異世界転移〜イージーモードには棘がある〜
一話
真上に太陽がある。
大通りを望める路地に立っている俺は確信した。
ここ、異世界じゃね。
状況を整理しよう。
その日の朝、俺は浪人生活からの脱却に向け、御利益を得ようと神社に来ていた。
そんな欲まみれで境内に入ったのがいけなかったのかもしれない。
お賽銭もケチった。
せめて、十円玉にすれば…。
と、後悔先に立たず、鳥居から一歩踏み出すと、そこは異世界だった。
そこから方々に歩き回った。
街の喧騒は日本語で彩られている。
交番らしきものもなく、三年間も宅浪であった俺は人様に道を尋ねるなどできない。
断言しよう、できない。
とはいっても、もう昼になりそうだ。
時計の針は11時半。
太陽の位置もそのくらいのはず。
日の当たらない生活でも、そのくらいは分かる。
だがしかし、持ち物は水筒や参考書に筆記用具、その他細々とした雑貨。
お金は使えないし…。
その時、ふとガラス張りに映る自分の姿を捉える。
他人がいた。
俺じゃない他人がいた。
身なりは今日の俺のまま。
顔が違う。
背格好はあまり変化が無いように見えるが。
俺が自分の顔にアイデンティを持っていたら確実に精神崩壊してたな。
何しろ普通すぎた。
黒髪黒眼。少し先端の曲がった鼻。
唇は明太子がくっついた風でもなく、紅生姜のように細くもない。
うーん。俺が俺でない感覚に陥る。
どちらかと言うとブサメンから普通フェイスにランクアップしているので文句は言えないが。
どちらにせよ、先にすることがある。
ここは勇気を出そう。
「あ、あのっ、」
「なんだぁ兄ちゃん」
「あっ何でも無いです」
「そうか、じゃあな」
しまった~。
つい見返り強面にびびってしまった。
中肉中背に惑わされた。
だが、要領はつかめた!!
次はあそこのおじさっ、じゃなくて、お姉さんに聞こう。
幻想的な銀色の髪を背中の中程まで伸ばしている。
「あのっ、」
「なにか?!」
こっちは見返り美人だ。
「交番はどこですか?」
「交番?」
「えっと、街の案内所みたいな所です」
お姉さんが顎をつまみ、思案する。
「たぶん、私と目的地一緒だから付いてきて」
「ありがとうございます!」
よかった。
とりあえず、情報収集だ。
道中、お姉さんといろいろお話をした。
スラリと伸びた足は全く同じリズムで歩を進める。
こういう人がいるとホントにここは異世界だなと感じてしまう。
お姉さんはセレナ・リースフェルトと名乗った。
自己主張の激しい胸部をチラ見しながら自己紹介もした。
とりあえず、遠方からきた学生ということにした。
無職って言いたくないし…。
そして、今。
セレナさんのキリッとした瞳が見つめる先、
(セレナさん、交番ってヤ〇ザの事務所ちゃいますよ)
俺は早くもピンチである。
「セレナさん、ここですか?」
「そうよ、早く入りましょ」
そう言って俺の手を引くセレナさん。
介錯は彼女にしてもらいたいものだ。
「オヤッさん、活きのいい坊やを連れてきたよ」
急におどけた調子で奥の男に声を掛けるセレナさん。
イヤー!!やっぱりだよ。
絶望だよ。
神社に行っただけじゃん。
「あれ、さっきのボウズか」
「まだ、死にたくないです」
「なに言ってんだ?」
その後、ここはギルド支部であることが分かった。
ドヤ顔でギルド名を言われた時は恐喝されるかと思った。
あまり驚かなかった俺にセレナさんが説明した。
ここは人類史上最古のギルドであり、実力は五指に入るらしい。
とりあえず、地図がほしい。
あと、できれば職を。
「そう、じゃ適性審査しよっか」
セレナさんに案内される。
確かに仕事は欲しいけど、堅気のままでいたいです。
イメージ通りのヤク、じゃなくてギルドの受付につく。
「前にある小皿に血を入れて」
セレナさんがナイフを渡してくる。
指詰めか。
「あの、どのくらいいりますか?」
「二、三滴かな」
はい、やりますよ。
ブスッ。ぽたぽた。
「はーい、ちょっと待ってね」
「おう、ボウズ終わったらこっち来いや」
「はいっ」
それからしばし、強面、カルバ・ゴリアテ氏は自身の武勇伝を語ってくれた。
やい、地竜を倒した。ドラゴンの眼に刃を突き立てた。魔族の領域で半年彷徨った。などなど…。
素直に感動してしまった。
中肉中背だと思っていたが、引き締まった体、と表現したほうが的確かもしれない。
無駄な脂肪、筋肉が一切ないように思えた。
そして、まだ高みを目指しているらしい。
そこに痺れる、憧れるッ!!
「終わったようだな」
カルバが呟く。
振り返った俺はセレナさんが心なしかそわそわしているのが見受けられ、少し緊張する。
「初めに聞いておくけど…」
妙に歯切れの悪い。
俺氏そんなにヤバいのか。
「実家が貴族とか大商会とかで後を継いだり、すぐに何処か行ったりする予定はある?」
「ありませんけど…」
というか、帰り方が分からん。
無職だし、通貨も違う。
まぁ、円でも手持ち500円程度なのだが…。
「そう、じゃ言うね。ちなみにこれは潜在能力だから、まだ実力と合ってないかもだけど…」
そうして読み上げるセレナさん。
ふんふん、
腕力;D
脚力;B
知力;A
S〜Fの評価基準でなかなかではないだろうか。
「そして、最後に魔力なんだけど」
キター!!
もしかして、魔法使えちゃいますか。
魔力;0
はい?
大通りを望める路地に立っている俺は確信した。
ここ、異世界じゃね。
状況を整理しよう。
その日の朝、俺は浪人生活からの脱却に向け、御利益を得ようと神社に来ていた。
そんな欲まみれで境内に入ったのがいけなかったのかもしれない。
お賽銭もケチった。
せめて、十円玉にすれば…。
と、後悔先に立たず、鳥居から一歩踏み出すと、そこは異世界だった。
そこから方々に歩き回った。
街の喧騒は日本語で彩られている。
交番らしきものもなく、三年間も宅浪であった俺は人様に道を尋ねるなどできない。
断言しよう、できない。
とはいっても、もう昼になりそうだ。
時計の針は11時半。
太陽の位置もそのくらいのはず。
日の当たらない生活でも、そのくらいは分かる。
だがしかし、持ち物は水筒や参考書に筆記用具、その他細々とした雑貨。
お金は使えないし…。
その時、ふとガラス張りに映る自分の姿を捉える。
他人がいた。
俺じゃない他人がいた。
身なりは今日の俺のまま。
顔が違う。
背格好はあまり変化が無いように見えるが。
俺が自分の顔にアイデンティを持っていたら確実に精神崩壊してたな。
何しろ普通すぎた。
黒髪黒眼。少し先端の曲がった鼻。
唇は明太子がくっついた風でもなく、紅生姜のように細くもない。
うーん。俺が俺でない感覚に陥る。
どちらかと言うとブサメンから普通フェイスにランクアップしているので文句は言えないが。
どちらにせよ、先にすることがある。
ここは勇気を出そう。
「あ、あのっ、」
「なんだぁ兄ちゃん」
「あっ何でも無いです」
「そうか、じゃあな」
しまった~。
つい見返り強面にびびってしまった。
中肉中背に惑わされた。
だが、要領はつかめた!!
次はあそこのおじさっ、じゃなくて、お姉さんに聞こう。
幻想的な銀色の髪を背中の中程まで伸ばしている。
「あのっ、」
「なにか?!」
こっちは見返り美人だ。
「交番はどこですか?」
「交番?」
「えっと、街の案内所みたいな所です」
お姉さんが顎をつまみ、思案する。
「たぶん、私と目的地一緒だから付いてきて」
「ありがとうございます!」
よかった。
とりあえず、情報収集だ。
道中、お姉さんといろいろお話をした。
スラリと伸びた足は全く同じリズムで歩を進める。
こういう人がいるとホントにここは異世界だなと感じてしまう。
お姉さんはセレナ・リースフェルトと名乗った。
自己主張の激しい胸部をチラ見しながら自己紹介もした。
とりあえず、遠方からきた学生ということにした。
無職って言いたくないし…。
そして、今。
セレナさんのキリッとした瞳が見つめる先、
(セレナさん、交番ってヤ〇ザの事務所ちゃいますよ)
俺は早くもピンチである。
「セレナさん、ここですか?」
「そうよ、早く入りましょ」
そう言って俺の手を引くセレナさん。
介錯は彼女にしてもらいたいものだ。
「オヤッさん、活きのいい坊やを連れてきたよ」
急におどけた調子で奥の男に声を掛けるセレナさん。
イヤー!!やっぱりだよ。
絶望だよ。
神社に行っただけじゃん。
「あれ、さっきのボウズか」
「まだ、死にたくないです」
「なに言ってんだ?」
その後、ここはギルド支部であることが分かった。
ドヤ顔でギルド名を言われた時は恐喝されるかと思った。
あまり驚かなかった俺にセレナさんが説明した。
ここは人類史上最古のギルドであり、実力は五指に入るらしい。
とりあえず、地図がほしい。
あと、できれば職を。
「そう、じゃ適性審査しよっか」
セレナさんに案内される。
確かに仕事は欲しいけど、堅気のままでいたいです。
イメージ通りのヤク、じゃなくてギルドの受付につく。
「前にある小皿に血を入れて」
セレナさんがナイフを渡してくる。
指詰めか。
「あの、どのくらいいりますか?」
「二、三滴かな」
はい、やりますよ。
ブスッ。ぽたぽた。
「はーい、ちょっと待ってね」
「おう、ボウズ終わったらこっち来いや」
「はいっ」
それからしばし、強面、カルバ・ゴリアテ氏は自身の武勇伝を語ってくれた。
やい、地竜を倒した。ドラゴンの眼に刃を突き立てた。魔族の領域で半年彷徨った。などなど…。
素直に感動してしまった。
中肉中背だと思っていたが、引き締まった体、と表現したほうが的確かもしれない。
無駄な脂肪、筋肉が一切ないように思えた。
そして、まだ高みを目指しているらしい。
そこに痺れる、憧れるッ!!
「終わったようだな」
カルバが呟く。
振り返った俺はセレナさんが心なしかそわそわしているのが見受けられ、少し緊張する。
「初めに聞いておくけど…」
妙に歯切れの悪い。
俺氏そんなにヤバいのか。
「実家が貴族とか大商会とかで後を継いだり、すぐに何処か行ったりする予定はある?」
「ありませんけど…」
というか、帰り方が分からん。
無職だし、通貨も違う。
まぁ、円でも手持ち500円程度なのだが…。
「そう、じゃ言うね。ちなみにこれは潜在能力だから、まだ実力と合ってないかもだけど…」
そうして読み上げるセレナさん。
ふんふん、
腕力;D
脚力;B
知力;A
S〜Fの評価基準でなかなかではないだろうか。
「そして、最後に魔力なんだけど」
キター!!
もしかして、魔法使えちゃいますか。
魔力;0
はい?
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コメント
創生の解放軍<リペリヲン> 死滅殺忌
おい、賽銭どれくらいケチったんだよw