リーンカーネーション 小学生に戻ったおれ

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彼女達の事情

小宮山の用事は、沢田さんの件だったらしいけど、岡田さんを見た途端、ピンときたらしい。だから、山田さんとのはなしもそこそこに二人で岡田さんのことを話しているようだった。
 ちょうどその頃黒板に気付いた岡田さんは慌ててランドセルを置いて、描かれていた愛愛傘を消していた。すると二人は彼女に近づいて、何やら話をしている。その雰囲気から彼女は断っている様子がうかがえる。話を終えた二人は俺のところに来た。

「佐藤くん、知ってる?」

「何を?」

「岡田さんって彼氏がいるんですって」

「それが?」

「今日は彼氏と会うんですって」

そんな話をする二人の表情は安堵したかのようににこやかだった。


土曜日

俺達69ers(シックスナイナーズ)の練習だ。しかも、ピチピチの女子大生がホットパンツでコーチをしてくれる。しかも二人もだ。走るとはじけそうな胸がブルンブルンと揺れて、健康的な太ももを惜しげもなく見せつけてくれる。中年男性にとってはムフフなところなんだけど、おっといけない俺は小学5年生に上がったばかりだった。しかも、天野さん、太田さん、森さん、箭内さん、山田さんの5名も一緒に練習をするんだとやって来ていた。
 今日までの課題として出されていた守備練習は、ほとんどがクリアした。内容は簡単だ。バウンドしたボールに体を真正面に持って行くこととボールを見て掴むことだった。そんな簡単なことなんだけど。ボールが当たると痛いという恐怖が先に来て目を瞑ってしまう。だから、本当は、ソフトボールでやるんだけど、そこは、庭球と言われるゴムのボールで練習をしたのだ。当たってもいたくないことからみんなはボールを見て取るということに慣れてきた。こうして、ソフトボールで練習をすることになったのは、翌日の日曜日、試合前のことだった。
 時間は、土曜日に戻るんだけど、みんながそんな練習をしている間に俺と矢部っちはコーチに呼ばれてピッチング練習をすることになった。

「君たちね。まず、ボールを見るわ」

そう言って交互にボールを投げるとコーチは首を傾げた。

「どうして優勝できたの?」

それもそのはずスピードだけの矢部っち、俺に至っては秘密兵器を出していないのだから仕方がない。すると他の練習を見ていたもうひとりのコーチが呆れた表情で

「こんな球だと簡単に打たれるわ」

「こんなんで、どうやって優勝できるのよ!!」

「あの親父に騙されたわ」

「あの親父って?誰?」

すると俺の方は指差した。

「佐藤くん、あなたのお父さんよ。これじゃ触られ損じゃない」

親父(おやじぃ)〜なにやってんだ〜と別な意味で汗が出てきた。そもそもは彼女達が練習中を、鼻の下を伸ばした親父が観ていて、ファールボールが当たったのが始まりだ。

「ごめんなさい。大丈夫ですか?」

と近寄って行ったのが松田さんで、誰かが草トリップを仕掛けていたらしく、それに引っかかったのだ。

「きゃっ!!」

どたん!!

そのまま親父の上にたおれこんでしまったのだった。その時偶然にも親父がアソコに触って

「きゃー!!」

バキ!!グーパンチが顔に炸裂、鼻血をだしていたそうだった。

「きゃー鼻血が」

という事で彼女達のベンチへ行くことに、そして、俺の話が出てきたという訳だった。オヤジ〜なにやってんだ?と話は練習へ戻る。

「ホント〜に君達で優勝したの?」

「「はい」」

信じられないと言った表情を浮かべ、ジロジロと俺を見ている。すると俺が鼻の下を伸ばしていると勘違いした天野さんが俺のところにやってきた。

「何してるの?」

すると彼女に

「あなたの彼氏、本当に優勝した時のピッチャーなの?」

彼氏(・・)という言葉に反応した彼女は、嬉しそうに俺を見つめているんだけど、その言葉に驚いた太田さん、森さん、箭内さん、山田さんは慌てて俺のところへやって来た。

「恵ちゃん。ずるい!!」

彼女達の反応にコーチも驚いていたのだが、しばらくは、その場が騒然となったのは言うまでもない。しかし、その光景を瞬時に静かになる程大きな声を上げたのは他ならぬコーチ達だった。

「いい加減にしなさい!!」

えっ?

「ジョーダンじゃない!!このままじゃ、先輩達の前で、裸踊りさせられるわ」

コーチの言葉を聞いて目が点になるみんなをよそに俺の胸ぐらをつかんで

「どういことよ!!」

凄い剣幕でまくしたてられるんだけど、何が起こったのかわからないでいる。話を聞くと優勝投手がいるのなら、優勝できなかったは場合、ソフト部員の前で彼女達が裸ですることになっていて、優勝できたらレギュラーにというか賭け事をしているといったのだ。すると山田さんが

「じゃぁ・・・佐藤君が投げる球を打ってみたら?」

「簡単に打てるわよ。あんな球!!」

「打てなかったらどうする?」

「打てるわよ!!絶対に!!」

山田さんはチラリと俺の方を見た。そして、

「打てなかったら何でも言うこと聞いてくれる?」

「ええ・・いいわよ。絶対に打つから!!」

こうして、俺とコーチの対決が始まった。







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