異世界転移〜イージーモードには棘がある〜 

夕張 タツト

二十三話

 クライダーの糸をバッグに詰める。
 わっかを作り、足をすぐに絡め取るようにする。


 俺たち一行はすぐに陣地を飛び出し、奥へ進む。
 予想通り、足による地面の振動を消すとクライダーは襲ってこない。


 俺たちはしばらく洞窟深部へと歩を進める。


 体感時間で一時間ほど経った時。


 「問題はどうやって発見するかだな」


 最深部まで到達する目処が付き、目下最大の問題をカルバが呟く。


 「やはり、虱潰しにするしかないのでは?」


 一行の最後尾にいるケビンが周りをキョロキョロと見ながら答える。
 魔物に取り囲まれている状況に落ち着かないのかもしれない。


 「手分けするのはどうなの?」


 一行の丁度真ん中、俺の後ろにいるレイラが提案する。


 「いや、ただでさえ不測の事態に備えていない作戦だ。あまり、別行動するべきではないだろう」


 セレナは先頭を行く。
 この先、3つほど分かれ道があるが、セレナが襲われたのは真ん中の道だという。
 十中八九そこにダンジョンボスが棲息していることだろう、とセレナは自信を伺わせる口調で皆に伝える。




 「セレナさん、魔力は大丈夫ですか?」


 俺とレイラの分の魔法まで掛けているセレナさんは魔力消費が激しいはずだ。 
 今使っている魔法は俺は元より、レイラとケビンも出来なかった。
 ケビンの分はカルバさんがしているが、やはり三人分となるとキツイものがあるだろう。
 セレナさんが言うダンジョンボスの生息地まではもうすぐだ。
 魔法なしでも強いとはいえ、やはり万全に近い状態で戦うほうが良いだろう。


 「大丈夫だ。あと三時間は持つ」


 俺はその答えに後一時間進んで発見できなかったら撤退することを進言しようと心に決め、先に進んだ。


 その決心はすぐに意味なきものになってしまうが…。




 「これがダンジョンボス?」


 ケビンの呟きが全員の耳に届く。
 静寂に包まれた一行は改めて見るその大きさに萎縮いしゅくする。


 「カルバさんなら大丈夫ですよね。前に地竜を倒したとか言ってましたよね」


 俺は自身の予想を遥かに上回る、いや、大きさは予想通りだが、想像を遥かに上回る威圧感に手が震える。


 「…俺が地竜を倒した時はこの百倍は仲間がいたさ」


 カルバはポツリとつぶやき、バッグを地面に置く。
 中からクライダーの糸を取り出し、一歩前に出る。


 「でも、倒せるぜ!」


 カルバさんはやはい、格好いい。
 俺たちは放心状態から回復し、各々糸を取り出す。


 「いいか、ケビンは戦闘になったらなるべく雑魚を寄せ付けるな。レイラは糸を足に掛けたら下がって援護しろ。俺とセレナ、ハヤトはあいつを殺る。いいな?」


 「「「はいっ!!」」」


 事前の打ち合わせ事項を素早く確認し、位置に付く。


 3,2,1…。
 カルバの合図と共に作戦が開始された。


 


 

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