俺、元日本人のガチ神だけどY◯uTuberになるね!

慈桜

第47話



 芦屋あの野郎絶対許さん。
 バンダ◯に連れてってやるとか言って、フィリピン関係で緊急の用事が入ったとか言って無表情のままにホワイトベー◯に跨って過ぎ去って行きやがった。

 まじ、舐めてんな。
 目標を駆逐してやろうかと思ったよ。

 フィリピンでファーディナンドが革命を画策してたのに、ブン太って名前はぼちぼち有名な奴がフィリピンをほぼ壊滅に追いやって大混乱になったから逃げてきたんだけど、あの調子ならファーディナンド達が新しい国を起こすのも時間の問題かもしんない。

 チリ、ウルグアイ、アルゼンチンは良い返事は貰えてるんだけど、アメリカに睨まれてるから少し待ってくれって言われてるから、しばらくは台湾、インドネシアのままかな?
 フィリピンは既に無茶したら通せそうなぐらい荒れまくってるから時期を待とう。

「おほ、なんかすごい長文のDM来てる」

 おかげさまで世界中から俺が開いてる各SNSにおてまみを貰うわけで、暇な時には極力目を通そうと努力してる。

 人気商売で仕方ないとは思うけど、タヒねとかメ木几又の類の愛あるメッセージをくれるユーザーはブロックして、普通の願いには目を通してから優先順位をつけてリストアップしてるんだが、そんな中で短編小説ばりの超長文が届けられた。

 一部抜粋する。
 ━━
 はじめましてネモさん。
 私はギデオンの小鳥遊です。
 おっと、これは失礼、ネモさんがアニメ好きであるからと言ってギデオンだけじゃわからない場合もありますよね? 
 改めましてアニメ制作会社のギデオンピクチャーの代表を務めている山田洋一、業界では小鳥遊 百舌たかなし もずと名乗っております。
 さて立秋の頃、幾分暑さも落ち着いて参りましたが如何お過ごしでしょうか?って話はどうでも良くてですね、実はアニメ業界現在、これは全体に置ける話なんですが、酷くアンバランスな要素を軸にギリギリで成り立っている状態なんです。
 その酷くアンバランスな要素と言うのが、人間の心です。
 ドストレートにアニメが〝好き〟って心だけで、制作会社たる修羅道に入り、心身共に崩壊して脱落し、またもや新たな犠牲者を出す繰り返し、安月給、長時間の過酷労働、更にはネゴサーチで心を抉られ続ける毎日、今では『中韓はアニメに関してはマブダチだから、ベタ塗りとか重要じゃないシーンは外注に頼もうぜ』なんて言い訳をしながら心を殺して外注に頼らざるを得ない状況、皆バカではないので、車や電化製品諸々を外注にて技術流出して冬の時代を迎えたように、中韓の絵のタッチも既に日本の絵師のそれと同等となってきており、日本のアニメ業界の冬も近いとヒシヒシと感じている今日この頃……けど、あいつらズルイんですよ『あー、この目はあの作品のパクリだなぁ』『あー、これはあの作品の影響だなぁ』なんて言えばアニメに関しては100%リスペクトしてるよってフレンドリーに来るから、あいつらの絵が上手くなったりしたら嬉しくなったりしちゃって……でも、こんなマブダチだって思ってる奴らも、手の平返しで踏み台にしてやるぞって思ってるんだろうなって冷静に悲しくなったりしちゃって……でもさ、ネモがいたらなんとかなんじゃね? なんて思って今回DM送らせて貰ったんだけど、って言うのが
 ━━

 三行でまとめるぜ?

 アニメ屋です。
 人手不足です。
 助けて下さい。

 つまりはこういう事だと思う。いや、どうだろうか? 俺が読み違えてるかもしれないけど、これと同じような内容で8倍ぐらいの文字量なんだが、恐らくは、この三行でまとめられると思う。

 ってわけで会いに来てみましたギデオンピクチャーの小鳥遊百舌さん。

「いやぁ、本当に来てくれるとは……」

 めちゃくちゃ普通の人だ。
 白髪と白い髭がチラホラと目立つ40代の眼鏡かけた優しそうなおじさん。
 本当にこんな人が、あんな狂気の沙汰じゃない長文打ってたのかな?

「散らかってますけど良かったらスタジオ見てください」

 案内されて中に入ると、広いオフィスの中に仕切りを立てたデスクが所狭しと並び、スタッフ達が一心不乱に作画をしている。
 その顔には生気がなく、本物を知っている俺をもってしてもアンデッドかと思わせる程である。

 窶れた喪女がチラッと眼鏡越しに俺を一瞥し、鼻で小さく息を吐きながらに作業に戻る。
 これは最近では体験できない疎外感だ。
 日本語以外に主要10言語の字幕動画を配信し始めてから、更に認知度も増したので、何処にいてもチヤホヤされるようになっていたのに、まるで汚物を見る目で見られてしまった。

 いや、汚物ではないな。
 彼女には俺そのものが見えていない。

「かなり過酷な現場みたいだな」

「アニメ1話あたりに4〜5千枚書きますからね。3千から3千5百に抑えて、静止画口パクで稼いだりもしますけど、やっぱり魅せるシーンってのはどうしてもね」

 小鳥遊さんが力無く笑っているが、先ずは何の解決にもならないかもしれないが、彼らを全回復させてしまおう。
 嫌がられるかも知れないが、背中に手を置いて壊れかけてる部分を一人一人徹底的に治していく。

 これで幾分マシにはなっただろう。
 後は……色々改造してもいいが、本人に承諾を得なければならないので保留、仕事の邪魔はできないからな。

「さて小鳥遊さん、貴方はどうすれば改善されると思いますか? 絵空事でもいいので言ってみてください」

「敬語なんていりませんよ。絵空事を言えば、才能があるローコストな人材が大勢必要です。ですが、それを言ってしまえば、彼らのギャランティが最悪のままになってしまう。だから外注に頼らざるを得ない悪循環なんです」

 手書きとCGの違いなんて今更議論するつもりもないし、ロボットを作って書かせるとなれば、彼らのような優秀な人材が失われてしまうから少し違うだろしな。

 そうなると、単純に絵の才能を昇華? 違うな、彼らは才能があるからここにいるんだ。

 ハイヒューマンにして器用さを上げて並列思考で両手描き? 思考加速を付与して脳の負担を減らす? それじゃ社畜に度が増すだけだな。

 そうなるとエルフやハーフリングなんかを派遣しまくるのがアリかも知れんが、彼らの需要が無くなってしまうのもつまらん。ってありえん。

 この業界で揉んで揉まれてのし上がっていく先に絶対的覇者が降臨するのであって、育てなければ直ぐにレベルが落ちる。常に高みに向かうからこそ意義のある業界。

「せや、わしが下請けしたろ」

「えぇ?! ネモさんが!?」

 つまりコレしか道は無いだろう。
 現在日本では優秀なアニメーターが育っては辞めて育っては辞めての繰り返し、酷い例では海外に引き抜かれて、技術吸い上げられたら丸めてポイだ。

 そんな悪循環を正す方法はただ一つ。
 俺が安価で外注を受けて、スタッフに高級を支払えばいいだけの話。

 つまりは分業制だ。

 各スタジオは絶対に手放したくない人材を厚遇でき、更に並行して安価な新人教育にて雑務を任せる。
 使えるやつはキープ、微妙なら俺にカモンでハイヒューマンにドン。

 仕事を投げて貰ってビシッと仕上げて安上がりで納品、俺は個人的に作監を育てよう的な楽しみがあるから投資気分で運営、それによってスタジオのブラック過ぎる環境も改善、みんな幸せ。うん、楽勝じゃないか。

「それじゃあネモさんがずっと赤字でしょう? それに最終的には立場が逆転する未来しか見えない」

「いや、そうはならん。って言うのも、ずっと神界から日本のアニメを観てて思ったんですけど、海外サイトが違法にアップロードしてるのが当たり前になってる世の中で、現在パラ子がいるにも関わらず、アップロードを許してる理由ってのは、やはりそれにも良し悪しがあるからですよね?」

「ええ、まぁ、命を削った作品が無料で拡散されているのは、腹わたが煮えくり返る思いではありますが、再生回数イコールが売り上げでは無いとも理解していますし、年々増え続ける海外のアニメファンの増加を断ち切る危険性も孕む為にノータッチの姿勢でもあります、不確定要素に関しての冒険はしたくないと言うか……」

「うん。俺も文字通りに違う世界にいたから、それらのふざけたサイトを使わざるを得ない状況だった外道なんだけど、日本に来て早速ここの会社のモノも含めて大量に原作やブルーレイは勿論、オフィシャルグッズなんかも買わせて貰ったけど、やっぱり海外の人はまさにそれで、惚れたから買う、続きが出て欲しいから買うってスタイルが普通になってるよね? 隠れヲタクなんて特にそうで、大好きだけどブルーレイを観られて、変な目で見られたくないから、ネットで動画を購入してこっそり楽しんだり」

「ですね。こんな事を表で言えば総叩きにあうかも知れませんが、海外のテレビ局や有料配信などの契約も増えて認知度が増し、世界市場になった一因でもあるとも言えるでしょう」

 それにはあちこちのデスクから舌打ちが聞こえて来たりもするが、世界の一般層を引き込む要因の一つになったのは紛れもない事実で。

 まぁ賛否両論あるのはわかる。
 落ち着け豚共、俺はお前らを助けに来たんだ。

「つまりはそれら違法サイトをぶっ潰して、広告収益のアニメ配信・投稿サイトを新たに立ち上げてしまうのはどうだろう? どうせ無料でばら撒かれるぐらいなら、僅かに広告収益を得て、更には動画終了時には、世界各国対応の公式グッズ販売へ飛べるようにする。BATが本格的に開通したら送料なんかの問題も本格的に解決するだろうし、なんならBATのせいで潰れかけてる航空会社を買収して飛行ユニットでの空輸専門の会社にしてしまってもいい。つまりは世界各国の市場が国内を相手にしてるのと変わらない充実度になる」

「それは……ですが、いや、でも……」

 一本化はかなりでかいと思うけどな。
 違法アップロードのサイト全ての動画視聴数を一手に担えば、凄まじいことになる。
 更に20分動画であれば、還元率もかなり高くなるだろうし、企業とアニメのコラボCMであればストレスも少ない。更にコラボCMの制作費も貰える。

「これは例えの話だけど、1億再生で1千万、更に間に挟む広告をコラボCMなんかにしたら制作費も貰える。そして下請けに俺たちがいるから、制作も楽チン。これだけで海外のクソ共が違法に儲けていた金銭を獲得できて、更に別媒体からの収益も増える」

「それは素晴らしいですが、やはりネモさん達の負担が大き過ぎませんか?広告費ですごい額が動くのはわかりますが、我々が求めるクオリティで仕上げて貰うには安価な外注とは言え、かなりシビアな要求をします。それには相当数の人員が必要となりますし、人件費も凄まじいことになる」

「そんな心配はご無用。だって、俺が考えてるのはそれだけじゃないから」

 さっき説明した時にアニメの配信・投稿って言ったよね?
 アレがここでは関係してくる。

「先程、アニメ配信・投稿・・サイトと言ったでしょ? アレはつまり【なりたい】や【マルヨム】、【ベータポリス】に【ノベルファ】のようなラノベ投稿サイトならぬ、アニメ原作投稿サイトを連動させる。そして世界各国の作家から作品を掻き集め、パラ子に校閲をさせて全世界対応で翻訳する。投稿、書籍化、漫画化、アニメ化で書籍化決定から五年後にやっとアニメ化のサイクルを投稿から書籍漫画の売り上げを考慮せずサイト内評価のみでアニメ化の直通ルートにするんだ。そのアニメ制作で俺のスタジオから優秀な作監を育てて、本場のアニメ界に送り返す」

「それはちょっと待ってください! そんな事をしてしまえば、国内で頑張っている作家達の芽を摘むことにもなりかねません! 私はアニメを日本の至上のコンテンツとして不動のモノにしたい、だからこそネモさんに相談したんだ!」

「果たしてそれはどうかな? 俺としては日本の作家レベルを一段階上げるテコ入れになると思ってる。このままトラックに轢かれて異世界に人材を送り続けているようじゃ、心震えるアニメは無くなってしまうだろ? 実写ドラマ化されてもいいだろってぐらいに泣ける作品にブックマーク12件、奴隷買ってセックスしまくるだけで1万件、前者はクソ扱いで後者は人気作家、そんな世界だぞ?だからここらで刺激を与えてみよう。何か素晴らしいアイデアが浮かぶかもしれない。書籍化いいね、漫画家いいね、アニメ化いいねで分けてもいい。日本人原作のアメコミヒーローやアメリカ人原作の戦国モノがあってもいいじゃないか。日本じゃダメでも海外じゃバカ受けの作家も出てくるはず。必ずしもマイナスじゃない。それに、俺は日本の作家がそう簡単に負けるとも思ってないしな」

 小鳥遊は頭をかきながらにうーんと悩んでしまっているが、これは一つの案なだけであって今すぐどうこうって訳じゃない。

「大筋はこんな感じで、ほかのスタジオとも相談してからどんな方向性にするか決めるのもアリだしな。まずは俺も人材集めてスタジオを作って、原作云々は後回しにしてスポンサー捕まえてから配信サイトは作る。勿論他の制作陣から許可を貰うが、事後報告だ。まずは海外の違法アップロードを潰す為にも、こっちが違法アップロードして勝手に還元してからの交渉になると思う。拒否られたら勝手にあげてこっちの儲けにしてトコトン戦ってやるけどな」

「やはり有料配信なんかに配慮しても正式には許可できないだろうから、それはかなり助かるでしょうね。ネモさんが悪者になるかもしれませんが、結果としては利益になるわけだし」

「悪者には慣れてるから上等上等。じゃあパラ子、海外の違法アップロードサイトを全て潰して、関与する個人、企業全ての口座から金を奪え」
『そう仰られると思って既に完了し、NEMOANIMEの名で、過去日本で放映された全ての作品を取り揃えておきました』

 デスク側からガタッと音が聞こえ、小鳥遊も目を見開いてしまっているが、パラ子ならこれぐらい容易い。

『現在国内の企業の広報などにサイト説明とスポンサーの提案を行なっております。日頃から私に依存している者が少なくはないので、色よい返事はもら……現在32の企業から申請を受けました。既存のCMを利用する形で、全動画のAパートの後にランダムで差し込みます。字幕対応完了しました。全世界に配信開始致しました。SNSなどで全ユーザーのタイムラインに表示しております』

「サンキューパラ子。じゃあ次は退職したアニメーター、絵師なんかに報酬込みでの交渉をしてくれ。ハイヒューマンになっていいならアニメーターに必要なスキルの付与も可能だと言ってな」
『交渉材料は並列思考、思考加速、速筆、投影、描写スキルで構いませんか?』

「習熟もつけておけ。努力が報われないのは嫌いだ」
『かしこまりました。それでは』

「え? え?! えぇ? 」

 小鳥遊は混乱しているが、俺もアニメ業界だけに何年も体を取られたくないので、時間はかけずにサクサクやっていく。
 世界中から原作を集めるのは、いい案だと思ったんだが、小鳥遊が発狂したから保留、他は全て万事恙無く。

『全制作スタジオへの通達は、こちらのスタジオ設立と同時に行います。必要な設備は全て購入完了しました。赤鳥居の近くの雑居ビルを購入しましたので、其方に送ります。住居契約を済ませ、社員寮としての扱いにしますか? 天照州の住宅利用でも構いませんが、子供達が睡眠の邪魔をする可能性もあります』

「適当に近所の物件全部ゲットしちゃって。家賃も全部、いや三分の二はこっちで負担しよう。ちゃんと安くない給料払うんだし全負担はしないでいいだろ」

 そこでデスクが更に慌ただしくなったかと思えば、先ほどの女性がギロリと俺を睨みつけてくる。
 なんか恨まれるような事をしただろうか?

「私が働く。お前のとこで」

「お、おれも!! おれもネモのとこにいくぞ!!」
「俺だって! 俺だっていくさ!」

 次から次へと、ギデオンのスタッフが立候補し始めたのを見て、小鳥遊は遂に膝下から崩れ落ちてしまった。
 足回りが弱い事この上ない。

「じ、自分もネモさんに雇ってもらえませんかぁ?」

 そして小鳥遊は泣きながらにそんなことをほざき始めたのでデコピン。

「あ」

 吹っ飛んでしまったので、即座に治癒する。

「心配しないでも、これからずっと待遇は改善されるはず! 小鳥遊社長からオッケーを貰った人材は連れて行くけど、全員は連れていけない!」

「いや、私は辞職する。今の仕事は終わらせてるからすぐに行ける。だから雇ってくれ。それに一人は一線級がいないと、その計画には綻びが生じるはずだ」

 喪女さんは凄まじい食いつきを見せてくるので、チラッと小鳥遊さんを見ると、涙を浮かべながら小さく頷いたので、彼女は俺が頂くことになった。

「私はこれでも月に120万は貰っている。アニメーターは安月給などと舐めているようだが、それは才能の差だ。私を雇うと決めたからには、それなりの報酬を覚悟してもらうぞ」

「えぇ……じゃあそれプラス出来高って事でいい?」

「それで構わん。そしてハイヒューマンとやらにしろ! 私は自身で超人だと思っているが、お前が与える神の恩恵とやらを確かめてみたい」

「それは勿論。早速やってあげよう」

 そして彼女をハイヒューマンに構成する。ポンと触ってハイ終了、簡単な作業です。

「おお、なるほど。これならば確かに捗る。うむ、いい力を貰った。私は山野、山野 鈴愛やまの すずめだ!よろしくな!」

「よ、よろしく」

 なんかすげぇグイグイ来るんですけどこの人。

 うん、とりあえず、こんな感じで、スタジオ作りが開始された。
 小鳥遊さんと色々別れの挨拶をして、また今度と約束を交わしてバイバイ。

「なぁ、あの山野さんって前からいた……よな?」

「何言ってるんですか社長、ずっとエースだったじゃないですか」

 スタジオから出る時に聞こえた言葉は、少し不穏を孕む内容であったが、喪女の山野さんは、ノートにスラスラと美麗な絵を描いていたので、即戦力だとして割り切ることにした。

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コメント

  • 慈桜

    いいんですよ(*´꒳`*)
    一人でも読んでくれる人がいるならそれで(*´꒳`*)

    2
  • ノベルバユーザー229059

    これのブクマも増えたらいいのに

    1
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