俺、元日本人のガチ神だけどY◯uTuberになるね!

慈桜

第16話 ムードよりも大切なことはあるよね。



「イチャラブ学園です! では、先払いで13万円となっております」

 ホテルのドアをノックされ、アラレちゃんが待っているかと思えば、立っていたのは身長185cmぐらいの禿げたおっさんである。

 事前に確認していた料金を渡し、目の前で勘定を済ませると「ごゆっくりお楽しみくださーい」とスライドして、その背後から作り笑いを浮かべたアラレちゃんが登場し、一瞬で真顔となる。

「み、く……でーす」

「まぁまぁアラレちゃん。ケーキも買ってきたし、ゲームとかギターも買ってきたから遊ぼうよ」

 引き返そうとしたアラレちゃんの手を掴んで強引に部屋へ連れ込み、強引にソファへと座らせる。
 部屋には街で買い込んだゲーム機に最新ソフト、無駄にいいギターも買って、お酒もおつまみも準備万端。

 いちいち野暮なことは聞かないよ、俺は彼女をゲストとして招待して、一宿一飯の恩義として持て成そうとしているだけだ。

「シャワー浴びるね」

「ああ、いらないいらない! いたさないから!」

「いたすって言い方」

「エロいことなしねって言ったのはアラレちゃんでしょ」

 それからは本当にさっきまでと変わらない楽しい時間を過ごした。
 お酒を飲んで、ホールケーキをフォークで突いて食べて、余ったら顔面ケーキで爆笑して、色んなゲームで勝負したり、アラレちゃんが攻略にハマってる間に、アラレちゃんの好きな歌の練習をして、弾き語りしてみたり。
 あっと言う間に8時間が過ぎていった。

「本当はね、18歳の時に居酒屋の社員になったんだ。それから2年間毎日16時間ぐらい働いてて、自立したくてがむしゃらに頑張ってたんだけど、気が付いたら小説が書けなくなってた」

「うん」

 時間が刻一刻とせまると、彼女は俺の肩に頭を置きながらにポツポツと語りはじめる。

「これじゃダメだ! って、貯金もしてたから仕事をやめて執筆に集中したんだけど、どうやっても昔みたいに書けなくて、焦りばっかり募ってたんだ」

「うん」

 彼女の頭を撫でながらに、相槌を打つだけ。ここで無駄な言葉を吐き出すのは無粋だろう。

「言い訳にしかならないけど、半年で貯金が尽きて、また仕事を探さなきゃ、でも、また仕事ばかりしてたら書けなくなるのは嫌だ。そう思って、週二回とか三回だけで、普通に働く何倍もの収入が得られるこの仕事を選んだんだ」

「うん」

「小説のせいじゃないよ。自分が自分である為に、自分の為に割り切ったんだ。それにこの仕事を始めてから、人のドロっとした感情とか綺麗事なしの性欲とかが昔よりリアルに描けるようになった。そこは作家としてプラスだったとも思ってる」

「うん」

 次第に彼女は情緒が不安定になってしまったのか、静かに涙を流し始めた。

「本当はヤタさんが好き。【幾何学模様のタイムパラドックス】をネットに投稿してた時、もう誰も私の事なんて覚えて無かったのに、最初から【i'll be there】の作者だって気付いてくれたのもヤタさんだった」

「そうだね。ブックマーク第一号の自信がある」

「うん。本当は抱かれてもいいと思ってたし、抱かれたいとすら思った。でも、オーラルだけだとは言っても性交渉を仕事にしているから、私を支え続けてくれたヤタさんが、お客さん達と同様に性処理の道具として私を使った未来は悲しさと黒く濁った世界しか見えなかったんだ」

「うん」

「ずっと、ずっと不安だったんだ。2年のブランクは私の唯一を消してしまったんじゃないか。もう、誰にも受け入れられないんじゃないか、もう大好きな世界を描けないんじゃないかって」

 でも、彼女はその才能で書籍化作家に返り咲いた。
 少なくとも1万人以上の人間が、彼女の世界観にのめり込んだ不動の証だ。

「深く黒い不安の海から、そっと手を差し伸べてくれた。ずっと応援してくれたヤタさん。そんな唯一の心の支えをセックスなんかで失いなくない、そう思ったんだけど、それは私のエゴだって気付いた。私は脳味噌の中身を売りたいが為に体を売ることを選んだのに、その何方も欲しているヤタさんを突き放したんだなって」

 そこで知識欲を満たすために抱きたかったなんて言わない。
 俺としては、世界を想像で創造する小説家たる人種がもっと知りたくて、その知識欲が性交渉に対する関心にまで及んでしまったのだが、それを言えば嫌われてしまいそうなので、頷いておくに留める。

 アラレちゃんはスマホを取り出して、何処ぞに電話をかけると「今日はこのままあがります。お金は後日」と短く伝えてから、本当の笑顔を見せて俺に向き直った。

「これでお金で買った時間は終わり。ヤタさん、エッチしよう」

 正直、そこから先の事はあまり覚えていない。
 ただ、差し当たり様式美として、この言葉を残そう。

 この後、めちゃくちゃセックスした。


 ━━


 ただただ、互いに肉欲に溺れたまま、
 夜の21時から、翌退出の13時を優に超えて、セックス、ピロートーク、仮眠、セックス、ピロートーク、仮眠を繰り返しである。

 こうなってくると不思議であるが、今更ながらに懐かしい感情に満たされてしまっている。

「アラレちゃん。もしでいいけど子供産んでみる? 」

「え?」

「産むなら一生生活に困らないように毎月養育費を送るよ。もう、嫌な仕事もしなくてよくなる」

「でも……」

 そりゃいきなりこんな事を言われたら困るよな。
 別にお金に困らないようにする方法は沢山あるけど、彼女にはもっと執筆に集中してほしい。

 俺としては久しく忘れていたけど、恐らくアラレちゃんのことが恋愛感情の意味で『好き』だと思うし、思ってしまったからこそ子供を産んで欲しい。

「神と人の間に産まれた子供は亜神デミゴッドとなるから、長生きであるし転生もできるんだ。アラレちゃんがお婆ちゃんになって死んでしまっても、アラレちゃんと俺の間に子供がいれば、俺はアラレちゃんを忘れないだろう。だから、良ければ子供を産んで欲しい。アラレちゃんを好きな気持ちを忘れたくないから」

「……これでもう会えなくなるわけじゃないよね?」

「勿論だよ。勿論何度だって何度だって会いに来るよ。だけど、今は人に寄せてるとは言っても俺本来の時間感覚だと、あっという間にアラレちゃんは死んじゃうんだ。アラレちゃんが飽きる程に若返らせて長生きさせても、いつかは……ね。だから、久しく忘れてた人を愛する感覚を思い出させてくれたアラレちゃんには子供を産んで欲しい」

 言い方としては凄く卑怯かもしれないけど、産んで欲しいんだから仕方ない。てかアラレちゃんの子供とかなら凄く面白い神になったりする気がする。

「一応この世に存在していないから身分証もないしアレだけど、結婚って考えてもらってもいい。別に好きな人ができたらその人と結婚してもいいし、どうなっても責任はとる。全ては自由だし……なんだろう? 加護とかの方が正しいかな? 」

「なにそれ。あはは! じゃあ断ったらこれでバイバイ?」

「うーん、まぁ、その場合はほら、もっと割のいい仕事を紹介するよ。グリフォン便とかどう? 東京観光、グリフォンレンタル1時間3万円とか。週末6時間営業で10頭揃えて中国人観光客でも狙えば土日で3百万ぐらい稼げるよ。あー、でもそれだと餌に困るから河川敷で豚の繁殖でもさせなきゃだな」

「あはは! めちゃくちゃだ!」

 結構いい案だと思うけどね。
 国に没収されそうではあるけど。

「では、不束者ですが、ヤタさんの赤ちゃん産ませてもらいます」

「やった、ありがとう。でもいいの? コブ付きになっちゃうよ」

「うん、いいの。ヤタさんのその甘々で優しすぎる提案に甘えちゃいます。それに、作家の私を好きでいてくれたかけがえのないヤタさんだからこそ、一生縁がないって思ってたけど、赤ちゃん産みたい」

「きっと子供を産まない方が稼げるよ?」

「うん。余るほどのお金はいらないんだ。大切なのは人には無為に見えても、自分にとっては貴重な時間の過ごし方だからね」

 亜神は賢いから、普通の子供よりは手が掛からないかもしれないが、きっと子育てはアラレちゃんの貴重な時間を僅かながらにも奪うだろう。
 それでも子供を産む決断をしてくれたのは、とても嬉しくん思う。

「じゃあ、神気をおくるね」

 そのままでは受胎されないので、神気を流して、子宮を聖櫃とする。
 そこで初めて亜神が受胎する。
 いわば親神の許可が無ければ人間との間には受胎しないのだ。

 神々は好き好んで人間とは交わらないし、ましてや風俗嬢などに子種を授けるなんて前代未聞だが、俺は神界の頭の固い役人のような、ことあるごとに純潔だの処女懐妊だと騒ぐ連中とは違うからな。
 是非とも体裁や面子に拘るより、心の綺麗さを見て欲しいものである。

 嗚呼、今から産まれてくるのが楽しみだ。
 どんな権能を持って生まれてくるのだろうかマイサン!

「あ、なんかお腹があったかい」

「宿ったね。嬉しいよ」

 優しくアラレちゃんのお腹を撫でるが、ここからが本題だ。

「さて、養育費に関しての細かい額面を詰めていこうか」

「おいー! ムードとか大切にしろぉ」

 大切なことなんだけどなぁ……。





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コメント

  • ノベルバユーザー229059

    いいね第一号の自信はある(便乗)

    1
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