俺、元日本人のガチ神だけどY◯uTuberになるね!

慈桜

第52話



『ご覧ください! あちらが連日話題となっているレイヴン教の教会です! 参拝に訪れた信徒が溢れかえっております』

 つい先日まで古びたビルと公園があった場所には、刀と鴉の歪な十字を掲げる教会と、見る者全てを現世の呪縛から解き放つ、この世の色彩の全てを詰め込んだ美しい荘園がある。

『それでは街を救うヒーローでもある神父のフレディさんにお話をお伺いしてみましょう。今日はよろしくお願いしますフレディさん』

『よろしくお願いします』

 美人アナウンサーにマイクを向けられた先には黒いサングラスをかけたスキンヘッドのガチムチのオッさんが白い神父服に身を包んだままに登場する。

 どこからどう見てもヤバいやつである。

『彼は凄く強面ではありますが、話してみると優しいです。目の前でこんなジョークを言っても笑い飛ばしてくれるほどには……フレディさんが神父になる前の経歴などを聞かせていただいても?』

『はい。私は見ての通りにヤクザ者でした。とある違法な取引があり、待ち合わせ場所に向かうと、何故か取引先のマフィアが、涙を止めどなく溢す不思議な鴉に首輪を繋いで連れて来たのです。約束の品を持ってこずに、ね』

『その先はTVショーで話しても大丈夫な内容ですか?』

『ええ、勿論大丈夫です。だって、何も悪い事は起きていないから。俺たちのボスは根っからの動物好きでね、取引先のマフィアに言ったんだ。空を自由に飛び回る渡鴉に首輪をつけるのはナンセンスだってね、そしたら相手は言ったよ。この鴉の涙は結晶になり、その結晶はどんな薬物よりもぶっ飛べる、俺たちは荒稼ぎしたから、お前達が自分のシマを渡すなら、この鴉をくれてやってもいい、とね』

 フレディは優しい笑みを浮かべながらにも、怒りで奥歯をギリッと音を立てて噛みしめる。役者よのう。

『ボスは、シマよりも何よりも、鴉の嘆きを止めたいと、勝手にその提案に快諾しました。俺たちは必死で止めた。けどボスは悪い大人を泣かせる商売をしてる極悪人が、動物まで泣かせちゃ救いがないって言うんです。シマはまたいつか取り返せばいい、そして鴉を受け取り、首輪を外して空に返そうとすると、奇跡が起きました』

 フレディは左手を自身の胸に当て、その時を思い出しながらに一礼をする。
 大袈裟過ぎるほどの演技だが、何故かリアルさを演出するのだから不思議だ。

『私にはやるべき事がある。でも、私は弱い。だから、優しい貴方達に私を守って欲しい。全ての悲しみに応えようとして私は失敗した。だから、もう間違いたくない。押し付けがましいけど、私に真の祈りを捧げて欲しい。そうすれば、本当の加護を与えられるから……』

『そしてフレディさんは祈りを捧げたと』

 フレディはそっと胸元からキリスト教徒である証とも言えるロザリオを出し、アナウンサーに見せてから小さく首を横に振った。
 それは暗に、自分は熱心なキリスト教徒であるから、その願いは聞き入れられない、わかるだろ? とのサインであった。

『最初は半信半疑でしたが、ボスは無神論者でしたので、言葉を発せる鴉に心奪われ、容易く願いを受け入れました。すると視界には紅き巨大な東洋の龍が現れては、ボスのその身に宿ると、鴉は背筋をピンと伸ばして立つようになった。次に続いたのはボスの右腕と左腕、セミオンとエルでした。彼らは神よりボスに信仰を持っていたので、ボスが祈るならばと祈り、セミオンは雷を纏う龍を、エルは地を這う龍を宿し、鴉には人間の手足が生えました。トニーが祈り月色の龍を、ジョンが祈り鈍色の龍を、チャールズが祈りまるで大森林のような樹木の龍を、鴉は既に黒き翼を持つ美しき幼女の姿へと変貌していました』

『フレディさんは最後まで祈らなかったのですね』

『ええ、私は今もロザリオを手放せないキリスト教徒です。しかし彼女は言いました。主は石ころからでもアブラハムの子孫をお創りになることができる。私もまた主を父とする者、その信ずる心は捨ててはなりません。ですが、貴殿を守護騎士にと選んだ使命から目を逸らさないで欲しいのです、その言葉の通りに私は祈り、凍てつく永久凍土の化身たる龍をこの身に宿し、その正しさを証明するかの如く、レイヴン様の翼は神聖なモノに変わりました。誰が先とか後とかでなく、等しく預言者は人類救済に尽力する。祈りは神へ、願いは使徒へ。その奇跡を持って、私達はレイヴン様の弟子となりました』

 しつこく言うようだが、全て嘘である。あのロザリオも近所のハイブランドで買った高級アクセだ。なんだったら『神はいた!』と言って騒いでた側の奴だ。
 しかし、アナウンサーはレイヴンの演技に当てられてしまったのか、教会に十字を切って祈り始めてしまうのだから大したモノである。

『しかし何故、レイヴン教はカラスと刀で十字を描いているのですか? 十字架はジーザスを表すのでは?』

『アレが十字架に見えるならばキリスト教徒、翼と刀の鍔の星が三日月と星に見えるのならイスラム教徒、そして六芒星に見えるならユダヤ教徒の流れを汲む者です。恥ずかしながら私には既に心に刃を持ち、弱きを救うレイヴン様の姿にしか見えませんが、レイヴン様は真の意味で、人類は皆兄弟であると示しているのです』

 そのレイヴン教の放送を見て納得行かないご様子の最高権力者が一人。

「Fuck!! なんだこの事態は!!」

 デスクの上にある書類や受話器を乱雑に投げ捨て、怒りを隠そうともしない恰幅のいい金髪の老人。

「クソがクソがクソが!! アバズレのガバガバペニス銀行が!!」

 彼こそが米国を代表する最高権威者ミッキー・ドランク大統領その人である。

 彼の怒りも無理はないだろう。
 連日昼夜を問わずに超常の力を持った者達が強盗や暴行の犯罪大好きやりたい放題のオンパレードだ。
 警察や軍を派遣しても、なんら解決の糸口が見つからず、レイヴン教とやらの新興カルト教団の連中が全て片付けてしまう。

「あの日本のふざけた野郎がステイツに来ていたのだろう? 」

「ええ、ニューヨーク大学のキャンパスで目撃情報があり、ホバーボードや治癒能力のある水の精霊などを学生達にプレゼントしてから消息を絶っているようです」

「確実にコイツだろう。このレイヴンとやらがアイツだと少し考えたらわかるだろ!」

「しかしレイヴンの教義では、正しく加護を与え、東洋に座す偽りの神を破り、世の乱れを正すとあるらしく、日本ばかりの優遇に業を煮やしていた民衆から、かなりの信仰を集めています」

 ドランク大統領は眉間に皺を寄せたままにデスクを見つめ、やはり怒りが収まらないのか万年筆を放り投げると、少し冷静になった後に秘書官を睨めつける。

「レイヴン教とやらを潰してこい。米国にカルト宗教はいらん」

「ここを叩けば支持率に大きな影響を与えますが、本当によろしいので?」

「一向に構わん。白人票だけでやって行けるからな」

「ジーザスを処したローマ皇帝のような扱いをされそうですがね」

 ドランクの怒りに秘書が呆れたように小さく首肯し、手帳にレイヴン教の解体が記されるが、そんな二人を嘲笑うかのように、テレビの画面の中ではフレディと能力者の戦いが映し出されていた。

『フレディさん! 助けてください!』

『心配いりませんよ、あの程度の加護』

 能力者が車を球体ににして投げ飛ばすが、フレディは刀を抜き切らずに鯉口を切った直後にキンっと音を立てて戻すだけで、鉄の塊は氷柱に囚われてしまう。

『最近では、悪事に利用したと言え、神の加護を奪う我々を敵視する者達まで出ていますからね。教会は奴らのいい的なんですよ』

 画面の奥では、神父に斬り裂かれ魔石を抜かれている男が映し出されるが、フレディは心配ありませんよと無傷の男を撮影するように指をさす。

「これ、潰せますかね? 大統領」

「武力に訴えなければいい。一早く解体しろ。あれはこの国に必要ない」


 ━━


 米国にて謎の新興宗教が勃興していた頃、日本国内は壮絶な事態を迎えていた。
 それは特定アジア国籍の者達が国内で一斉蜂起した国内全国同時多発テロである。

 第1の事件、それは大阪一斉蜂起により始まった。

「12時だ。やるぞ! いけっ! チョッパリを殺せっ!!」
「うぉー!! 殺せ殺せぇ!!」
「将軍様万歳! 将軍様万歳!」

 先ず最初に襲われたのは大都市ではなく地方交番。

「すいません、お巡りさん。そこにバットが落ちてたんですけど、これって落し物として届けても大丈夫ですか?」

「あぁ、構いませんよ。じゃあ少しだけ書いてもらいtぐっ」

 油断させてバットを頭部に加減なく振り抜く。多く確認された手口の一つである。

 一人二人の駐在さんのみが常駐する交番にて、年寄りの警察官が示し合わせたかのように一斉に襲われた。

 バットを振り向いた後は、合図と共に仲間達と乗り込み、一方的に集団で殴る蹴るの暴力を加え、喉を踏み潰され、執拗な迄に顔面を踏みつけ頭蓋が割れて事切れるまで暴行を加える。
 殺害された後に銃を奪い逃走。
 このような酷い事件が大阪の各地で同時に起こり、述べ121名の警察官が殉職する。

「はーい、止まってくださぁい」

「なんですか?」

「ちょっとごめんなさいね」

 路上に並び立っては車を止めると、運転席を開けて鍵を抜く。鍵が閉まっていれば集中ハンマーで叩き割って一瞬の隙で鍵を抜いてしまうのだから凄まじい。

 彼らは交番の次に一般人の車を次々に強奪、運転手は通報の恐れがあるので集団暴行の後に警察官同様に殺害、十人程のグループでの活動なので、平均的に4台から5台の車を調達し、次の交番で同様の手口で殺害を繰り返し、各々に銃を手に入れた。

 彼らは工作員の中でも下部組織の者達であったので十分に資金が回らず、自前で調達する必要があったのだ。

「へへっ、無茶苦茶できるのは楽しいな」
「まだまだだ。まだまだ殺すぞ」
「殺した人数によって本国の家族達に多額の謝礼が支払われる。効率よく確実に殺すんだ」
「シャブが足りない。もっと欲しい」

 彼らが次に向かったのは田んぼばかりの民家である。
 純和風の瓦屋根の立派な家は、周囲の家とは距離が離れているので、物音が聞こえ難いと考えたのだろう。
 縁側や正面玄関から我が物顔で忍び込み、住人を老若男女に問わずに殺害し、金目のものを物色しては次の民家に押し入り殺害を繰り返す。
 壺や絵画などの嵩張るものは盗まない。現金や貴金属、キャッシュカードにクレジットカードなどすぐに利用できる物ばかりだ。

 そこから現金化するグループと実行犯グループに分かれる。
 実行犯グループは繁華街へ向かい、横断歩道や、遊歩道や商店街などで人を大勢に轢き殺し逃走を繰り返す。
 車のダメージが酷くなれば、銃で脅し奪い取り、再び轢き殺しての繰り返しだ。

 これが大阪中の至る所で発生しているのだから警察も大混乱に陥るのは仕方ない。
 緊急事態発生による一斉出動により一刻も早く事態の沈静化に向けて動くが、既に大阪は地獄絵図であった。

 其処彼処に死が振りまかれ、まるでB級映画でも見せられているかの様相である。

 海外の自爆テロや銃乱射とは比べ物にならない被害だ。
 即座に軍が動き対処する海外とは違い、どうしていいのかわかっていない。平和な日本だからこそ、予想だにしなかった事態に反応できない。

 パトカーで追跡しようにも、相手は平然と人を轢き殺して走り回るので、追えば追うほど被害が出る。
 遂にはヘリコプターからの射撃などを試みるが、追い詰められると企業のビルなどに突っ込み、人質を取っては立て籠もる。

 犯して殺しての阿鼻叫喚の地獄絵図だ。
 目隠しをしてビルの上層から男達を投げ捨て、女には覚醒剤を打ち込んで好き放題に犯し続ける。

 特殊部隊が突入し全員を銃殺しても時既に遅し、ビル内部では無残に殺戮が繰り広げられ、物言わぬ骸ばかりになっている。

 ビジネスマン達が命を投げ打って戦えば、被害は抑えられたかもしれない。
 しかし人間とは不思議な物で、警察が使うような弱いレンコン銃を向けられただけで膝が笑ってしまうのだ。

 結果として大阪各地で好き放題に最期を楽しんだ奴らは笑顔のままに死んで行った為に一件落着かと思われたが、この事件を受けて、大阪兵庫の在日韓国・朝鮮人が一斉に行動を開始した。

 北朝鮮籍の鍛えられた工作員達程の働きは出来ずとも、一致団結でコリアタウンを守り、戦闘員の後方支援をしようと動き始めたのだ。

 そして事態は更に悪化する。

 緊張感の高まるコリアンタウンにて40代の遊び人と言った風体の男は呆れ果てたように老婆へ言葉を投げかけた。

「もう準備は整っていたのに。後30年もすりゃ、日本人が100万の朝鮮民族の奴隷になっていた……それなのに何故こんな愚行を」

「そんな計画とやらも日本人に全部バレて台無しだったなー。しょうもないこと言ってないで、あんたもさっさと日本人殺しておいで。土地はわたしらが死んでも守ってやるからな」

 男は返す二の句が見つからず、力なくパイプ椅子に腰を落とした。
 彼は彼なりに何らかの企みを持っていたのだろう。

「落ち込んでたってどうにもならないよ! あのネモってのが出てきた時に日本を裏から乗っ取ろうなんてのが難しくなったのさ! さっさと祖国の為に死んできな!」

 男は面倒臭そうにゆっくりと立ち上がり、小さく舌打ちをしてその場を去った。

「宗教にパチンコ、消費者金融、風俗、AV、ラブホテル、この利権の全てを我ら同胞で掌握したのに、玉砕でテロ? ふざけんな。そんなのは北の奴らがやっていればいい。そうだ、海外に出よう。金はあるんだ、こんな国、喜んで出てってやるよ」

 男は日本から出る事を覚悟して、コリアンタウンから大通りに面した道路へと足を踏み入れた。

「覚悟ぉぉ!!」

「エフッ……」

 その直後、男は物干し竿の先端に包丁をテープでぐるぐる巻きに固定した簡易な槍で喉を突き刺されていた。

 一度喉に刺されば、集団で何度も何度も滅多刺しにして殺したのである。
 小さい頃からよく通った蕎麦屋のおばちゃんや、学校の近くの駄菓子屋のおばちゃんなど、見知った顔ばかりであるが、その血に染まった表情には、見覚えのある優しさなど微塵も感じさせない修羅が棲んでいた。

「間違いなく西山君やね。この子も朝鮮人やさかい、水際で防げて良かったわ」

「よぉし。マンホール開けたで! 放ってまえ!」

 大阪で一斉に行われた朝鮮人による大量殺人テロにより、コリアンタウン近隣の日本人住民が集まり、自主的に朝鮮人狩りをし始めたのである。
 事件に巻き込まれ息子や孫を殺された者達が徒党を組み、その熱に若者達も加わり各地で大規模な自警団を設立したのだ。

 しかし在日朝鮮人にも、やはり多少なりと北と南の区分があり、同じ民族同士で仲良くはしているものの、腹の底ではお互いを馬鹿にしている部分も多少なりとあった。
 だが、自警団の朝鮮狩りによって、この南北に連帯感が生まれ共同戦線の体制が敷かれる結果となり、事態は泥沼化。

 戦後最大の暴動と称された第1の事件、大阪暴動を皮切りに、全国各地での朝鮮人による無差別殺人、それに対する朝鮮人狩りが激化して行く。

 警察は自警団側を逮捕するが、朝鮮側には手を出さず、このままでは好き勝手に殺されて全てを奪われると危機感を募らせた頃、何処からともなく少女の声が響き渡った。

『事前に予測はできていましたが、間に合わずに申し訳ありません。皆さまBATにてジャカルタターミナルタワーへお越し下さい。護衛ユニットの国内持ち込みを許可します。不足の事態に備え自衛隊に配布していたのですが、彼らは沖縄防衛に振り分けられているので対応しきれません。ID判別にて無料搭乗も可能にしてます。戦う道を選ぶ者は、直ぐにBATに乗って下さい』



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コメント

  • 慈桜

    台風の水溜り車で突っ込むの楽しすぎる件。

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