錬成七剣神(セブンスソード)
捜索3
「だって、聖治君は遊んだこととか、街を歩き回ったことはないんでしょ?
私や皆森君や織田君は一緒に遊びに行ったことはあるけれど、君は来てすぐにセブンスソードが始まっちゃったから……。
それって寂しいことだと思うし、だから、聖治君が望むなら多少はいいなって、私は思うよ?」
(違ったか)
残念でした。
期待とは違ったが優しさは嬉しい。彼女は本当に優しい人だなと聖治は改めて実感した。
「いや、俺は大丈夫ですから。寂しいなんて気持ちはない」
彼女の笑顔に向かって自分の気持ちを伝える。強がりでも見栄でもない、それが聖治の本心だった。
「本当に?」
「はい。確かに、俺は作られたばかりかもしれない。寮で別れた後、いろいろ思い出そうとしてみたんです。
だけど、思い出せなかった。たとえば中学の修学旅行や、どんな友達がいたとか、思い出そうとするとするほど思い出せない。
だが、一般常識なら迷わず出てくる。知識はあるのに、思い出はない。それがなんだか怖かった、不安にもなった。過去がないというのは、かなり怖かった……」
聖治は語るに連れて視線が足元に向かっていた。それと同時に気持ちもどんどん沈んでいく。けれど、聖治は顔を上げ正面を向いた。
「でも、俺には今がある。星都や力也、香織さんがいる。それに今では此方や日向もいる。
たとえ過去がなくても、思い出がなくても俺には仲間がいる。
思い出なら作っていける。今日を生きて、明日をみんなで迎えられる。だから俺は大丈夫です。そして、楽しい思い出を作るためにも今を頑張らないと」
たとえ過去がなくても、思い出はこれからいくらでも作っていける。
しかし、セブンスソードが始まってしまったら、魔卿騎士団に襲われたら、仲間が一人でも殺されてしまったら、楽しい思い出が作れなくなる。
だから今を頑張らないと駄目なんだと、聖治は答えを見い出していた。
「うん。分かったよ、聖治君の気持ち。なら一緒に頑張ろうか。もう一人を探しに」
「はい」
聖治は頷いた。聖治の様子に香織さんも嬉しそうにしている。彼女が嬉しそうで聖治も嬉しくなるが、気持ちを切り替え表情を引き締める。
もう一人を探そう。
魔堂魔来名を。
そして七人全員で力を合わせ、セブンスソードを生き抜いてみせよう。
そうすれば彼女の笑顔がもっと増える、彼女の優しさを大事にしたいから。聖治はもう一人を探すことに静かにやる気を燃やした。
聖治たちは大通りを歩き回った。
インテリアショップや飲食店に入っては魔堂魔来名の外見を伝えて見覚えがないか聞き回り、ホテルなどの宿泊施設にも利用した記録がないか、聞ける範囲で調べてみた。
けれど、なかなかうまくはいかず繰り返す度に返ってくる答えは知らないの一つだけだった。
それでも諦めず別の店を探して、聖治たちは必死に探し続けていた。
「ふぅ。なかなか見つからないな。もしここにいるなら誰か見かけていても良さそうなんだが」
聖治は収穫が未だにないことに弱音を吐いてしまう。時間だけが過ぎていき、焦りと疲労だけが募っていく。
「ふふ。頑張ってるね、聖治君」
なのに、香織さんは笑いながら話しかけてきた。聖治は疲れはじめているというのに、この人はスキップでも始めそうなほどご機嫌だ。
「そりゃあ、頑張るさ。これからが掛かっているんですから。香織さんは頑張っていないんですか?」
自分とは対照的な態度に思わず口先が尖る。結果がまるで出ないのに、何故この人は楽しそうなのだろうか。
「ううん、ごめんなさい。だけど、君が最後の一人を真剣に探している姿を見ていると、つい嬉しくて」
香織さんは悪そうに謝っているが、それでも顔は笑っている。口元に手を当てる仕草は上品というか、古風な女性を思わせた。
私や皆森君や織田君は一緒に遊びに行ったことはあるけれど、君は来てすぐにセブンスソードが始まっちゃったから……。
それって寂しいことだと思うし、だから、聖治君が望むなら多少はいいなって、私は思うよ?」
(違ったか)
残念でした。
期待とは違ったが優しさは嬉しい。彼女は本当に優しい人だなと聖治は改めて実感した。
「いや、俺は大丈夫ですから。寂しいなんて気持ちはない」
彼女の笑顔に向かって自分の気持ちを伝える。強がりでも見栄でもない、それが聖治の本心だった。
「本当に?」
「はい。確かに、俺は作られたばかりかもしれない。寮で別れた後、いろいろ思い出そうとしてみたんです。
だけど、思い出せなかった。たとえば中学の修学旅行や、どんな友達がいたとか、思い出そうとするとするほど思い出せない。
だが、一般常識なら迷わず出てくる。知識はあるのに、思い出はない。それがなんだか怖かった、不安にもなった。過去がないというのは、かなり怖かった……」
聖治は語るに連れて視線が足元に向かっていた。それと同時に気持ちもどんどん沈んでいく。けれど、聖治は顔を上げ正面を向いた。
「でも、俺には今がある。星都や力也、香織さんがいる。それに今では此方や日向もいる。
たとえ過去がなくても、思い出がなくても俺には仲間がいる。
思い出なら作っていける。今日を生きて、明日をみんなで迎えられる。だから俺は大丈夫です。そして、楽しい思い出を作るためにも今を頑張らないと」
たとえ過去がなくても、思い出はこれからいくらでも作っていける。
しかし、セブンスソードが始まってしまったら、魔卿騎士団に襲われたら、仲間が一人でも殺されてしまったら、楽しい思い出が作れなくなる。
だから今を頑張らないと駄目なんだと、聖治は答えを見い出していた。
「うん。分かったよ、聖治君の気持ち。なら一緒に頑張ろうか。もう一人を探しに」
「はい」
聖治は頷いた。聖治の様子に香織さんも嬉しそうにしている。彼女が嬉しそうで聖治も嬉しくなるが、気持ちを切り替え表情を引き締める。
もう一人を探そう。
魔堂魔来名を。
そして七人全員で力を合わせ、セブンスソードを生き抜いてみせよう。
そうすれば彼女の笑顔がもっと増える、彼女の優しさを大事にしたいから。聖治はもう一人を探すことに静かにやる気を燃やした。
聖治たちは大通りを歩き回った。
インテリアショップや飲食店に入っては魔堂魔来名の外見を伝えて見覚えがないか聞き回り、ホテルなどの宿泊施設にも利用した記録がないか、聞ける範囲で調べてみた。
けれど、なかなかうまくはいかず繰り返す度に返ってくる答えは知らないの一つだけだった。
それでも諦めず別の店を探して、聖治たちは必死に探し続けていた。
「ふぅ。なかなか見つからないな。もしここにいるなら誰か見かけていても良さそうなんだが」
聖治は収穫が未だにないことに弱音を吐いてしまう。時間だけが過ぎていき、焦りと疲労だけが募っていく。
「ふふ。頑張ってるね、聖治君」
なのに、香織さんは笑いながら話しかけてきた。聖治は疲れはじめているというのに、この人はスキップでも始めそうなほどご機嫌だ。
「そりゃあ、頑張るさ。これからが掛かっているんですから。香織さんは頑張っていないんですか?」
自分とは対照的な態度に思わず口先が尖る。結果がまるで出ないのに、何故この人は楽しそうなのだろうか。
「ううん、ごめんなさい。だけど、君が最後の一人を真剣に探している姿を見ていると、つい嬉しくて」
香織さんは悪そうに謝っているが、それでも顔は笑っている。口元に手を当てる仕草は上品というか、古風な女性を思わせた。
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