俺、元日本人のガチ神だけどY◯uTuberになるね!

慈桜

第12話 あ、そうか、そうだよね。



 おはようございます。
 キョウイチさんの家に泊めさせてもらったので、木造建築の畳の客間で、お目目がパチクリさんです。
 この和室の匂い、すきだなぁ。
 布団もなんか良さげなやつの圧縮を解いてまで用意してくれて、至れり尽くせりだわ。

 のんびりと着替えて、結構急勾配な階段を降りてリビングに辿り着くと、何故かジイさんとキョウイチさんとオギ君がライフジャケットを着込んだ完全装備で待ち構えていた。

「さぁ、いこか」

「うそでしょ? 筋肉痛は?」

「筋肉痛になんて負けてられん」

 どんな理論かはわからないが、このご三方、早朝より釣具屋にいって、全員でクエ用の釣具を買い揃えてきたらしい。
 ぶっちゃけアホとしか言えない。
 四人が竿を出して四匹ヒットしたらどうするつもりなんだろう?
 あいつら釣られてるブラックバスでスコンとスイッチ入るから、カナリ危険だとおもうんだけども。
 いや、ぶっちゃけ昨日の一件でお腹いっぱいだし、動画のネタとしても、あれ? なんで腕引っ張られてるんだろう。

「今日は俺の船をだすからな。昨日よりは戦いやすいはずだ!」

 強制なんですね、わかります。
 でもまぁ、悪くはないですよ。
 起きて速攻目の前に広がる琵琶湖の荘厳な景色。
 ぶっちゃけ満たされてるって気分になります。
 けど、今日は本気ださないよ。
 また1時間以上戦うことになったりしたら、俺倒れちゃいそうだしね。
 神力垂れ流しで無敵の超回復とかさせてもいいけど、神力を使いすぎて琵琶湖の管理者と喧嘩とかなったら嫌だから極力人間に寄せてるのだよ。

「あれ、チャミは?」

「留守番じゃ」

「本気だな。てか家にいた?」

「次は目玉丸々一個食いたいからな。誰かに散歩でも連れてってもろたんじゃないか?」

 ジジイも本気である。
 こうなりゃ俺も腹をくくるしかない。
 むかつくからキョウイチさんに二本釣らせてやろうかな。
 そしたらちょっとはおとなしくなりそうな気もする。

「いざ出港!!」

 うわー、ガチの船きたぁ。
 こんなん海の釣り船じゃないですかぁ。

「この周辺はバスボートの立ち入りを禁止してるからな。漁師しか船を出せねへんねや」

「へぇ、そうなんだ」

「キョウイチ、玉岩らへんはどうじゃ? あそこはバスがようさんおるだろ」

「よう知ってるな爺さん。悪うない、公園も近いし行ってみよう」

 まぁ、ぶっちゃけ昨日の公園が一番釣れると思うけど、多くは語らないでおこう。ただ言えるのはキョウイチさんの奥さんのオニギリはうまい。

 しかし琵琶湖広いなぁ。
 やっぱもうちょっと放流した方がいいか。このまま噂が広がって乱獲されると、すぐ絶滅しそうだから、成魚3万、中位10万、稚魚100万で創造陣組んで、ちょっと距離離しながらに放流開始します。

 さらばブラックバス、ブルーギル。
 俺はお前達を忘れない。
 さぁ、どうする滋賀県。
 そのうちブラックバスを養殖して放流するぐらいしないと、ブラックバスも赤目ハタも消えちゃうよ。
 まぁ、まだまだ先の話だろうけどね。

「けど、近年大規模な駆除を行ってるんで、琵琶湖のでかいバスは減って、小バスまみれになってるんですわ。ほんで残ったデカバスが小バスを餌にしよっから数も減ってるらしぃてね」

「でもオギさんはなんだかんだ釣果あげてるんでしょ?」

「まぁ、それでも昔のどこ投げても爆釣っちゅうんはなくなりまったけどね」

 この小太りのオギさんは中々いいキャラをしている。
 普段は屋根葺きの瓦屋さんで働いてるらしいけど、何処からどう見てもバスプロだ。
 なんか稼いだお金はすべてバス釣りにブッ込んでますって雰囲気が漂ってる。

「せやけど、赤目ハタとやらは革命になりまっせ。見た事も聞いた事もない魚やけど、こら値打ちありますわ。それこそバス釣りが廃れるほどには」

 オギさんは若いから、多分俺の正体に気が付いてそうだけど、敢えてツッコまないでいてくれるので喜ばしい限りである。

「少し悲しくもありまっけどね」

 ブラックバスもブルーギルもそれなりに大量には生息してるだろうから、今は大丈夫だろうけど、何年後かには琵琶バスは絶滅してるかもね、って言えたらいいけど、とても言えない。

 ノスタルジックな中年を悲しませるなんてナンセンスなんじゃ。

「よーし、着いたでぇ。竿だせぇ!」

 うわ、まじか。
 俺がこいつらに見えないように放流してたドンピシャの場所にとまったんだが……。
 ここで釣りをするのは、割とやばい気がするんだけどもってキョウイチさん!?

「ちょいちょい、なにそれ?!」

「おっ? 朝一にリリース禁止の生簀からパクってったんや。ルアーで釣って食わすより話早いやろ?」

 いや確かにそうだけど、やばいって。そんなの絶対釣れるって。
 だめだ、これまた1日中戦うパティーンだ。

 案の定、3人が背掛けで小バスを泳がせると同時に、竿がギュンギュンギュンと並んでしなりをみせる。
 もうだめです。勘弁してください。

「よっしゃきたオラぁ!!」

「わしゃ電動リールにしたからの。そう易々とやられんわい」

「昨日のんよりはちっこいかもやけど、ええサイズちゃいまっかこれ」

 三者同時にバトル開始である。
 この状況では流石に竿を出せないので、俺は撮影に徹する事にします。
 もう絵面は完全に釣り番組だ。

「よっしゃよっしゃ!! 60cmぐらいはあるんちゃうんか?」

 そして早速キョウイチさんがぶっこぬくと、続けて電動リールのジジイも引っ張り上げたので、俺はひたすらタモ仕事である。
 これぐらいのサイズの赤目ハタならタモで掬い上げられるので、飛び込む必要なし!
 片手にカメラもって片手でタモとか極めすぎてるだろ俺。

「ネモ!! こんなぐらいのんは逃がした方がええんか?」

「それを逃がすなんてとんでもない。赤目ハタはどんな大きさでも美味いんですよ」

「よっしゃよっしゃ、ほな次はデカバス餌にしたろ。大物狙いや!」

 小バスだと、動きの早い60cmクラスの中位ぐらいの赤目ハタがよく釣れるのかもしれん。
 ジジイが釣り上げた個体もそれぐらいだったしな。
 一息ついて2投目にさしかかろうってタイミングだが、オギさんは未だに踏ん張り続けている。

「どうです? オギさん」

「ぶっちゃけ死にたい。腕もげそうでっさ」

「だから言ったのに」

 しかし助けないよ。
 俺は最初から今日の釣行は反対だったからね。
 てか、今日も昨日と同じぐらいのヤツが釣れたら普通の人間なら筋肉断裂とかするかもしんない。
 それぐらいに奴らのパワーはすごいのだ。

 なんて言うかな、緩やかな傾斜にニュートラルの軽四を置いて、釣竿でひたすら巻き上げる感じ? それのキリがないバージョン。
 ぶっちゃけ悪魔の所業ですよ。
 その分、釣れた時の喜びはやばいけどな。

 うわぁ、キョウイチさん50cmぐらいのブラックバスの口に馬鹿でかいフック刺してるんですけど。
 それエグいって、半端ないって。おまえ大迫かよ。苗字迫村で微妙に近いのが逆に歯痒い。
 あのサイズを食うってなったら、多分成魚クラスになると思う。
 またか、またやらかそうとしているのか。

 そしたらまたもや、ジジイがフィッシュ。狂ってるよ。こいつら狂ってるよ。

「お、おぉ! これはやってしもたかも知れんのぉ!」

 あぁ、完全にやらかしてるよ。
 ギュイーンってライン出て行ってるよ。これでジジイとオギさんが成魚クラスで、更にキョウイチさんも……。

「どうしたんです? 首傾げて」

「いや、食うてんねんけどな、吸って吐いて吸って吐いてしてねん。多分やけどな。もうちょい飲み込んでくれたギャー! オスマーン!!」

「あはは! オスマンて!」

 はい、やらかしました。
 3人共成魚クラスヒットです。

「行けネモ!! おまえも釣ってまえ! 」

「ぇ、えぇぇ……」

「ええからいけ!!」

 もう知らんよ。そう言うなら、この赤目ハタの溜まり場にバス投げちゃうからね。知らないよほんと。

 ちょいと投げて水面を滑らすように早まきをすると、ズドンズドンと水柱があがる。
 やばい、きちゃう、こわい、やめて。
 早まきで必死に餌のバスを逃がそうと頑張っていると、一際デカイ爆音と共に、ゴリアテかってぐらいの特大赤目ハタが餌バスを丸呑みにする。

 ぶっちゃけ時間が止まった。

「オ」

「オ?」

「オスマーーーン!!」

 なんやねんオスマンて。
 キョウイチさんに乗せられて言ってみたけど、変に面白くて力抜ける。

「はは。ごっついおもろそうな釣り方しってまんな」

「もうやだ。腕もげちゃう」

「もげもげぇ!! 釣ってもたらんかぁい!!」

「こりゃ今回は地獄になりそうだの」

 てなわけで…………。

 はい、結果発表。どん。

 つりあがった順番としては、一番がジジイ。流石の電動リールの寄せで、1時間23分で96kgの立派な赤目ハタを釣りあげました。
 即座に俺の竿を持って貰って琵琶湖にダイブ。
 〆る時間がもったいないので、エラからロープを通して、即戦線復帰。
 手が空いたのが非力なジジイであってガッカリだが、ジジイは速攻でオギさんの補助に入る。

 そしてお次がキョウイチさんです。
 きっちり120kgクラスの特大赤目ハタを2時間14分で釣りあげ、ジジイが竿を持ってる間にキョウイチさんがダイブ。此方もロープをエラ通しして、速攻で戦線復帰。一番やばそうな俺の竿を持ってくれたので、すかさずオギさんの補助に回り、ジジイがキョウイチさんの補助へ。
 ここでブチギレた俺の竿の赤目ハタが、物凄い勢いで水面にまで上がり、その巨体を翻してエラ洗いを行う。

 まさしく俺たち四人の時が止まった瞬間だ。

「オスマーーーン!!」

「オスマン! オスマン!」

 もはや意味とか関係ない。

 一番釣りたくなかった俺の竿に主クラスが掛かっていると分かった瞬間であったが、ここで気を抜くわけにはいかない。
 再び深層まで潜って行く勢いでキョウイチさんが転んでしまうが、補助に入っていたジジイのおかげで、竿は守られた。

 この段にきて、オギさんは突如として顔色を悪くし始めた。
 まさしく猛暑の中で熱にやられて、脱水症状に近い状態に陥ったのだ。
 俺は叫んだ! そして、竿を奪い取り、ジジイがオギさんの大きな体を引っ張って船室に引き摺りこみ、よく冷えた水をジャバジャバとぶっかける。

「爺さん頼む!! 補助にはいってくれ!!」

 絶望である。俺もジジイに助けて貰おうと思ったが、120kgクラスを持ち前の腕力で強引に釣り上げたキョウイチさんも既に限界を迎えていたのだ。

「キョウイチさん……オギさんの、俺のよりデカイかも」

 そしてここに来て最悪の事実が発覚したのだ。
 それは、オギさんの魚が、俺の化物よりデカイかもしれないと言った死の宣告。
 俺の竿に掛かった200kgクラスの化物は縦横無尽に暴れまわっているが、オギさんの竿の魚は、ただひたすらゆっくりと潜り続けているのだ。

 創造主としては、それが何を意味しているのか重々に理解できた。
 おそらくそれは、俺がふざけて投下した200kgクラスの化物達の中の一匹であり、そして、その中でもたった二匹しか用意していない240kgの正真正銘の化物ではないかと。

 開始3時間28分、キョウイチさんの見えた! 見えたぞ!との声が微かにきこえるが、既に満身創痍、俺は思考能力が極端に低下していた。

 もうだめだ、手を離してしまおう。
 そう思って気を抜くと同時に、竿を支え、俺の肩を強く掴む者がいた。

「ネモさん。ありがとう」

 そこには1時間の仮眠でキッチリと回復したオギさんの姿があった。
 まさに神の降臨である。俺も神だが、彼はもっと神々しい姿であった。

 竿を交換し、膝から崩れ落ちそうになりながらキョウイチさんの方へ視線を送ると、まさかのジジイが水面にダイブする姿が目に飛び込んでくる。

「ジジイ!!」

 なんと不甲斐ない。ここで誰かが行かなければ俺の竿にかかった個体はキャッチできない。それを察したジジイは年齢不詳のヨボヨボの老体にも関わらずに琵琶湖へと飛び込んだのだ。

「ジイさん! 無理すんな!」

「心配いらん!!」

 実はジジイ、泳ぎが得意らしく、素晴らしい手捌きでエラ通しをして、ドヤ顔で戻ってきた。
 3時間44分、220kgのバケモンが釣れた瞬間であった。
 そうなれば、四人でオギさんの魚と立ち向かおう。

 俺たち四人は既にこの時、完全に分かり合えていた。まさしく仲間とはこのことかと言わざるを得ない状態である。
 邪神にやられかけた時にセリカが泣きながら助けてくれた古い記憶が蘇る程に熱い絆を感じた。

 呼吸をするかの如く、無言での意思疎通を繰り返し、遂に5時間19分の激闘を経て、270kgの化物を釣り上げることに成功した。

 しかし待っていただきたい。

 200kgをこえてくると、10kgごとに怪物度は増していき、240kgが鍛え抜かれた強靭な人間が戦える限界だと思い、俺は最大で240kgの赤目ハタを二匹だけ用意していた。
 しかし釣り上げたのは正真正銘の怪物である270kgのクレイジーモンスターだ。

 俺は即座に気が付いた。
 おそらく琵琶湖の神が何らかの干渉をおこなったのだと。

 しかし我々は勝った。
 キッチリ四人全員で全ての化物を倒すことができたのだ。

 オギさんの魚を釣り上げ、エラ通しをすると同時に、四人全員ぶっ倒れたが、俺は琵琶湖の神の悪戯に負けなかった。
 完全勝利をおさめたのだ。

 だからこそ問おう。
 もうそろそろ聞いてもいいだろう。
 てかずっとおかしいと思ってたんだ。

「さて、ジジイ。試練は乗り越えた。俺たちは仲間だ。そうだろう?」

「ふん。まぁ、そうじゃのう」

 だっておかしいじゃん。
 みんな名前で自己紹介しあってるのに、ジジイだけはジジイで話が通っちゃってたり、家に帰ってないのに飼い犬がいなくなってたり、見た目100歳ぐらいなのにめっちゃ泳げるとか言い出せばキリがない。

「うん。じゃあ差し当り様式美として恭しく問おう。水神の翁、名を聞いてもよろしいだろうか?」

「なれば、先にそちが名乗るがさきであろう? 異界の者よ」

「これは失礼した。私は四柱の家神と十二の陪神を持つ〝創造・悪戯〟の権能を司る主神、ヤタと申します」

「おお、結構大所帯ではないか。では答えよう。儂は二柱の大神を創造せし〝生命・災厄〟を司る天神、淡海大蛇おうみおろち水神命みなかみのみことである」

「あ、あぁ……天神様であられましたか、ははは」

 うわ、やっば。
 早い段階で、このジジイは神なんじゃないかなって思ってたのはそうなんだけど、俺よりは格下だと思ってたのに、ゴリゴリに格上だった。

 わかりやすく言えば、俺が会社の社長だとしたら、目の前のジジイは国営企業の会長さんっていうか、わかりやすく言えば皇族ですね、お疲れ様です。

「いや、今まで通りジジイでええぞ。下に遊びに来る時は龍神まで位階を落としておるからの」

 キョウイチさんはキョトンとしてしまっているし、オギさんはやっぱりねと言った感じで無表情であるが、龍神と言えど神界ではかなりのお偉いさんである。
 てかなんなの? 日本こわいんだけど。普通に龍神が犬の散歩してるとかおかしいじゃん。

 いや、タイマンなら勝てるかもしれないけど、そういうこと考えるのすらタブーみたいな相手なんだよね、コレ。

「む? やってみるか?」

「やめてよ。友達じゃん!」

 うん、平和が一番。
 偉い人だとしても、釣りの前では平等だからね。

「そうじゃのう。大和に異物が紛れ込んだと聞いて、久方ぶりに訪れてみたが、あの魚はええもんじゃ。バスやらギルとは比べものにならん。釣っては熱き血潮が滾り、食うては味がズバ抜けとる。そして何より大和の魚を元に作っておるのがいい」

「あざーっす!」

「しかしの、暫くは生命の創造は控えた方がええやもしれんぞ。儂だけでなく、他の神も久しく大和に興味を寄せておるからの」

 やっぱそうなるよね。
 正直俺も、前々からやりすぎてるなって思ったりしてた。
 けど、他の神からコンタクトがないから調子に乗ってたんだよね。
 いやぁ、ここに来てジジイと仲良くなれたのはラッキーだった。マジで。

 天神様のお墨付きとか、結構強みだしな。

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