リーンカーネーション 小学生に戻ったおれ

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呼び出し


とある日の放課後

俺は、中田君に呼び出された。その横にはちゃっかりと中村君もいた。しかし、その手下である村上君はそこにはいない。その代わりに川西君がそこにいた。川西君と村上君は二人の子分みたいな感じで、学校では存在している。ただ、川西君はどちらかというとおとなしい方で、村上君と幼なじみらしく彼にくっ付いていると言った方が本当の所だと思う。だから、彼は、既に戦力外なんだけど、中田君としては、多勢に無勢といったところで、怪我をしている村上君に代わって彼を巻き込んだに違いない。当然、呼び出しということで、誰にも言っていない。下手なことを言うと天野さんと山田さんのことだ俺に付き合うとまで言いかねない。さらにこのことが小宮山さんまで話がいくと更にややこしくなってくる。という訳で場面は校舎裏で3対1という状況、中田君が俺に話しかけた。

「最近、色々と目立ってるじゃねぇか」

「ま・・・パンツ脱がされたりとか~浣腸されて相手を怪我をさせたりとか・・・」

淡々と話をしていると苛立ったのか

「うるさいわい!!」

俺に脅しをかけてきたようだが、これは、想定の範囲だ。昔の記憶をたどれば、彼はちょっと目立った相手に対してこういうことをしてくるのは目に見えていた。あの当時の弱い俺だったら、彼の顔色を見ながら行動をしていただろう。けど、今は中身は47歳のおっさん、中田が言ってきそうなことは予測されている。次は、多分、俺の両側を中村と川西を使って壁際へ追い詰めるつもりだろう。だから、俺はあえて、彼らが動く前に、広い方へ身を移していった。

「チッ・・・」

中田が舌打をした音が聞こえてきた。俺がポリポリと顔を書きながら。

「ま・・・お互いに無駄な争いやめとこう」

その言葉を聞いて、フフッと笑みをこぼした。中田

「佐藤!!変わったなお前」

「何が?」

「以前だったら、ビビッて、何でも言うこと聞きますから勘弁してくださいなんて言っていたのに、それが、お互いに無駄な争いはやめとここうだと、笑わせんな!!やっちまえ!!」

どうやら、彼の癇癪に触れたようだった。真っ先に、俺に殴りかかってきたのは予想通り中村だった。すでにそのことが解っていた俺は、すっと川西の背中側へ逃げた。

「この!!」

そう言って、俺に殴りかかったはずの中村は、俺の盾になっている川西を殴った。

「お・・・おれだ!!や!!やめろ!!」

ばきっ!!

「うっ・・・」

殴られた川西は戦意を喪失していた。

「あっ?」

中村がしまったと思った瞬間、俺は彼の後ろに入って膝をカックンと押し、肩を掴んで思いっきり下へ引っ張った。

「うわ!!」

膝の支えを失った中村はそのままドスンと尻もちをついた。そして、俺は中田と一対一になった。すると、あることを悟ったのか

「わかった・・・これでやめだ」

そういって、俺たちの間には、休戦協定らしきものが出来たのだった。そして、中田は俺にあることを言った。

「お前以外にもう一人、気に食わない奴がいる」

「だれだ?」

「四谷だ」

四谷君、この間転校してきたばかりの彼なのだが、確かに挨拶もあんまりしないし、体育の授業となると身体能力がそこまで高くない割には、むちゃなことをして、周りに迷惑をかけている。にもかかわらず、自分は悪くないと言った態度をとっているのには間違いない。そう言えば、秋の大会後の練習では、親父がコーチということもあって、いきなりエースとして練習を始めている。本人は既に俺たちのチームでエースになったと思っているようだった。そんな彼を矢部っち、絹やん、外やんはもちろんよく思っていない。俺はというとライトの8番へポジションをさせられたのだった。ただ、みんなの反対で、キャプテンを四谷がやるということはできなかった。
次回の練習は、来年の春になってからだ。だから、今は、静観しておくことにしているのだが、たしかに、学校での態度も多少目に余ることがある。あの山田さんも体育のバスケの授業で強引に押し倒してボールを奪っていった態度に対して、学級委員会で一度議題にあげたほどだった。しかし、彼はやめることはなかった。

「わかった・・・俺も気にしておくよ」

***

時はしばらくたち、冬休みも終わり3学期となって、新しい学期の学級委員をきめることとなった。それになんと男子からは四谷君が立候補したのだった。これには、クラス中の男子のみならず、女子からブーイングが巻き起こっていた。しかも、女子はみんなの推薦で天野さんが学級委員になりそうだという情報だ。そんな彼女は俺をじっと睨んでいた。すると2学期の学級委員をしていた山田さんが

「私は佐藤君が適任だと思います」

それにあわせる様に天野さんも手を挙げた。

「私もそう思います」

などと言ってきた。そんな言葉を聞いて一瞬でムッとした表情を浮かべてのはもちろん四谷君。その視線は、何故か天野さんを見ていた。

「俺は立候補しているんだぞ!、なぜ、佐藤を推薦するんだ?」

その暴力的な言葉に先生もあまりいい顔をしていない。

「四谷、今の言葉はおかしいぞ」

「はい」

先生の言葉には逆らえないようだ。しかし、先生は、少し考えながら教卓から周りを見回して、俺と視線が合った途端、にっこりとほほ笑んだ。嫌な予感がする。

「そうだな~四谷が立候補をしたとしても、やはり、公平な選挙をしないといけないな。他に誰か立候補するやつはいないのか?」

そんなことを言いながら俺のほうを見て、お前が立候補しろと言わんばかりだ。

「推薦でもいいんだぞ」

すると天野さんが手を挙げて

「私は佐藤君を推薦します」

すると先生は俺のほうを見た。最悪だ。

「そうか、佐藤を推薦するということか。先生はいいことを思いついたぞ、公平な選挙をする為にな。佐藤!!推薦があるんだお前も立候補しろ!!いいな!!」

「えっ?俺?なんで?」

そう言っていると中田君が手を上がて

「俺が立候補します」

えっ?あの中田が?と驚いていると矢部っちとが

「俺も立候補します!!」

うそ、あの面倒くさがりの矢部っちまで?と驚いていると次々とみんなが立候補している。そんなときだった。先生が

「佐藤どうなんだ。みんなも立候補しているんだぞ!!」

ひょっとしてこれはと思ったが、この時代にはあのコメディアンはテレビに出たばかり、まだあの芸はしていないと思う。

「じゃ、俺も」

するとみんな一斉に

「どうぞ、どうぞ、どうぞ」

予想通りだった。なんとも、この間のテレビでやっていたらしい。

「だましたな!!」

と少し飛び上がると俺が着地した瞬間にみんな飛び上がった。

どん!!

そんな光景に驚いている俺を間抜けとしか言えない。すでに完全に無視して先生は話を前に進めていたのだった。

「佐藤も立候補したことだし、佐藤と四谷のどちらかを学級委員としてみんなの投票できめないとな」

先生もグルだったのか。ということで、俺と四谷君の一騎打ちの投票となったので、各立候補者の立候補した理由を発表しないといけない。面倒くさいことに、しかも、名前順なので俺が先だ。さて困ったぞ何も考えていないのに、すでに壇上に立たされている。普通は立候補した理由は、なになにでこうしたいです。みたいなことを言うんだけと、みんなに騙されて立候補した俺の頭の中は真っ白だ。だから、昔、会社でのみんなの前で話をする時に考えた手法で考えをまとめないといけない。すると先生が俺に早くしろとそくしたのだった。

「さて、みなさん、この度、立候補しました佐藤です。まずは、一学期、二学期と学級委員をした方々にこのクラスがいいクラスとして導いて頂いたことに感謝をいたします。本当にありがとうございました。そして、お疲れ様でした。さて、光陰矢の如しといいますが、この三学期は、一月は行く、二月は逃げる、三月は去ると言われますように短くしかもあっという間に終わってしまいがちです。四月になるとクラス替えもあり、俺たちが一緒にいられるのもあとわずかな期間です。そんな大切な期間だからこそ、みんなと仲良く楽しくやっていきたいと考えます。特に三学期は、これといった行事もないので、思い出に残る何かをしたいと考えています。以上です」

俺の発表にみんながシーンとなっている。先生ですらポカンと口を開けている。

「先生、終わりました」

俺の一言に

「ああ、そうか?なんか大人みたいな演説だったな、拍手」

拍手が一通り終わって、質問タイム、当然、思い出に残る何かとは何ですかと質問が来た。

「それは、一月中にみんなで考えます。例えば、何かみんなでオブジェを作るとか。クラス内で大会をするとかを各班で企画して、みんなで発表して、投票で決めます。2月頃にそれを実施したいと思います。テーマは思い出とします。以上」

今度は四谷君の番だ。

「立候補した四谷です。俺は前の学校でも学級委員をやっていました。この学校の二学期の学級委員を見て、俺の方がこのクラスをもっと良くできると感じました。だから俺にまかせてほしい。清き一票をお願いします」

こうして、学級委員の選挙が行われた。結果は、当然、中田君たちと女子たちの支持を得た俺が学級委員になった。女子はもちろん天野さんということになったのだった。そして、事件はこの日の学級委員を決めた5時限目と6時限目の間の休み時間に起こったのだった。四谷君が天野さんへ詰め寄ったのだった。

「なぜ、あそこであんなことを言った!!」

四谷君は何を考えていたのか、天野さんの胸ぐらをつかんでそう叫んだのだった。

「何すんのよ!!」

辺りは一瞬で騒然となった。俺は、すぐさま

「やめないか!!」

四谷君の肩を引くと

「学級委員はそんなに偉いのか?おおお!!」

バチーん!!

俺の頬にパンチが炸裂した。痛いと思いながらも、俺は殴られた隙に天野さんと四谷君の間に割って入った。

「あん?それで守っているつもりか?このチビ!!」

更に俺に殴りかかって来る。俺は、防戦するだけで手が一杯だった。それは、後ろの天野さんが逃げないからだ。

「何言ってんのよ!!四谷君!!選挙に負けたって!!逆恨みなんて女々しいことしないでよ!!」

すると

「何を!!」

そう叫んで、天野さんへ襲い掛かろうとしたんで、これはダメだと。

「やめろ!!」

俺が彼の体に飛びついた。正確には、足元へ飛びついて。太もも付近をぐっと抱きかかえたのだった。

「うわ!!!」

ゴン!!

そのまま後ろへ倒れ込んだ四谷君は、当然、受け身を取ることすらできないで、卒倒して頭を強打して気絶したのだった。そんな身を挺して守ったことに天野さんが感動していたなんて、彼を取り押さえることに精一杯だった俺にとって知るはずもなかった。

***

しばらくして、目を覚ました四谷君は今度は被害者ぶって、放課後のクラス会で俺のことをあることないこと先生に言い出したのだった。すると天野さんが反撃を言い出した。

「言いがかりをつけてきたのは四谷君です。しかも、私に襲い掛かってきました」

「そんなことはない。俺は、言葉だけで、いきなり襲い掛かってきたのは、佐藤だ!!」

その言葉にクラス中からヤジが飛んだ。当然だ、どう見ても四谷君の方が分が悪い。最後に先生が採決を取ることになった。すると、ほぼ全会一致で四谷君が悪いということになったのだった。しかし、ふてている彼を見て俺は天野さんへ仕返しをする可能性が高いと推測をしていたのだった。そして、クラス会が終わって、中田君に

「四谷、ちょっと、おかしいよな」

「そうだな」

この一言で、四谷への警戒態勢が出来たんだけど、あいつは弱い方へ行くだろうとしかも狙いは天野さんだと思って、俺は、帰り道、奴の後をつけたのだった。
 天野さんの帰り方向は、俺と四谷の町内からすると学校を挟んで反対方向にある。だから、学校を出た時点で、あいつが逆方向へ歩き出していた時点で、犯行は目に見えていた。天野さんの数十メートル先には、中田君が歩いていた。そして、俺は、隠れる様に四谷の後をつけた。そして、中田君が十字路を右に曲がったところを天野さんは、左に曲がった瞬間、四谷君が走り出した。俺も慌てて、彼を追った。

「きゃー!!」

天野さんの悲鳴がしてきた

「貴様!!よくもなめたことを!!」

そう言って彼女の腕を掴んで殴りかかりそうだったので、ランドセルを投げて、四谷へぶつけた。

どか!!

「いて!!だれだ!!」

俺が駆けつけたのを見て、不敵に笑った四谷

「正義の味方ですか?おら!!」

そう言って、おれに蹴りを入れてきたのだ、間一髪避けることが出来たが、場所が悪い!!俺には逃げ場所がなかった、そして、とびかかって来て馬乗りになった後、俺に何度も殴る暴行を始めたのだった。そこへ、中田君と山田さん、小宮山さんやって来て

「やめろ!!」

そう叫んで四谷を突き飛ばして、押さえつけてくれたのだった。

「このことは先生にいうからな!!覚悟しとけよ!!」

「ふー!!ふ-!!」

それでも暴れる四谷に先に先生を呼びに行った。太田さんが先生を連れてやってきたのだった。

「四谷!!何をしている!!」

先生を見つけた瞬間

「うぁああああああ!!!」

大暴れをして、抑えている3人を突き飛ばして、その場から逃げ出していったのだった。そして、みんなの一番の心配は、襲われた天野さんだった。一番負傷している俺は、誰も気に留めてもくれなかった。

天野さん以外は・・・








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