錬成七剣神(セブンスソード)

奏せいや

幹部戦半蔵6

正一まさかずさん!」

 そこへ慌てて佐城さじょうが駆け寄った。刀創に苛まれている魔来名まきなにそっと触れ、天黒魔あくまに手を翳す。

 初めは反抗した魔来名まきなだがそんな余力はなく佐城さじょうの治療を黙って受けていた。

 佐城さじょうのスパーダ、治神ちしん織姫おりひめが現れる。天黒魔あくまを包む鞘となり、千羽鶴が垂れる鞘が再び現れた。

 己の分身でもあるスパーダが鞘に守られたことにより、魔来名まきな自身も癒されていく。傷は塞がり、瞬く間に完治する。

「大丈夫? まだ痛まない?」

 魔来名まきなの傷は全て塞がった。それでも佐城さじょうは心配そうな眼差しを向け魔来名まきなの身を案じる。

 だが、魔来名まきなはその視線をいっこうに見ようとはしなかった。その代わりに天黒魔あくまを抜き放ち、佐城さじょうへと刃先を向けた。

「……何故、俺を治す。今なら落ちているナイフを拾って殺せたはずだ」

 魔来名まきなは静かに問う。片膝を地面に付いたまま、伏せた顔からでは真意は読めないが、声に怒気どきはなかった。

「だって、あなたも守ってくれたじゃない」

 魔来名まきなの問いに佐城さじょうも返す。声量は抑えられていたが、そこには懸命な思いが込められていた。

「あなたは私を庇ってくれた。守ってくれた。治すのなんて当然じゃない。あなたこそ、どうして私を庇ってくれたの?」

「…………」

 魔来名まきなの問いに佐城さじょうは答え、反対に佐城さじょうから問いが返ってくる。切実な声で言われたその問いに、しかし魔来名まきなは答えない。答えることが、出来ない。

「お願い、受け入れて。あなたは――」

「黙れ!」

 佐城さじょうが催促する言葉を、魔来名まきなは拒絶する。魔来名まきなの胸の内に芽生えつつある、誰かの声。自身でも分からぬ行動。だが、魔来名まきなは認めなかった。

 焦りと怒りを交え、魔来名まきなは勢いよく立ち上がる。佐城さじょうを見下ろし、向ける剣先にも力が籠る。

「俺は俺だ! 魔堂まどう魔来名まきな、それが俺だ。前世など知らん! 正一まさかずなどではない!」

 見下ろす瞳に怒気どきを込め、魔来名まきなは言い放った。

「お前を、殺す」

 そのまま、自分を正一まさかずと呼ぶ女を睨み付け、刀を押し付けた。

 とある廃墟の一角。二回の激闘を終え、ここは荒地と化し二人の亡骸が並ぶ。まるで戦場跡地のような、死の雰囲気が漂う静寂の街。

 そこに、一組の男女がいる。男は荒々しく女を見下ろす。

 そして女は、気丈に男を見上げていた。

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