錬成七剣神(セブンスソード)

奏せいや

幹部戦エルター1

「ようやく素が出てきたな。お前もセブンスソードを嫌っている口だろう。遠慮されるのは性に合わん」

 魔来名まきなは愉快気に口元を釣り上げる。

「安心しろ、過信ではなく事実だ。ついでに言ってやる。……魔卿まきょう騎士団幹部? 霊体のため生前の半分の実力しかない現団長を倒せずして力を誇示するとは、ずいぶんと滑稽こっけいだぞ、エルター?」

「そう。我々を貶めるか。なら覚悟しなさい、お前が――」

 魔来名まきなの挑発にエルターの怒りが戦意に切り替わった。それは戦いが始まる一歩前。

 瞬間――

 魔来名まきなは、躊躇いなく斬りかかった。

 その初動、速いのはではなく早い。その判断力は機械のようだ。

 しかし。

「ん!?」

 魔来名まきなの刀よりも早く、暗闇に光が走る。魔来名の真横から光弾が放たれ、彼の腕を貫いたのだ。

 刀の軌道は大きく逸らされ空振りに終わる。自身の右腕を見れば、そこには光で編まれた矢が突き刺さっていた。

(……いつ射った?)

 魔来名まきなは傷口を見ながら自問する。斬りつけるまでの間、エルターには間違いなく動きはなかった。

「いきなり斬りつけるとは躾がなっていないわね。いいわ、矯正きょうせいしてあげる」

「フン。幹部の力、気になっていたところだ」

 エルターの発言に魔来名まきなが応じる。すでに戦闘は始まった。

 エルターは団長を我々からではなくホムンクルスから選抜するセブンスソードを毛嫌いしており、魔来名まきなは己の力、超えることを約束された力を知りたかった。

 それで十分。廃墟の一角が戦場染みた緊張感に包まれる。闇夜の静寂が、嵐の前の静けさに変わっていく。

 両者の戦いは、たったそれだけのことで始まった。

 魔来名まきなが再び刀を走らせる。穿たれた右腕を考慮することなく、持てる力で斬りつける。

 即座にエルターが反転し魔来名(まきな)に振り返る。同時に後ろに飛んでおり、屋上から飛び降りた。

 しかも、エルターの両手には三十センチほどの小型の弓が握られていた。エルターの片手に光が集う。それらは矢を形成し、エルターはすばやく弦に掛ける。

 ――武と魔、ここに交わる。現在と未来を反転させ、未知を定める。世界を操る因果のくさび。運命を必然とし、神の業にて敵を必滅せん。

 エルターが矢を発射する。練磨れんまのみが体得できるクイックショットが魔来名まきなを襲う。

 それをなお躱し、魔来名まきなは斬り上げた。エルターはまだ刃の範囲内、斬れる。

 だが、攻撃はまたも不発に終わった。突如背部に激痛が襲う。落下するエルターを見据えながらすぐに手を当てれば、そこには躱したはずの矢が刺さっていた。

「…………」

 魔来名まきなもエルターの後を追い地上に降り立つ。エルターは距離をあけ、両者の間は六メートルほど。それだけの間合いを以て二人は対峙した。

 魔来名まきなは無言でエルターを見つめる。対してエルターは余裕そうに表情を和らげ、血を流す魔来名まきなを面白そうに見つめていた。

 視線が混じり合い牽制し合う中、魔来名まきな黙考もっこうする。

 腕に刺さった第一の攻撃。あれはおそらく、屋上へと到達する前に放たれた攻撃が時間差で直撃したもの。

 しかし、その時点ではどこに射ればいいのか不明のはず。第二の攻撃。あれは完全に見切った上で躱した。

 矢はそのまま後方に飛んでいったはずだが、結果として背後に直撃した。

 これらの結果から魔来名まきな考察こうさつを終え、未だ突き刺さったままだった右腕の矢をおもむろに引き抜いた。血が滴り落ち、地面を赤く染める。

「なるほど、これがお前の能力か。ずいぶん便利な力だな」

 魔来名まきなは痛がる様子もなく、引き抜いた矢を捨てた。背中の矢も同様に捨てていく。
「理屈は知らん。しかし、お前が放つ矢は必ず当たるらしい」

「ええ、その通りよ。理解が早いのね」

 魔来名まきなの言葉にエルターは隠すつもりはないのがとして答える。

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