パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その220 夕食


 しばらく仮眠をとっていると、カルエラートさんに起こされた。

 先に出ているからと、カルエラートさんは外に出ていったので、横で寝ているフレーレを起こしていると、レジナ達も目を覚まし、くぁ……とあくびをして私の足元でゴロゴロし始めた。

 仕草は可愛かったけど、眺めていてもお腹は膨れないので三匹をフレーレと分けて抱っこし、ご飯を食べに向かう。すでに陽は落ち、ビューリックの騎士団達も野営や食事の準備に取り掛かっていた。
 
 人が増えて来たな、と思っていると、中央でテーブルを出しているカルエラートさんを見つけて私達は近づいた。

 「それは、拠点の守りを担当した方へお渡しください。これは慣れない大工仕事をしてくださった騎士の方へお願いします」

 「は、はい!」

 ニコリと笑って鍋を渡すカルエラートさんを見て、顔を赤くした騎士が大きな鍋を抱えて私達の横をすれ違う。

 「あの人、フォルサさんに年増って言ってノックアウトされた人ですね」

 「なにそれ……カルエラートさん!」

 「フレーレも起きたか、なら着席してくれ。すぐ用意してやるからな! 今日は魚料理だ!」

 カルエラートさんが張り切って私達を席に着かせると、焼き始める。このテーブルとイスはモルトさん達が片手間に作ったらしい。
 お魚……釣りがしたいな、と思いつつしばらくフレーレと談笑していると人が集まってきた。

 <魚……魚がわたしを呼んでいるにゃ……>

 <わらわは野菜が食べたいのじゃがのう>

 「今日はこっちで食べられるな」

 「ですです。騎士の人達に感謝です!」

 バステト、チェイシャ、見張りを変わってもらってソキウスとチェーリカがやってくる。続けてレイドさん、カームさんと女神姉妹がやってくる。

 「レイドさん、パパ達は?」

 「……うん、アイディールがまだ目を覚まさなくてね。傍にいるから食べて来いって。カイムはまだ動けそうにないから休ませている」

 『まだ薬を打ってから数時間だ、丸一日は様子見だね。後でボクが診にいこう』

 「あ、じゃあ私もパパに夕食を持っていくから一緒に行きましょう」

 「大丈夫でしょうか……私もカイムさんにご飯を持って行って回復魔法を使いに行きますよ」

 軽く会話をしていると、カルエラートさんが夕食を並べて一斉に食べ始める。ソキウスとチェーリカが戻って来たものの、人数が減っているので少し寂しい。

 「アネモネさんが居ないとやっぱり寂しいね……」

 「わたしはアネモネさんとは蒼希で戦っていますし……セイラもベルダーさんも残念だと思います」

 <さっきも言ったがアネモネは後悔しておらん>

 <わたし達を心配してくれるのは嬉しいけど、ここは割り切るにゃ。でないと神裂を倒すことはできないにゃ>

 チェイシャとバスが器用にナイフとフォークを使いながらそんな事を言う。でもやっぱり死んで欲しくないから私は口を開く。

 「つ、次はみんなお留守番して……」

 <言うな。次はアネモネの代わりに俺が行く。一応、これでも戦闘が出来る者から行っているし、俺達にも考えがある。気持ちは嬉しいが、そこはバステトの言うとおり割り切ってくれ>

 「う……」

 カームさんが、迫力のある顔で私を見て言った。元から戦闘が出来るアネモネさん、カームさん、バスとファウダーがまず塔へ行くのだそうだ。アネモネさんが消えてしまったので次はカームさんだと言う

 <(ファウダーはジャンナがいるからな、なるべく出したくない。何、俺達も最初から死ぬつもりはない。ありがとう)>

 小さくなっているカームさんがカルエラートさんにおかわりを要求しに行く途中、私に耳打ちをしてくれた。次に二十階からスタートするメンバーはエクソリアさんとママが外れて、フレーレが行く事になった。完全ではないけど、回復魔法が使えないのは困ると頑として譲らなかった。

 「チェーリカは行かなくていいですか?」

 「チェーリカは拠点の回復をシルキーさんとお願いね。塔は騎士の人達が見張りをしてくれるから、こっちに戻ってこれるし」

 「分かりました! でも、何かあったらすぐ行きますから呼んでください!」

 チェーリカが宣言し、それぞれ頷き食事を再開する。私はアネモネさんの好きだったお酒をテーブルに置き、皆もそれを黙って見ていた。

 その後は私たちのいない間の拠点状況を聞いたりしてわいわいと過ごす。少しお酒の入ったバスが手をぶんぶん振りながら叫びだす。

 <カルエラートは魔性の女だったにゃ! 何かあると男が話しかけに来るにゃ!>

 「ぶっ!? 何を言っている! 勘違いだ!?」

 バステトが言うには、カルエラートさんが拠点で男性に惚れられまくっているということらしい。まあ長身で美人だし、鎧じゃなくてエプロンをしているからね。しかも料理のおすそ分けなどしていたらそりゃあ男は気になると思う。

 <まあわらわ達がガードしておるから変な事にはなるまい。むしろ、気に入られるため仕事を頑張っておるわ>

 「ああ、だから魔性の……」

 「それはやめてくれ!? あうう……しばらく小屋で大人しくする……」

 そう言って魚をまた焼き始めるカルエラートさん。しばらくして食事は終わり、各々食器を片づけてから私はレイドさんとパパの所へ向かった。
 
 あれ、そういえば牛君が居ない……?

 ◆ ◇ ◆

 
 <バベルの塔:二十階と二十一階の間>


 「ま、魔王殿、先行して大丈夫でござるか?」

 「偵察みたいなもんだ、気にするな。次はカイムが恐らく来れないだろうからフロアの情報は持っておきたい。その為にお前達を生かしたのだからな」

 ヴァイゼが振り向くと、何とか生き延びたハクとカクがうんざりした顔で答えた。二十階に残ったのは、人知れず先に進みたかったからに他ならない。

 「助かったけど、これって神裂様に謀反起こしたって事だろ? 勘弁してくれよ……」

 「言うな。どちらにせよ侵入者を始末することに失敗した我等はこの世界から戻ることはできん。神裂殿はそういうお方だ」

 「俺は役に立ってくれれば何でもいいがな。む、二十一階か」

 「現実、いつか死ぬなら今、魔王に逆らうより従った方が少しでも長生きできるでござる……すでに三人がかりで敗北しているでござるからな……拙者が前に行きましょう」

 カラスが階段を登りきるのを見届けるとハクがヴァイゼに声をかけてきた。

 「しかし何だって先行を? 仲間と一緒に来ればいいじゃないか」

 「……色々あってな、あまり時間が無い。騎士達も増えて来たからようやく単独行動がしやすくなったというところか」

 「ふーん」

 ハクがあまり納得していない風の生返事をしたところで、階上のカラスが呟いた。

 「こ、これは一体どういうことでござるか……?」

 「どうし……む、これは……」

 「……正気か?」

 「次のボス、相当おかしいな」

 「俺っちの五階もアレでしたが、またおかしなところですね……」
 
 それぞれ登った感想を言っていると、一人多い事にカラスが気付き後ろを振り向いた。するとそこには牛頭の男、アステリオスが立っていた。

 「だ、誰だー!?」

 「俺もあんたたちと同じく、呼ばれた者だよ。拠点とやらに戻るより、魔王様に着いて行った方が面白そうだと思ったって訳でさ」

 「煽てても死ぬのが早くなるだけかもしれんぞ?」

 「ま、助けられた命ですから……それより、進んでみましょう。確実に罠の匂いがしますぜ」

 アステリオスを加えたヴァイゼ一行が見た二十一階は……。
 

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