの方がやりやすい」

「本当? 敬語になると私も日本語が土壇場に怪しくなってしまうから助かるよ。今回は観光で来てくれたのかい?」

 そこは途端に、が正解だよね。
 おい、それよりでかまらってなんだ。
 である、とか、であられるとかの間違いかな?

「バカンスがてらにBATのターミナルタワーを建てたいんだ。それで土地を購入しようかなって思ってね!」

「オーイエス!! イエスイエスイエス!! なんて蟯虫なんだ! 建ててください! 是非に! 何処にカマ掘るでもカマ居ません!」

「僥倖と構いません、ね。構えるのでも構わないかな? うん。いや、ごめん、ちょっと待って」

 やべぇ、こいつおもしれぇ。
 めっちゃ日本語上手いけど所々おかしい。ダメだツボる。アラレちゃんやめろ、俯きながら笑い耐えて涙流すな。
 助けて! 誰か校閲してあげて!

「ネモ、私はいつも貴方のようつべ見てるよ。BAT、パラオにこそ必要だと思っていたんだよ。日本が好きなネモなら、パラオに気付いてくれる、とね。でも来なかった。だから今のダイトウリョウ呼び出して怒ったよ。それはとてもとてもね」

 いや、微塵にも考えてなかったよ。とは言わないでおこう。
 だって人口2万の小さな島だよ? 群馬県の吉岡町と一緒だよ? って言われても知らないでしょ。
 それと一緒で、ぶっちゃけ世界一の親日国と言われても、何処にあるのかすらわからないって状態だった。

 だが私はやってきた!

 全てはチャラだ!

 予備知識もガッツリ蓄えて、パラオラバーとして降臨したのであーる。
 ニワカだけどね。

「じゃあ話詰めるけどパラオにも日本からの直通BATを通そうと思ってる。お互いの国を1万円で往復できるから、経済効果はかなりあると思うけど、条件がある」

「チャイニーズの観光客、ですね」

「そう。俺としては別に中国人がイヤって訳じゃないけど、中国人の存在しない南国リゾートは観光資源のないパラオでの売りとして、かなりの強みになる。世界で唯一中国人のいない観光地として立ってくれれば、俺はパラオを全面的にバックアップする用意がある」

 実際世界人口の五人に一人は中国人の現状で、旅客の完全遮断などまるで現実味がないんだが、これはある種の試験的な提案だ。

 大金を落としてくれるので有り難いが存在ではあるが、民度の低さが問題視されている中国人観光客。彼らが一切存在しないチャイナゼロの観光地は日本の需要だけでなく、世界各国からも需要があるのじゃないかと俺は邪推する。

「やらいでか! やりましょう! 中国人観光客は一切シャットダウンしてみます!!」

 はっきり言ってしまえば、高級ブランド店があるショッピング街なんかであればウェルカムだが、こんな南の島……って、あれ? この人いま後先考えずに返事した?

「いやいや、時間はたっぷりあるから、とりあえずゆっくり考えてくださいよ」

「勿論パラオの伝統として、皆での会議は開く。だが、私が是非にも説得してみせよう! 善は石鯛です! 早速招集だ」

 善は石鯛とかあかん、ここまで来たら普通に悪意感じる。誰だよ、こんな日本語教えた奴。
 至極真面目な表情で、善は石鯛です!キリッ とか冷静に頷くのですらムズいわ。

「じゃあターミナルタワーは建てておくから、準備が整ったらパラドックスに伝えて下さい。中国人観光客のシャットアウトにも一役買ってくれますから」

 一番手っ取り早いのはBATのみの受け入れにして、環太平洋大西洋で繋がれるようになる未来を見越してくれる事だけど、そこまでは言わないでおこう。多分会議でパラドックスが進言してくれるだろう。

 後は物理的な観光資源を作るぐらいか。

「ヤタさん、なんか難しい顔してるね」

「うーん、なんか観光資源を作ってやろうかと思ってるんだ。中国人がいない南国リゾートってだけでも強いけど、もっとパンチが欲しい」

「ふーん。水の中で普通に過ごせるようにしちゃうとか?」

「お、いいねぇ。ダイビングが盛んだから、それはポイント高い」

 それでも、足りない。
 つまらない、って言うか、つまりきってない。

 週末は南国でまったり過ごそう、見渡す限りの青い海を眺めながらコンドミニアムのプールでトロピカーナ! なんてのも最高ではあるけど、まだ足りない気がする。

 誰もが絶対に行きたいって思うような観光資源が必要だ。
 全てに於いてのオンリーワンの追求、ここにしかない美しい海とプラスワン。
 天空の城? 竜宮城? いやいや、城縛りの必要なんてない。
 眺めは既に最高、ドープではあるが日本軍のパラオ玉砕の戦跡も歴史情緒あるし史跡として申し分ない。
 後はクリティカルに突き刺さる何か……。

「あぁ! もう考えるのめんどくせぇ!
 いいや、ギャンブルのメッカにしちゃおう。ワイバーンレースとかウィザードボールとか異世界ならではのゲームと世界中のギャンブルを詰め込んだ一大アミューズメントをかましちゃおう」

「えぇ……それは流石に景観ぶち壊しだよ」

「ならば空島にしてしまおう! 空に浮かべてしまえば邪魔になるまい!」

「絶対邪魔でしょ。それで珊瑚とか駄目になったらどうすんのさ」

 むむむ……いい案だと思ったんだが、どうやら駄目なようである。
 何もないならカジノだろ常考ってノリだったんだがな……。

「それに感覚がまた麻痺してるよヤタさん。ワイバーンだけでもみんな絶対見たいはずだよ? 日本の離島でもネコやウサギだけで海外から沢山の人が来たりするんだから、人懐っこいワイバーンがいるだけでもすごいよ。それこそ前に言ってたグリフォンとかでもさ」

「なるほど……ワイバーンレース発祥の地とするのも悪くないな。レビテーションループがあればレースが出来るから環境にもいいし、餌として島に豚を放つのもアリだ。いや、むしろ日本国内の飲食店から廃棄食品を買い取って餌として与えるのも、いやダメだな。コストがかかりすぎる……。しかし、そうなれば竜騎士が必要か「おーい!」ならば学校で竜騎士の育成過程も増やすべきだな。全国で募集をかけてみるのもありか「こりゃあ!」お? おおお? すまん、どうした?」

「どうしたもこうもないよ! いきなり早口でピャーって喋り出したんだよ? 壊れたのかと思ったよ!」

「わしゃビデオデッキか」

 ビデオ? ってなってますね、ごめんなさい。ビデ男? 男なのにビデする的な? 裏筋二丁目ですね、わかります。違います? すいません。

「よし決めた! パラオにはワイバーンレース発祥の地になってもらおう!」

 異論は認めません。
 南国での過ごし方はこれで決定だ。

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