異世界を8世界ほど救ってくれって頼まれました。~本音で進む英雄譚~(仮)
1-19 いざ、別大陸へ!
さて、あのマメ柴を引き取り俺達は町へと繰り出した。
ダイジェストでお送りしよう!
「あ、この服かわいいかも? フィリアいいんじゃない。冒険者っぽくなれるわよ?」
フィリアが服を新調し……
「ヒールは使えるようになったけど、ポーションとは欲しいわねー。キャンプ用品も買っておく? あんまり使わないと思うけどいざって時に野宿よりはマシじゃないかしら」
アイテムを購入し……
「そうだな、それじゃいざという時の為に食料も買っておくか。カバンは無限に入るから多めにっと……」
食料を買い込み……
「わんわん! きゅふん!」
「とりあえず首輪でも買っておかない? はぐれたりしたらまた面倒だよ?」
お犬様に首輪を買ったりして……
「食ったー! 領主さんのご飯も美味しいけど、やっぱこういう雑多な食堂はアリだよなー」
「家庭の味、みたいなのがいいですよね! わたし女神見習いですけど……」
フィリアがお腹をさすりながら先ほど食べた料理を思い出す。
割と大食いなのは女神見習いだからだろうか?
「わんわん!」
「お前も満足したか? そりゃ良かった」
まめ柴を抱っこすると顔を舐めてくる。少ししか経っていないが、随分慣れたな。命の恩人ってのが分かるのかな?
「それにしても可愛いわねー。陽、犬好きだもんね、おおよしよし」
「くぅーん」
目を細めて喜ぶまめ柴だが、綾香が違和感に気付く。
「あれ? この子……角っぽいのが無い?」
「ん? あれ、ホントだ。もしかして犬じゃないのか?」
「わんわん!」
するとシルフ(犬)が説明してくれた。
「ウチらはどうやら魔物みたいだね。ワイルドシバって種族みたい」
柴は柴なのね。だが、魔物か……。
「連れて歩いて平気かな?」
するとピコンとコントローラーが鳴った。
<そうですね、成長してもそれほど大きくならないようですし、良く懐くようです。訓練すれば戦闘にも参加できみたいですね。先ほどの男が売ろうとしていたように愛玩動物としても取引されているので、問題ないと思います>
「そっか、あのおっさんも売ってお金もうけしようとしていたのね。どこから連れて来たのかしら……」
「この親の記憶を見る限り、山狩りに合った時に捕まったみたいね。元の山はここと全然違うみたいじゃんね」
「そっか、お前と一緒で密猟か何かだろうな。よっし、俺達がこの世界を救うまでにいい飼い主を探してやるからな!」
「わふん!」
体をぷるぷる振るわせて喜ぶまめ柴。うーむ可愛い……後は名前か……。
そんな事を思いながら、領主の屋敷へと戻るのであった。
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そして出発当日である。
船着き場で、領主さんとリキッドさん、ニアさんが見送りに来てくれていた。
「もう行っちまうか、寂しくなるな!」
「私とリキッドの事ではお世話になりましたね、幸多い旅にならんことを祈っていますね」
ニアさんは「隊長」ではなく「リキッド」に呼び方が変わっていた。色々あったが、こっちも丸く収まって良かった。
「それじゃ、お世話になりました! すいません長い事……」
「いえ、いいんですよ。この領を助けて頂いたのは確かですしね! はっはっは! 道中お気をつけて、この快晴なら何も問題ないと思いますがね」
そう言う領主さんと握手をし、俺達は船に乗り込んだ。
特にケージに入れなくても暴れなければいいということで、まめ柴魔物は綾香が抱っこしている。シルフ(犬)もそれほど大きくないので俺が抱っこした。
「それじゃあお元気で!」
フィリアが手を振ってリキッドさん達にお別れをし、船はどんどん岸から離れていく。
やがて陸地が見えなくなり、ざざんと波の音だけが聞こえていた。
<いよいよこの世界の黒幕と対決ですね。現時点で周辺に魔物の気配などもありません。到着まで2日、のんびりしましょう>
ローラが急に出てきて説明臭いセリフを言った。出番が欲しいのだろうか?
「いい気持ちねー。ほら、暴れちゃだめよ?」
「わんわん!」
尻尾を振って綾香の周りを駆け巡る、元気がいいのは何よりだ。頭を殴られた後遺症も無さそうだし。
「ウチも向こうに戻れて一安心だわ」
「そういやお前、名前は? シルフ(犬)じゃ困るだろ?」
「わざわざかっこをつけなくていいじゃんね……。ウチの名前はリーザよ、改めてよろしく!」
「よろしくお願いしますね! ああ……肉球が……」
大人しいリーザの肉球をぷにぷにしながら目を細めるフィリア。
デッキにあるベンチのような椅子に寝転がり、俺はウトウトし始める。
それを綾香とまめ柴が邪魔をし、フィリアが笑うというほのぼのした空気の中船は進んでいた。
だが、すんなりと到着はできなかった。
航海を始めて2日後の事だ……。
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<数日前のオッパムの町>
「何とかなりましたね……」
「ええ……デビルズスマイルの効果は絶大ね……ギルドマスターがちょっと微笑んだだけで大嵐……」
疲れた顔の冒険者とコルベットがギルド備え付けのテーブルに突っ伏していた。
「恐ろしいですね。そういえばその対象となった冒険者達はどうなったんでしょうね?」
「分からないわ。すでに町を出ていましたからね、この町の災厄に居合わせていないなら、どこかで災禍にに見舞われるでしょうね……生きているといいけど……」
コルベットのいう事は間違っていなかった。陽達はその災禍をその身に受けていたのだ。
船
これほど危険な乗り物はあるまい、海の上で身動きが取れず、まして自分で操作することも出来ない……。
そしてそこを襲う大嵐。
そう、陽達の船は大嵐に見舞われ……三人と二匹は海に投げ出されたのだった。
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