俺、元日本人のガチ神だけどY◯uTuberになるね!

慈桜

第27話



「さぁ、ネモ! 好きなだけ食べてくれ!」

「あーはいはい。食べるから早く金くれよ」

 目の前のヒゲメンは、先日の動画を投稿していたどこぞやの王子だ。

 一見豪華すぎる食事を並べられ、凄まじい歓待を受けているようにも感じるが、その全てには隠そうともせずに猛毒が振りかけられている。

 全て味を変えて毒の効果を消しておいしく頂いているのは言うまでもないが、先ずこの殺す気満々の大歓迎は、待ち合わせ場所に指定された砂漠のど真ん中から始まったんだ。

 最初は座標指定が間違ってると思ったよ、なんてったって周辺には砂しかない砂漠の中の砂漠だったからね。

 この土地の人間の特殊なヘキかなとか思いながらに無理矢理自分を納得させながらに待っていると、お近づきの印にとでも言わんばかりに、四駆を改造して重機関銃を搭載した戦闘車両10台が扇状に並んで無数の弾丸をブチ込んでくれた。

 一瞬頭のカメラが心配になったけど、物理結界がいい仕事してくれてる。

 ブチ切れて暴れそうになったけど、高級な四駆をそのまま全て没収し、乗ってた人達は砂の上に転がした。
 勿論殺してないよ? 『おいっ』って威圧を込めて叫んだら恐慌状態になっただけ。

 状態異常:恐慌を完治させる効果を持ったサソリを作って、ブスブス刺してビビらせたのはご愛嬌、とりあえず全員から所持金をカツアゲしようとしたら、次は金色の四駆が訪れて、中から動画の王子とやらが登場した次第。

「やぁ、ネモ。よく来てくれた。歓迎するよ」

「オカネ、クダサイ」

 次は動画のお返しだと言わんばかりにわざとカタコトのアラビア語で返すと、何故か彼の逆鱗に触れてしまったようで、ボディガードからマシンガンを乱射された。
 つまらないので、撃たれている間は俺に飛来した弾丸を一つ一つゲットして、それらを材料に王子が一心不乱に鼻くそをほじっている顔面の彫刻を作ってやった。
 並べたら特大の鼻くそが取れる一大スペクタクルである。
 勿論成り金趣味っぽいから純金に変換しておいたよ? ソフトボールぐらいの
 大きさだけど、我ながらよくできてると思う。

「はい、プレゼント。どうでもいいから160億寄越せよ。そろそろ殺すぞ」

「ははは。これは素晴らしいプレゼントだ。しかも金でできているのか」

 既に青筋を立てながらに歯軋りをしてイライラも限界を越えていそうだけど、そんな事は知った事ではない。

「しかし80億と言ったはずだったが?」

「お前らが機関銃で壊したから、それも含めて2台分だよ」

 嘘だけどね。普通に亜空間に片付けてたから何の被害もないけど、本気で殺しに来てるから、倍額にしてやろうって腹である。

「なるほど。それならば仕方がない。まずは歓迎の宴を開こう! 宮殿にきたまえ!」

「行くけど早く金くれよな」

 そして冒頭に戻る。
 宮殿に到着した後に、予め用意していたような豪勢な食事を並べて、美人なメイドが身の回りの世話をしてくれる。

 グレイビーソースのような猛毒をステーキにドボドボかけてなかったらすごい歓待だと思うよ、割とマジで。

「これで銃殺と毒殺が失敗に終わってるけど、そろそろ怒っていいのかな?」

「……怒っているのはこちらの方だ」

「え、まさかの逆ギレ?!」

「確かに君は優れた科学者で、更には優れた手品師かもしれない。しかしマネーごときで釣られるような俗物が神を自称するなどあってはならない」

 うん、やっぱりそう来ちゃうよね、
 ここは素直に彼の意見に賛同してお金を戴く流れに持っていこう。

「あー、やっぱり勘違いしちゃってますぅ? 日本語って同じ単語でも違う意味を持つ言葉が沢山あってね、漢字でゴッドって書くとこんな字になるんだけど」

 とりあえず壁に『神』って馬鹿でかく描きだして、一から説明していく。

「このネの形はころもへんと言って、漢字の成り立ちの部首であるのだけど、インターネットとカタカナで書いた時の「ネ」と同じ文字なんだ」

 ほんとはしめすへんで災害をもじって成り立った漢字だとかのややこしい説明はしない。単純に簡潔にがモットーです。

「そして隣の申すは、話す、言うとかの丁寧かつ強い意味合いを持つ言葉、即ち、俺はネットに物申す、ユーチューバー界に一石を投じるって意味合いで『ネ申ねもうすちゃんねる』って動画ちゃんねるを開設してる。それを視聴者が勝手に神と捉えているだけ。日本は多神教であるから、神の単語にも最上級の賛辞の意味合いも込められたりもするんだ。すごいな! 最強か! 鬼ってるな! お前神やん! 的な感覚でな。お前達のように神聖な存在に対する感覚ではなく、正しく科学者として、そして手品師として賞賛の声を集めているだけだ。ありがたいことにな」

「神を語るなど言語道断!!」

 ほんとめんどくさい。死ねばいいのに。懇切丁寧に神ではないと否定してあげたのにどうしてそうなる。
 ずっとコイツのターンを我慢しなきゃならんのか? 私のターンはいつ。

「アマテラスなどと存在しない神を語る少女と、神の力についての談義をしていたではないか。私は騙されないぞ」

「あー、まぁ、宇宙の果ての超科学を説明するのが面倒だから神の力って言ってるだけだ。てか、こんなのが面倒だから日本で活動してるわけだけど、金払う気ないなら適当に街とかビルとかぶっ壊して帰るけどオケ?」

「ダメに決まっているだろう。約束のバイクも貰っていないしな。折角だから私の国を見て欲しくてヘリも準備させてるんだ。是非ともお付き合い願いたい」

 こいつ散々殺しにかかってるくせにまだ商談の余地ありと思ってるんだけど、なんか逆に感心してきたわ。
 ワガママもここまで来たら神クラスだ。

 そして場面は変わって上空のヘリの中でおまんにゃお。

「では、少し戻った質問に答えよう。銃殺、毒殺がダメなら転落死はどうだ」

 王子の言葉と共に、ボディガードが俺をヘリの外に投げ捨てるけど、予想できていたので、普通に空を歩く。

 ボディガードはそのまま重力のままに落下していき、パラシュートを開いたようだけども、俺はそのままヘリに戻る。

「王子、一つだけ教えて。飛行バイク買うつもりないよね?」

「いや、ある。購入の手続きがてらに殺害を試みているだけだ」

「馬鹿かお前。俺が死んだらバイク買えないだろうよ」

「その場合は別の日本人を金で釣ればいいだけだ」

 ダメです。全くもってダメな奴です。
 そりゃそうだよな。普通に考えて話がおいしすぎた。
 タダより怖いものはないなんて言うけど、おいしすぎる話ほど怖いものはないよ。
 こいつは飛行バイクなんて二の次で、とりあえず俺を殺すのが正義だと思ってるわけだし。

 ムカつくから砂漠に神位階の魔法でもブッ込んで大穴空けてやろうかな。いや、ダメだダメだ。破壊神ノリで暴れるのはイクナイ。穴を空けていいのはオーストラリアだけだ。
 落とされてもいいコロニーがあるなら紹介してくれ。

「王子、やっぱ俺帰るわ」

「どうしてだい? 歓迎の宴はまだまだ続けるよ?」

「うん、俺お前嫌い」

「なぜだい?殺したわけでもないのに」

 こいつの神経マジでバグってる。
 人は殺さないと決めていたけど、地球平和の為にこいつだけはプリンちゃんしておいた方がいいかもしれん。マジでそれぐらい狂ってる。

「殺害は私の愛情表現の一つだよ? 私は自身の敬愛する神を疑い、君を本当の神だとすら思ってしまった。その考えを否定する為にも、私の愛を持って君を殺してみようと画策したが、君は死なない。ならば私の愛を享受し続ける事ができる。そんな存在だと君自身思わないかい?」

「とりあえず脳みそが狂い遊ばせやがってるので、一から人付き合いでも勉強なされたら如何ですかねイカレポンチスさん」

 こうなってしまえばサヨナラバイバイだ。
 一応長い距離を時間をかけて飛んで来たので、最初の砂漠は転移座標にいれているし、観光に来る際は重宝するだろう。多分もう来ないけど。

 早速名古屋の赤鳥居に戻ろうかと、転移術式を起動しようとした瞬間、背後から王子が子泣き爺のように抱きついて来やがった。

「わかった。反省する。約束の額を支払うので飛行バイクとやらを売って欲しい」

「160億だからな」

 まぁ、外貨獲得は経済の基本なんで、ここはグッと堪えて商談に移行します。

「なるほど。このレバーで高度を調整するのだな」

「そうそう。後はアクセルを回すだけ」

「燃料は必要ないのかい?」

「そう、半永久に走り続けるよ」

「なるほど。いい買い物をした」

 結果的にはふっかけすぎが申し訳なくなったので、ジオン◯型を二台売ってあげた。ヘタレな自分が情けない。

 勿論入金はアラレちゃんの口座である。
 パッパは子供の為にせっせと働いているのだ。

「殺そうとするのウザいからやめろ。やめたらまた売ってやってもいい」

「愛が伝わらなくて残念だよ。だけどそうだね、次に取引をするならビジネスの話をしよう」

 嫌いだけど超金持ちなのは間違いないんだよな。
 こいつが80億で買ったって前例ができれば、少なくとも金持ち相手の末端価格だって事を加味しても、正味で40億ぐらいの付加価値はついた。
 今までは日本に容認させる為に無償で好き勝手に配っていたし、何処ぞのサラリーマンが1億なんて値段をつけてしまったから本来の価値より低く考えられていたが、80億の前例は海外市場での高額取引の足掛かりになる。

 こいつは嫌いだが、うまく繋がりを持っておけば、このままセレブのネットワークで世界中の金持ちから大金をせしめて、行き渡った頃に安売りしてザマァしたりもできるわけだ。

 しかし160億だ。何に使おうかな。
 神力を使うとするなら金で出来る事なんてたかが知れてるけど、面白おかしく誰かをハッピーにはできそうな気がするな。
 動画のネタとしても、お金を沢山使うと視聴数を稼げるっぽいし、今から何ができるか色々考えてみよう。

 なんか大会とか企画しても面白そうだなぁ……。
 アラレちゃんの【i'll be there】とかアニメ化してもらおうかな。
 3億ぐらい出したらやってくれそうな気もする。

「聞いているかいネモ」

「すまん聞いてなかった! またな王子!!」

 さぁ、砂漠なんて捨てて、さっさと日本に帰りましょう。
 俺はお金のためだけに来たのだから。

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