パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その207 増援

 
 「……特に怪しい所はありません、休めそうです」

 カイムさんが先行して小屋を調査し、問題ない事を確認。私達はその言葉でぞろぞろと小屋へ入っていく。中はシンプルな作りで、真ん中に囲炉裏が設置されていたため私は火をおこしてようやく腰を落ち着ける事ができた。

 「はあ……つっかれたぁ……」

 <手ごわい相手じゃったのう、カイムは特に神経をすり減らしたと思うし感謝するぞ>

 ゴロリとタタミに寝転がると、チェイシャが近くに寄ってきてそんな事を言う。レジナ達も私の近くに来てじゃれてくる。シルバは大きくなってきたからお腹に乗られると重い……。

 「こうなると二十階のボスとやらも一筋縄ではいかないだろうな。強さは置いとくとして、搦め手が得意な相手だとこちらは分が悪い」

 お父さんが胡坐をかいて、考える仕草をしていた。確かにヴァンパイアのように正攻法なら、数はこちらが多いのでボスが一人であれば力押しで何とかなる。けど、今回のように奇襲や暗闇といった対応は噛みあわなければ難しい。

 <とりあえず神裂とやらはこちらの戦力を把握しているフシがあるさね>

 『それもあるけど、交戦した時と今ではこっちも戦力が違う。もしかするとこっちの能力を調査しているんじゃないかと思うんだよね』

 「そっか、どこかで見ている可能性が高いものね。でも最上階までには私達も強くなるんじゃない?」

 アネモネさんの言葉にエクソリアさんが答え、ママがそんなことを言う。確かにここの魔物は外よりも格段に強い。実際外なら一人でも魔物を相手にするのは難しくないが塔の内部は協力して戦わないと結構危険だったりする。せめて移動中は戦力を増やして楽が出来たらいいのにね。そんな事を考えながら目を瞑っていると、急速に眠気がきたのだった。

 ◆ ◇ ◆


 <塔の外:拠点>


 「ちくしょう、むざむざと攫われるたぁな……」

 「すまない、私がついていながら……しかし何故フレーレだったのかが分からん。攫うなら意識の無いセイラの方が楽だったはずなのだが……」

 「むう、目的が不明というのは厄介なものじゃ。しかしトマスが転移陣から出てくる時に塔へ入っていく人影を見たらしいから、塔へ連れて行かれたというのが濃厚じゃろうな」

 夜通し付近を捜索したが、フレーレや男達は見つからなかった。クラウスにカルエラートとモルトが、自滅した男を外へ埋葬しながら話をしている所で、唯一の手がかりはトマスのみた人影のみ。それも大過なことが分からない状態なのだ。

 「もし、誘拐犯が神裂の手の者だというなら今後拠点の出入りも考えないといけないな。確実な味方を見つけるのは難しいとは思うが……」

 カルエラートが落ち込んでいると、クラウスが首を振って言い放つ。

 「いんや、俺も簡単に中へ入れ過ぎた、悪かった」

 「反省するのは必要じゃ、中々……ん? ちょっと待て、あれは……」

 カルエラートとクラウスがお互い頭に下げ合っていると、慌てた様子でブラウンが走ってくるのが見えた。

 「リーダー!! カルエラートさん! 塔を目指してきたっていう人たちが!」

 「やれやれ、言ったそばからか」

 カルエラートがため息をついて首を振り、拠点へと向かうのだった。


 四人が拠点へ戻ると、ブラウンの言うとおり見慣れない人達がいた。いや、『人達』ではなくもはや『一団』といった方が早いであろう数だった。

 「多いのう、あの鎧はサンドクラッドの物じゃない。となると別の国から来たのか?」

 「あ! ありゃもしかして!?」

 クラウスが思い出したかのように走っていき、カルエラート達三人もそれに着いて行く。総勢で五十人はいるだろうか? 明らかに騎士だと思われる集団がカルエラート達へ振り返り、クラウスは恐らく居るだろうと予測していた人物の元へと辿り着いた。

 「おやー? あなたは確か……」

 「やはりいやがったか、確かエリックとか言ったか?」

 「うんうん、覚えていてくれたとは光栄だよクラウスさんー?」

 「……知り合いか?」

 カルエラートが尋ねると、クラウスが口を開いていた。

 「こいつはビューリック国の副団長のエリック。前にルーナちゃんを誘拐した事のあるいけすかねぇ野郎だ


 「おっとー、美人さんを前に酷い紹介だねー?」

 「ふむ、ディクラインがルーナを助けに行ったあの時か」

 カルエラートが睨むと、エリックは肩を竦めてため息をつく。しかし、悪びれた様子も無く質問を始めていた。

 「あの時の事を知っている、ということはルーナちゃんもここに居るのかなー? で、ここは一体何なのか教えてくれると非常に助かるんだけどー?」

 カルエラートがクラウスに目を向けると、「いけ好かないが身元は問題ない」と言うので現状について話すことにした。

 「その前に名乗っておこう。私はカルエラートだ。さて、どこから話すべきか……」

 そしてこの拠点の事、現在ルーナは塔を制覇中で、思ったより苦戦していること、そしてフレーレが誘拐された事を掻い摘んで教えると、エリックはいつもの笑みを止めて顎に手を当てて考え始めた。

 「なるほどねー。一筋縄ではいかないと思っていたけどもう少し覚悟は必要かー。ルーナちゃんには借りもあるし、協力させてもらうとしようーイリスー、ウェンディ」

 「はーい」

 「どうしましたか?」

 エリックが呼ぶと、声の可愛い女の子がシュン! と一瞬で目の前に現れた。遅れて長身の女性もやってくる。二人が敬礼をするのを見届けてからエリックはオーダーを出した。

 「ウェンディはその力を活かして拠点の拡張を手伝ってー。イリスは僕と一緒に塔へ向かう。そうだねー他に何人か連れて行こうか? 選別を頼むよ。ビューリックの騎士は外で野営の準備を進めさせてー。まあ信用されるようになったら、拠点に入れる様交渉するー。ウェンディは騎士達のまとめと、指示をもらってから動くのを中心に考えてくれー……で、いいかな?」

 イリスとウェンディは「はっ!」と返事をして、それぞれやるべき事をするために散って行った。

 「……助かる。いいのか、外は魔物に襲われる可能性が高いぞ? それにもう行くのか?」

 「それなりに鍛えたやつらを連れて来たからねー。ま、拡張したら負傷者をお願いするかも? んー、勇者達が登っているなら、無理に戦わないでサポートに徹するのが安全そうだしー? ……フレーレちゃんの居場所にあたりがついているなら行くべきだ……なーんてねー」

 またへらへらと笑みを浮かべながら、そんな事を言うエリック。そのままヒラヒラと手を振りながら騎士達を集め、話を始めていた。今後の動きについての事だろう。

 「食えない男じゃのう、だが……」

 「あれでもビューリックのクーデターを成功させたってヤツだからなぁ。それに戦力が増えるのはありがてぇな。拠点に人が増えりゃ俺も塔へ行くとすっかな」

 「モルトさんにここを任せて私も登るべきか」

 「おいおい、ワシに押し付けるのはやめてくれ!? 勇者パーティが作り始めた拠点だ、そのメンバーが居る方がいいだろうよ。サンドクラッドの連中が来たら、ワシも中へ入る。それまでは拠点の拡張作業を手伝うさ」

 「むう……」

 毎回お留守番になっているカルエラートは頬を膨らませるが、セイラの事を放っておくわけにもいかないか、と納得し拠点へと戻っていく。

 「もう、夕方か……みんな無事で帰ってきてくれ。そうだ、明日は買い出しに行かないと……」

 戻って来ないルーナ達を思いながら、日課となったご飯の準備に取り掛かるカルエラートだった。 

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