俺、元日本人のガチ神だけどY◯uTuberになるね!

慈桜

第45話



 ジャカルタの警察を根こそぎオークに変えてやるまで3日もかかった。
 最初は不意打ちでガンガン行けたから良かったけど、あいつら辞職して私服で逃げ回ったりするから見つけるの大変だった。

 オークにする→ジャカルタ警察本部に捨てる→リンチによる教育のゴールデンライン。
 見つけだした後は実に簡単な作業だったので感謝の限りだ。

 言わばジャカルタは完全に俺の統治下に入ったと同義であるし、警察さえ抑えてしまえばトラブルもなんとかなるだろって事で、様子見がてらに他の三島にでも行きましょうかってノリだったんだけど……。

『ジャカルタの動画を先行で配信させてください。オークと軍が衝突しそうではありますが、今の内に旅客の護衛ユニットを増やしておけば、彼らは試験に集中できます』

 別に勝手に生産して勝手に管理してもいいんだぞと言ったが、それはパラ子の中では非効率らしい。よくわからんヤツだ。

 そんなこんなで早々に動画配信、更にはジャカルタのターミナルタワーからBATが射出され始めたので、一先ず退散。

 オーストラリアとニュージーランドから正式にターミナルタワーの使用を『拒否する』との返答を頂いて、ストレス発散がてらにファーディナンドをおちょくってやろうとフィリピンに遊びに来たんだが、どうにも凄まじい事になってた。

「あれ?! あれ!? ゴミは?? ここ一面に広がってたゴミは何処いったの?」

「クッ、馴れ馴れしく話しかけるな邪神め」

 聖鎧と魔剣を首飾りに納め、ブルージーンズに白シャツの爽やかなイケメンダンディなおじ様のファーディナンドが忌々しげに喉を鳴らしているが、そんな事よりも、トンド地区の変わりようだ。

「いや、今はそのノリいらないから、マジでなんなのこれ」

「クソが。簡潔に言うなら燃やした。有害な物質を撒き散らすゴミであったので、空間をえぐりとるように燃やし、我が身の内に閉ざした」

 そう言ってファーディナンドは聖鎧を封印した首飾りをギュッと握る。

「今なら火傷ぐらいは負わせられるやもしれんぞ?」

「無理無理。俺ってば最近ガチガチ最強の太陽神が何百年って神力溜め込んで制御失って暴走させた神威半径50M以内に抑え込む偉業達成しちゃったからね。神気じゃないよ、神威だからね」

「……何処までも忌々しいヤツだな」

 まぁ、神力とか神気とか神威の説明は、みんな大体こんな感じかなって思ってるので間違いないだろうからまた今度って事で、そんな事よりも目の前の状況だ。

「この地の民は、ゴミと共に生きていた。ゴミを喰らい、ゴミを燃やし、ゴミで商売をしていた。だから燃やした」

「いやダメだろ。お前ここだけで何人住んでると思ってるんだ? ゴミがあるから暮らしていけてたんだろうが」

「本格的なスラムは1万強、しかし全てと言えば60万ないし65万ぐらいだろうな。此奴らはゴミで呼吸器を患い、伝染病、栄養失調などに苦しめられ、日に何人もの人間が死んだと思えば、この劣悪な環境で年端もいかぬ少女が当たり前のように子供を産む。まさしく地獄と相違ない。だから燃やした」

「だから、そのだからが意味わからねぇんだっての! お前全員殺す気か」

 俺とファーディナンドが口論をしていると、住民達がわらわらと集まりだしては、手を組んで祈り始めたので、速攻やめさせる。

「ネモ様、聖人様を攻めたてるはおやめください。彼は我らのような者の為に寝る間を惜しみ、身を粉にして奔走してくれているのです」

「ジジイ、我らのような者など、自身を蔑んだ言葉は二度と使うなと言っただろう! お前らはこの邪悪な神の下僕たる貧困とこれまで戦ってきたのだから」

「あれ? ファーディナンド知らない? 俺災厄シリーズの権能捨てて、お前の大好きなアバズレの〝創造〟と〝悪戯〟しか権能残ってないんだよ」

「きっさまぁぁあ!! 女神様を愚弄するなぁぁぁ!! どうせ権能を創って飽きてはクソ神共に配っているんだろうがぁ!!」

「えぇ……心外だな。俺もうずっとこの二つなんだけど」

 ファーディナンドが胸ぐら掴んでブンブンしてくるけど、甘んじて受けてやるついでにこいつの状態チェック。
 かなり無理してドス黒い炎を溜め込んでるので、こいつの大好きな聖炎にチェンジしといてあげる。
 俺の慈愛に溢れた悪戯である。

「ぐ、はぁ……やめろ! 貴様がその力を使うな!!」

「暴れたって意味ないだろ。何回も言うけど、あいつは望んで俺の一部になったんだっつの」

「黙れ! 黙れ黙れ黙れ黙れ!」

「くっ、殺せ! って言ってみて? ねぇ、言ってみろよオラ」

 男騎士さんだけど、本当面白い。
 こいつ敬虔なる使徒である聖人のくせに、仕える女神に恋しちゃってたんだよ。

 多分、自分ではそれが恋心だと気付いてないけどね。

 それで〝創造〟と〝慈愛〟の権能を持つ女神が交渉してきたんだ。俺が喰わせろって言ったら、災厄を捨てて、邪悪に慈愛を食わせたら、長き時の果てに〝悪戯〟の権能になる。その権能を守り抜くならば、俺の一部になってもいいって、条件付きで快諾しちゃったんだよ。

 それで勿論オッケーってペロりんちょして、遊び半分にこいつをホムンクルスとして再生させたんだけどさ。

『やっほ!ファーちゃん。お前のラブリーな女神ちゃん、ペロりんちょしちゃいまんた! てへ』

 ガチの慟哭、もうジャカルタのオークなんて目じゃないよ。血の涙を垂れ流して、顔の皮膚が捲れ落ちる程に爪を立てて搔きむしり、脳が焼き切れるぐらいの咆哮を三日三晩続けて事切れて、即座に再生を繰り返した。

 まさに地獄でしかなかっただろうね。

 自分は早々に死んで、愛する女神を守る事も出来ずに喰われてしまって、邪神と憎む相手がその力を我が物顔で使ってるんだから。
 RPGならバッドエンドでしかない。
 しかも、女神との約束守んないでしばらく邪神フィーバーで他の世界の神々殺しまくって遊んでたしな。

「しかし背に腹は変えられぬ。市街地の富豪に掛け合い、融資の約束などは取り付けているのだが、満足な額面には届かん。利子と熨斗を付けて返して
 やるから、金を貸してはくれぬか?」

 それが今ではこんなにも打ち解けちゃって……まぁ。
 でも守護騎士の設定とか、護衛対象設定せずに、リアルな感じで再生したら速攻狂って死ぬんだけどね。

「あ、いいよいいよ。スマホ……ってあるわけないよな」

 俺のスマホストックは後二台。
 一台はパラ子のマザーだし、他の二台は板ちゃんねるぐらいでしか使ってないけど、こんな奴に神力の塊プレゼントするのも癪に触る。
 いや、ここはこいつに渡しておいてあげて、明石の水銀灯回収してから、携帯式充電器と中古のスマホゲットしてから取り返すプランがマスト。
 スマホ4台に逆戻りするじゃまいか!

「これ貸しといてやるから、好きに使えよ。けど、ゲニの母親達の邪魔はするなよ」

「お前はバカなのか? 俺はこの世界ではあの人の守護騎士なんだぞ? 全てはあの人の、そしてこの地の人間の願いに微力ながらに尽力してるに過ぎん。実際にあの金銭を元手に街で屋台を始めているからこそ、外資企業の役員などとの知遇を得る機会に恵まれ、融資の約束を取り付けるまで出来たのだ」

「うわぁぁあ! バカって言うなぁ!! それこそお前だってバカだろ! 俺が作った偽物の聖鎧と魔剣を売れば容易く金なんて集められるだろうよ! お前が憎む邪神が作った悍ましい武具だろうにさぁ!」

「確かにそうだな、悍ましい。確かにそうかもしれんが、コレからはお前の中にいる、あの御方を感じることができる。手放すのは自身を否定する事と同義だ」

 どうでもいいやい、好きにしろ。

「して、ビジネスプランは? 出資者なんだから、それぐらい聞く権利があるだろ?」

「あぁ、革命を起こす。ここに国を興すんだ」

 あぁ、そっか、中世ファンタジー世界の聖騎士だもんなぁ。そりゃ、この熱の無い冷めた世の中で、煌々と灼熱の闘志を燃やしてたっておかしくない。

 あたしゃ知らないよ。
 ファーディナンドがディフェンダーのクセにオフェンスをやるったって、監督じゃないんだから諌めたりしない。

 それに、あの大統領には前回の一件もあってムカついてるし、ヤク中って事にしたら人殺ししてもいいよ! なんて殺しのライセンスを国民に与えちゃってるんだから、指導者として終わってる。

 結果として在比米軍オラって撤退させたのはいいけど、ミンダナオ島はイスラムクンニの過激派に占領されちゃいましたとか漫画。
 スンニだったっけ? どっちでもいいけど。普通に日本と目と鼻の先やんけコラってなってくる距離だ。

 俺は大丈夫でもアラレちゃんは勿論、キョウイチさんとか、オギちゃんとかナナオとか玉ちゃんとか、大切な人達に危害があれば、楽勝で近隣住民関係なく隕石落とせる。むしろ陸地全部焼き溶かしてやるのも吝かではない。

 そんな事にならない為にも、ファーディナンドの革命はある意味ありかもね、なんて俺も過激な考えになってしまうのが辛い。

 でも革命って何をすれば革命なの?
 政治家全員殺すだけじゃダメなのかな? それならファーディナンド単騎で楽勝な気もするけどな。

 ファーディナンドが一晩でやってくれました。って結末になりそうだけど。

「む? 貴様もしや、皆殺しにしたらいいなどと思っていないだろうな?」

「え、違うの? サッサと行けよって思ってたんだけど」

「それでは賊と変わらんではないか。はぁ……もういい。金は有難く借り受ける。我々が勝利した暁には、熨斗がわりに貴様が躍起になっている、あの飛行物の発着駅を開通させてやろう」

「ん、まぁ、アレ通したらかなり経済的にはプラスなんだけどねってカユっ!! くそっ!」

「どうした? 蚊にでも刺されたか?」

「いや、どっかで誰かがめちゃくちゃ祈ってやがる。くそ、ケツ痒いわぁ」


 ━━


「あ、ありのままに今起こった事を話すぜ」

 その頃ネモラーとして、その界隈では有名である菅原雅信ことブン太は、数日前より飛行バイクにてフィリピンに不法入国していた。

 当然日本人は皆殺し判定を受けているので、彼は街の中をまともに歩く事など許されず、氷の精霊であるスノウとアイスゴーレムであるリノのタッグによる氷の守護により、銃弾の雨が降る死地をなんとか切り抜けた。

 そこで一つ問題となったのが、存外フィリピン側がガチであった事である。

 街中に兵を展開し、いかなる場所に於いても即座に対応できるようにされているのだ。
 ブン太は飛行バイクで建物の陰に隠れながらに隠密行動で事なきを得ていたが、人間たるは生きていれば水分、そして食事は不可欠なモノである。

 窓の無い住宅の壁と壁の間に浮遊したままに、ただただ時が過ぎることをまっていたが、遂には限界を迎える。

 彼はネモの恩恵を受けてスマートになったと言っても、元はデブである。
 健康状態に気を使い、適度な運動を心がけてはいるが、日頃水分の摂取量は凄まじく、ただただジッと待ち続けるストレスに、頭のネジが容易く飛んでしまったのだ。

クリィィィィィク!戦争

 心からの叫びであった。
 ここで干からびて死ぬぐらいであらば、戦って死ぬ事を良しとしたのである。

「大丈夫! 怪我をしても私が治すよ!」

 妖精のウィドーが耳元で叫ぶと、それに呼応するかのように電気猫のヘイズが銃を向けた兵に電撃を放ち自由を奪う。

 飛行バイクの両サイドに備わったリノの大きな腕がパージされ、スノウが制御すると、ロケットパンチを彷彿させるかの如く勢いで軍用車や戦車を叩き潰しては永久凍土に置き去りにされたかと錯覚する程に即座に全てを凍てつかせる。

「戦争が好きか! ピーナ諸君!!」

 飛行バイクで超高速で飛ぶ速度と同時に、兵達に壊滅的なダメージを与えながらにブン太は叫ぶ。
 死なないように加減されており、危なそうな者にはウィドーが自己治癒力を高める術を施してはいるが、既に彼の心は大量殺人犯である。

「私は戦争が嫌いだ!!」

 見る見るうちに軍用車が凍りつき、中から慌てて飛び出した兵が感電して気絶していく様を見てブン太は涙を流しながらに空を仰ぐ。

「嗚呼我が神ネモよ!! これが試練だと言うのだな!! 俺が貴方の恩恵に与る信徒としての証明に、この試練を乗り越えろと言うのだな!!」

『いえ、全く預かり知らぬ話です』

「よろしい!! なればこの試練を乗り越えて、我こそが敬虔なる信徒であると証明してみせよう!!」

『聞けコラ』

 ブン太はぶっ壊れていた。
 それも無理はない、普通のオタクの日本人が、自らが愛する仲間、いや、ペットの力を使い大量殺人を犯したと思っているのだから。

 飼い犬のピットブルが散歩中に、幼女を噛み殺して殺処分だけでも業が深すぎるのに、彼は既に200人は余裕で殺したと思っているのだ。

 精神的限界を迎え、神に祈ってしまうのも致し方のない事である。

「さぁヘイズよ!! 貴殿の裁きの雷で、憎き戦争の駒である外道共を炭屑にしてしまえ!! スノウよ! その慈しみ深き愛でこの地を永久凍土に変えてしまうのだ!」

「ぃぃの?」
『駄目に決まってるでしょ。ちゃんと加減しなさい』

 市街戦の惨状が野戦よりも甚だしいとはよく言ったもので、スノウが操るリノの腕が軍用車を破壊し、その反動で水道管などが破裂し、その大量の水分が瞬時に凍る為に、民間人までもが足を取られて転んでしまう。
 その電気をよく通す状況下で、ヘイズが電気ショックを引っ切り無しにに起こすので二次災害、三次災害と被害が拡大していく。

「ヒャッハー!!汚物汚物汚物ぅ!」

『惨憺たる発言ですね……あら、爆撃機が離陸したようですね』

 購入したばかりの戦車を全て破壊され、更には虎の子の爆撃機の出陣、此処は市街地であり、フィリピンの民間人も数多く存在していると言うのに、余りにも強硬が過ぎる対応である。

「パラドックス、どっちから来よるん?」
『心配ありません。中にがいたので即座に制御しました。いいキッカケとなったので、パイロットパージの後、自爆させます』

 海に棄てるのは環境汚染であるからと、普通の荒野に墜落させるのだからフィリピン側としはたまったものではない。

『さてブン太。事実上マニラを制圧してしまったようですが、これからどうします?』

「ネモさん探さなあかんやろ。あんだけ殺してもたんやし、なんとかならんか聞いてみるしかない」

『心配いりません。重傷者は存在しますが死者はありません。これよりウィドーと同伴し、治癒に当たれば被害はゼロで済みます』

「うそやん?! バッタンバッタン倒れてたやん」

『ウィドーとスノウが連携をとり、ヘイズもそれに応えたのです。よくやったと褒めてあげてください』

 その言葉を聞いて、ナチュラルハイのままにおかしくなっていたブン太は、心の底からネモに祈りを捧げた。

 やはりあなたは神なのだ、私の心の全てはあなたへの信仰に捧げると……。

 一方でケツが痒いと嫌がられている事も知らずに、絶えず祈りを捧げたのだ。

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