パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その160 聖剣


 相手はダラード一人。

 だが、広範囲の魔法で応戦してきた。最初のサンドストームという魔法で、冒険者たちは半分ほど吹き飛ばされていた。

 「聞いたことない魔法ね! 《ウインドスクリーン》!」

 「助かる!」

 アイディールの初級風属性魔法でレイド達は耐える事が出来ていた。カルエラートが砂嵐の中、盾を構えて前進を始める。その後ろにレイドが続き、アイディールは援護待機。その後ろにチェイシャが立つ。

 そして城からもモルトとミトの二人がダラードへと襲い掛かった!

 「親父の体を返せってんだ!」

 「ほう! おいぼれがいい動きをするな!」

 腰の剣を抜いてダラードがモルトに対して反応し、モルトの剣を防ぐ。その脇からダガーをギラつかせてミトが死角へと回りこんだ。

 「ひいおじいと王女の仇……!」

 「ガキが粋がるな! そら!」

 「!」

 ダラードが身を翻すと、反発力を失ったモルトの剣がミトへと振り下ろされた。慌ててふんばるモルトとガードをするミト。ダラードはそんな二人に魔法を放つ。

 「《ブラストアース》」

 モルトとミトの足元の床が盛り上がり、爆発したように炸裂して二人を吹き飛ばす。そこでレイドが叫びながら斬りかかった。

 「でええええい!」

 ガキン! チン! キンキン!

 接近戦ならレイドの出番とばかりに、息つく間を与えず連撃が繰り出される。ダラードは余裕の表情だが、反撃の隙は与えなかった。

 「なんの《バーン……》」 

 「こっちにも居るぞ! ダブルスラッシュ!」

 カルエラートもレイドと同時に攻撃し、魔法を撃たせない。吹っ飛んだミトも参戦し、いよいよ回避もできないと思われたその時だった。
 
 「少ししつこいな! 闇の剣よ、目の前の敵を討て」

 ブウゥゥン

 「ぐあ!?」

 ダラードの持っていた剣が鈍い紫の光りを放ち、レイドの剣を受けた瞬間、真っ黒な衝撃波が飛び散りレイド、カルエラート、ミトの三人を吹き飛ばす。

 「まずはお前からだな」

 吹き飛ぶミトに迫り、闇の剣を突き刺そうとした。

 「その体でミトをやらせるわけにはいかんっ!」

 「うるさい! 《バーンニードル》!」

 ドヒュヒュヒュ!

 「うぬ!?」

 モルトが迫り来る火矢を両手で庇うと、その体に刺さり焦げ付かせる。少し足を止めたのがまずかったか、一歩ダラードの方がミトに迫るのが早い!

 「死ね!」

 「う!」

 ぎゅっと目を瞑ったミト。死を覚悟したが、ミトに攻撃は届かなかった。

 「ババア……!」

 「これでもギルドマスターだよ? レイドとか言ったっけ? いきな! アンタ、ミトを連れて距離を取るんだ!」

 ニアの弓が闇の剣を持つ方の肩にヒットしその動きを止めたのだ! そして右手が上手く動かなくなるダラード。だらりと下がり、剣を左に持ちかえてレイドの剣を受け止める。

 「アタシ特製の麻痺毒だ、お前が何者かわからないが人間の体なら効くだろ?」

 「……チィ……」

 「このまま押しきらせて貰う……!」

 「いいのか? 俺が死ねばシャールも死ぬぞ? ミト、お前も私が死ぬのは嫌だろう?」

 ダラードはわざとシャールの真似をしてミトを揺さぶるが、ミトは目を伏せて首を振り、レイドへと呟いた。

 「……レイドさん、ひいおじいを楽にしてあげて……こんな事に体を使われたら、可哀想……」

 さらにチェイシャがアイディールの後ろで叫んだ。

 <やるのじゃ! わらわ達はここで負けるわけにはいかぬ! ……ぐぬぬ、何もできんのが悔しいわい……任せたぞ!>

 「おう!」

 「どいつもこいつも! 闇の剣よ! 俺の命を吸って輝け!」

 ゴゴゴゴゴ……

 最初は剣に紫の光が灯っているだけだったが、ダラードの声で剣自体が真っ黒に染まる。するとレイドが力負けしはじめたではないか。

 「何だこの力は……恐ろしく寒気がするぞ!?」

 「離れなさいレイド! 《ゲイルスラッシュ》!」

 「ハッ! 切り裂け!」

 アイディールが放った魔法は闇の剣から出た衝撃波に掻き消され、レイドの頬を掠めた後、そのままアイディール達へと向かう。

 「あ!?」

 <避けんか、馬鹿者!>

 チェイシャが覆いかぶさるようにアイディールを伏せさせると、後ろにあった家屋の一部が粉々になる。当たれば大怪我どころではすまないだろう。

 <お主……すごい熱じゃぞ!?>

 「あ、あはは……そ、そんなことないわよ?」

 「こいつ!」

 「無駄な事だ!」

 カルエラートが背中から斬りかかるも、振り向きざまに闇の剣を振るわれ、盾と剣を真っ二つにされ、鎧にも亀裂が入る。

 「盾が……!? 何て切れ味だ」

 カルエラートとのやり取りを横目で見ながらレイドは考える。

 「(あの剣……魔剣の類か? いっそディストラクションで吹き飛ばすべきか……しかし負の力同士では……)」

 そう思った時、手に持った剣が振動を始めた。

 「何だその剣は? ……そういえば闇の剣を受けているのに折れないとは、ただのなまくらでは無いようだが?」

 山小屋の女性に貰った剣。レイドは知る由もないが、父親が打ち、母親が祈りを込めた、いわばレイド専用の剣。それが窮地で反応しだしたのだ。

 「……剣に文字が? セ……セイクリッド? ……セイ、バー……?」

 レイドが呟いた瞬間、刀身が金色に輝き始めた!

 「うわ!? 凄い剣なのかもしかして!? だがこれなら!」

 光の剣と化した剣を両手で握り、ダラードへと再び駆け出すレイド。あの剣はマズイと、回復魔法をかけて応戦をしようとするダラード!

 「《キュア》 これで両手が使える……」

 それを遠目から見聞きしていたアイディールが目を細めて考えていた。

 「(また聞いた事が無い魔法を? あいつ何なの? 帰ったらエクソリアに聞いてみるか……)」

 
 そしてセイクリッドセイバーと闇の剣が激突した!

 「うおおおおおおおお!!」

 「ぬうううううううう!!」

 切り結ぶたびに、バチバチと光を放つお互いの剣。拮抗した剣撃が尚も続く。

 「《ブラストアース》!!」

 「当たるか! 真空裂破!」

 途中で魔法を挟むダラードに対し、剣技で応戦するレイド。ダラードに焦りが見え始めた頃、それは現われた!

 <伏せろレイド! ソニックウェーブ!>

 「……!? カームか!」

 小型犬くらいの大きさになったカームが空から奇襲してきたのだ! 音波を羽での風圧に乗せ、ダラードを拘束する!

 「うががががが!? クソ共がぁ! 闇の剣よ! もっとだ! もっと力を!」

 闇の剣を掲げて叫ぶダラード。だが、異変が起こる。

 「おじい、あれ……!」

 「お、親父……!?」

 「な、何故だ!? お、俺の体が……!?」

 モルトとミトが驚くのも無理は無い。ダラードの体がどんどん老いていき、ミトの知るひいおじいさんのシャールへと変貌していく。闇の剣に吸わせた命の代償とでもいうのだろうか?

 「ここまでのようだな! とどめだ!」

 「ひ、ひぃ!? ぎゃあぁぁぁぁぁ!?」

 ズブシュ……

 セイクリッドセイバーがダラードの腹に刺さり、背中側まで突き抜ける……。

 「は、話が違う……!? 俺は不死身……」

 その刹那、肉体から黒い影が絶叫しながら抜け出し、そして間もなく霧散した。

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