俺、元日本人のガチ神だけどY◯uTuberになるね!

慈桜

第1話 降臨したけど、海だよね。



 陰陽師が着るような式服に身を包み、長いミルクティーのような色の髪を巫女服の見習い神達に好き勝手弄り回されている美丈夫がいる。

 うん、俺だ……。

 神界の礼服として式服と烏帽子はセットだが、チビ助共に揉みくちゃにされているので、既に烏帽子は投げ飛ばされ、頭には色とりどりの組紐がリボンのように飾られてしまっているが、俺はそんな事で怒ったりはしない。

「ヤタしゃま、かわいい」

「ヤタしゃま! これもつけて!」

 何故なら子供達は可愛いからだ。
 こんな可愛い生き物に怒鳴りつけたりなんてできるはずもない。
 それに俺は日本の電波を拾って新作アニメの視聴をせねばならん。その忙しい中で子供達に髪や服を揉みくちゃにされたぐらいでは動じないのだ。

「ヤタ様ぁ! また天橋立にいたんですかぁ?! 日本ばかり見てないで自分の世界の管理してくださいよぉ」

「あぁ、セリカ。いいとこに来た。今から今期のアニメ総なめするからチビ達を預かっててくれないか?」

「うわぁ!! またそうやって面倒ごとおしつけるぅ!! それにこの子達は他所の神子でしょ?! なんで子守なんか……」

 この水色髪に水色の瞳の水色水色したボブカット娘は、一応俺の管理する世界の一つを任せてる女神のセリカだ。
 主神、家神、陪神とランクがあって彼女は家神でそれなりに偉いんだけどってそんな話はいいか。

 とりあえず俺を揉みくちゃにしてタブレットをヨダレでベチャベチャにしてくれたチビ達の対処が出来たので、改めて自己紹介させてもらおう。

 俺は元々何処にでもいる日本人だった経歴を持つ地球とは別の星の管理者してるヤタって者でござります。

 元は矢田大やたまさるって名前の32歳の引きヲタピザニートだったんだけどね、なんか夜にコンビニ行こうとしたらテンプレのトラック転生で、よろしいならば満喫だって感じで異世界チーレム楽しみまくって好き放題してたら、色々極めちゃって最終的に神様になっちゃいました的なね、もうベタもベタでベタベタの展開を迎えてる状態なんですよコレが。

 でもね、別にそれでもいいかなぁって思ったんだよ。好き放題させてもらったし、邪神さんとか悪い女神さんとかしばいたら管理者いなくなって困ってますって組合神界の偉いさんに泣きつかれてさ、まぁ、世界創造の理論とかもわかってたから二つ返事でやってみます!って答えたわけよ。

 そしたらなんとビックリ、神界に来たら果てない屋敷の回廊がある謎世界だったまではいいとして、天橋立って呼ばれてる朱塗りの眼鏡橋が連なるうつくしき橋の上からヒョイと下界を覗いてみたら、其処には俺が愛して止まない日本が広がってるではあーりませんか。

『俺……神様になって本当よかった』

 ガチでそう思ったね。
 ネットでおまいらと語らう事も、新作アニメに始まり漫画もラノベもない。
 そして俺の転生体の見た目と能力に騙されて股を開くボケ女共はいても、『HENTAI』そう、ジャパニーズヘンタイズムを視聴しての自家発電が出来ないのは地獄の沙汰も生温い。

 やはり日本人は日本で生まれ日本でしぬべきなのだとヒシヒシと感じて長い時を生きてきた。

 そして見つけた私の故郷ハポネス!!

 そうとなれば神々が往来する道端ではあるけれど、俺は此処を本拠地とする他あるまいとの結論に達した。

 俺は早急にタブレットを創造し、ジャパンワイファイを利用して、これまでに不足していたクリエイティブ成分を補充したが、問題点もあった。

 その問題は、この連立赤眼鏡橋の先にある屋敷は若い神を育てる学び舎と繋がっており、此処に腰を据えてしまった俺は毎日通学路に居座っている変質者になってしまうわけで……。

 うん、それで紆余曲折の後に子供達に懐かれてしまって冒頭に戻ると言った具合だ。

 まぁ、ここまで言ったら天才の集まりとの呼び声も高い日本の皆様なら理解していただけると思うが、俺はこのまま日本に降臨してユーチューバーになろうと思う。

 ん? 意味わからんって?

 いやいや、心配しなくてもアドセンスとかとらないし、広告も張らないよ?
 けどさ、俺って神じゃん?
 んで、異世界補正だけどイケメンに生まれかわってんじゃん?
 これでユーチューバーしたらウケるんじゃね? とかおもってるわけ。

 いやいや、別にとらのあ○の特典欲しいとか、ネットで無料視聴ばっかりしてるの申し訳ないからブルーレイお布施感覚で大人買いしに行きたいからって理由じゃないよ? 神なのにお布施とかじわるな。

 それはあくまでついで、ついでがてらにお忍びで日本楽しんじゃおっかなって気分なわけ。

「ちょっとぉ!! ヤタ様聞いてます?!」

「あ、ごめん聞いてなかった。あ、足踏み外しちゃったー」

「ちょ! 棒読み!! おい!!」

 それにさ、なんか最近は好景気だって言っても、なんか雰囲気暗いでしょ?

 大昔の上神様達がさ、それも八百万やおよろずのさぞ有名な神々がだよ? 世界じゃなくてたった一つの小さな島国を作った珍しくも素晴らしい国なんだよ日本って。だからこれから神様になろって子供達がさ、こんな世界を作るんだよ! お手本にするんだよって意味で、通学路から覗けるようにしてるのに、そんな日本がどんよりしてたら面白くないじゃない。

 それで色々考えたんだけど、やっぱり俺がサクッと降臨してみんなを幸せにしてみるしかないんじゃないかって結論に至ったんだ。

 一応神界の文化遺産みたいな扱いで、現時点で神々の干渉は認められてないし、バレたら箱庭って言うか、管理世界没収の上に神格取り消しぐらいの重罪なんだけど、俺ってば子供達みたいに神になるべくして生まれた存在でもないし、邪神と女神殺して奪った神格を無理矢理はっつけてる元人間だから、別に神界怖くないんだよね。

 むしろ上等、やったろかって感じです。

 だから「うわぁぁぁぁあああ!!」
 ちょ、待て! いや、わかってた。直ぐに術式発動して浮遊するべきだった、わかってたけど悦に浸ってた。
 いや、変に人が空飛んでたりしても問題だしギリギリまでって思ったりもしてた。

 けど、リー即で海に直撃した。
 京丹後上空だったのに反転して瀬戸内っておい。

 くそ、めっちゃ海水飲んでもたやんけ。
 夜だし、季節も夏っぽいし、海で人が泳いでてもおかしくないっぽいからいいけど、なんかめちゃくちゃ恥ずかしい。

 かと言って海面歩いたりして人に見られたりしてもやばそうだし、ここは素直に岸まで泳ぎます。

「あぁ、しんど」

 式服うぜぇ。一応神衣だから陰陽師みたいなダボダボの格好の癖に濡れて重くなったりなんてしないけど、ナチュラルにうざい。

 やっぱ水は裸で入るものですよ。
 ホモ的に言えばはっきりわかんだね、だわ。

 服のウザさを耐えながらに、あくまでも普通の人ぐらいの感じで泳ぐ。
 バシャバシャしすぎたらモータージェットか! ってなりそうだからな。

 そして小一時間ほど頑張ってると、釣り人多数の漁港に到着。

「あぁ、しんど。疲れてないけどしんどいわ」

「お、おい。大丈夫なんか?」

「あぁ、おかまいなく」

 そら夜の海から陰陽師の格好した外人がテトラポットに這い出てきたらビビるよな。
 ちょっと悪目立ちしてしまったけど降臨完了っと。

「あの、ここ何処ですか?」

「何処って日本、やけど」

「あ、いや、そうじゃなくて、何処の漁港かなって」

「どっから泳いできてん。明石やけどわかる?」

「明石……あー、明石! あれ明石海峡大橋だもんね」

 どこやねん。
 いや、知識としてはあるよ。
 兵庫県のとこでしょ。明石海峡大橋とかタコとか。
 神の知識様々だわぁ、なかったら普通にわからんかった。

「いやぁ、ノリで淡路の岩屋漁港から泳いでみたんですけど行けるもんですね」

「嘘つけぇ! お前そんな格好で泳げるわけないやろ!」

「いや、これふざけた格好に見えて耐水ばっちりのネタ系ウェットスーツなんですよ、ほら、濡れてないでしょ」

「いやいや、そんなんありえへんからって、うわ、ほんまや! え、こわっ! 」

 このおっちゃんノリいいな。
 明石もまだまだゴリゴリの関西だからノリ突っ込み的な事をしようとしてくれたのに、マジで濡れてないからビビったみたいだな。

「じゃ、そんな感じなんで帰りはタコフェリーのって帰ります」

「ん、りょうかーいってないから! もうタコフェリーあれへんから!」

「あ、引いてますよ!」

「あ、ちょ! ってタコエギなのにさかなぁぁ!?!」

 最後までノリのいい人だった。
 御礼に真鯛をヒットさせてみたけど、釣り上げられるかどうかはおっちゃんの腕次第って感じかな。

 はてさて、まずは降臨完了だけども、やっぱこの格好は目立つな。
 釣り人みんなが振り向いてクスクスしてる感じが伝わってくる。

 そりゃそうだわな。
 漁港で陰陽師の格好した外人とかおのぼりさん飛び越えてキチガイとしか思えん。
 人目が無くなったら服を作ってもいいけど、ユーチューバーになるならこれぐらいインパクトあったほうがいいような気もするな……。

「てか、どうしよう」

 普通に昼間ならなんとかなるけど、夜とか金策もできないし宿もとれないんですけど……。

 いや、金策はできる。
 そこで諦めたら試合終了だって、昔どっかの偉い人が言ってた気がする。

 まずは需要と供給だ。

 生憎俺は神様なんて図抜けた存在であるからして、質量さえ満たせば万物の創造は容易い。
 土塊からガンプラを創造することができると言えばわかりやすいだろうか?
 なんだったら超高性能なエンジンだってつくれるばい!!

 無から有も神気や魔素などを使えばできなくもないが、有から有ならいとも容易く可能となる。

 いま、この釣り客で溢れかえっている明石漁港で何を売ればいいか。
 単純にそこを突き詰めれば、自ずと答えは見えてくるはずだ。

 さぁ、世界的ユーチューバーになる為に、先ずは商売を始めましょうか。



コメント

  • 慈桜

    ちゃうわい!www

    2
  • ノベルバユーザー229059

    1コメ
    作者はホモ、はっきりわかんだね

    1
コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品