詩花 恋に恋する呪文

葵冬弥

詩花 恋に恋する呪文

好きになる呪文


君が唱えた


○○○○○○○


僕の耳元にそっと


息を吹くように


甘く


優しく


囁いた


鼓動が急に高鳴り


顔が熱くなる


横を見ると


美しく笑う君がいた


僕の目には


君がどこまでも可愛く映り


僕の耳には


ずっと君の声が響いてた






雨の降る夜


涙の降る夜


君は僕にかけた呪文を解いた


耳元で


どこまでも優しく


どこまでも甘く


○○○○○○○


僕は呪文を解かれても


信じられなくて


知らずに涙が


頬を伝ってた


行かないで


後ろから抱き締めて


僕は君がかけた


好きになる呪文を


君に言った


○○○○○○○


だけど


君は悲しそうに笑って


くちづけるだけで


去っていく


どうして


心の中で解いちゃった


掠れた涙声


初めて不快に思った君の声


初めて不快に思った君の姿


雨の向こうに消える君


涙か雨か分からない


頬を伝う雫


静かに静かに


僕は膝から崩れおちた


口からこぼれるのは


あの呪文


好きになる呪文


○○○○○○○


○○○○○○○


だんだんと大きくなり


どこにいても届くぐらいの声を


喉を張り裂かせ


叫んでた


だけど


聞こえるのは雨の音だけ


呪文をのみこむ雨の音だけ








喉から漏れるのは


息だけになった時


僕は最後の呪文をいった


○○○○○○○


力尽きた意識は


雨の中に沈んでいった

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