錬成七剣神(セブンスソード)
決戦6
暴虐の風。刀身から発する破滅のオーラ。それは安神此方が使用していた時とは異なり、無色からどす黒い波動となって周囲に広がった。
また、変わったのは見た目だけではなくその能力。
カリギュラの波動が広がると同時に、接触する地面のアスファルトにヒビが入っていく。それだけでなく、展開することにより呑み込まれた自動販売機が機能を停止した。
魔皇剣、カリギュラ。所持数が六本となればそれは生命力や運気だけでなく、寿命を吸っていた。
カリギュラは津波のように交差点を覆い尽くす。直後、停車していた車体はガス欠、信号は光を失い、そして――ビルが倒壊し始めた。
有機物無機物の区別なく、あらゆるもの全て死ねと暴虐の風は世界を覆う。魔皇剣の一本で、都市一つを壊滅させられるだけの力を持っていた。
辺りを覆う轟音。天変地異の如き大災害が水門市を襲う!
カリギュラは魔来名も呑み込んでいた。建物ですら接触してものの数秒で寿命を迎える死の風だ。人ならば赤ん坊でも一秒もたない。
「なぜ!?」
だが、聖治は驚愕した。
「貴様では、俺には勝てん」
魔堂魔来名は生きていた。魔来名の前方でカリギュラが二股に分かれていたのだ。
そのまま魔来名を避けるように左右に流れて通り過ぎていく。
斬ったのだ。カリギュラを。
それはあり得ない現象だ。なにもないのに水が二股に流れるのと同じであり、明らかに法則から逸脱している。
魔皇剣の暴虐に対する魔刀の呪い。それは概念すら殺傷してみせた。
その技巧、神業に匹敵する魔技である。
このままでは悪戯に街を破壊するだけであり聖治はカリギュラを停止する。
瞬間だった。聖治の周囲に空間断層の切れ目が発生する。カリギュラが停止したことにより視界が晴れていく最中、魔来名は天黒魔を横に一閃したのだ。
その一つが、聖治の腹部を切り裂いた。
「がああああ!」
突如襲われる激痛。初めて経験する痛みに聖治が膝を折る。
反対に魔来名は勝利を確信した。一瞬の隙さえあれば十分だ。この機に間合いを詰め最後の一撃をたたき込むのみ。
これに、聖治も駄目だと思った。
だが、両者の予想を裏切り、魔来名の攻撃は再び不発となる。
聖治の傷口を輝く粒子が覆っており、すでに治っていたのだ。
「俺よりも――」
見覚えのあるそれに魔来名が叫んだ。
「その男を守るのか幸子!」
魔来名が発火する勢いで怒声を上げる。それは聖治に向けられていたが、正確には聖治の胸の奥に潜む少女に向けられていた。
聖治は胸に手を当てて感謝を述べる。
「ありがとう、香織さん……」
命を救われた。聖治は穏やかに呟くが、反対に魔来名は忌々しい思いが胸中で暴れている。
『あなたには、彼は斬らせない。剣島聖治は、私が斬らせない。たとえ、命を捨ててでも』
魔来名は奥歯を噛み合わせた。邪魔だと放った女が、いつもしつこく言い寄って来る女が、ここまでしつこく食い下がるとは。
これが、六十年経っても変わらぬ、思いの強さだと言うのだろうか。
――其は奇跡の守護者。安寧の祈祷よ天に届け。苦痛と恐怖に苛まれた時、汝どうか安らかに笑って欲しい。あらゆる傷も病も汝には及ばないと。我が守護し見守らん!
治神・織姫。今の聖治は一定以下の物理攻撃と異能を無力化する。おまけに傷を与えたところで瞬く間に再生する。
魔来名は歯噛みする。こうも技を無効化されれば苛立って当然。だが、可能性はまだある。
魔刀天黒魔。これが持つ殺害の呪いはスパーダの段階成長を覆す。これで斬れば六本の状態の治神・織姫でも防げず治せない。
魔来名は地面を蹴る。聖治に向かって直進して間合いへと入り、天黒魔を翻した。
「負けるか!」
聖治は魔皇剣と神剣の二刀流で対抗する。激しい剣閃の応酬に地面と空気が悲鳴を上げる。彼らの速度が増していく度に街がさらに崩壊していく。
「っく!」
さすがはスパーダ六本の所有者。魔来名は本気で斬りかかるも易々とは斬られない。
攻撃が失敗に終わったことにより、魔来名は空間転移で距離を離した。どのように攻めるべきかを思案する。
聖治と魔来名の距離は百メートルほど。空間転移を持つ魔来名であれば零歩で渡れる距離だが、聖治はそうもいかない。
剣という近接武器のため、こうも距離を離されれば一手では攻撃不可能だ。飛び道具でもない限りそれは出来ない。
しかし、
「来い、平和愛」
魔卿騎士団団長となるべく造られたスパーダは絶対無敵でなければならない。そのため構想段階から対遠距離戦闘は想定済み。
聖治は両手の剣を消して手をかざす。その声に、それは少女が応えるように現れた。
また、変わったのは見た目だけではなくその能力。
カリギュラの波動が広がると同時に、接触する地面のアスファルトにヒビが入っていく。それだけでなく、展開することにより呑み込まれた自動販売機が機能を停止した。
魔皇剣、カリギュラ。所持数が六本となればそれは生命力や運気だけでなく、寿命を吸っていた。
カリギュラは津波のように交差点を覆い尽くす。直後、停車していた車体はガス欠、信号は光を失い、そして――ビルが倒壊し始めた。
有機物無機物の区別なく、あらゆるもの全て死ねと暴虐の風は世界を覆う。魔皇剣の一本で、都市一つを壊滅させられるだけの力を持っていた。
辺りを覆う轟音。天変地異の如き大災害が水門市を襲う!
カリギュラは魔来名も呑み込んでいた。建物ですら接触してものの数秒で寿命を迎える死の風だ。人ならば赤ん坊でも一秒もたない。
「なぜ!?」
だが、聖治は驚愕した。
「貴様では、俺には勝てん」
魔堂魔来名は生きていた。魔来名の前方でカリギュラが二股に分かれていたのだ。
そのまま魔来名を避けるように左右に流れて通り過ぎていく。
斬ったのだ。カリギュラを。
それはあり得ない現象だ。なにもないのに水が二股に流れるのと同じであり、明らかに法則から逸脱している。
魔皇剣の暴虐に対する魔刀の呪い。それは概念すら殺傷してみせた。
その技巧、神業に匹敵する魔技である。
このままでは悪戯に街を破壊するだけであり聖治はカリギュラを停止する。
瞬間だった。聖治の周囲に空間断層の切れ目が発生する。カリギュラが停止したことにより視界が晴れていく最中、魔来名は天黒魔を横に一閃したのだ。
その一つが、聖治の腹部を切り裂いた。
「がああああ!」
突如襲われる激痛。初めて経験する痛みに聖治が膝を折る。
反対に魔来名は勝利を確信した。一瞬の隙さえあれば十分だ。この機に間合いを詰め最後の一撃をたたき込むのみ。
これに、聖治も駄目だと思った。
だが、両者の予想を裏切り、魔来名の攻撃は再び不発となる。
聖治の傷口を輝く粒子が覆っており、すでに治っていたのだ。
「俺よりも――」
見覚えのあるそれに魔来名が叫んだ。
「その男を守るのか幸子!」
魔来名が発火する勢いで怒声を上げる。それは聖治に向けられていたが、正確には聖治の胸の奥に潜む少女に向けられていた。
聖治は胸に手を当てて感謝を述べる。
「ありがとう、香織さん……」
命を救われた。聖治は穏やかに呟くが、反対に魔来名は忌々しい思いが胸中で暴れている。
『あなたには、彼は斬らせない。剣島聖治は、私が斬らせない。たとえ、命を捨ててでも』
魔来名は奥歯を噛み合わせた。邪魔だと放った女が、いつもしつこく言い寄って来る女が、ここまでしつこく食い下がるとは。
これが、六十年経っても変わらぬ、思いの強さだと言うのだろうか。
――其は奇跡の守護者。安寧の祈祷よ天に届け。苦痛と恐怖に苛まれた時、汝どうか安らかに笑って欲しい。あらゆる傷も病も汝には及ばないと。我が守護し見守らん!
治神・織姫。今の聖治は一定以下の物理攻撃と異能を無力化する。おまけに傷を与えたところで瞬く間に再生する。
魔来名は歯噛みする。こうも技を無効化されれば苛立って当然。だが、可能性はまだある。
魔刀天黒魔。これが持つ殺害の呪いはスパーダの段階成長を覆す。これで斬れば六本の状態の治神・織姫でも防げず治せない。
魔来名は地面を蹴る。聖治に向かって直進して間合いへと入り、天黒魔を翻した。
「負けるか!」
聖治は魔皇剣と神剣の二刀流で対抗する。激しい剣閃の応酬に地面と空気が悲鳴を上げる。彼らの速度が増していく度に街がさらに崩壊していく。
「っく!」
さすがはスパーダ六本の所有者。魔来名は本気で斬りかかるも易々とは斬られない。
攻撃が失敗に終わったことにより、魔来名は空間転移で距離を離した。どのように攻めるべきかを思案する。
聖治と魔来名の距離は百メートルほど。空間転移を持つ魔来名であれば零歩で渡れる距離だが、聖治はそうもいかない。
剣という近接武器のため、こうも距離を離されれば一手では攻撃不可能だ。飛び道具でもない限りそれは出来ない。
しかし、
「来い、平和愛」
魔卿騎士団団長となるべく造られたスパーダは絶対無敵でなければならない。そのため構想段階から対遠距離戦闘は想定済み。
聖治は両手の剣を消して手をかざす。その声に、それは少女が応えるように現れた。
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