俺、元日本人のガチ神だけどY◯uTuberになるね!

慈桜

第28.6話



 結果として彼女の旦那云々は身を守る為の嘘で、あっさり移住を決意してくれた。

「じゃあまた迎えに来るね」

「待って。他のみんなも助けてくれるの?」

「うん。でも全員なんて無理。子供がメインだよ? 子供を助けたいんだ」

「じゃあ手伝うわ。その方が安心すると思うから」

 おつかれーってノリで解散しようとしたら、ホームレスの警戒心を解く為に彼女自身から同伴を申し出て来たので、他の土管も訪問することとなった。

 少し観光して来ようかと思ったが、それもまた悪くないかと快諾したのだが、この土管オカンは何やら勘違いをしている。

「いやいや、オッさんしかいないじゃん」

「でも困ってるから……」

「気持ちはわかるけど、子供を助けたいんだ。大人はついででしかない」

 普通に案内されて、普通にオッさんが出てくるだけってオチね。
 最初から、子供がいる所にしてくれって言ってるのに話のわからん奴である。

「スラムのみんなは仲間意識が強いの。だから除け者にしたら話を聞いてもらえなくなるかもしれない」

「じゃあ場所を変えるだけだ。見てるだけでもそこかしこに困ってる子供達がいる。俺が助けるのはその子達で、その子供達が働いて沢山稼げるように支援するだけだ。貧民の特殊なコミュニティを持ち込まれて差別意識の温床になっても困るしな」

 マジレスすまん。しかしこいつらは同じ穴の狢と言うか、近隣の不遇な環境で生まれた者同士の特殊な繋がりが強いみたいなんだ。
 土管オカンは何度言ってもオッさんやオバハンにも声をかけるし、別行動にしようとしても、付いて回るので少し困ってる。

 確かに助けてあげたいとは思う。
 しかし誰彼構わず連れ込んでしまえば、フィリピンスラムが場所を変えて出来上がって何も変わらず即終了だ。
 立派な働き手に育てる覚悟を持って俺も行動してるし、犬猫を拾うんじゃないんだから無限の可能性がある子供を助けたいのは至って普通。

「でも、あなたはきっと真の人なのでしょ?」

「やめてよ。俺はお前らの宗教観とはかけ離れた存在だよ」

 やはり自立したくて、もがき苦しんでる子供達だけを連れて行った方が良さそうだな。本当の孤児や、親に虐待を受けているよな子供達にターゲットを絞ろう。
 全てに救いの手を差し伸べるなんて神みたいな事は俺には無理だ。って、一応神だったな、俺。てへ。

「どこに行くの?」

「ちょっと両替してくる。また迎えに行くから帰っといていいぞ」

「本当に戻ってくる?」

「バス置いてんじゃん。絶対戻るよ」

 とりあえず土管オカンを納得させてから別行動。一旦市街地に出て、いつぞやの全く使えなかった現金をフィリピンペソに両替しよう。

 軽く歩いた感じだとチップを持ってる方が、この街ではやりやすそうだと感じたからな。
 両替が終わって少し路地裏に入ると、靴磨きをしている少年を発見。
 小学校の低学年ぐらいだが、非公認でこのような仕事をして日銭を稼いでいるのだろう。

「おいチビ助、お前親はいるのか?」

 コクンと頷いているので、言葉は通じているかと思われる。

「親がいなくて困ってるガキを連れて来たら50ペソやる。できるか?」

 再びコクンと頷いたので多分理解していると思う。
 チビ助は仕事道具をサッサと片付け、そのまま路地裏の奥へと消えて行く。

 俺もついて行こうとしたが、手で静止され首を何度も横に振っていたので、ここで待つ事にする。

「つれてきた。みんな親いない。お金ちょうだい」

 靴磨きのチビ助と同年代の子供達が、にーしーろーやー、チビ助入れて13人ですね。
 そんな一瞬で集まるのはおかしいし、こいつら普通にストリートチルドレンなのはわかるけど、まだそれなりに身なりがいい。
 って事は、靴磨きが悪知恵働かせて、そこらのガキを適当に連れてきたんだろ。

「はーい、それじゃあ、俺はお前らを日本に連れていってお金持ちになれるように教育します。今戻らないと二度と家族に会えません。嘘つきは帰ってください」

 しかし子供達はクスクスと笑いながら、そこから微動だにしない。

「大人は嘘つき。だけど、俺たちは嘘ついたら殺される。ビジネスで嘘つかない」

 どうやらチビ助はマジで親のいない子供達を集めてきてくれたようである。
 全力で疑った俺が全力で恥ずかしい。

「日本、俺も行きたい。時間くれたらもっと集めてくる。こいつらは俺の仲間だからすぐ集まった。みんな稼げるし、馬鹿じゃない。仕事しながら英語も勉強してる」

「うん、マジでごめん。全力で俺が悪かった。これ約束の金な」

 そう言って600ペソを渡すと、チビ助は仲間に50ペソずつ配り始めた。

「親のいない子供を連れてきたら、この人は50ペソくれる。自分を買い戻して、今のまま生きるなら、そのお金を返して断るといい」

 この子、凄くいい子である。

「これでみんな親のいない子供を集めたら金になるって覚えた。俺だけでいいなら俺が頑張るけど、沢山集めるなら、みんなにも依頼した方がいい」

「わかった。じゃあ全員に頼む」

「じゃあ、ここからはビジネスの話がしたい、少し待ってほしい」

 そう言って靴磨きの少年は再び仲間へと振り返った。

「この仕事を受けると決めたなら、さっきのお金から20ペソずつ俺に渡せ」

 さっきまで凄く優しい兄貴風を吹かせていたのに、突然の返金要請である。
 一瞬で悪魔に見えるから不思議だ。

「いいか、お前達も同じ事をするんだ。俺はお前達をこの人に紹介したから、240ペソも儲けることができた。お前達も一人連れてきたら、30ペソは渡して、20ペソは紹介の報酬として貰う。それで自分の価値を取り戻すんだ。そうすれば、必ず一人は連れてきてやろうと思うだろ? 自分だけ楽をしようとせずに、自分の価値を自分で証明しろ」

 見事すぎる演説である。
 なんか子供達がめっちゃ元気になってる。日本の子供とはまるでハングリーさが違うな。その日生きるのも必死とは人を強くするんだな。

「待たせてごめん。これでみんなは頑張ると思う。集めたら何処に連れていけばいい?」

「土管の家がいっぱいあるとこに銀色のバスを止めてるから、そこまで連れてきてくれればいい」

「わかった。よし、じゃあお前ら先に行け! 集合は土管スラムの銀のバスだ! 忘れるなよ!」

 明らかに靴磨き君はボスだな。
 彼の一声で12人の子供達が一斉に路地の裏へと駆けて行った。

「じゃあお兄さん。本題なんだけど、親がいても、親元を離れたがっている子供でもいいんだよね?」

「あぁ、そうだな。単純に困っている子供を助ける。それだけだ」

「わかった。それならもっと簡単だ」

「それはアイツらに教えてやらなくてもいいのか?」

「いいんだ。俺はお兄さんの話していたことから、子供に勉強させて仕事をさせたいと思ってるんだなって考えた。親がいない方がいいのは、連れて行きやすいから、じゃあ親がいても、いないのと同じ奴でも、大丈夫だって考えた。俺は考えたからチャンスを広げた、あいつらは俺に与えられた知識しか活用しなかった。たったそれだけの差。だけどビジネスではそれが大きい。最後に集まった時、俺がアイツらより多くの子供を連れて行って、格の違いを見せて学ばせるんだ。少し考えればわかったことだって」

 こいつ、鍛えたら将来凄い奴になりそうだな。まだ6歳、7歳ぐらいなのに。

「じゃあ、後で銀のバスでね」

 ホームレスの13歳や14歳の少女が子供を産む、その子供がまた若くして子供を産む……教育を受けられない以上、貧困の連鎖が断ち切れる事はない悪循環の中で苦しむ多くの子供達を道すがらに見てきた後だったので、靴磨きの少年の後ろ姿はやたらと逞しく見えた。

 人の目から避けながらにも無許可で小銭を稼げる仕事をし、自ら学費を払って教養を高めようとしているし、その知恵を余す事なく仲間にも分け与えていた。

 いいね、あんなの見ると、マジでちゃんとした教師集めなきゃって思えてくる。

 可能性の塊だもんな。
 学びたいと思った事はなんでも学べるような環境にできるように頑張ろ。

「これなんですか?」

「チンポラード」

「ちんぽぉ?」

「No! チャンポ!」

「あー、チャンポラード! これください」

 いつも言っているが、別に食わずしても生きていける。
 でも折角フィリピンに来たから、日本では普段お目にかかれない料理とかも動画に撮っておきたいと思う。

「ごっふっ、うぉ……これ」

 チンポラードの見た目は茶色とツブツブの謎の泥状の物体だったんだけど、匂い的にチョコだったから精々クランキーのドロドロなヤツだと思って頼んだんだ。

 そしたら米だよね。チョコと米。
 チョコレートのお粥ってノリかな?
 でもチョコのお粥って考えながら割り切って食べたら普通に食える、てか慣れたら美味しい。
 けど、溶けたチョコナッツ、もしくはチョコタピオカ的なノリで何も知らずに食べたら噎せるのは間違いない。

 よし全部は食えないけど甘いもの食ったから、次はしょっぱいの食べよう。細長い春巻きみたいなの売ってるから、これにしよ。

「これください」

「This?」

「This」

 よくわからんけど、Thisのやりとり繰り返して行ったら、屋台の春巻き全部買わされた。
 わしゃマイケルジャクソ◯か。
 安いからいいけど。

「お、これは、おほ」

 なるほど、シンプルにうまい。
 ひき肉を春巻きの皮で細長く包んで揚げて、辛くて酸っぱくて甘い謎ソースが肉の脂と共に最高の旨味を演出してくれてる。
 無限に食える揚げ春巻きだから、無限揚げ春巻きと名付けよう。
 インフィニティフライスプリングローrやめた、長すぎる。

 春巻きは子供達にあげるとして一旦しまいこんで、次は甘いものを食べようと歩き出したのだが、実に微妙なラインの商品を発見してしまった。

「これ揚げバナナ?」

「そうだよ、見りゃわかんだろ」

「え、どんな味? 芋系?」

「これはキャラメルでコーティングしてるから甘いよ」

「じゃあ、食う。ちょうだい」

 まぁ、感想としては、揚げたバナナにプリンのタレぶっかけて炙ってみました。以上。

 揚げたてアツアツとかだったら美味しかったと予想できる。
 次に来る機会があれば、必ずリベンジして揚げたてを所望しようと心に決めた。

「はーい、ニイちゃん、食ってみるかい?」

「おっけー、バッチコイ」

 アツアツの豆腐とタピオカに黒蜜ぶっかけたカオスカクテルを差し出されたが郷に入りてはなんとやら。
 食べてみると意外とおいしい。
 美味しいけど半分ぐらい食べたら見た目のキモさに現実に戻って吐きそうになってきた。

 もういいや、戻って子供達の帰還を待とう。
 座標指定してなかったから、また暫く歩かなきゃだけど、早く戻りすぎて土管オカンに質問責めに会うのも嫌だからノンビリ。

 年端も行かぬ少女が春を売る側で、ビジネスマンがパリッとしたスーツで歩いているアンバランスな風景。
 写真のセンスなんてないけど、パシャリと残しておきましょう。

「はいお金」

「えぇ?」

「写真撮ったでしょ。モデル代よ」

 中学生ぐらいの女の子が妙な色気を纏いながらにギブミーマネー、乱雑にポケットに入れた札束から、おみくじ気分で一枚抜き取ると1000ペソだった。
 日本円にして2,700円程度だけど、フィリピンなら高級レストランでディナーとしけ込める大金だ。

「ラッキーガールだな。ほれ」

「こ、こんなに貰えないよぅ」

「たまたま引いたらそれだったんだ。出したら引っ込めないから貰ってくれ」

 そうだ、ここで会ったのも何かの縁だし、この子にも人集めのバイトをさせてもいいな。

「ここから進んだ先に土管がいっぱいあるホームレスばかりのとこがあるだろ? そこに銀色のバスがあるから、親がいない子供とか、今の生活から抜け出したい子供を連れてきてくれたら、一人につき50ペソあげるよ。10人連れてきたら500ペソだね」

「子供を集めてどうするの? 奴隷にするの?」

「日本って国に連れて行くんだ。そこで色んな勉強して、農業や漁業の手伝いをしながらに、将来お金持ちになれるように育てるんだ」

「……ふーん。私は大人だから行ったらダメ? 」

 12歳、13歳程の少女とは思えない発言であるが、優しく頭をポンポンしておく。

「君も十分子供だよ。そうだな……16歳までならいいよ。行きたいって子がいたら連れておいで」

 シビアに考えて、教育をするなら16歳ぐらいが限界だと思う。
 17歳で本格的に成熟し始めて、18歳じゃ完全に大人の意識を持ち始める。
 本音を言えば12歳ぐらいまでの子供を保護したいが、それを言ってしまえば目の前のチャンスをモノにしようとしている小さな彼女を否定する事になるので16歳までとする。
 もうそれぐらいになるとバリバリ働ける大人と変わらないけど、それは見て見ぬ振りのスルーの方向で頼む。

「って、なんどいこれ」

 少女とバイバイしてからに、土管スラムに戻ってくると、俺のバスの周りは見渡す限りの子供パニックになっていた。

「あ、ゲニはまだ戻ってないの。えと、連れて来たグループにわけるね」

「お、おう」

 靴磨きの少年のグループの女の子が率先して、団子を作っていく。
 彼女のグループだけでも11人もいる。
 ちょっと予想超えてきやがったな……。

 混雑してるせいで大人もゾロゾロと集まってきてしまっているので、順次向こうに連れて行ってしまおう。

「じゃあお前らバス乗れぇ。ちゃんと詰めろよぉ。あと、これ550ペソな」

 日本に連れて行ってしまうから、意味のないお金だが、きっとそれは凄く価値のあるお金になるだろう。
 いつか大人になって、そのペソで買い物をして貰いたいものである。


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