パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その145 砂漠

 <魔王城>


 フレーレ達がオロチ・アネモネを倒した頃、ルーナもまた特訓に明け暮れていた。彼女達が出発してから2日。あまり変化の無い状況に少しだけ焦りを感じていた。



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 「ふう……今日はこれくらいにしましょうか」

 私は相変わらず魔力の底上げの特訓を行っていた。
 初日はそれなりにいつもと違う感覚に大喜びだったけど、いざ続けてみるとこれが結構しんどい……。何ていうか、すごく苦労しているけど100の行動に対して1しか伸びない、みたいな?

 私がそんな事を考えていると、遠くから鳴き声が聞こえてくる。

 「わふ!」「わんわん!」「きゅんきゅん♪」

 私が魔力を底上げする特訓を終えた途端にレジナ達が喜び勇んで駆け寄ってくる。まだ2日しか経っていないが、特訓を切り上げる=遊ぶかご飯というのが分かっているらしく(賢いしね……)すぐに寄って来る。


 「おや、もう終わりかい?」

 城へ戻ろうとした歩いていると、お父さんに出くわす。どこから持ってきたのか、巨大な岩を普通の鉄の剣で賽の目にしながら私に言う。

 「うん……それなりにコツは分かってきたんだけど、うまく繋がらないのよね。お父さんが手助けしてくれた時は、こう、線と線が繋がったー! って感じだったのに」

 「ははは、まだ2日目だ。焦る事はないと思うよ。『やるべき事が分かっているなら後は創意工夫あるべし』だ」

 「何かの名言?」

 「いや、俺の村人だった頃の心構えだ。畑を持っていたんだけど、痩せた土地でね。苦労したもんだよ。水を増やしたり別の野菜を植えたりね」

 剣を鞘におさめて私の所へ歩いてくる。肉体(仮)が出来たが、シロップは相変わらずお父さんを甘噛みする。

 「村人だった頃から苦労してたんだ、お父さんらしいというか……」

 「きゅんきゅん♪」

 「足が涎でべとべとだよ……やれやれ、俺の足の何がそんなにいいんだか……よっと」



 『ボクが言うのもなんだけど、人間は大変だねぇ。姉さんの言うとおり恩恵はもっと強力にするべきだったのか……』

 シロップを抱っこしたお父さんの前にエクソリアさんが現れる。

 「恩恵はありがたいけど、その道を進む以外の選択肢が無くなるから俺はむしろ無い方がいいと思ってる。だからお前を……お前達を倒そうと思った訳だし」

 『うーむ……不自由な方がいいのか? ボクにはさっぱり分からない……そういえばあいつらも似たような事を言っていたな』

 シルバを抱っこしながら、ぶつぶつ言っていたのを私は聞き逃さなかった。女神様に意見をした人達が居るの?

 「あいつらって?」

 『ん? 姉さんの封印を守らせていたあいつらだよ。チェイシャとか」

 「チェイシャ達……? そういえばあまり気にしていませんでしたけどあの子達もエクソリアさんが創ったんです? チェイシャは魔神とか言ってたし……」

 するとエクソリアさんが顎に手を当ててふむ、と考え始める。やがて閃いた、といった感じで私のほうを向き、真面目な顔で言った。

 『少し長くなるから、甘いものでも食べながら話すとしよう。ショートケーキと言ったか、アレなんか食べたらはかどりそうだ』

 「……それエクソリアさんが食べたいだけじゃ……」

 『お前達もおやつを食べたいよな?』

 「わふ!」

 「きゅふんー!」「きゅーんきゅーん!」

 狼達に声をかけると、レジナ達は興奮状態だ。どんどん俗っぽくなっていくなあ……。

 でも、チェイシャ達の事って実は良く知らないからちょっと興味あるわね!




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 <砂漠の国:サンドクラッド>

 
 「……何でこんな遠くに転移陣が……」

 レイドが慣れない暑さに汗をかきながら砂の道をザクザクと歩く。日除けのフードを目深に被っているため、尚の事暑いのだった。


 「今から行くサンドクラッドは警戒心の強い国なんだ。我々もディクラインの剣を手に入れるため勇者パーティとして訪れた事があったが、王族の風当たりはかなり強かったよ」

 「だから、転移陣はあのオアシスにおいて隠しているのよ」

 カルエラートとアイディールがそれぞれ国の事情を話してくれ、レイドは納得する。確かにあのオアシスならおいそれと近づく者も居ないし、隠蔽の魔法で隠しているので見つかる事も殆ど無いと思った。

 そのまま話を続けるレイド。

 「なるほど……それで町にはどれくらいで着くんですか?」

 「……前から思ってたけど、レイド君固いわね。同い年くらいなんだから、敬語じゃなくていいわよ? それと町までは一時間くらいかしらね」

 「固いですか? ルーナちゃんの母親代わりと聞いているから……」

 するとカルエラートが首を振って呆れた声をあげる。

 「ダメだな、やはり固い。敬語は無しだ、いいな?」

 「わかりまし……いや、分かった。これでいいか?」

 「うんうん、それでいいわ!」

 アイディールが満足そうにしたところで、レイドは次の質問をする。

 「この国はどうしてそんなに警戒心が強いんだ?」

 「かなり前に他国から来た冒険者に国を乗っ取られそうになったらしいわよ? それで身分が怪しい人間は町へ入れないとかそういう措置を取るようにしたらしいの」

 <そういう事になっておるのか……>

 「ん? どうしたチェイシャ?」

 <いんや、何でもない! わらわは足が暑いのじゃ! 背中に乗せるのじゃ!>

 チェイシャの呟きはレイドたちには聞こえず、続いて大声で叫んだ声だけが何も無い砂漠に響いた。そしてカルエラートが先程の話の続きを話始める。

 「冒険者が乗っ取ったという話もあるが、実は当時、欲深い王族が国を滅ぼそうとしたから討たれたという説もある。真実は人によって捻じ曲げられるから何が正しいのかは分からないままということだけどな」

 <……>

 「魔王が実は悪いやつじゃなかったって分かりやすい例もあるからね。その時の立場になってみないと判断は出来ないわよね」

 「はは、確かに。ルーナちゃんの本当のお父さんにはびっくりしたけど……」

 レイドが笑いながらずり落ちそうになるチェイシャを背負い直しているとアイディールが前に回りこんできて尋ねてきた。

 「そういえばルーナと仲がいいってフレーレちゃんから聞いたけど、そこのところどうなのよ? ……事と次第によっては……」

 「え!? いや、俺は別に……」

 <お互い好きなのに言い出せないもどかしいやつらじゃ。何とかしてくれんかのう>

 助け舟どころか爆弾を取り出したチェイシャがあくびをしながらアイディールたちに告げ口をした。その時、アイディールの目がキラリと光った……気がした。



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 <サンドクラッド・ハウラの城下町>

 

 「ふう……ふう……つ、着いた……」

 <(またこの地に足を運ぶ事になるとはのう)>

 「ははは! お疲れだったなレイド。アイディールは少し満足したみたいだぞ」

 「あ、あれで少し……?」

 残り一時間ほどと言われた後、アイディールに質問という名の尋問を受け続けたレイド。母親代わりに言い出すのはとても恥ずかしかったが、最終的に認めさせられたのだった。今後、ルーナを呼び捨てにするように約束させられたりもした。

 「ま、レイド君なら安心かな?」

 「でもどうしてそこまでルーナちゃ……ルーナの事を……」

 外堀から埋められている気がしないでもないなと思いながら、気になっていたことを口にしようとした。

 「ほらほら、まずは宿屋だ! 砂を落として早めに水浴びをしよう。放置しているとすぐに肌が黒くなるぞ」

 だが、レイドがアイディールに尋ねようとしたところで、カルエラートに急かされた。恐らく全身鎧に砂が入って気持ち悪いのだと察したレイドとアイディールはとりあえずカルエラートに着いていくことにした。

 慣れたもので、ささっとチェックインを済ませた三人は各自部屋に入り、水浴びで砂を落としてから一休み。そして夕食を済ませた。

 そして夜となり、レイドはベッドの上で寝転がっていた。部屋はチェイシャと一緒である。

 「……この国は凄いな、昼はあんなに暑かったのに夜は急に冷え込む。オアシスから途中野営したけど、宿はまた一味違うな……」

 どんな形をしているかも分からない虫の声を聞きながら、レイドはチェイシャに話しかける。

 <雨があまり降らない国じゃからのう。水不足になった時は本当に大変なんじゃ、人間の飲む水すら切り詰めないといけなくなるからの>

 「へえ? 詳しいな」

 <……ま、まあ魔神の間じゃ常識だからのう! さ、明日から女神の封印を探すのじゃろ? 早く寝ておこうではないか>

 「あ、ああ……何でそんなに焦ってるんだ?」

 <うるさい! こういうときだけ勘を働かせるでない、この朴念仁!>

 「え!?」

 ササっと枕元にチェイシャがやってきて、そのまま丸まって寝る態勢に入った。これ以上色々言わない方が良さそうだと、レイドも目を瞑って寝ることにした。

 <(まったく……しかしわらわも少し興奮しておるのかの……何せ100年ぶり……ふああ……)>


 そして#その日の夜は__・__#何事も無く、就寝した。夕食の席ではまだ酒を飲みながらレイドに絡んでいたアイディールも突撃しては来なかった。

 だが……翌朝、事件は起きた。


 「レイドーーー!? あああああああんた!」

 アイディールの叫び声が静かな朝に響いた。
  

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