パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その175 喧騒

 

 <魔王城>

 
 フレーレ達が戻ってから三日後、レイドさん達も城へと戻ってきた。少し日焼けした三人と一匹を出迎え、歩きながらレイドさんがサンドクラッドでの様子を話してくれる。


 「え!? チェイシャが元の姿に?」

 <うむ。でもまあこの通り、また狐の姿に戻ったがな>

 「わん! わんわん♪」「きゅきゅーん♪」

 <これこれ、そんなにじゃれつかんでも尻尾は逃げんぞ>

 九本に増えた尻尾に目を輝かせるシルバとシロップ。尻尾を噛んだりくるまったりしていて、チェイシャも満更では無さそうにしていた。

 「前は涎でベタベタになるのが嫌だったのにねー」

 <まあ、わらわもこいつらとは付き合いがながいからの。それ、庭にでも行こうぞ>

 「わぉーん♪」「きゅんきゅん♪」

 チェイシャがそう言うと、三匹は庭へと駆け出していった。いいなあ、私も尻尾触りたかった……そこでママが話しかけてくる。

 「いや、ホントまいったわよ。朝起こしに行ったらベッドに裸のチェイシャがレイドの横に居てね?」

 「え……?」

 「いやいや何も無かったから! 何でこのタイミングで言うんだ!?」

 「そんなにすぐに否定するなんて……怪しい……」

 「ええ!?」

 顔を伏せる私に慌てるレイドさん。ふふ、まあそんな事無いと思うけどね、レイドさんだし! そのまま食堂へと入っていく私達。

 「ははは、ルーナに遊ばれているな」

 「あら、ばれてましたか。カルエラートさんは鎧と盾、壊れちゃったんですね?」

 「なんだ……冗談か」

 ホッとするレイドさんをよそにカルエラートさんがテーブルに砕けた鎧を置きながら私に答える。

 「ああ。敵のボスと戦った時にこの剣でやられたんだ。捨ててもいいんだけど、素材はミスリルだし、愛着があるから持って帰って来たんだ。新しく変えないとなあ……」

 結構……ううん、かなりいい装備だったようで、驚いた。盾は真っ二つだし、鎧も胸のところが完全に砕けている。

 「その剣……えらく禍々しいですね……」

 「うん? これか。敵が落としていったのを貰ってきたんだ。アイディールが言うには呪いの類は無いみたいだそうだし、見ての通り切れ味は抜群だからな!」

 「それならいいですね! 私も新しい武器が欲しいなあ」

 私が真っ黒の刀身をした剣を見ていると、先程からパタパタと飛んでいた鳥? が私に話しかけてきた。気になっていたけどもしかして?

 <ふむ、お主がルーナか?>

 「あ、はいそうですけど?」

 <俺はカーム。まあ知っていると思うが、女神の守護獣の一人だ。グリフォンという魔物を模している>

 ちょこんと首を下げてくるカームさん。声が渋い……。

 「これはご丁寧に……ルーナです。一応魔王やってます!」

 <よろしく頼む。何やらアルモニアが体内に居るらしいな? 難儀な事だ……まあ我らが集まれば何とかなろうが……>

 「? それはどういう?」

 意味深な言葉を発するカームさんに聞こうと思ったが、レイドさんに話しかけられてそれは叶わなかった。

 「そういえばルーナの髪、白くなったんだ?」

 「あ、うん。元の色だからって……今、何ていいました!?」

 今、呼び捨てにしたよね!?

 「大丈夫ですか!? 何か悪い物でも食べたとか? ああ、ママ。回復魔法で何とかならない?」

 「あはははは! レイド、悪い物を食べたかだって! プッ……」

 「……大丈夫だ……ルーナ……」

 「え? え?」

 困惑する私に、またも呼び捨てで言ってくるレイドさん。そんな私に説明をしてくれた。

 「……いや、もう一緒にパーティを組んで長いし、そろそろ他人行儀なのはいいかと思ってね。ルーナも丁寧に話さなくていいからな?」

 「あ! そういうことです……そう言う事ね。名前を呼び捨てにするのはちょっとアレかなって思うので、言葉遣いだけ皆と同じようにするわね! ありがとうレイドさん!」

 私はニコっと微笑むと、レイドさんが顔を赤くして後ろを向いた。あれ? どうしたんだろ? するとフレーレが食堂へ来て私の特訓の時間だと告げてくれた。今はフレーレとセイラが模擬戦の相手をしてくれていたりする。カイムさんは「女の子と戦えませんよ!?」とヘタレた事を言うので仕方なくである。

 「あ、レイドさんにアイディールさん、カルエラートさんも! 戻っていたんですね! 帰ったばっかりで申し訳ないんですけどルーナを借ります! 今日は試したい事があるんですよね?」

 「うんそうそう! それじゃまた夕飯の時にでも!」

 私はフレーレと共に庭へと繰り出す。今は少しでも強くならないとね!



 「ヘタレたわね」

 <ふむ、俺でも分かるくらい誤魔化したな>

 「……」

 「ま、まあいいじゃないか。呼び捨てに出来ただけでも前へ進んだろう?」

 「ほう、君はウチの娘に惚れているのか……?」

 「……!? ま、魔王!?」

 「昔、俺に挑んで負けたというのに。よし、今どれくらい強くなったか確かめてやろう」

 「え!? あ、ちょ!? アイディール! 助けてくれ!」

 「これは試練よレイド……諦めなさい♪」

 「楽しんでいるだろ!? うああああああ」

 「うーむ……こんなんでルーナを助けられるのだろうか……」




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 <魔王城:庭>


 フレーレとダッシュで庭に出ると、私達よりもはしゃぐチェイシャとシルバ、シロップが居た。

 <ほれほれー>

 「わぉ~ん……」「きゅきゅん……」

 尻尾が九本ということで本来の力が戻ったという感じなのだろう。絶好調なチェイシャに二匹は追いつけないでいた。懸命に追うが、ギリギリのところで尻尾を掴む事ができないのだ。

 「あらら……チェイシャ、手加減しなさいよー!」

 <む。そうか?>

 「ガウウウ!」

 チェイシャが振り向くと、遊ばせるため今度はレジナがチェイシャに向かって行った。二匹は母親なら抑えてくれると、尻尾をパタパタさせていた。


 「楽しそうでいいわね。さ、それじゃこっちも始めましょうか」

 「はい! いつもどおり戦えばいいですか?」

 「そうね。今から試す技は相手に触れていないと使えないから、その練習も兼ねてってところね!」

 今回は武器を持たず、素手でフレーレを捕まえるのも特訓の範疇だ。補助魔法をお互いなしで構える。フレーレはメイスが壊れたとかでセイラのロッドを借りていた。

 「行きます!」

 フレーレがマジックアローを放ちながら距離を取る。いつもなら聖魔光という技で近接も仕掛けてくるが、「掴む」と宣言したので遠距離にシフトしたようだ。

 でも……

 「マジックブレイク!」

 お父さん直伝の魔力消失の技を使ってマジックアローを打ち消す。掌の範囲しか出来ないけど、単発ならほぼ魔法を無効化できるのだ!
 ジリジリと近づく私に、フレーレが焦りの表情を見せる。それでも次にどうするか考えているようだ。私がいい距離で飛び掛ると、フレーレも同時に前に出た!

 「でしたらこれで!」

 「前に出てきた? もらったわ!」

 私がフレーレの腕に手を伸ばすが、ロッドに叩かれて空ぶった。隻眼ベアのガントレットをつけているのでダメージは無い。弾かれていない方の手を伸ばす……と見せかけて背後へと回り込んだ。

 「あれ!?」

 聖魔光を宿した手で私の手を掴み返そうとしたのだろう。目標としていた手がフッと消えてフレーレはバランスを崩した。

 そして、ガシっと、倒れそうになるフレーレの両肩を掴む。

 「あ、ありがとうござ……ハッ!?」

 「……掴まれたわね……」

 「力強っ!? 外れない……!」

 「この技は相手の血流を操作する技でね……近づきさえすれば心臓を破裂させたり、内臓を破壊したりできるの……」

 耳元で私の言葉を聞き、ブルリと体を震わせるフレーレ。魔力があがり、身体能力もあがっているので少しもがいたくらいでは私の手は外れない。

 「ま、まさかそれをわたしに……?」

 「そうよ、『試す』って言ったわよね?」

 「あ、ああああ……」

 後ろからでもフレーレが青ざめていくのが分かる。でも実戦できなければ意味が無いので私は技を発動させる。

 「<ブラッディフロー>……!」

 「きゃああああああああ!?」

 フレーレの絶叫が庭に響き渡った瞬間だった。



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 「今の悲鳴フレーレじゃない!? 何があったの!?」

 「フレーレさん! 大丈夫ですか!」

 <なんじゃあ、今の叫び声は……>

 「わんわん♪」「きゅきゅーーん♪」

 セイラ、カイムさん、チェイシャと、尻尾にくるまれたシルバたちが私とフレーレの所へやってきた。フレーレの絶叫はかなり響いたからね。

 「どうフレーレ! かなり効いたでしょ!」

 「あ、ああああ……あふん……これすごいですねー……肩こりがどんどんほぐれていきますぅ……」

 フレーレの顔はうっとりとして私に体を預けていた。思ったとおり、肩こりの原因である血の流れを良くする事ができたようだ。

 「な、何? 肩もみ……?」

 セイラがうっとりしたフレーレの頬をつつきながら質問をする。フレーレはうっすらと目を開けて答えていた。

 「最初はすごく痛かったんですよ……でも、だんだん気持ちよくなってきて……」

 「ぶっ!?」

 フレーレのセリフに何を妄想したのかカイムさんが鼻血を出して倒れた。レジナに引っ張られ城の中へと退場した。

 「あ、ああ! これは疲れが取れルーナ……ぐう……」

 「寝た……」

 セイラが呆れた声を出し、私はフレーレを地面に寝かせる。

 「魔王の力が物凄くしょぼく見えるわね……いいのかしら……」

 「んー。いいんじゃない? こういうのって使う人次第って言うじゃない? この技も実際には……ごめんね<ブラッディフロー>」

 私は近くに居たカエルを掴み、技を使うとカエルは「ボン!」と音を立てて破裂した。

 「な、なるほど……これは凶悪ね」

 「今のでコツは掴んだから後は回数をこなすだけね!」

 「何で手をわきわきわきしているのかなー?」

 「回数をね?」

 ジリジリと近づく私にセイラが間合いを開ける。だが、感覚を覚えこませるには今、使いたい。

 「《フェンリル・アクセラータ》」

 「あ!? ずる……」

 ガシっ! セイラが抗議するよりも早く、私は肩を掴んでいた。そして呟く。

 「<ブラッディフロー>」

 「いやああああああああああ!?」

 本日二度目の絶叫が庭に響いた。

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