パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その215 逆転


 ヒュ……!

 死んだと思われていたカイムの目が突然開き、サッと後ろを振り向き、カイムを掴んでいたキルヤの左腕を第二関節からへし折り、その懐に手を突っ込んだ。

 「ぎゃあああああああああ!? 腕が、腕の骨が折れたぁ!?」

 「ディクラインさん!」

 絶叫に構わず、カイムは注射器を見つけてディクラインへと投げ渡す。

 「サンキュー! アネモネ、悪いがここを頼む!」

 <早く行ってやんな>

 アネモネが言うと、ディクラインはアイディールの元へ走る。そこで激高したキルヤがカイムを吹き飛ばした!

 「ぐあ!?」

 「貴様ぁ……どうして生きている……!」

 <心の蔵は止まっていたよ、間違いなくね。ただ、ショックで止めた心臓に対してもう一度ショックを与えてう動かしたって訳だ。アタシ達が徐々にアンタの近くに迫っているのは気付かなかったろう? そしてカイムを盾にするところまで予測済みだったって訳さね>

 アネモネがキルヤに近づきながらカイムの蘇生した説明をする。

 「だが、いつそんな作戦を立てた……貴様が人化するのはこいつらも知らなかったようだが……」

 「……私はアネモネさんに聞いたはずですよ『あなたはもしや……』と」

 「それが……どうしたというのだ……ぐっ……」

 <あんたもニンジャなら分かるだろう? 時代は違えど同郷なら暗号で会話するさね、アタシはカイムの指の動きで何を考えているか悟ったのさ。ただ、本気でやらなければアンタに悟られるからね。少しずつ近づいて仮死状態のカイムを転がしたってわけさね>

 「そういうことか……」

 ギリッと腕を抑えながら歯噛みをするキルヤ。同じ世界のニンジャなら分かったかもしれないが、神裂に呼び出されたキルヤには理解が出来なかった。アネモネが人化した事で、カイムは咄嗟に閃き、この状況を作り上げた。
 
 しかしそれでも誤算はあった。フレーレの檻を開ける鍵は見つからなかったからである。

 「鍵は……どこだ……!」

 「ふっふ……どこにやったかな……適当な魔物に渡したような、そうでもないような……」

 <まてよ……鍵……>

 キルヤが時間稼ぎとばかりにぶつぶつと呟く。それをみたカイムが飛び掛かろうとするが、ダメージは大きく、立ち上がるが精一杯といったところだった。するとアネモネが何かを思い出しかけていた。

 <……! あれか? カイム、ルーナが拾った鍵だ、恐らくあれが檻の鍵に違いない! こいつはアタシ一人で充分だ。ヴァイゼも檻に向かっているからカイムもそっちへ行くんだね!>

 「は、はい……すいません、今の私ではお役に立てそうも……こ、これをお返しします……」

 <おっと、そうだったね。さあ、行きな!>

 カイムは蛇之麁正をアネモネに返し、足を引きずりながらルーナの元へと向かう。対するアネモネは軽やかに刀を振り感触を確かめていた。

 「……貴様の刀だったか……」

 <久しぶりに手にしたけど、問題なさそうだ。その折れた腕でアタシに勝てるとは思わないことさね。さらにこっちにはまだ仲間は健在……アンタの所は全滅。これでもう終わりさ>

 バシィ! と、刀が電撃を帯びて光り出す。キルヤはそれを見て笑い始めた。

 「ふっふ……はっはっはっは! 小娘がいきがるな! 仲間だと? 俺に仲間などおらぬわ! 雑魚共でも数がいれば少しは役に立つかと思ったがな。信じれるものは己自身のみ!」

 するとキルヤの体がぶくぶくと膨れ上がり始めた!

 「このフロアの天井が何故高いか分かるか? 忍びの技を活かすため、それもある。だがその真の目的は……!」

 キルヤの肉体がぶちぶちと裂け、中から現れたのは……。

 <ガマ変化か!>

 「その通り……! 俺の体には致死性の毒が満載だ……血を浴びれば皮膚が溶け、目に入れば失明する……! 俺を傷つければその分どんどん不利になるぞ? まあ、攻撃されなくても……」

 <!>

 数メートルはある巨大なカエルの化け物に姿を変えたキルヤは、唾液をアネモネに吐きかけた。難なく回避するも、唾液が触れた床は腐食していた。

 「それ! それそれぇ!」

 <そんなへなちょこな攻撃が当たるか>

 「ふっふ……」

 アネモネはキルヤの攻撃を躱しながら、クナイと呼ばれる投擲武器ををキルヤに投げ、いくつかその巨大な腹に刺していた。
 だが、痛がるどころかキルヤの目は、笑っていた。チラリと、フレーレの居る檻の方へと目を向けていた。


 ◆ ◇ ◆


 一方その頃、檻へ向かったヴァイゼとカラス。そこでフレーレに声をかけた。

 「フレーレちゃん、もう少し待ってくれ、まずはガラスを破壊するのが先か……」

 「わ、わたしは……ごぼ……だ、大丈夫です! これだけ近づけば……」

 フレーレはもう顔の半分くらいしか息をすることが出来なくなっていた。しかし、鍵のある付近まで水位が上がっているので天井に近いガラスには檻の隙間から手が届きそうだった。
 ガラスの壁は横に広く、そこからでは手が届かないが天井はギリギリまで檻があるのでガラスの壁との距離は近かったのだ。
 フレーレは水かさが増す恐怖と戦いながら、この一瞬を待っていたのだ!

 「ごぼ……(鍵は無理そうですけど、ガラスなら……!)」

 フレーレが右手に魔力を集中させ、天井に向かって拳を突きだした! 

 ゴイン……!

 金属を殴ったような鈍い音が響き、フレーレは手を引っ込める。

 「む、失敗か?」

 ヴァイゼがそれを見て呟くが、次の瞬間、ガラスはピシピシと全体にヒビが入り始めた。

 「ごぼあー!(もう一回!)」

 ダメ押しでフレーレが天井を殴ると、カシャアーンと小気味よい音と共に砕け散った!

 「ま、まさか素手で砕くとはでござる!?」

 バシャバシャと水が流れ、フロアがどんどん水浸しになっていき、フレーレは少しずつ床に近づいていた。

 「はあ……はあ……う、うまくいきました……」

 「よくやったな。後はあの鍵か……お前何とかできんか?」

 「申し訳ないでござるがあの鍵はいわゆる魔法の錠前でしてな。開錠技術がある拙者たちでも、あれだけは専用の鍵が無いと開けられないのでござる」

 「そうか、そのために生かしたが意味が無かったか……」

 「物騒すぎて何も言えんでござる……」

 ござる、もとい、カラスが呆れながら言うと、ヴァイゼは腕組みをして考える。とりあえず溺死の心配が無くなったと思い、アネモネの手助けをするかとそちらに目を向けて驚く。

 「あれは……カエル、か?」

 「なななな、何でござるかあれは!? キルヤ様はあんな化け物ではないはず!?」

 ヴァイゼがカラスを見ると、本気で驚いているように見えた。しかし欺くのが得意とあって、それが芝居でないとは言い切れない。

 「まあ、それでも助けに行くしかないんだがな。フレーレちゃん、すまないがもう少し我慢してくれ」

 「は、はい! 構わず助けに行ってください!」

 「あ、ちょっと!? 置いていかないでほしいでござる!?」

 ヴァイゼはガマ変化となったキルヤに向かい駆け出した。
 

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