俺、元日本人のガチ神だけどY◯uTuberになるね!

慈桜

第56話



 で、泥沼の戦争編続くと思うじゃん?
 完全スルーするのが俺だよね。
 散々引きを入れて、肝心な部分はスルーだよね。

 ブン太のフィリピン革命とか韓国戦争とか見たい?
 知らないよ、俺ユーチューバーだもん。

 できれば北朝鮮がテロを起こす寸前で教えて欲しかったけど、もう過ぎた事を嘆いても仕方ないので、俺の中では無かったことにします。

 ナナオに再生回数負けてもいいよ。
 どうせアイツは収益のほとんど学校に寄付するんだし。

「お前は何をしていたぁ!!」

「ふぇー! ごめんなさいごめんなさい!!」

 そして俺は山野さんに胸ぐらを掴まれてますなう。
 山野さんってアレね、アニメスタジオ任せてる人ね。

 スタジオだけ完成させて、パラ子アンドロイドと技能付与したエルフの幼子を大量に放置したままブッチしてたんだけど、久々に顔だしたらブチギレられたよね。

「託児所か!! お前はアニメスタジオを託児所だと思っているのか!!」

「えぇ、でもあの子達仕事できるでしょ?」

「仕事できるできないの話じゃない! 何故子供にした! 別に大人でもいいだろうが!!」

「あぁ、その日は確かうさぎドロッ◯の再放送があって」

「ダイキチぃぃぃいい!!」

 殴られました。甘んじて受けますって痛い?! なんで痛い!?

「これぐらいで勘弁しといてやる。さっさと皆を改造しろ。技能付与とやらをするんだ! ハリー! ライナウ!」

「い、イエスマム!!」

 言われるがままにスタッフ達をハイヒューマンに構成を変換して、軽いカウンセリングまがいな事をしてみたりするけど、仕事が少なくてエルフの子供達と遊んでるだけだから申し訳ないぐらいだと皆が口を揃えて言っている。

 我、山野を殺す武器を得たり!

「ふあっはっはっ! この眼鏡喪女が!! 散々な言い方をしておいて仕事が無いんじゃないか! 託児所? はぁ? 仕事が無いなら遊ぶしかないもんなぁゴフレスッ」

 こいつ……オフィスで全力でドロップキックしやがった。
 てかなんで? なんでこいつこんな強いの? 普通に痛いんだけど。

「お前がボスなら営業してこいオラァ!!」

「ブ、ブヒー! ブヒィィ!!」

「ケツ蹴られて喜んでんじゃねぇぞブタァ!!」

 そして窓から捨てられました。酷い。
 営業って言ったってパラ子が各アニメーションスタジオに打診して、動画作業とか受注してるんだから……って、動画作業なんてアンドロイドだけで出来ちゃうのか……。

『初仕事で気合を入れ過ぎて某宮崎レベルに仕上げたら警戒されました』

「某宮崎って隠せてないからね? それランキング上位作品とかならフルボッコにされるからね?」

『風の谷でナニシタ』

「痴女のファッキュー便」

『やめておきましょう。誰も得しません』

「知ってた」

 さて、気をとりなおして別のことをしよう。山野さんが怖すぎるからスタジオには暫く近づかない。
 敢えてココでアラレちゃんブレイクもアリだけど、昨日遅くまで執筆してたから寝てるだろうし却下。

「てか、パラ子さんさぁ、よくよく考えたらお前の営業努力が足りねぇから俺が山野さんに怒られたんだよねぇ?」
『それは語弊があります。職人達は前回の仕事でAIに仕事を盗られると勘違いしてしまったので、早急に営業課を設立し、フミタという男を筆頭に現在仕事を掻き集めております。過酷なスケジュールで真っ白に燃え尽きるほどにアポ取りをしているぐらいです』

「それはもうフミタンじゃない?」
『いい加減怒られますよ?』

 まぁ、仕事に困ることがないなら、それでいいや。

 でもって仕事の話ってなってくると、今更思い出したけど優先順位が高いのが、空転企業と失業者ね。
 動画ネタとしては弱いかもしれないけど、朝鮮関連の人材を全て半島に飛ばしたら、かなり雇用が失われてしまった現実に直面してる。

 単純にパチンコだけでも12万人だ。
 不動産、スポーツジム、ゲームセンター、ボウリング、宿泊施設、風俗、アダルト関連、消費者金融、人材派遣、建設業、飲食店etc……ざっと浮かぶだけでこんなに、全部言い出したらキリが無いぐらいに全業種に手を出してる。

 とりあえず役員挿げ替えで直ぐに稼動できる業種はそのまま続行でオッケーなんだけど、パチンコ関連で職を失った奴らが多過ぎるのが問題だ。

 元々26万人いて、神風が吹いたのか、誰かが社畜の如く徹夜で輸送したのかはよくわからないけど、残されるは12万人、大半が派遣の従業員であって、親会社諸共お疲れちゃんして路頭に迷ったタイプで心底扱いに困る。

 とりあえずパチンコ屋の改造でもしに行きますかぁと歩き出すと、やたらと見覚えのある赤いドレスの少女が、キランと目にピースを当てながらに通行人と写真を撮っているのだが……これはスルーした方がいいのか?

 ハッシュタグ神のいる生活も、かなり慣れてきた日本ではあるが、俺みたいな無名のぽっと出がそこら辺にいるのはいいにしても、あいつぐらい有名な神が街中で一般人と写真撮ってるのってどうなんだろ。

 まぁ、いいや、無視しよう。

「待たんかーい!」

 ダメか、強制アマテラス回なのか。
 国とか無視して一か八かの勝負でカジノ設置してやろうかとか色々考えてたのにアマテラスか。
 つか、こいつ何なの? やたら降りてくるじゃん。

「えぇい! うるさいわい! もっと心を鎮めておけ! 今回は他でも無く警告しにきてやったのだぞ! 少しは感謝せぇ」

「あぁ、成る程ね。流石に他の神も怒ってる感じ?」

「いや、うむ……まぁのう……いや、何を考えているかまではわからんが、悪ガキどもが帰っておらぬでの。もしや、なんぞあっては困るから伝えに来たのだ」

「うん全然わかんない。意味が伝達してこない」

「む、知っておるぞ。ちっくたっくであろ? さっき少女にやらされた」

 惜しい、ティックトッ◯だ。
 でもちっくたっくって可愛いな。
 コイツが実はシャレにならないぐらい強くて怖い神とかじゃなかったら髪の毛わしゃわしゃしてやるんだけどな。
 それもゴールデンレトリバーわしゃるぐらいにわしゃわしゃと。

「や、やめい! 雑! 雑に撫でるでない!!」

「はっ! 俺とした事がアマテラス様になんて事を……」

「ええ加減おちょくっとるのもわかっとるんだぞ! や、やめい!膝に乗せるな! 子供ではないぞ!」

 だって面白いんだもん。
 けど他の神かぁ、面倒だなぁ。
 もう、トコトン弄っちゃったし放っといてくれたら嬉しいんだけども。

「まぁ、警戒だけしておくよ。ヒーちゃんもそろそろ帰れよ。ウズメ様に怒られるぞ」

「む? ウズメは汝のところにきておらなんだか? 余に悪影響であるから、しばらく監視すると行って降りたんだがの?」

「……うーん。なんか一人だけ心当たりって言うか、もしかしてそうじゃないかなって人はいるけど、人のフリしてるから放置してる」

「ほうか。まぁ、あやつめも日頃は口煩いが、休日なんぞは【あにめ】や【らのべ】なんぞに興じてゴロゴロしおる干物であるからな。汝もは気が合うやもしれんぞ」

 あぁ……うん。でも敢えて触れないよ。ずっとおかしいと思ってたし、さっき殴られた時めちゃくちゃ痛かったし、あーね! って思ってたけど、実際ウチの会社の、あの部門に関しては代表的な立ち位置だし、貴重な人材、いや、神材なんで、しばらく気がつかないフリしときます。

「ただウーちゃんは何でも完璧にやり遂げねば気が済まぬ性質でな、もしやしたら寄り道をして熱を入れあげてしもたのやもしれんな。お陰で好き勝手に遊びに行けるから万々ざ……」

「おいお前。営業に行ってこいと言ったのに、何故お前は少女を膝に置いてホッコリしているんだ?」

 人の噂したら本人が来ちゃうったがちなんだな。いや、たしかに近所だけど。

「い、いや、丁度昼時だし、休憩しようかなって」

「お、おにいちゃん! またね! 用事あるから帰るねっ!」

「お、おう……」

 天照は光の速さで逃げて行ってしまったので、ここに残されたのは俺と山野さんのみである。
 そう、なんと山野さんである!ってごめん、わざとらしいよな。
 彼女が、高天原の神事芸能を司るかの有名な天鈿女アメノウズメ様だとはな。

 ボッサくれた長い黒髪は手入れもせずにそのまんまで顔面隠してるし、見えてるパーツの眼鏡から覗く目元は隈が酷すぎて、見るも憚れる貞子EYES、半袖セーターも毛玉ボッコボコで、スキニーのジーンズ柄のスウェットも謎にダメージ受けすぎてやたらと色落ちしてるし、室内用サンダルでコンビニ来ちゃってる末期な感じなのに、芸能の神様ねぇ。

 でも手足も長いし、背筋も真っ直ぐで姿勢がいいし、シルエットも女性のそれでスタイルもいい。
 覗きこんだらトコトン殴られそうだからしないけど、神であると確定してしまえば顔面覗きたくなるジレンマ。

「おいお前。なぜ下を向いている。こちらが忠告してやっているのにシカトか? いいか、仕事というモノはだな」

 そこからしばらくクドクドと山野さんの説教が続きますが、恐らく彼女な寝不足とアニメーターの習性が身に染みてしまっているのか、中天に座す日輪様にジリジリと焼かれてよろめき始めたので咄嗟に受け止める。

「今日はお日さんが強いみたいですから日陰にどうぞ」

「馬鹿にするな、躓いただけだ。これぐらいどうという事はない」

 うわぁぁぁ! ツッコミたい!!
 とろろ蕎麦とエナジードリンクとみかんアイス買ってる奴が暑くないアピール痛い! ちょっと陽に当たっただけでフラついてるクーラーもやしが天照の世話役ってどう言う事だよっていいたい!! 我慢……我慢ダァ……。

「どうした? 漏れそうなら便所に行ってもいいぞ」

「ああ、すまんな。じゃあ、お言葉に甘えて」

 山野さんに断りを入れてからコンビニのお手洗いにGO。
 そっからとりあえず爆笑してやる。
 もう我慢の限界だった。

「ぶふっ、ぶひひ、だはははは!! だせぇぇぇーー!! どわっはっは!! ふはー! ふひー! 腹痛ぇー! 腹痛ぇーよぉー!!これぐらい、どうという事はない、キリ! ぶはははは、やばい、マジでツボった! 勘弁してくれぇい! ふははは!」

 お前んとこのボス、おもいっきり太陽神だろってのに! 何がキリ!だよ。フラっ!だろうに。

「あー、腹痛。すっきりした腹痛ぁ」

 納得行くまで爆笑したので、顔面をばちんと叩いて気合入れてから戻ろうとスライドドアをガラァーっとすると、見ず知らずの美人が青筋をビッキビキに浮かべてブチギレていたので、即座に転移した。

 恐らく俺の生きてきた中で転移の術式の組み上げは最速だった自信がある。

「高天原マジで怖いな」

 なんだろう、あの怒気。
 あの一瞬で時空って言うか俺の感覚の全てが歪んだ気がした。
 神力を当てて酔わせたのかな? だとしたら最高神の付き人クラスで最高神レベルの神力持ちって事になるのか?
 いやいやいや、山野さんは完璧の完璧にも程がある創造体、完璧に人間になりすましてるのに、それはありえん。

 いや、意味わからん怖い。

 転生体レベルの完璧な人間の創造体を一瞬で神体に変えれるってこと? 
 どんだけ節操ないんだよ。
 一神教見習えよマジで、頼むから自重しろ。

「で? 君は猫なのかな? お仕事の邪魔したくて仕方ないのかな?」

 転移した先はアラレちゃんのデスクの上だったみたい。
 PCケツで踏まなくてよかった。

「アーラーレーちゃーん! 怖かったよぉ!」

「おーよしよし。わかったから寝ろ。いま丁度筆が乗ってきてるんだ」

 一先ず寝るね。
 山野さん、仕事辞めないでくれると嬉しいんだけどなぁ……。

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