錬成七剣神(セブンスソード)

奏せいや

対決2

 此方の手が暴虐の魔剣を握る。それは明確な戦闘意思であり、殺害宣言と同じだ。

「……お前」

 なのに、聖治は唖然と此方こなたを見ているだけだった。むこうはすでにスパーダを手にしており、自分を見ているのに。

「ごめんなさい……」

 此方こなたは顔色一つ変えることなくそう言った。けれどその裏側で彼女が苦しんでいるのが聖治には分かる。

「……謝らなくていい。お前はただ、自分の目的を果たそうとしているだけだろ。大切な妹を守ろうとしているだけだろ。だが!」

 此方こなたの想いは分かる。覚悟も分かる。それでも聖治は此方こなたの瞳を見つめ返しながら、力強く反論した。

「それで俺とお前が殺し合うなんて間違っている! 考え直せないのか?」

「無理」

 聖治の願いは、あっさりと断られた。

「今の私たちじゃ、束になってもあいつには敵わない。どちらかが相手のスパーダを奪わないと、どうあっても敵わない。スパーダは本数が増えれば増えるほど、段階的に能力が向上していく。だから、二人よりも、一人で二本の方がいい」

此方こなた……!」

「あんたはすでに三本を持っている。けれど、それだけではまだそこまでの変化はないはず。だから四本にして、あいつを倒すのよ」

 そう言った後、此方こなたの顔が少しだけ優しくなった。

「あんたには感謝してる。私のわがままに付き合ってくれた。甘えさせてくれた。楽しかった。少ない時間だったけど、私にはそれだけで……。ありがと。聖治に出会えてよかった」

 だが、その表情はすぐに消え去った。此方こなたの闘志が音もなく燃え上がっていく。怒りも憎しみもない、純粋で、透明な戦意が全身から漂う。

「私と戦って。そして、生き残った方が魔来名まきなを倒して、あの子を守るのよ」

 それが戦闘の合図だった。此方こなたはスパーダを構え、聖治に攻撃してきたのだ。

「止めろぉおおお!」

 聖治は叫びながら後ろに飛び退き、なんとか此方こなたの一撃を躱す。すぐに起き上がり、離れた場所にいる此方こなたを睨み上げる。

「止めてくれ此方こなた! 俺は、こんなこと望んでない! 魔来名まきなは強いさ、それは知ってる! でも、だからといってこんなことは間違っている! 俺は決めたんだ。二人を、此方こなた日向ひなたを守るんだって。もう二度と、誰も仲間を死なせたりしない。なのに!」

 聖治は睨み付ける目にさらに力を入れて、此方こなたを見て言った。

「なんだよこれは!? せっかく仲直りして、普通に喋れるようになったじゃないか! ようやく、仲間らしくなってきたじゃないか! お前が日向ひなたを思う気持ちは分かる。それを知って俺も応援してたんだ。此方こなたのことが、好きになれたんだ!」

「…………」

「もう止めよう。全部なかったことにしよう、な?」

 聖治は懸命に見つめる。此方こなたの気持ちを知っているから怒りはなく、ただこんなことを止めたい一心だった。

「言いたいことは、それだけ?」

此方こなたぁあ!?」

 だけど、此方こなたは応じてはくれなかった。此方こなたの決意は揺れることなく、覚悟は重い。

「私は、あの子のためなら死んでもいい! そのためなら、誰に恨まれたっていい! あの子のためなら!」

 此方こなたは駆け出し、魔皇まこう剣の刀身が襲いかかる!

「出ろ、神剣しんけんゼウシス!」

 両者の間で火花が散った。互いの刃が擦れ合い、暗闇に光が弾ける。

 受けて分かる。今の一撃は本気だった。

「止めろって! こんなの、悲しいだろうが!」

「悲しいわよ!」

 此方こなたはさらに剣撃を振るう。剣風が夜気を切り裂く。

「そんなの、言われなくても、分かってるのよぉぉ!」

 悲痛な叫びが剣と共に落とされる。聖治は受け止めるのが精一杯で、魔皇まこう剣の黒い刀身を見失わないように全力で気を付ける。

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