パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その136 追憶

 <魔王城・庭>


 「ん……もう……ちょっと! ……だめかーーー!」

 はあ……はあ……。朝から昼過ぎまでずっと同じことを繰り返しやってきたけど、余り進展は無かった。お父さんを見ると、木から落ちてきた葉を剣でヒュヒュンと切り裂いて八つに分けるといった技を披露していた。あれすごいなあ……。

 「ん? どうしたルーナ?」

 ガシャガシャと骨を鳴らしながら私の元へ歩いてくる。うーん、スケルトンだとやっぱり違和感が……。

 「う、ううん。剣捌きすごいなって」

 「ああ、あれくらいならすぐルーナにも出来るだろうさ。それより、俺を見て違う事を考えていなかったかい?」

 う……バレてる。

 「……お父さんのその姿だとちょっと油断しているとびっくりしちゃうなーって」

 「はっはっは、それは仕方がない! 俺だってこの姿はちょっと嫌だしな……」

 がっくりと肩を落とすお父さん。割と気にしていたようだ。

 「ごめん……知らなかったから……」

 ノリノリだったので、てっきりあまり気にしていないのかと思っていたけど、私に言われてやはりショックだったようだ。そこへエクソリアさんがレジナ達を引き連れて歩いてくる。

 『そろそろお昼だ。ご飯を所望する』

 「わふ!」

 「わん♪」「きゅんきゅーん!」

 「まさかのご飯要求!?」

 レジナ達はいいとして、エクソリアさんまで……。

 「自分で作れないんですか?」

 『女神が作るわけ無いだろう?』

 「でも食べるんですね……」

 『折角人間と居る貴重な時間だからね。必要が無くても食事をするよ? ……君のお母さん役の人間みたいなものは二度と食べたくないけど……」

 あれは不可抗力だったしね……。とりあえず私もお腹がすいたし、作るとしますか!
 と、張り切ったところでエクソリアさんが話を続けていた。

 『まあ、あの料理は人間の「個性」とやらなんだろうね。ボクは中々面白い体験が出来ているのかもしれないよ。そうだ、その元魔王もその体じゃ不便だろう、生き返りはしないけどそれっぽい姿にはできるよ』

 「「え?」」

 何だかむにゃむにゃ唸ったと思ったらお父さんの体が七色に輝き出した!?

 「ああああ!?」

 「お父さん!?」

 眩しい光で近づく事ができず、しばらく見守っていると光が段々収まってきた。
 そしてそこには……

 「ああ! か、体が……」

 「ん? お、おお……! 手が、骨じゃない……! 髪もあるぞ!」

 白髪の、記憶より少し老けたお父さんがそこに立っていた。

 「お父さん……!」

 懐かしい体に抱きつくと、体はひんやりしていた。やっぱり生き返ってはいないようだ。でも、顔を見れて本当に嬉しい!

 「わふ……」「わおん……」「きゅきゅん……」

 骨が無くなったせいで、レジナ達はものすごくがっかりしていた……。けど、レジナ達には悪いけど我慢してもらうしかない。

 「ほらほら、また何か買ってあげるから我慢しなさい? 助けに来てくれたし、いいもの買ってあげようとおもうんだけどなー?」

 「わふ!? がうわう!」

 どうやら納得してくれたようだ。エクソリアさんが空気を読まず、城へ向かいながら私を大声で呼んでいた。

 『早く、お昼ご飯というものを作って食べさせてくれ!』


 はいはい、すぐいきますよ!


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 「卵とベーコンがあったから……ピラフとニンジンのスープです! 晩御飯はまた美味しいものを作りますね」

 『ほほう、これは美味しそうだ……ふむ、君も中々やるじゃないか』

 「俺は食べれないのか……」

 レジナ達には果物とお肉を半々で与えて、お父さんには何も出せなかった……。見た目だけ戻ってるけど、食べた後、消化する器官が無いとかで意味が無いそうだ。

 それはそれとして、エクソリアさんに聞きたい事があったのを思い出した。

 「あ、そういえば女神の封印って残り2つじゃないですか? どうしてパーティを3つに分けたんですか?」

 私はついでに疑問に思っていたことを聞いてみる事にした。

 『ああ、ディクラインのパーティは「色欲」の封印を守っていた所へ行ってもらっているんだよ。愛の剣はカンザキとやらが持っていたけど、何かしら守護者の痕跡でもあれば復活できないかと考えているんだ。魂がもう輪廻に乗っていたらダメだから無駄骨になる可能性はあるけど』

 ズズズ……とスープを飲みながら私の質問に答えてくれた。なるほど、チェイシャみたいな獣が居たけど、きっと殺されているって事か。私もチェイシャやジャンナを倒して手に入れたし。

 「となると、アイディールとベルダーのパーティが封印の当たりか」

 『そうだね。100年は短いかと思ったけど、意外と長かったね。地形が変わっているからボクも完全に分からないんだよ。だから現地人に怪しいところがないか聞くのが一番早い。気長に待つことにしよう。どうせ姉が復活しなければボクしかこの世界をどうにかすることはできないんだし、慌てても仕方ないよ。おかわりをくれるかい?』

 「はいはい……そうね。何か石を渡していたみたいだし、封印の守護者を倒さないですぐ帰って来れますよね」

 戦闘力は高いし、そうそうトラブルになる事もないよね?

 早く帰ってこないかなあ。




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 「で? 何か言う事はあるかい?」

 見た目は線が細く、茶髪の女性に正座させられているのは、ベルダー。元勇者パーティで魔王討伐に参加したニンジャである。

 神殺しのダガーを持っていて、戦闘力は脅威である。だが、今はギルドの2階にある客間(畳という土足で上がれない部屋)で小さくなっていた。


 「い、いや……これは……」

 「これは、じゃないよ? 10年前にいきなり出て行って音沙汰無し。やっと帰ってきたと思ったら若い女の子を二人も連れて……歳を取ったあたいに対するあてつけかい?」

 ギロリとした目をフレーレとセイラに向け、二人が震える。

 「(こ、これはどういう状況なんでしょうか……)」

 「(もしかしてさっきの予想が当たったんじゃ……?)」

 「……その二人は関係ない。今は大事な仕事の最中で、パーティを組んでいるだけなんだ……見逃してくれないか?」

 「……」

 ベルダーがユリと呼んだ女性の目を真っ直ぐに見て頼み込む。ユリは困った顔でベルダーを見つめ返す。
 
 「はあ……分かったよ。でも父上には会ってもらわないとね、あたいもちゃんと説明をしてもらわないと納得できないしさ」

 「……お前、結婚は……?」

 「するわけないでしょうが! ずっと……待ってたんだから……」

 正座するベルダーに泣きつかれて困惑するベルダー。

 「あーあ、泣かしましたね」

 「でも、本当にどういうことなんですか……?」

 「……どちらにせよオデの町に行く事はできん……道中、話そう。聞けば、ユリも納得してくれる、と思う……」


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 街道がきちんと整備されているため、オデの町へは歩いていく事になった。帰っていなかったベルダーには知る由も無かったが、街道に宿や食事処といった施設がちらほら出来ていたのだ。

 「フレーレさんにセイラさんだね! あたいはユリ、ごめんねぇ怖がらせちゃって!」

 「いえ、こちらも事情を知らないものですから……」

 「そうね、ベルダーさん。いいかしら?」

 セイラがベルダーに聞くと、ため息をついてからぽつぽつと話し始める。
 
 「……俺はユリの道場に通っていてな、そこでニンジャとしての修行を積んだんだ……」

 段々と力をつけ、自信もついたころ、ユリと相思相愛であった事などを話していた。ユリの応援もあり、頑張っていたが、ある時ユリの父である師範に呼び出されたそうだ。

 「……ユリと俺の仲を知っていた師範は、他に縁談があるのでこれ以上ユリに近づくなと言われたんだ。丁度、ニンジャマスターになれるかどうかというところでイラだっていた時期でもあってな。ユリとの仲も認められない、腕も上達しない……それなら、と俺は道場から姿を消したんだ」

 「そんなことがあったんですね……」

 「父上のせいで……確かにあの時、縁談があったね。あたいは気に入らなかったから蹴ってやったけどね」

 「……その後、俺はこの国を出てエクセレティコに流れ着いた。そこでディクラインと会ったんだ。魔王討伐までに色々旅をして……今に至る。結局この国に帰る必要性が無かったし、逃げた俺がお前に合わせる顔も無かったからな」

 ベルダーが前を向いたまま三人と一匹に過去の事を話し、これが真実だと最後に付け加えてそれきり喋らなくなった。

 「「(あ、当たってたー……)」」

 <(怖いくらいだにゃ……)>

 「……それを聞いてなおさら父上に会ってもらわないといけなくなったね。今日はこの先にある宿に泊まって、明日会いに行くよ」

 「……いや、俺は……」

 前を歩いていたベルダーが驚いて振り向くと、ユリは俯いて立ち止まる。

 「もう、長くないんだよ」

 「師範が? そんなまさか……」

 「あたいもそう思ったけど、医者から……」


 「(わたし達忘れられてません?)」

 「(シッ、これはこれでいいお土産話になりそうだから見守るわよ)」

 <(あの、女神の封印忘れてないよにゃ?)>

 「にゃ~ん……ふあ~……」

 フレーレとセイラは二人の会話を聞きながら二人に着いて行くのであった。

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