俺、元日本人のガチ神だけどY◯uTuberになるね!

慈桜

第7話 カツアゲされたらゴブリンだよね。



 いやはや、危なかった。
 めちゃくちゃ喰われそうになったけど、鉄の意志を貫き通してグッパイした。
 アバンチュールもありかとか思ったけど、やっぱり肝っ玉母ちゃんのイメージが拭いされず、プールでめっちゃはしゃいで、めっちゃスマホで写真パシャりまくって、一夏の思い出でござったなぁ、ちょっとコンビニでトイレ借りてきまんにゃおって感じで逃げてきました。

 もうね、グイグイくる感じが凄かったの。
 まさにあれだ、アメリカの給料を貰って、中国人のコックを雇って、イギリスの家に住んで日本人の妻を持つことが最高の幸せみたいな例えがあるじゃん? 
 その逆説の中国の給料を貰って、イギリス人のコックを雇って、日本の家に住んでアメリカ人の妻を持つことが不幸的なノリで行けば、彼女はまさにステレオタイプのアメリカ女なわけで、もしノリで抱いてしまえば最高に不幸な結果に陥っていた希ガス。

 俺のポグバはマンジュキッチと戦わない。

 連絡先は交換してるから、今はブチるけど、アメリカに戻ったぐらいにまた連絡をとってもいいかなって思えるぐらいにはいい人だけど、恋愛対象として土下座準備はいつでも整ってるね。

 俺は日本人の眼鏡っ娘が好きなの。
 真面目で清楚な感じなのにちょいアホでドスケベな状態だとゴールドエクスペリエンス。
 それ以外の女なんて無駄無駄無駄無駄ぁ! 
 そんな希少種がいたら場末のズダボロな風俗嬢でもペロペロしちゃうね。

 ね、そんなわけで、昨日のプール動画編集して投下します。
 内容としては可愛い外人の女子と共に、日本人の女の子達をナンパしまくって動画とか写真とりまくってるだけですけど【天王寺のプールに可愛いアメリカ と行ったらポロリやばかった】ってタイトルにしてるから、再生100回の壁は超えることを願う。

 釣られてくれ、世の変態同志諸君。

 嗚呼、ミシェル・マクラーレンからのメッセージが激しい。
 一人旅で寂しいのかもしれないけど、別行動をどうか許しておくれ。

「フリィィダム」

 いいですねぇ、通天閣。
 これで東京タワーやスカイツリーと肩並べてるって胸張れる大阪の人達の感性嫌いじゃない。

 多分天王寺の街込みでって感覚なのかもしれないけど、新世界は確かに新世界だわ。
 なんか街がお祭りっていうか浮ついてる感じ。

 お菓子の交換しかできないピンボール、やたらめったら立ち並ぶ串カツ、謎のフグやら謎の劇場やら、値が張りすぎるガチャポン、射的に天狗、そして通天閣。

 ホルモン串と昼間っから酔いどれの歯抜けのオッさん達がアクセントになってて、まるでアミューズメントパークだわ。

 少し道を逸れたら日本一治安の悪い無法地帯の西成があるのに、この地域は一大観光地って感じ。
 まぁ、俺は普通に西成に特攻してみるけどね。

「へい、ブラザー! アンフェタミン! メタンフェタミン! オーケーよ! プリーズ百ドル百ドル! ポンプ十ドル! いえあ!」

 なんか自転車乗ってる白いスウェットのグラサンかけた怪しげなおっさんに覚醒剤買わされそうになってるんですけど……。

「いやぁ、ご親切にどうも。でもいまは大丈夫です」

「なんや喋れるんかい。ほな、ほしなったら言っておいでやぁ」

 おもんないわぁっと一言残してUターンがてらにポンッと勢いよく痰を吐いてどこぞへと消えて行く。
 なんとも失礼なおっさんである。

「おい五百円くれ」

「はい?」

 次は振り向くと小さな爺さんが手のひらを差し出して五百円を所望してくる。

「え、なんで?」

「いやもうええから、はよくれ」

「はい?」

「はいはいはい、ええから。五百円くれて! はよぉ!」

 なんかよくわからんけど、絶対に五百円を渡さなければならない空気になっている。これは空間制御系の魔法か?

「ボケてんのんかい。五百円くれって言うてんねん」

「あ、はい。あ、千円しかないです」

「あー、使えんやっちゃな。ちょい待っとれ。お釣り持ってったるから」

 そう言って爺さんは五百円のタバコを買ってから五百円玉を俺に差し出してきた。
 なんか律儀……理不尽だけどおじいちゃん律儀やわ。

「いやいいですよ。差し上げます」

「いらん! 銭は大事にせぇ」

「えぇっ? あ、はい」

「チッ、ええわ。一本やるわ。ここ座ってええど」

 俺の金で買ったタバコと、公共のガードレールであって、爺さんは何も威張れる要素はないのだが、何故か妙に納得させられる。
 ありがたくタバコを貰って吸ってみる。
 普段はタバコを嗜まないけど、郷に入りてはという礼儀である。

「……ふぅ、なんや観光か?」

「ええ、まぁ、そんな所です。ふすー」

「ほーん。物珍しいんもわかるけど、ここらは来ぇへんほうがええど。タカリにポン中、後は脛に傷あるクソしかおらん」

 そのタカリはお前だけどな! って言いたいけどやめた。

「ふぅ。まずいっ!!」

「えぇ……」

 それだけ言ってジジイはまだまだ長いタバコを地面に叩きつけて、背中で何かを語りながら路地裏へと消えていく。
 何か間違ったのだろうか?
 やっぱり五百円は渡した方が良かったのか……よくわからんが、あの爺さんがおかしいのはよくわかる。

 さて、どうしたもんかな。

 ここでカメラを回すのはいいとしても、何をネタにするべきか。
 覚醒剤中毒者と浮浪者、そして日雇いドヤ暮らしの貧困層。
 彼らはこの土地での生活に慣れすぎて救いなんて求めてもいない。
 求めていたとしても、人を信用することなんてないから、何かをさせようと説得させるのも骨が折れるだろう。

 だから、まず何かをさせるんじゃなくてしなければいけない状況に追い込む。それでいて結果として貧困から抜け出すには……うーん。

 ゴブリンぶっ放すしかない。

 魔物の中では進化前であれば弱い部類に入るし、比較的安全に狩れるはず。
 首から紐で2gの純金プレートをぶら下げておけば、みんなにこぞって狩られることだろう。
 ゴブリン殺して1万円。
 めちゃくちゃナイスなお仕事だ。

 ゴブリンの素体は土で作って、殺せば土に帰るように設定しておけば環境的にも安心。知能は最低限に落としておこう。通常個体でもたまに賢い個体が生まれて、そんなヤツがいればかなりデカい群れになったりするから、知性は最低レベル、バット振りぬいたら殺せますって感じでファイナルアンサー。

 あいや、これだと繁殖能力が無くなってしまうのか……。
 金のネックレスを魔石代わりの活動媒体にしてたから、魔石を卵巣で育てる
 ことができない。

 仕方ない。こいつらはリポップ形式にしよう。この地域一帯を迷宮のフロアとして認識させて、要所要所から時間毎にリポップさせる。
 世界の構成としてはかなり大幅な改変だが、一大金鉱山扱いになる日も遠くないだろう。
 他の神がブチギレても安心しろ。
 俺もそれなりに戦ってやるからな。

 各リポップ、30分に3匹ずつのリポップでいいだろう。
 一つのリポップで時間3万円の24時間、にさんがろくの、サンシ12のえー、72万? 多分。
 日間72万円相当ずつ純金が排出されれば、年間2億ちょいの利益になるのかな? 金相場が下がったりもしそうだけど、リポップを四つほど用意しておけば年間8億円相当か。

 実に面白い。

 人が大量に溢れそうな気もするけど、やってみにゃあわかりやせん。

 早速リポップを設置しちゃいまして、はい動画撮影開始です。

「はいどうも! ネ申すちゃんねるのネモですっ! ここは大阪あいりん地区? になるのかな? 西成のドヤ街に来ております。なんとですね、都市伝説ではありますが、西成にはゴブリンがいるとの噂になっているので、早速調査の方始めていきたいと思います。見つけたら、頑張ってキルしちゃいたいとおもいまーすので応援よろしくお願いしますっ! よーし、ぶっ殺すぞぉ」

 って言ってる矢先に、目の前でおっさんが自転車で轢き殺したんですけど?! うわっ! 死んでるのに更に顔面踏みまくってる! やめてください! オーバーキル! その子のHPはゼロよっ!!

 そして土に還るのを見届けると、首をかしげながらに純金のペンダントを拾い上げて消えて行く。
 なんだったんだろ、さっきの太った髭面。西成のドワーフかな?

「私は何を見てしまったのでしょうか? 後で動画編集をして見直したいと思いますが、明らかに緑色の謎の人型生物が、何者かにブッ殺されたようにも見えましたが、ここに残っているのは土塊だけです。念の為に後でスロー再生の動画を載せておきますので確認ください。言っておきますけど、悪い薬は一切してません。恐らくガチで緑色の何かがいたはずでっ! いた! アレだ! 」

 はぁ……マッチポンプマッチポンプ。
 自分で放ってセルフで驚く茶番。
 でも、ゴブリンの存在は絵面としてかなりインパクトがあると思う。

 まぁ、ミドルキックで首刎ね飛ばしますけどね。グロ注意ってタイトルに入れるのは忘れないようにしよう。

「怖すぎて蹴り殺してしまいましたが、このゴブリンの亡骸を見てください。死した直後から緩やかに土へとその身を変えていきます。そして胸元にあったペンダントにはGOLD99.9の刻印が打ってありますね。これはもしや一攫千金のチャンスなのでは? 」

 それと同時にナイスなタイミングで野太い悲鳴が聞こえてきたので、早速駆けつけると、先程の五百円をたかってきたジジイが、ゴブリンに馬乗りにされてタコ殴りにされている姿が飛び込んでくる。
 俺のピューリッツァー賞は間違いないって感じだけど、とりあえず駆けつけてゴブリンの顔面にサッカーボールキック。

 首が弾け飛んで紫色のキモい汁、略してキモ汁がジジイの顔面に垂れ流しになるが、ジジイは冷静にゴブリンの亡骸を押し退けて、胸元のゴールドプレートを奪いとった後に、俺にそれを投げ渡してきた。

 ジジイはため息を吐きながらに、キモ汁でギトギトの手をスラックスで拭き取った後にタバコの箱を開けては、俺に一本取っていいぞと差し出してくる。

 別にいらないのだが、ジジイなりの感謝なのだろう。
 ありがたく受け取ると、ジジイは鼻でため息を吐き出しながらにライターで火を差し出す。

「えと、ありがとう?」

「すまんかったな」

 そう言ってジジイはぎこちなく笑い、ガタガタに抜け落ちた歯を見せてはウンウンと頷いてから路地裏へと消えて行く。

「ゴブリンからジジイを救ったらタバコを貰えました。と言っても、あのタバコは俺があげたお金で買ったものなんですけどね!」

 それから、パトカーや救急車のサイレンがひっきりなしに鳴り響き始めたので、俺は早々にこの街から去った。
 きっと新たな経済拠点として発展してくれるだろう。そう願おう。
 多分警察とかに封鎖されて、国が独占しちゃいそうな気もするけど、そうなったら、また別の方法を考えましょう。

 次どうすっかなぁ。
 京都か奈良か和歌山か。
 逆にもう一回神戸戻ってみようかな?
 いや、特に用事ないしなぁ。

 ちょっとネットで調べてみよう。
 京都 観光ポチッとな。
 奈良 観光ポチッとな。
 和歌山 観光ポチッとな。
 うううん。よし、奈良いこ。
 鹿と戯れてから、今後の事を考えましょう。

 待ってろ鹿共。俺が鹿せんべいの雨を降らしてやる。

コメント

  • ノベルバユーザー229059

    カツアゲ→ゴブリン

    1
コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品