パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その223 進行


 「わ、もうこんなになってるの?」

 転移陣から二十階へ行くと、ビューリックの騎士達が忙しく立ち働いていた。檻は撤去され、水浸しだった床も元通りになっている。タタミはボロボロになっていたらしく、一部しか残っていないけどね。

 「あ、ルーナさんにウェンディ! これから登るんですか?」

 作業をしている騎士の中にいたイリスが声をかけてくる。彼女はこちら側が持ち場らしい。ウェンディがニカッと笑いながらイリスへと返していた。

 「行ってくるであります!イリスもここの守りを頼むでありますよ」

 「うん。私も行きたかったけどねー」

 「イリスの足の速さはどこかで役に立ちそうだし、その内来てもらう事があるかも……」

 イリスはえへへと笑い、また作業に戻って行った。私達はそれを見送ってから二十一階へと続く階段を登り始める。


 「カイムはこっちへ来たそうだったな」

 「はい……ケガは無いんですけど精神的疲労がかなり溜まっていたみたいでした」

 『罠を解除しながら、周囲の警戒にフレーレの心配……精神には良くないわよね』

 レイドさんとフレーレの会話にアルモニアさんがにやにやしながら絡む。

 「そ、それは言わないでください!? も、もう……」

 おや? フレーレの様子が……? ちょっと気になるわね……。 私が聞こうとするが、それより早く別の話題に変えられてしまう。

 <今回はレジナだけか、あの娘に随分気に入られたみたいだな>

 「がう」

 「そうなのよー、ミトが子狼達を放さないの。何か故郷にラクダっていう動物は飼ってるみたいなんだけど、犬とか猫に憧れてたらしいのよ。三匹とも悪い気はして無さそうだったから置いてきちゃった」

 砂漠の犬や猫は毛が短いらしくふさふさしていないらしい。こんなにふわふわしている犬を見るのは初めてだって。犬じゃないんだけどねぇ……。

 そして後ろではカルエラートさんとウェンディが同じ騎士という事もあってか話が弾んでいるようだ。

 「何と、カルエラート殿はヴィオーラの国で騎士をやっておられたのですか」

 「ああ、ディクラインに頼まれて着いていく事になったんだが、丁度良かった。あの国は騎士や貴族の平民に対する態度が鼻についていてな。私も女だてらに騎士などと馬鹿にされたものだ」

 「何と……あの国はいい噂を聞きませんが、それほどとは……。そ、それよりカルエラート殿は守りが主体でありますね! 私とちょうど真反対でありますなあ。この通り、馬鹿力だけが取り柄でして……」

 長剣を抜いてぶんぶんと振り回すウェンディ。長剣とはいったけど、刃の太さはかなり広いのでものすごく長い大剣のように見えたりする。

 「いや、守りで前に出たとしても斬りこむのはお前達のような者達に頼る事になる。そう卑下することは無いと思うぞ」

 「いや、そんな、えへへであります……」

 ちょろい。ウェンディの今後が心配だけど、今は……。

 『二一階だ、心して行くわよ』

 レイドさんと共に前衛を歩いていたアルモニアさんがいい、私達は先程までの和やかに雰囲気を捨てて武器を構えた。全員が構えたのを見てレイドさんが一気に二一階へと躍り出た。続けてカルエラートさんに私、アルモニアさんが続く。

 「なんだ……これは……?」

 「何も無い?」

 「階段が目の前にありますよ」

 <ですぴょん、今までと違う形の階段ぴょんね>

 フレーレはのんきに首を傾げるが、逆に言えばそれしかないのだ。フロア自体は塔の端から端までしっかりあるけど、魔物も居なければ部屋も無い。ただただ広い空間とリリーの言うとおり、今までと違う螺旋状の階段があるだけだった。

 「お父さんも居ないわね、このまま登っていったのかしら」

 <……階段が抜けるということも……なさそうだ>
 
 『……罠では無さそうね』

 空を飛べるカームさんとアルモニアさんが少し階段を登って確かめるが、階段が落ちたりするようなことは無かった。

 「行こう、体力を使わないで進めるならそれに越したことは無い」

 盾を構えたカルエラートさんがレイドさんと先頭を変わり、階段を少しずつ登っていく。


 二十二階、二十三階と何事も無く進み、各階に到着した時に見渡すものの、全て二十一階と見間違うほど同じ作りをしていた。
 おかしなところは無いのが逆に気味が悪いくらいね……五階の時みたいにループしていると言われた方がまだしっくりくる。

 「今までは五階ごとに何かしらいたけど、今回はどうかしら」

 「もぐ……ヴァイゼさんが先に行っていたら倒されているんじゃないか?」

 二十四階で昼食を取りつつ、今までの事を振り返る。牛君に変なニンジャが五階と十五階にいたことを考えると二十五階にもいそうではある。けど、レイドさんの言うとおり、お父さんが先へ行ったなら倒している可能性は高い。

 <もしかすると二十五階で足止めを食らっている可能性もある。どちらにせよ油断せず行くのが賢明だろう>

 「でありますな。折角登って来たのに魔物が居ないのは肩透かしを食らっている感じがあるので。私としては何かいてほしいでありますが」

 「滅多な事を言うものじゃない。犠牲なく進めるのが一番いいんだぞ? アネモネのようになってしまったら皆悲しむ」

 「……申し訳ないであります」

 ウェンディに悪気はないのは分かるんだけど、戦いたいという考えは却下したいところだ。神裂までの道程はまだ長いのだから……。

 そして二十五階へ到着した私達の前に、やっぱりと問いたくなるような光景が目に入った。


 ◆ ◇ ◆


 <バベルの塔:三十階>


 「ふむ、今度のお茶はハーブが利いているな」

 「分かるかい? 僕の国ではお茶をする時間をわざわざ取っていたくらいだからこだわりはあるよ。おっと、二十五階に侵入者が来たみたいだね。君の娘さん達かな?」

 「だろうな、どうせ素通りだろう?」

 「うまい茶でござるな……拙者達が通った時も誰も居なかったからここまですぐ来るのではござらんか?」

 「ははは、君達は元々塔の人間だから招待しただけだよ。こちらの魔王様は興味深かったから素通りしてもらったのさ。他の階と同じく二十五階には僕の配下を置いている。ま、もっとも命まで取るつもりは無いから、逃げ帰ってもらっても構わないけどね? 残り六カ月と少し、滅亡まで好きに生きるってのはどうかな?」

 「フッ、あまりこの世界の人間を舐めない方がいいぞ。それより俺に話があるんだろう? そろそろ頃合いではないか? ……茶のおかわりをもらってからな」

 「気に入ってくれたようで何よりだよ。それじゃ、話をしようか……」


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