俺、元日本人のガチ神だけどY◯uTuberになるね!

慈桜

第2話 とりあえず釣り具売るよね。


 まず俺が重要視するのは店舗の外観だ。
 突発的な屋台ではあるが、店舗店舗しすぎず、しかし急場凌ぎの窃盗品を売っているような怪しさを出さない。

 それらを念頭に置いた上で用意するのは昔懐かしの漁師小屋である。
 もうド田舎でしか見なくなったであろう木造の漁師小屋を建て、シャッターを豪快に開ければ一面をくり抜いたドラマセットのような店舗になる造りだ。
 そこへ駄菓子屋のような三段式の棚を並べていく。

 後は水没したマイタブレットを分断、四つのスマホに創造し直して、ネットサーフィンにて釣り具検索である。

 さっきのおっちゃんはタコ釣りが云々と言っていたので、タコエギと検索して、同じものを作って行こう。
 しかし結構高いものなのだな、エビに似た疑似餌にハリが三本ついているだけで安いので300円ほど、高いものなら1500円もする。

 俺が勝手に創造したノーブランドであることを加味して半額で売れば、それなりに売り上げは見込めるかもしれないな。
 まぁ、とりあえずは急ピッチで棚を商品で埋めていこう。

 なるほど、餌木についた重りの重さがそれぞれ違うのだな。
 それによって水中でのフォール、つまりは沈下速度に違いが出てくるわけだ。

 と、作り始めると凝りだしてしまうのが悪い癖だが、タコエギを大量に作ってみたものの、棚はまだまだ余裕がある。
 そこで明石の季節の釣りを調べてみよう。

 ふむ、現在夜釣りで最も狙い目であるのがタコであるらしいが、ケンサキイカもチラホラと釣れているらしい。
 あとマニアックな路線では夏の新子の太刀魚か。
 これは産卵の為に一度岸に寄ってくる個体で、冬の爆釣のようにはならないがワンチャンと言った所、後はロックフィッシュだが、この季節は小さい個体の数釣りらしいな。
 玄人は大サバ狙いらしいが、ちょっと仕掛けが難しそうなのでやめておこう。

 これらを鑑みてイカエギ、ジグ、後は胴突き仕掛けなども揃えてみよう。
 後は必要ないだろうけど、むき出しのままに売ってるから簡易なエギケースなんかもつくっておこうか。
 日中はサビキで豆アジとデイゲームでも大サバが好調らしいが、昼間は流石に漁港関係者に通報されそうなので控えよう。

 それからしばらく創造ラッシュが続き、周辺に放置されていた漁師のウキや放置された網などを対価に使ってしまったが、清掃業者が間違って捨てたと勘違いしてくれるとありがたい。

 さて、早速開店と行きたいが、このままでは真っ暗なので、雰囲気がでるようにイカ釣り漁船の水銀灯を吊るして煌々と照らしてみる。
 スマホとガラス浮きを対価にしてまで作ったので、なんとか売り上げに貢献してもらいたいモノである。

 まぁ、タブレットを分断して作ったので、後三つのスマホがあるからいいが、神界製の特別な品であるので、残りは大切に使おう。
 今回は電気配線を引いてくるのが面倒すぎて使ってしまったが、後でちゃんとスマホに戻すと誓う。次からは横着しないと心に決める。

 理想を言うならばビールやお弁当も売りたい気分であるが、多くは望むまい。

 さぁ、開店である。シャッターを開放せよ! まぁ、自分で開けるんですけどね。

 筆をとり店内にネ申の釣具屋と書いておけば、暗い外から見れば看板代わりにはなるでしょう。
 神ではない、ネットの申し子でネもうすのである。
 懐かしいでしょ? 転生前はそれが普通ぐらいの年代だったの。ごめんね。

 あ、ユーチューバーする時のチャンネルの名前これにしよ。ネ申すch。いいね。
 本名晒すのも寒いからネモちゃんってキャラネームでやろう。
 きめた、よし、試しにスマホで撮影だ。

「はい! というわけでね、自撮りで独り言的な撮影に赤面気味では御座いますが、投稿第一回を記念する撮影を始めて行きたいと思いまーす。今日はですね、兵庫県は明石市の明石漁港で、勝手に釣具を格安で販売すると、売り上げはいかなるものかっていう実証動画です」

 あ、恥ずかしい。
 一回止めて、深呼吸しようと思ったら軽四から降りてきた釣り人がニヤニヤしながらコッチ見てる。
 来るのか? 来てくれるのか? お前がお客さん第一号なのか?

「タバコおいとん?」

「いや、ないですね」

「ほなええわ!」

 あ、はい。だめでした。
 折角お客さんが来てくれたかもと期待したんですが、ヤニカスさんでしたね。いや、オリジナルでタバコ作っちゃおっかな……。
 まぁ、とりあえずここまでの流れを編集してみます。
 とりあえずトークの隙間は埋めて、1.3倍速ぐらいにして、さっきのヤニカスハプニングも入れる。
 うーん、やっぱスマホで編集すると安っぽいな。
 先ずは撮影機材とPCを手に入れるのは急務か。

 一応でスマホカメラは撮影中にしたままにしてるけど、挨拶を終えたら客が来るまでネタがない。
 自己紹介でも入れとくか。

「それでは、お客さんが来るまでの間に自己紹介をしたいと思います。私の名前はヤタ、ちゃうわ、ネモと申します。こんなんでもね、一応神様やってますカッコ設定カッコとじる」

 ……だめだ。他のユーチューバーみたいに照れなしでキリッとできない。
 やっぱ撮影クルーは必要か……でもブログ作ってアドセンスの申請したけど返事貰えてないから収益ないしなぁ。
 なんなら此処に居座って警察に捕まるまでの一大スペクタクルみたいな感じにしようかな? だめか。

「おー、すげぇ。こんなとこに店あったんや!」

 おっとお客様でございます。いかにも普段は街でプレイボーイしてますけど、インスタにあげる為にワザワザ釣りしに来ましたよ的な若者だ。
 ちょっと馬鹿にしたら殴りかかってきそうな雰囲気……。
 あら、奥さんDQNよね、あの子ったらDQNになったのね。シッ、聞こえたら何されるかわかったもんじゃないわ。

「しかもめっちゃ安いし! うわぁ、もったいないことしたなぁ」

 そうであろう、そうであろう。
 俺はその反応だけでニッコリである。

「これ盗品、とかですか? 」

「いえ、どちらかと言えば盗作ですね。既製品を私が真似て作りました」

「ほえぇ、通りで安い……って店員さんめっちゃイケメンすやん!!」

「いえいえ、日本かぶれのクソ外人ですよ。褒めてもらってもニートなんでこれ以上値引きできないですしやめてください」

 男にイケメソって言われても嬉しくない。それに異世界プラス神補正なだけで、中身は歯並び悪いクソデブなんですよって申し訳ない気分になるからやめてほしい。

「あはは!ほな売り上げ貢献します! 買ったやつ全部根掛かりして無くなってもたから、釣具屋行こうとしとったんすよ」

「そうなんですか。タイミングよくてしてやったりな気分です」

 さすが見た目的に普段はシティボーイなだけあって、金の使い方が荒い。
 普通にアレもコレもと手に取って、全部で5,200円分も買ってくれた件。
 DQNとか言ってごめんなさい、あんたこそが神様でした。

「沢山買ってくれたから、これサービスであげますよ」

「うわ、まじっすか。マジで嬉しいです」

 そう言ってプラスチック的なエギが五本五本で計十本収納できるエギケースをプレゼントする。
 ぶっちゃけそこらへんのゴミを対価に創造したモノで、この兄ちゃんが頑張って稼いだ5,000円もの大金を貰うのは申し訳ない気分になってしまった。
 いや、それを言い出したら釣り具メーカーさん達に土下座しなきゃならんことをしてるんだけども、あいつらは唸るほど儲けてるだろうからヨシとしよう。

「良かったら友達とかにも宣伝しといてくださいね。あ、それと、そこのスマホで動画撮ってるんですけど、ヨウツベ載せても大丈夫ですか? 」

「あ、全然いいですよ。ユーチューバーとかなんですか?」

「いや、ユーチューバーに憧れてるクソ外人です」

「ぶふっ。クソ外人やめましょうよ! 面白いけど!」

 まぁ、そんなこんなでいきなり5,200円の売り上げでございます。お金を持って小躍りにございます。
 たまらんのう、たまらんのう。
 異世界で腐るほど金貨とか稼いだけど、やっぱりお金は日本円でござるなぁ。

 早速動画編集をば! っと思えば、またもやお客さんが釣竿を持ちながらにフラッと。
 つかここやばいな。土曜日の夜であるとは言えひっきりなしに釣り人が来てるぞ? 一大スポットなのかな。

「へいらっしゃい!」

「魚屋か」

「釣具屋です」

「真面目か」

 むむむ、少し毛が薄いガチの釣り人的なオッさんだが、無表情のままに返しが秀逸である。嫌いではない。

「てかごっつ安いな。倉庫荒らしでもしたんか」

「いやいや本物に似せて私が造ったんです」

「ほぉ。ようできてんな。試しに放り投げてみてええか?」

「ええ……まぁ、かまいませんよー」

 そう返すとオッさんは竿先のエギをスナップから取り外して、俺の店のエギを取り付けてから、目の前の船着場でキャスティングをする。

 すると巻いている途中に竿がひん曲がるが、竿が全然動かないので恐らくは根掛かりだろう……と思ったらブシューと水面に水が散って手のひらサイズのタコが上がってくる。

「悪うないな」

「すげぇなオッさん」

「おい、客や! わし客やぞ!」

 一投目でナイスなタコをゲットしてご機嫌なようで、同じ種類のエギを大量に買ってくれた。
 釣り人の経済力凄まじいの一言だ。

「こんなに買ってくれるんですか?」

「まぁ、ぱちもんや言うても半額やしな。それに釣り人増えてもてからに、よう根掛かりしよんねん」

 とは言ってるけど多分転売するんだろうな。
 だって元値800円のヤツでも、400円もするのに、棚から鷲掴みで全部買おうとしてるもん。
 半端ないって。普通ありえんもん。

「2万2千400円です」

「まからんか?」

「本当原価ギリギリなんですんません」

「まぁ、せやろな」

 56個もいらんやん。絶対。
 どんだけ根掛かりさせる気なん?
 いや、ガチのタコ釣り野郎ならおかしくないのかもしれんが……。
 一応動画に載せていいかだけ聞いておこう。

「顔モザイクしてくれるんやったらええよ」

「あざーっす。なんかに包みましょか?」

 まぁ、いい人である。
 いい人とわかれば少しサービスしたくなるのが俺ってもんだ。

「かめへんかめへん。車にタックルボックスあるからな。適当にいれとくわ」

 オッさんはニコッと笑って背中越しに手を二、三降って帰っていく。
 無愛想だったオッさんがいきなりいい奴になると、何故かカッコよく見えるから不思議である。
 背中で語るという所だろうか。

 しかしなんだな……釣り人舐めてたな。小一時間で売り上げ3万とか怖い。
 正確には2万7千6百円だけどね。
 こんなに儲かるなら毎日店開きたいけど絶対捕まるだろうな。
 ゴリゴリの違法営業だから長生きは出来ないだろうけど、また気が向いたらやってもいいな。

 なんて思ってたら、何処から噂を聞きつけたのか釣り人が次から次へとご来店してくださりました。
 まるでセールに群がるオバハンが如く、釣り人達は我先にと買い込んでくれて店の棚はすっからかん。
 やはり有名ブランドの各種釣り具を半額でってのは破壊力があったみたいだな。

 開店から3時間半で完売、そう売り上げ68万4千4百円と相成りました。
 店仕舞いをしていたら、警察のパトランプが見えたのでタイミングもバッチリだったようだ。
 そそくさと駆け足で反対方向に逃げて、路地裏で神衣を脱いでジーパンとTシャツに着替えてしまえばミッションコンプリート。

「あぁ、水銀灯回収してきたらよかった……」

 冷静なふりして結構焦ってたんだな。
 動画投稿がキッカケで捜索されるのはいいけど、普通に捕まるのはいやだ。
 俺はルパー○しゃんしぇいみたいに逃げまくるつもりなのだ。
 こんな初期段階で躓いているわけにはいかない。

 てな感じで暫くテクテク歩いていると、古びたホテルを発見したので飛び込みで部屋を頼んでみる。
 寝癖がボハったオバハンが出てくるけど、丁寧に対応してくれたのが嬉しい。

「もう3時やけどええの? うち10時チェックアウトやけど」

「あ、全然いいです。仮眠できたらいいんで」

 別に睡眠なんていらないなんて事は言えないので、それっぽく返すとベッドだけの場末のラブホみたいな部屋に案内された。
 これで8千円は高いが、身分証もない俺はネカフェにはいけないしサクッと泊まれる宿としては上等だろう。

 さて部屋に入れば次は動画編集だ。

「俺、元日本人のガチ神だけどY◯uTuberになるね! 」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

  • 慈桜

    あざまーす!!w

    2
  • ノベルバユーザー229059

    1コメ
    めっちゃおもろいw

    2
コメントを書く