錬成七剣神(セブンスソード)

奏せいや

決戦12

 古臭い、日本家屋の玄関前だった。時間は正午くらいで、玄関扉から差し込む日差しが家の中を照らしている。

 そこには、一人の青年と、一人の少年がいた。少年は普段着だが、青年は軍服姿だった。

『なんでだ!?』

 青年は腰を下ろし軍靴に足を入れる。靴ひもを結ぶ青年の背中に向けて、少年は怒声どせいを浴びせる。

『どうして戦争なんかに行くんだ!? そこに行って、父さんは死んだんだぞ!?』

『…………』

 背後から怒鳴り散らす少年を無視して、青年は反対側の足を靴に入れた。

『なのになんで出て行くんだよ! 兄さんだって死ぬかもしれないんだぞ!?』

 怒鳴りながら、少年は瞳から涙を零していた。今までずっと一緒だった、残された唯一の家族がこの家から出て行こうとしているからだ。

『そんなに俺のことが嫌いか!?』

 少年は、堪えきれず泣き出した。いくつも零れ落ちる涙に声を邪魔されながらも、懸命に喋る。

『あんたとは仲良くなかったし、俺だってあんたなんか嫌いさ! でもなあ!』

 必死に叫び、目の前で出立の準備を行なう青年に吠える。

『俺たちは兄弟だろう! 父さんも母さんも亡くなって、もう、俺たちしかいないんだぞ! なら、一緒にいるべきだろう!?』

 少年はあらん限りの感情を言葉に込めるが、青年の意思は強く、手は止まらない。

『あんたは家族が大事じゃないのか? なんで分からないんだ! 俺は、あんたみたいな奴でも大切だって、そう思ってるんだ! 兄弟だろう! なのになんで分かろうとしないんだ、この分からず屋が!』

 それが青年を動かした。青年は立ち上がり振り返ると、靴を履いたまま玄関を上がり少年の前に立った。

 表情は火を噴くほどに激怒しており少年を見下ろす。そして、拳骨で少年の頬を殴りつけた。

 青年から受けた殴打に少年は倒れ、青年は口を開く。

『分からず屋はお前の方だ! だったら、お前に何が分かる!?』

 そう言って、青年は玄関前に置いてあった鞄を持って出て行った。扉を開け、壊れるほど乱暴に閉める。

 少年は頬に手を当てながら、出て行く青年の背中姿に向け最後の叫びをあげた。

『ふざけるなぁあああ!』

 声涙混じりの、怒りと悲しみが混じった怒鳴り声。

 それは当然のこと扉越しの彼にも聞こえていた。家から出て数歩の位置で立ち止まっていた青年は、背中から聞こえてきた少年の声を受けて、拳を力強く握り締める。

 そして、空を見上げながら、ぽつりと、誰にも聞こえない言葉を呟いた。

『俺だって……!』

 青年は、湧き上がる思いを堪え、駅へと向かい歩き出す。

 そして、映像はここで途切れた。

 青年は、何故戦争に赴いたのか。何故、戦う道を選んだのか。

 そこに込められた、隠された誓いと優しさ。

 父と交わした約束。母から託された願い。

 彼は一体、なんのために。誰のために戦ったのか。その誓いと約束、彼が守ろうとした者は――

 今、目の前に。

清二せいじ……」

 魔来名まきなは、小さく呟いた。

 まるで、六十年ぶりに弟と再会したように。

 直後。

「終わりだ魔来名まきなぁああああ!」

 映像が途切れ、時間が動き出す。目の前には神剣しんけんゼウシスを構えた聖治が迫っていた。そして、黄金のスパーダを振り下ろす! 

「がああああああ!」

 聖治の攻撃が、ついに直撃する。魔来名まきなの胴体部を切り裂き魔来名まきなが悲鳴を上げる。

コメント

コメントを書く

「現代アクション」の人気作品

書籍化作品