詩花 ポッキーゲーム未満

葵冬弥

詩花 ポッキーゲーム未満

カリコリカリコリ


カリコリカリコリ


静かに響く


カリコリカリコリ


カリコリカリコリ


君がポッキーを食べる音


帰り道に言葉はなく


ただ小気味よい音が響くだけ


カリコリカリコリ


カリコリカリコリ




あ、あのさ...


...何?




横目でちらりとこちらに目を向ける


冷たい風で頬は少し赤くなってた




あげないわよ




ポッキーの反対側に隠される




いや、別にいらないよ


そう




カリコリカリコリ


カリコリカリコリ


また食べ始める


僕は今日ずっとしたいと思ってた事がある


それが今とてつもないチャンスで


ここしかないと思う


深呼吸をして気持ちを落ち着かせる


冷たい空気が肺にしみて少しむせた


タイミングを計る


彼女が残り半分くらいになって


手を離したその時


ここだ...!


彼女の方に向けて口を開けて顔を寄せる


ポッキーへ一直線に


スカっ




あ、あれ...?




僕はただ彼女の前を横切って


転けそうになる




やっぱり食べたいんじゃん




カリコリカリコリ


片手に持ったポッキーをまた食べ始める




いや、あの、そうじゃないんだよ




カリコリカリ




あ......




彼女は新しく取り出した


ポッキーを食べ始めたけど


突然食べるのを止めた




どうしたーーんぐっ




彼女の持っていたポッキーを


口に突っ込まれた




最後の1個だから......


しょうがないからあげる......




顔を隠すようにマフラーを上げて


視線を逸らす


カリコリカリコリ


僕は大人しくそのポッキーを食べる


やりたいことと違うけど


これはこれで良いかな




ポッキーゲームなんて


そんな恥ずかしいことしないんだから




彼女はさっさと歩き出す


どうやらバレてたみたい


マフラーに隠れた顔は赤くなってた


これが今の彼女との距離かな

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