パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その152 残夢

 さて、一行が町を出てからすでに二日が経っていた。

 道中、サソリの魔物やトカゲの魔物といった砂漠独自の魔物と戦いつつ、ダンジョンを目指す。そろそろ昼に差しかかろうそた所でアイディールが呟く。

 「暑い……」

 「アイディール、氷の魔法か水魔法は使えなかったか? 水はまだあるが帰りも必要だし、あまり勧められないが……」

 カルエラートが魔法で涼しくしたらどうだと提案する。

 「氷はセイラが得意ね。私は回復が主で、攻撃や属性魔法はそれほど使えないから……これくらいよ」

 ちょろちょろと水を出し頭に被るアイディール。レイドが昼食を兼ねて一休みしようと言い出した。

 「この辺の岩陰なら日除けになるだろ、大きさも丁度いい」

 <後どれくらいかかりそうなのじゃ?>

 レイドが敷物を敷いていき、チェイシャがラクダのスナジロウから降りつつミトへ尋ねる。スナジロウも日陰で座り込んでアイディールの用意した水を飲み始める。

 「夜には到着すると思う。ラクダ無しでこれだけ早いのは凄いこと」

 「全員ラクダだともっと早いのか?」

 カルエラートがスナジロウに餌を与えながら「乗れば確かに楽そうだが」と呟き、ミトが頷いた。

 「走らせることが出来るから多分数時間は違うと思う」

 「それならそこまで気にしなくてもいいかもね。さ、私達もお昼にしましょう」

 <お主が作ったんじゃないじゃろうな……>

 「大丈夫だ、ほとんど出来合いのものを買っているからな」

 それなら安心、と干し肉とサラダをつまむチェイシャ。少し陽が傾いたところで再度出発した。チェイシャを中心に、先頭をレイド、後方にカルエラート、左右にアイディールとミトが囲むように歩いている。

 <わらわだけスナジロウ君に乗って悪いのう>

 「戦闘が出来ないし、王女時代のままの体力なんだろ? それでいいさ」

 「私達はなんだかんだで女神の水晶の件であちこち歩き回ってるからね。解決してから会うつもりだったからルーナと再会するのはもうちょっと先になる予定だったんだけど……」

 「そういえばお姉さん達の目的を聞いていない。聞いても大丈夫?」

 「あー……まあ、あんまり面白い話ではないが……」

 カルエラートが口をもごもごさせていると、アイディールが自分達の現状を話始めた。ミトはここでも目を輝かせて話を聞く。

 そんな感じで順調に進むレイド達、誘拐冒険者達はどうなったであろうか?



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 「先回りできたようだな」

 「だな。後はタイミングの問題だな……」

 四人の冒険者が仲間を募り、何と十五人という人数でダンジョン前に集まっていた。いずれもよそ者に国を預けたくないといった思考の者達である。

 「これだけ人数がいれば負けることはないだろ」

 「しかしこれでは盗賊と変わらん事ないか?」

 「まあ、悪役感は否めないが国を取り返せば英雄だ。そんなもの帳消しだろうぜ」

 獲らぬ狸のなんとやら……冒険者達は笑いながら未来に思いを馳せる。気持ちは分かるが手段が悪い。しばらくすると冒険者達がダンジョンの入り口付近で隠れる事にし、ぞろぞろと入っていく。

 「……ここに入ったやつらって誰も帰ってきてないんじゃなかったか……?」

 「そうだな。でもどうせ欲をかいて奥まで行ったんだろうぜ、オレたちゃ宝目当てじゃねぇし、何かいても見逃してくれるだろ」

 怯える男に、楽観的な男がふふん、と鼻を鳴らし反論する。チェイシャの居たダンジョンとは違い内部は形がいびつで小部屋がいくつもある。それぞれ5人ずつ、部屋に待機し待つつもりだった。


 「……これで来なかったらアホだな俺達」

 少し歳をとった男が若い男、ナハルに言う。

 「その時は仕方ない。二日待って来なければ一度戻ろう。食料と水もそれほどあるわけじゃないしな」

 「大人しく頼み込んだ方がいいかねぇ……」

 「情に訴えるのはありかもな? 王女様は民衆のために働いていたらしいからな」

 「しかし100年前の王女様がどうして蘇っているのか、それが気になるよな」

 「こまけぇこたいいんだよ! 捕まえる、城を落とす、うはうはになる、これだけ考えていればな」

 部屋で寝転がったり武器の手入れをしたり、思い思いの作業をしながらペラペラと話ながらレイド達を待つ冒険者達。

 すると、どこからかしゃがれた声が聞こえてきた。

 (王女だと……? 100年前じゃと……? それはもしかしてチェイシャ王女の事ではあるまいな……)

 「だ、誰だ!?」

 (今から来る者が100年前の王女じゃと、そういったな?)

 「どこにいやがる……? ああ! そうだ!」

 「このダンジョンの主か? 俺達はこの国を取り返すため行動しているのだ。ダンジョンに入ったのが悪かったなら謝る! だが、ここは見逃してくれぬか!」

 ナハルが大声で叫ぶと、声の主が愉快そうに笑い始めた。

 (このダンジョンの主は別におる……しかし、王女か……ふ、ふふふ……国を取り返したいか? 王女が来るというなら……面白い、おぬしらに協力してやろうぞ)

 「な、何? うわ……」

 急に目の前が眩しくなったと思った途端、ナハル達は意識を失った。


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 「ここ」

 ミトが短く呟き、指をさす。その先には確かにダンジョンと思わしき洞穴がぽっかりと空いていた。横幅は女性二人分通れる程度の広さで高さは2m前後というところだろうとレイドは目測していた。

 「中はどうだろうな……一度休んでから奥を目指したいところだが……チェイシャ反応はあるか?」

 <……かろうじて感じることが出来るわい……進めば感知しやすくなるかもしれん。少しでも役に立てそうでなによりじゃ>

 「なら迷わず奥まで行けそうね」

 「今日は外じゃないところで野営できるのが助かるな……」

 カルエラートが長い髪についた砂を落としながら呟く。レイドが先頭に立ち、スナジロウはカルエラートが綱を引く。チェイシャも自分の足でダンジョンへと潜っていく。

 「……この辺の小部屋でいいか」

 「あ、いいわね。みんな横になっても足を伸ばせそう!」

 段々空気が冷え込んできたので、アイディールに火を出してもらい焚き火を起こす。ちなみにレイドのカバンは食料の他に薪や毛布、テントといった雑貨も入っており要領ぎりぎりまで使っていた。マジックバッグとはいえ無限ではないのだ。

 「果物も食べるか?」

 「りんごか、私はいただこう」

 「お酒を飲むと暖かくなるって言うじゃない? 一杯……一杯だけでも……!」

 <懲りんヤツじゃのう……ミトはもう良いのか?>

 「うん。お昼も食べたけどパンとスープが家で食べるよりも美味しい。後、おじいとしか食べたこと無かったから楽しい」

 ミトが少しだけ微笑む。

 「そういえばご両親は?」

 「二人とももう居ない。私が小さい頃に死んだっておじいは言ってた。顔も知らないからよく、分からない」

 アイディールが悲しそうな顔をして、ミトを抱きしめる。

 「どうしたのお姉さん?」

 「んー、あまり言いたくないけど、ちょっと可哀想だなって思ってね……子供は親を選べないから……」


 <子供といえば気になっていたのじゃが、おぬしはどうしてルーナに執着するのじゃ? 歳はそれほど変わらんじゃろうに>

 「あ……チェイシャ……」

 カルエラートが止めようとしたが、アイディールはそれを制し、話し始める。

 「そうねえ。幸せにしたいって思ったからかな。私の両親……父親の方が本当にクズでね。お母さんが働いているのに、あのクズは働きもせず毎日だらだらと生きていたわ」


 しかしある日、金の為、父親は母娘を人買いに売ろうとしたというのだ。もちろんそんな事はできないと母はアイディールを連れて逃げようとした。

 だが、父親はそれが気に入らず、二人に暴力を振るってきたのだ。その内エスカレートした揉み合いの末、剣を持ち出しアイディールを刺そうとした。

 母親が庇ってくれたが心臓を貫かれ母親は即死。アイディールもへそのした辺りを刺されてしまった。

 床に広がる血を見て恐ろしくなった父親は逃走。アイディールは這って外に出て一命を取り留めた。

 「助けてくれたのが旅をしていたディクラインだったの。そこから一緒について回るようになったって訳ね!」

 ドヤ顔でブイサインをするが、レイドは気になっている事を尋ねる。

 「……親父さんは……?」

 「ああ、私の証言とおかあさんの遺体であっさりと捕縛されたわ。そのまま縛り首で死刑。当然よね」

 <むう……それで母を失くして、父が魔王のルーナに同情した、と?>

 「そうね。他にもそんな子はいっぱいいるんだろうけど、ルーナはお父さんが魔王に覚醒しなかったら平和に暮らせていたでしょう? 子供に罪は無い、けど魔王の娘ってだけで殺されるかもしれない。そう思って守ろうと思ったのよ。私はあの事件のせいか、もう子供はできない体らしいし? 小さかったルーナも懐いてくれていたから、ヴァイゼが亡くなってから本当に母親になろうってね」

 「……」

 カルエラートは知っていたようで、難しい顔をして目を瞑っていた。レイドも両親が居なくなっているので、アイディールとミトの気持ちはよく分かると思っていた。

 「ま、今は賑やかだし? こうしてルーナのためにいっぱい人が動いてくれるのが嬉しいのよねー! あはは!」

 <お主は……いや、野暮じゃな。それでいいのかもしれん。ならば、早いところ主達を止めてゆっくり平和に暮らせるようにしようぞ!>

 「うん。私もお手伝いする」

 「そうと決まれば今日は早く寝て、奥まで行こう。ルーナちゃんも待ってるだろうしな」

 「勿論よ! お母さん頑張っちゃうんだから!」

 アイディールの持ち前の明るさからか、深刻な話でも沈んだ気持ちにならず、逆にすぐに目的を果たすための原動力となった。

 後は進むだけ……そしてレイド達を待ち受けるのは……?

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