俺、元日本人のガチ神だけどY◯uTuberになるね!

慈桜

第37話



「西野カ◯好きな女は大体浮気相手の子供生む。はいどうもグラトニーです」

「いいすぎやろ」

「そぉれではですね、本日もいつも通りに謎のユーチューバーネモの後追い動画を撮影していきます!」

「無許可だけどな」

 真っ黒で口元がギザギザの鮫のような仮面をしているグラトニーと名乗った男は、トップユーチューバーの一人であり、以前は大金を使う動画をよくアップしていたのだが、現在は流行の波に乗って、ネモの動画の実証や調査などをメインに行っている。

「だがしかし! 最近のネモらしい動画と言えば、パチンコに勝てるようになる手乗りライオンと、俺も愛用してるAIパラドックスの紹介、後は東京河川浄化物語を最後に、後はでんじろ◯先生みたいな科学の研究成果ばかりなので、すごいけど物足りないって思っている方は少なくないと思います」

「米津玄◯ばりに再生数稼いでるけどな」

「そこでだ! 調子に乗らせてもらうと、以前ネモからコラボしませんかとDMを貰ったことがあるんだけどね、無名だし忙しいし、よく見たらイケメンだし嫉妬に狂っちゃうって思って返事をしてなかったんだけど、今日はユーチューバーのパイセンとして、ビシッとね、こうあるべきだと説教をしてやろうかと思ってる」

「お前余裕で格下だけどな」

 グラトニーのチャンネル登録数は180万人に対して、ネモは現在2,200万人であり、世界ランキング18位の殿堂入りを果たしてしまっている。
 しかしネモは日本のユーチューバーに憧れてユーチューバーになりたいと言い始めたので、勿論……。

「ここはビシッとネモにダイレクトメールでコラボしませんかと送ってみる」

「ダッサ。既にめっちゃ下からやん」

「あほか。最低限の敬意ってのがあるやろっ……おお?」

「えぇぇ…………」

 二人が固まってしまうのも無理はない。何故なら突如として目の前の空間が歪み、件の人物であるネモが姿を現したのだから。

「コラボあざぁっす! うわぁ、感激だなぁ。本物だぁ」

「いやいや、こっちの台詞なんだけども。てか今のどうやったの?」

「あ、今のはアレですよ、グラトニーさんのスマホの中のパラドックスに座標指定させて転移したんです。転移のやり方は……まぁ、神のみぞ知る的な?」

「味噌汁の話?」
「すべってますよお兄さん」

 世界的に見てはカスでも、ネモとしては憧れのユーチューバーが相手であるから、当然来てしまう。
 グラトニーは混乱してしまっているが、彼もプロである。
 即座に撮影の段取りを決めて行く。

「いや、本当ありがたい。ちょっと人が集まりすぎてるんで、歩きながら話しましょうってかタクシー乗りましょ」

 本来は配信動画に打ち合わせなど載せないが、ネモとのコラボであるので、存分にその様子を映し出している。

「じゃあ、企画何本か用意して前後編に分けましょう。前半俺のチャンネル、後半ネモさんのチャンネルって感じで、リンクを張り合う感じで」

「おおお! ユーチューバーっぽい! いいですねぇ。あ、それと全然いつものグラトニーさんの感じで喋ってもらっていいですよ。俺、普通にただのファンなんで」

「え……いいの? 普通に甘えちゃうよ? しかも自慢しちゃうよ? ネモは俺のファンなんだってさ! って」

「ガンガンオッケーですよぉ。基本撮影の時とかグラトニーさんの編集真似してるぐらいなんで大先輩です」

「そんなのみんな一緒じゃーん! 」

 いつもはお喋りのカメラマンは圧倒されてしまい終始無言である。
 字幕でも「…………………」となっているので、その時の心境を如実に表しているのだろう。
 グラトニーが馴れ馴れしく、ネモがニコニコしている謎の絵面である。

「じゃあコラボ発表の短い動画を撮って、注目集めてから本編って感じにしよう」

「おけぇい。でも企画ってなにするんです? 」

「それをちょっと考えなきゃだよね。ネモの場合は美味しいネタがいっぱいあるから、横から叩き直すだけでも全然違うだろうけど、それだとコラボの意味ないし」

「おーすごい、プロっぽい」

 パチパチとわざとらしく拍手をする仕草は、一般人がやれば肩パンぐらいされてしまいそうな適当さであるが、ネモがそれをやれば絵になるのが不思議だ。

「逆にネモは普段動画を作る時、どうやってネタを考えてるの?」

「ただの思いつき、ですね。例えば、街をぐるぐる回ってて、空気が汚いなぁっ、よし、綺麗にしよう。けど、人が多いからウサギだと踏まれちゃう、じゃあ街路樹をエルフにしちゃえってノリです。そしたらエルフは風洗いの樹を生やす。空気が綺麗になったけど、エルフ達に仕事を与えなきゃ途方にくれてしまうだろうから、自警団や清掃活動をさせる。そしてついでに撮影しておく。そんなノリですね」

「ノリでやっちゃうんだ」

「はい。例えばこんな風に」

 そう言ってネモがパチンと指を鳴らすと、タクシー越しに街路樹が全裸のエルフ達に姿を変える。
 運転手は驚きのあまりに急ブレーキを踏み込むが、それは街行く人々も同様である。

「パラ子、通行人のスマホから風洗いの樹を植えろと命令しろ。後は俺の口座で決済していいから服を買ってあげてくれないかと通行人達にお願いしてくれ。時間を割いてくれた人には購入額と同額の謝礼を支払ってくれ」
『了解しました。みんな超高級な服を買いそうな提案ですね』

「それでいいんだ。高額でお洒落な服を着ている方が、この街の若者に対して発言権を持つだろう」
『創造主様は割と安上がりですが、それを言うのは野暮ですね。既に風洗いの樹の植樹が完了し、全てのエルフが民間人の庇護下に入りました』

 ネモは親指を立ててグラトニーにキラリと歯を見せるが、彼は言葉を失ってしまっている。

「これで渋谷をグルリと回れば、環境改善とエルフの彼女がゲットできるかもしれないラッキーとスケベのダブルパンチに遭遇するでしょ? 誰も損しないし、面白いかなぁって。いつもはこんな感じです」

「引くわぁー。生で見ると引くわー。俺的に、ネモにはファン念願のストリートライブ復活とかしてもらって、俺がこっそり人脈使って観客女の子で埋め尽くしてやろうかなっとか、色々考えてたのにコレだけで一本行けちゃうよ」

「それはそれで面白そうですね。逆に幼女になってミスアンドロイ◯とかキリッキリのピーキーな声出しながら熱唱しようかな」

「いや、それも面白そうだけど!! ってか、ねぇ!! エルフもっと大事にしろよぉ! かわいそうだろぉ! 正しい助け方とかレクチャーしろよぉ! ネタの無駄遣いがひどいよぉ!」

 そして案外簡単にグラトニーは壊れてしまった。
 それも仕方ないだろう。タクシーが走れば走るほど、街中に全裸で泣きそうになっているエルフの少女達が量産されて行くのだから。
 グラトニーもさすがにネモの胸ぐらに掴みかかって止めようとするが、ネモは楽しそうにケラケラ笑っているだけである。

「あははは! 力強いですねグラトニーさん!」

「おいぃぃぃ! 首絞めてるのにちょっと嬉しそうにするなぁぁあ!

 そこでタイトルの回収となるようである。
【緊急コラボ企画】鬼畜神ネモが酷い奴すぎてエルフの少女を保護する羽目になった。【ネモ降臨】

「おっちゃんタクシー止めて! お釣りいらないから」

「えぇ、一万円も……」

 タクシーから飛び降りた先で、泣きながら風洗いの樹を急速成育させているエルフの少女達は、既に通行人達に保護されているようで、心配なさそうであるが、ネモはその後ろからコラボが楽しくて仕方がないといったニヤケ面を浮かべている。

「あー! 桜の木いいですねぇ。桜でエルフ作ったら髪の毛ピンクなんですよ。ほら」

「てめぇ! やめろっつってんだろ!」

 目の前では街路樹の桜が桃色の髪の少女に姿を変え、全裸の状態である事に気がついては、即座にしゃがみ込んで泣き始めてしまう。
 年の頃は小学校高学年程であろうか? 他のエルフよりも明らかに若い。

「しかも桜のエルフってちょっとおとなしいって言うか、物静かな子とか恥ずかしがり屋が多いんですよねぇ。なんでだろう。おピンクなのに」

「それ知ってたらやめてあげろぉ! せめて服用意してやれぇ! しかもなんで子供?! 他のエルフは内角低めでもゾーン入ってるのに!」

「樹が若過ぎたのかもしれないですねぇ。他のに比べたら細かったし」

 グラトニーは自身のTシャツとスウェットを脱ぎ、パンツ一丁のままに桜エルフにそれを着せる。

「大丈夫だよ。すぐ服を買ってあげるから我慢してね。行こう」

 グラトニーは一刻も早く安心させようとまくし立てるが、桜エルフは大粒の涙を浮かべながらふるふると首を左右に振る。

「おいネモ! この子なんでお前見て震えてるんだよ!」

「いやだなぁグラトニーさん。風洗いの樹を植えろって念話で命令しただけですよ」

「今すぐその冷たい視線をやめろ?! 見開くのもやめて!!」

 その後ろから風洗いの樹を植えろと冷酷な視線で見下ろしながらに念話を飛ばしている創造主がいたら、そりゃ震えるのも仕方ない。

 桜エルフは瞳を潤ませながらに、頑張れ頑張れと風洗いの樹を急速に成長させ、恐らく何かの許しを得たのだろう。パァっと明るい笑みを浮かべてグラトニーに抱きついた。

 それからはグラトニーの謎の父性暴発映像が続くのみである。
 桜のエルフだからとサクラと安易な名前をつけて、ハイブランドの子供服を無双買いし始めたのだ。

「この店でこの子のサイズに合う服全部ください」

「おー、ここでも大暴れ。グラトニーさんはやっぱり豪快ですねぇ」

「全部お前の金だけどな!」

 翳したスマホの画面ではパラドックスが決済用のコードを表示してウィンクをしている。

「は? いや、だってもう1000万ぐらい使ってるし……」
『創造主様が自分で仰ったことであります』

「楽しいなー! サクラ! え? ウブ◯のビックバ◯が欲しいって? うわぁ、お取り寄せになっちゃうなぁ。でも時計は必要だもんなぁ」

「パラ子、グラトニーさんが言ってる時計って幾らするの?」
『5億円程でしょうか』

「ダメに決まってんだろ! おい!」

 買い物系のジャンルになるとグラトニーの独壇場である。
 ハイブランドの子供服をこれでもかと買い込み、流石に痺れを切らしたネモがクレジットを封鎖すると、そこでグラトニーが本領発揮する。

「サクラの為に使った1200万と、報酬で振り込まれた1200万、併せて2400万でしょ? 俺も2400万出すから、総取りでゲームしようよネモ。ネモが勝ったら俺が4800万支払うし、俺が勝ったらネモは追加で2400万支払うって感じで」

「よろしい、ならば戦争だ」

「じゃあルールは簡単。これから1時間以内に100万円以内で時計を買う。買い物が終わったら、戸塚に時計を渡して、どっちが買ったのかわからないようにする。それをサクラに選んで貰えた方が勝ち。負けた方の時計は視聴者プレゼント。どう?」

「賭けてる額が馬鹿だけど、企画としてはアリかと……」

 ここで前編が終了し、後半へと移行。
 買い物の様子は撮影せず、カメラマン戸塚がサクラとトークしているホッコリとした場面が続く。

「なんで日本語喋れるん?」

「ん? 創造主様がそうしたから」

「ネモから脅されてない? 俺の時計選べよって」

「うん! ちゃんとごめんねしてくれたし、やっぱり優しいんだよ」

 両手持ちでチョコフラペチーノを食べてる子供のエルフの可愛さは殺人的で、カフェではジリジリと写真蝿の群れが出来始めるが、最低限をわきまえているので、写真の申し込みは順番である。

「サクラは可愛いから大人気やな」

「えへへ、ありがと」

 全裸で放り出されて号泣していた者と同一人物とは思えない天使の微笑みである。
 こんなにもいい子であると、当然ネモにヘイトが集まり、負けてしまえと視聴者は思い始めているだろうが、さて結果はいかに。

 戸塚が一旦離れてネモとグラトニーから時計を受け取り、スクランブル交差点で結果を待つ。
 選ばれた方のスマホに着信がある判定方法である。
 カフェの窓からは、写真を頼まれる二人の姿がバッチリと映し出されている。

 まず最初に開けられたのは、ピンク色のロレック◯である。
 サクラはキラキラのロレックスを見ながら「おー」とは呟くが、それを手に取ることなく、次の箱へと手を伸ばす。
 そこにあったのは、ウサギが時計をお腹に抱きかかえたアンティークの懐中時計である。

「かわいい! サクラこれが好き!」

 反応を見るからにブッチギリである。
 早速戸塚がスマホを取り出し、勝者を告げるべく操作を始めるが、既に結果がわかってしまったのか、ネモが顔を覆いながらに膝下から崩れ落ちた。

「グラさん、圧勝です」

『うそやん、まじで。ネモ何買ったの?』

「98万円のロレック◯やね」

『ブフォッ。俺5千円の木のやつか3万円のウサギのやつか悩んで、3万円でも高すぎだなぁって思ってたのにアハハハハ!!』

 結果はグラトニーの圧勝であったが、今回の2400万はありがたく貰って、残りの2400万は今後またコラボする際のギャランティってことでいいですよと綺麗に収まった。
 中々にお洒落なやりとりである。

「是非またコラボしましょう。本当楽しかったです。これ、良かったら使って下さい」

 そしてネモは感謝の意を表して、車型の飛行ユニットをプレゼントした。
 デザインが軽四サイズのド紫のチェシャ猫あったのは、恐らく細やかな意趣返しであろうとは思うが、最後まで格の違いを見せつける結末となった。

 後にグラトニーはサクラと戸塚と共に、チェシャ猫型ユニットに乗りながらに世界中を旅し、かなり有名なユーチューバーとなるが、それはまだまだ先のお話である。





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コメント

  • ノベルバユーザー229059

    〇津玄師

    1
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