俺、元日本人のガチ神だけどY◯uTuberになるね!

慈桜

第13話 名古屋でナンパされるよね。



「なんやそれ! ほなネモとジイさんは神様やっちゅうんか?」

「まぁ、そうじゃのう」

 とりあえずキョウイチさんちに戻ってきてから大漁祝いで盛り上がりながらにも話の核心にせまるが……。

「ほえぇ、神様っちゅうても俺らとあんまし変わらんのやなぁ」

 キョウイチさんは平常運転で、オギさんに至っては瓦屋の癖に魚屋ばりの包丁捌きを見せつけている。
 みんなマイペースである。

「でもバスとギルを主食にする新たなゲームフィッシュってのは、ようできてまんな。もう流行るんが目に見えてる」

「バス業界には打撃かもしれないけど、ゴミみたいに棄てられるよりは、観光資源として大切にしてる奈良和歌山の山間部とかに人が集中する方がいいっしょ。棲みわけもできるし」

「許可取って、餌用のバスの養殖なんかしたら儲かるかもしれまへんな」

「近い将来はそうなるかもねぇ。赤目ハタが順調に繁殖したら、壊滅的なダメージになるだろうし」

 食物連鎖の頂点に座する赤目ハタがバスもギルを駆逐する未来も、そう遠くない。
 そうなると、つり餌用のバスの養殖だけでなく、もっと大量に繁殖させて放流しなければ、次は赤目ハタが食料不足、またや乱獲により消えてしまう。

 この先、単純明快なバランスを求められるが果たしてどうなるものか。
 ブラックバスkgあたり380円〜の漁業への補助金も無くなるだろうし、バスガイドや貸しボート屋、更には大手釣りメーカーには大打撃かもしれないが、先見の明があれば早々に赤目ハタへシフトチェンジしていくだろう。

「よーし、じゃあ俺のとこは琵琶湖初の赤目ハタ狙いの釣り船屋をやるぞ」

「いいねぇ。大繁盛間違いなしじゃん」

「よっしゃあ! そうと決まりゃあ……何したらええんや?」

「まぁ、宣伝しておいてあげるよ」

 キョウイチさんはノリがいいだけに、何処か抜けてるけど、チャンネル登録数が増えてる俺の動画で宣伝したら、それなりに人気がでるとは思う。

「ネモさん、サブチャンネル作ったらどないです? 毎週日曜だけでええんなら、自分撮影しまっけどね」

「マジで? でもアドセンスとかの取り方わかってないから、動画の収益化できてないんだよなぁ 」

「あ、自分それわかりまっさ。これPCビューに変えてですね……」

 そしてオギさんになんやかんやといじってもらって、更にはオギさんのネットバンクを使って入金までの準備を整えてくれた。
 俺ってば実は既にアドセンスとれてたらしい。

「入金あったら、そのまま好きに使ってもらっていいよ。大阪から毎週通うの大変でしょ?」

 別にお金には困ってないから、軽い気持ちで提案したのだが、オギさんはムスっとしたままにギロッと此方を睨めつけると、小さく何度か頷き始める。

「ほな会社を設立しておきまっさ。ほいて、収益は会社の利益としてプールして、撮影に必要となった経費は、そこから貰うって形にしときま」

「あいよ。サブチャンネルからの収益は給与として好きに使っていいぜオギさん!」

「はぁ……それやったら仕事やめよかな。ネモさん、あんたいまごっついことなってるん知ってまっか?」

 オギさんの一言により、何のことだろうかと、ふとチャンネルを確認してみると、一昨日まで1万2千のチャンネル登録が、21万4687人に爆上げされ、テレビ局から動画利用に関する問い合わせのダイレクトメールがひっきりなしに送られてきていることに気がつく。

「え、なんで?」

「流石に派手に暴れすぎたようじゃな」

「キャンキャン!!」

 ジジイが赤目ハタの刺身をモグモグしながら俺の肩にポンと手を置く。
 チャミってば何処にいたんだ、かわゆいのうパピヨン。
 てか全くもって意味がわからん。
 チャンネル登録ってのは、何年も頑張って何百本も投下してやっとこさ増えて行くものじゃないのか? 
 こんな眉唾の動画を信じて、チャンネル登録が爆増してるとか、逆に怖いんですけど。

 確かに動画編集のソフトとか、有料のいいヤツつかってるし、画質とか音質とかにも拘ってるけど、こんな簡単に20万クラスに仲間入りとか、ユーチューバーの諸先輩方に申し訳ない気がする。

「ま、1再生0.01円に下がってしもたらしいから、20万人が再生してくれても2千円ぐらいのもんでしょ。毎日動画をあげて必ず20万再生でも年間73万円ほどにしかなりまへん。せやけどね、ネモさんがこれからもぶっ飛んだ動画を投稿しまくって、平均200万再生にでもなれば、年間730万円に跳ね上がるわけで、いらんと言うには多すぎる額になりまんねやで」

 そう考えると大きいよな。
 闇に葬りたい地獄の京都金策一週間のおかげで、口に出すのも憚れるほどに荒稼ぎしちゃったからお金なんてどうでもいいやって思ってたけど、面白おかしく動画投稿して年収700万はでかい。
 そこまで行けば、ガチでユーチューバーだと言えるんじゃなかろうか?

「なんか、いけそうな気がしてきた」

「いや、いけすぎまっせ。ネモさんのその神の力は反則でっからね」

「まぁ、程々にの」

 ジジイの心配もわかるが、中々どうして面白い。人気が数字となって目で見えるのは悪くないものである。

「よし、テレビ局にガンガン使って下さいって返事しとこう」

「まぁ、有償でってのが本来無難でしょうけど、広告がてらにはええかもわかりまへんな。ただ今以上に動き難うなるんは覚悟せなあきまへんで」

 ふふん、それに関しては京都で変装グッズを大量に買い込んだから心配ないのだよオギータ。
 最悪捕まっても、すぐ逃げてこれるしね。逃げまくってるのは面倒ごとを避ける為の一点なんです。

「これからどないしまんの? このまま琵琶湖で釣りちゃんねるの撮り溜めでもしはるんでっか?」

「いや、名古屋に行ってから新幹線で博多に向かおうかなって思ってる。もしかしたら東京に行くかもだけど」

「おおい! まじかいやネモ! 寂しいやんかぁ 」

「そうじゃ! ずっとおったらええ!」

 もう酔い始めてるキョウイチさんにグイグイと絡まれるが、ある程度日本各地を回ったらここには帰ってこようと思う。
 それぐらいにはいいヤツらとの出会いがあった。
 まだ小さいキョウイチさんの娘姉妹にも、なんかキラキラしたお土産を持ってきてあげよう。

 そしてこの後、調理動画を撮影しながらに、お別れ大宴会へと発展し、ベロンベロンのままにぶっ倒れたのは言うまでもない。

 ━━

「楽しかったなぁ。琵琶湖」

 黒髪のボブカットのヅラを装着して、サングラスをかけた上下黒のヒラヒラ付きのサブリナパンツ的なスウェット? を身にまとった長身女子。
 ご察しの通りにオイラの変装にございます。
 きっちり体も全て女性に変えてるので、俺がネモだとわかる人は存在しないだろうと思う。

 赤い口紅も塗ってノリノリなのは内緒だ。
 これも立派な変装の一環なのである。
 スカウトされてパリコレなんてことにならないだろうか? 『ディオー◯』なんてスカした一言吐き捨てる感じのCMとか出ちゃったらチャンネル登録すごいことなりそう。

 はぁ、本音は死にたい。
 なにが悲しくてノリノリで口紅塗っちゃったテヘルンだよ、クソが。

 流石に街中をこれで歩いたりはしたくないが、電車に乗ったりする時は混乱を避ける為にも、このネモ美の姿を使うことになりそうだから自分を納得させる為に割り切ってノリノリなだけだ。

 うん、素晴らしい。
 トンネルに入ると俺の姿が映るが、誰もネモだとは思わないだろう。

 JKが此方をチラチラみながらヒソヒソ話しているが、無視だ。
 なんか怪しくないってなんだ。
 このミラミラでジョボジョボでビッチビチな美しさがわからないとは可哀想な雌ブタだ。

「あれ、ネモじゃね?」

「でも女の人だよ?」

 まぁ、変装が無駄になってはいない。はずだ。多分。
 ここでピクンと反応してしまえばバレるかもしれないが、俺はクールに車窓を眺めている。
 鉄のクールビューティとはこの事か。

 しかし何故俺は新大阪に戻って新幹線でのルートを選ばなかったんだろうか。普通に地図で見たら近いし鈍行でオッケーとか思ってたら、めちゃくちゃ遠いんだが……。

 スマホ弄ったり動画編集したりしてたから、アッと言う間ではあったのだが、腰とケツが疲労で爆発しそうだ。

 はい、それでは滋賀県琵琶湖は赤目ハタ釣行投下と。
 陸っぱり編、船釣り編を二本、調理編を一本。さらに日常編でキョウイチさんのボヤキと宴会を収録した一本の計五本の動画が完成したので、今日から五日間で、また新たに動画を撮影しなければならない。

「んほぉぉぉ、やっと着いたぁ」

 名古屋は特に用事があるわけではないが、板ちゃんねるで和歌山での目撃のガセ情報を流しているので、反対方向で新幹線の停車駅もある名古屋を目指したと言うわけだ。

 名古屋と言えば、イメージは手羽先、城、ヤクザとしか言えん。
 パチンコもそうだっけ? 
 他はういろーとか名古屋コーチンとかトーストにあんこ乗っけるヤツとか、それぐらいしか知らないもんで、だもんでだもんで。

「ナゴヤコーチン、ナゴヤコーチン」

「おちんこ! おちんこ!」

 やべぇ奴に絡まれた。
 名古屋コーチンって鶏だよな? 食べたいなって思って呟いてたら、ブスの癖に中学でイキってモテると勘違いした張り切り小僧に絡まれた。
 このキノコみたいな髪型の奴最近多いよな、一昔前は中国刈りとか言われてて、ザッキンのイオ○ぐらいしかしてなかったのに、今では韓流アイドルのデフォみたいになってるキノコツーブロック。

 頭にキノコ生やしてるなら下半身のエノキさんはもいじゃってもいいのかな?

 頑張って流行りのブランド品で着飾ってオシャレ感だしてるけど、その胸元の赤白の文字はなんだ? シュリンプ? エビかお前。

 とりあえず無視しよう。
 しかし女性の姿になると、こんなデメリットがあるのか……。
 ナンパとか、マジですごく失礼な行為だと思う。普段ナンパしまくってるくせに舐めた発言すんません。

 しかしこいつが悪い。

 普通に考えて贔屓目に見てもハリウッド余裕でしたってぐらい美人に変身してるはずだけど、鼻水垂らしたクソガキが何故イケると思ったし。
 ナンパってのは目があってニコッて笑いかけてくれたフランク・マンコビッチさんのみにマニーを握りしめて突貫を仕掛けていいという不文律があるのがわからないのか。

「おまんこ! おまんこ!」

「殺すぞクソガキが」

「えっ……言葉わかるんですか?」

「お前もっと最低だぞそれ」

 このガキは俺が外人の見た目だから日本語が分からないだろうとチンチンマンマンと連呼していたらしい。
 アメリカ観光してる日本人にディックディック! プッシープッシーと言ってるのと一緒である。
 授業で習うのはぺニスとヴァギナか。

「セクハラって言葉を知ってるかいボーイ」

「グフッ、くび、ぐるじい」

 よろしい、ならばお仕置きだ。
 首を持って片手で持ち上げてみるけど、こんなのは序の口だ。
 俺は男として、この鼻クソをきっちり教育したいとおもう。

「お前免許持ってるか?」

「ないです。中坊なんで」

「よし、死ね」

「なんで!?」

 くそっ、ギリギリ高校生ぐらいだったら身分証没収して社会の厳しさを教えてやろうと思ったんだが、ガチの中坊だったとは……。
 こうなっては仕方がない。
 動画のネタの為に体を張ってもらおう。

「よし、電気屋あんないしろ。GoPr○買いに行くぞ」

 先ずは赤目ハタ釣りの時に絶対買うと決めていたカメラのゲットである。
 帽子につけて目線カメラとしておけば、ひょんな出来事も逃さずにすむ。
 俺の三脚もいい仕事をしているが、やはりカメラの数が多いに越したことはない。

 よくわからんから最新のモノを予備も含めて4つ買っておこう。
 さて、ここからが本題だが、この鼻クソ、どうやら岡本流星たる何処かへ飛んで行きそうな名前らしいが、この鼻クソをどう料理してくれようものか。

 日本初、いや世界初、そしてぶっ飛んだ何か。
 乗馬の練習でもさせてバトルホースとかスレイプニルにでも乗せて街を爆走させてやろうかな?
 中坊だし捕まっても補導で済みそうだし。

 でも、それだと一般の方に迷惑がかかっちゃうな……。

 それにジジイもやたらめったら新種の生物は作らないほうがいいとか軽く怒りながら言ってたし、今回はちょっと嗜好を変えてみようか。

 うん、決めた。

 おれ、名古屋ではメカニックになる!



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