話花遊び バニーの日

葵冬弥

話花遊び バニーの日

「ハニーっ」


肩をトン、と叩かれる。


「ん?......あぁ......うん......?」


おかしい、アタシは友達は待っていたはずだ。


だが、目の前にはバニーガールがいた。


とりあえず無視だな。


慌てて目線を逸らして手元のスマフォを眺める。


「ちょっとちょっとー、無視しないでよー」


バニーガールはアタシを中心に歩き始める。


「......」


それでも無視を続ける。


こういうのは関わらないのが1番。


「ねえ、あのさ、ホントは、ちゃんと、わか、てるんでしょ」


早くも息切れし始める。


慣れないヒールの高い靴に膝もプルプルしてる。 


「ぷ、クスクスクス」


もう我慢できなかった。


「あ、やっぱり気付いてる!」


「あははははは!」


もう止めることなく笑う。


バニーガールは恥ずかしそうに立ち尽くす。


疲れてもう動けないんだろうな。


「はー、笑った笑った。ごめんごめん」


「もう知らないですー」


バニーガールは白けたように顔を背ける。


「それで、どしたの?その格好」


「バイト先で今日はバニーの日だからって着させられたからついでに見せてみようかなって」


「あははははは、ちんちくりんなアンタにはちょっと似合わないよ」


「むー!そりゃアンタはモデル体型だからいいさ!これでもバイト先でうけよかったんだよ!」


背伸びした子供を温かい目で見つめてる風景が浮かんだ。


そっと頭を撫でておく。


「なんだよー、その分かりきったって顔はー?」


「うん、可愛いな、て」


「......!」


あ、首まで真っ赤になった。


「べ、別にそんなこと言われ慣れてるんだから」


「うんうん、そうだねー。ほら、もう行くから着替えてきなよ」


「あっ!う、うん、そうだね。じゃ、もちょっとだけ待っててね」


「分かったよ」


「絶対待っててよね」


「はいはーい」


念を押すように振り返るバニーガールにヒラヒラと手を振り返す。


そしてバニーガールの姿がすぐそこの店に消えて少し待って歩き出す。


さて、迷える仔兎をどこで眺めようかな。

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