パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その125 終わり

 

 ルーナが挨拶をした後、アイディールが可愛い可愛いと膝に置き、お菓子を食べさせて始めた。
 外の世界に出た事がないルーナは目を輝かせてそれを食べていた。

 「これ美味しいねー!」

 そんな様子の娘を見ながら、ヴァイゼは話を戻す。

 「話が逸れたな。我が望みはただひとつ、女神の抹殺だ。しかし問題が一つある」

 「何だ?」

 「七つの封印だ。先程も言ったように、全ての力を取り戻させた状態でないと完全に消滅させる事はできない。なので、その封印を解いて来てくれないだろうか」

 するとベルダーが手を上げて発言をする。

 「俺は別にどっちでもいい。ディクラインに任せる。だが、封印を解くとして、その場所は分かっているのか?」

 「ほっほっ、それに自ら赴かないのは何故でしょうか?」

 続けてゲルスが便乗して話を続けた。それについての返答をヴァイゼがする。

 「場所は不明。故に探して欲しい。二つ目ルーナを一人にする訳には行かない」

 「なるほど……最後の質問だ。その話が本当だという証拠は?」

 ディクラインがヴァイゼを指差し、目を細めて聞いてくる。あまりにも出来すぎているといえばその通りなので、疑われるのは仕方が無い。

 「証拠は……我に攻撃の意思が無いと言う事、そして女神の水晶だけだな。ここで嘘をついてどうする? 命乞いととるか? ならもっとうまい嘘をつく。別に強制はせんからこのまま帰っても構わない。次の勇者にでも頼むとしよう」

 目を瞑ってそう答えると、ディクラインも腕組みをして考え、そして答えた。

 「分かった。手伝ってやろう、人間達の未来のためってのはある意味正しいしな! 皆はどうする?」

 「無論、お前についていくぞ。アイディール、お前もそうだろう?」

 「あんたに先を越されるとは……ま、カルエラートの言うとおりよ! 私もディクラインと一緒に居る」

 ベルダーとゲルスも頷き、勇者パーティは魔王退治から女神退治へと目標を変えるのであった。

 「……女神との戦い、面白そうだしな」

 「ほっほっほ! 探究心ですよ探究心……」

 「城の部屋は好きに使って構わん。が、賢者とその仲間が眠っている部屋は教えられないし、行く事は許さん。これだけは守ってもらう。……無茶な願い出すまないがよろしく頼む」

 ヴァイゼが頭を下げると、ディクラインが苦笑した。

 「はは、まさか討伐しに来た相手に依頼されるとはな……ま、できるだけやってみようぜ」






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 ディクライン達が魔王城へ住み着いてから早3ヶ月……。

 依然として封印の手がかりは掴めていなかった。

 ディクラインは城のとある部屋に転移陣を設置し、町へ戻れるようにしていた。
 主要な町にいけるよう、何箇所か設置して各地で情報収集をするのだった。

 
 「ただいまー!!」

 「む、帰ったか。今日はどうだったのだ?」

 「うん! 何か砂がいっぱいあって暑いところだったよ」

 外に出たいというルーナの願いを叶えるため、町での情報収集の時、たまに連れて行くようにしていた。
 今日はベルダーとカルエラートと一緒だったようだ。

 「……まあ、何も手がかりが無かったがな……」

 「ベルダーは顔が怖いからねー」

 「ふふ、ルーナの言うとおりだな」

 「ふん、そんな事を言うならもう肩車などしてやらん」

 「あ!? うそうそ、ベルダーはかっこいいよ!」

 いつになるか分からない女神討伐の計画だったが、ルーナのおかげで和やかに過ごす事ができていた。
 人懐っこいルーナはみんなの人気者だった。またルーナも、父と二人で暮らしていたところに一気に人が増えてにぎやかになり、外にも出る事が出来てとても嬉しそうだった。

 「明日はディクラインとアイディールと一緒にアクアステップってとこに行くの!」

 「そうか、良かったなルーナ。パパは何もしてやれんからな……」

 「そんなことないよ、お父さん大好き!」

 

 しかしこの平和な日々は長く続かなかった……。

 

 「(女神の力、面白いですねぇ……魔王の娘も興味深い。そうだ魔王の娘に女神の力を宿させて子を産ませるってのはどうだ? なるほど、面白いですね。そろそろここに居るのも飽きてきましたし、実験をしましょうか。魔物と人間の融合実験を……)」




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 ガタン! ドタドタ……! カキン!


 「んー……うるさいなあ……ベルダーにゲルス、夜中に暴れたらだめだよー」

 夕飯を食べ、アイディール達とお風呂に入った後すぐに眠くなり早めに寝たルーナだったが、隣の部屋がうるさい事に気づき起きる。

 アイディールとカルエラートが同じ部屋で寝ているが、二人が目を覚ます気配は無かった。

 「……!? ルーナ、来るな!」

 「ほっほ、あなたも目が覚めましたか、やはり魔王の娘は興味深い!!」

 部屋に入ると、口から牙と猫のような髭を生やしたベルダーとゲルスが相対していた。二人は戦っている最中だったのだ!

 「食事当番はお前だったな、何か薬を盛ったか!」

 「ええ、もうここには用がありませんからね。女神の水晶とルーナを連れてここから出ようと思いまして……その前に私の研究成果を勇者パーティのあなたたちに披露しようと思ったんですが……伊達にニンジャじゃねぇって所か。よく目を覚ましたもんだ」

 ルーナはゲルスの変貌に青い顔をして立ちすくんでいた。この3ヵ月一緒に過ごし、優しいおじさんだと思っていたのでショックが大きかった。

 「逃げろ! 親父を起こして来い! ディクラインでもいい!」

 ベルダーが叫び、ルーナがこくこくと頷いて部屋を後にする。

 「ほっほ、人間にはかなり強い毒ですからね……ディクラインはまず起きないでしょう。魔王はルーナが起きたから分かりませんがね」

 「くそ……! 俺やみんなに何をするつもりだったんだ……!」

 「見ての通り、魔物と人間の融合ですよ。私は色々と面白い事ができましてね。その実験ですよ」


 睨むベルダーに、涼しい顔で答えるゲルス。しかし、事態は思わぬ方向へと向かう。


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 「お父さん! お父さん!」

 「ふっ……ぐう……あ、頭が……ルーナか、慌ててどうした?」

 「ゲ、ゲルスが……ゲルスがおかしくなっちゃった……ベルダーが死んじゃうよ!」

 涙を浮かべて訴えるルーナにただ事ではないと悟り、ルーナを置いてベルダー達の下へ走り始めた。
 途中、床を這うディクラインに遭遇する。

 「大丈夫か!」

 「お、おう……頭痛が酷いけど何とかな……どっかで争っている音が聞こえるが……」

 「ゲルスが裏切ったようだ。ベルダーが危ないらしい」

 「先に行っててくれ……すぐ追いつく……」

 「分かった、だが無理はするな」

 ヴァイゼはそれだけ告げてベルダーの部屋へと侵入する。
 



 そこには信じがたい光景があった。


 「う……ま、魔王か……」

 「おや、ルーナに起こされましたか」

 ゲルスに倒され、床に転がるベルダーの姿があった。

 「……どういうつもりだ?」

 「この茶番に飽きましてね。ここから出て行こうと思っただけです。ああ、できれば女神の水晶を渡してくれると誰も痛い目を見ないで済むんですがねぇ」

 倒れたベルダーの頭をギリギリと踏みつけながらヴァイゼに交渉を持ちかける。渡さなければ殺す、と。

 「お、俺のことはいい……こいつをゲルスを殺せ……こいつは危険だ……うが!?」

 「うるせぇな。俺が喋ってんだろうが? で、どうするよ?」

 「……水晶は渡せない。そしてベルダーを殺させるつもりもない」

 「ぐ!?」

 一瞬で目の前に現れたヴァイゼに、ガードや攻撃をする暇無く、ゲルスは壁に叩きつけられていた。
 尚も攻撃を続けるヴァイゼ。殴られた反動で壁が吹き飛び、通路へと投げ出され、逃げ出そうとするゲルス。そこにディクラインが合流する。

 「おっと通行止めだ、よくもまあ薬なんて盛ってくれたな?」

 「むう!?」

 挟み撃ち状態になり、逃げ場を失う。

 「カルエラート達は起きれ無さそうだが、勇者と魔王に勝てるとは思わないよな、ゲルス」

 「……さてどうだろうな……」

 汗をかきながら強がりを言うゲルス。寝ている間に自分の人形に仕立てるつもりだったので。この状態での勝算は無いに等しい。

 そこにルーナがやってくる。

 「お父さん……」

 手には女神の水晶が握られていた。そしてどこか焦点があっていない目で父親を見るルーナ。

 「……!? 何故お前がそれを!? む!?」

 「何だこの魔力は……!」

 ルーナの力が増大していくのを感じて、ヴァイゼ、ディクライン、そしてゲルスが戦慄していた。
 その変化にヴァイゼが気づく。

 「これは……デッドエンド……!? どうしてこの子が! 彼女は死んでいない……まさか!」

 彼女とはレイドの妹であるセイラの事だ。現在は眠っているが、少し特殊な方法で眠っており仮死状態といえば分かりやすいだろう。
 だが、デッドエンドは”死んだ”と判断し、次の継承者をルーナへと移したのだ。全魔力を使って能力を飛躍的に上げるスキル……その魔力は力の回復を待つエクソリアの元へと送られている。故に、魔力量の高い人間を次の後継者に選ぶ。

 セイラも賢者という高い能力を持ち、ルーナもまた、魔王の娘にふさわしい魔力を有していたのだ。

 「みんな喧嘩したらだめだよ……」

 何かに操られるかのようにヴァイゼ達に攻撃を仕掛け始めるルーナ。言葉はルーナだが、父親にまで攻撃を仕掛けてくるのはおかしい。

 「デッドエンドはエクソリアの作ったスキルだ。我々の計画を妨害するためにルーナへ移したのかもしれん……ぐあ!」

 「ルーナ相手じゃ手が出せない、それも狙いか!? くそ、何て威力だ……!」

 「ほっほ……これはたまりませんねぇ」

 三人は何とか持ちこたえていたが、手が出せないため徐々にダメージが増えていった。

 「五分経てば切れる……ぐぅ……だが、これでは持たんな……」

 セイラも強かったが、ルーナの潜在的な能力のためかあの時よりも強いと感じていた。
 ヴァイゼも腕の骨が折れ、ディクラインも薬の影響があり動きが鈍くなっていく。

 「ル、ルーナか……?」

 そこによろよろとベルダーが歩いてくる。ルーナはそっちを振り向きまた一言呟く。

 「ベルダーも、けんか、するの?」

 ルーナがベルダーに飛び掛った瞬間、ヴァイゼがルーナを後ろから抱きしめ、動きを封じた!

 「ディクライン……我は……俺達はもうもたん、このままでは俺も理性が無くなる可能性が高い。今も目の前がチカチカしている……! ヤツめ……どこまでも邪魔をしてくれる……この子を抑えるから俺ごとその剣で貫け!」

 強い口調でディクラインへ叫ぶヴァイゼ。これが本来の性格なのだろう。

 「そんな事ができるわけないだろうが!」
 
 「やるしかないんだ! 後を任せる事になるのは申し訳ないが……ぐっ!? 早くしろ! このままでは……!」

 「うああああ! 離して、離してよ!」

 押さえられたまま、肘や足を使ってヴァイゼに攻撃をするルーナ。口から血を吐き、ゴキゴキと嫌な音が体から出ていた。

 「う、うう……うわあああああああああああああ!!」
 
 叫びながら剣を抜き、ゲルスを吹き飛ばしてヴァイゼへと向かう!

 ドシュ……

 ヴァイゼの背中にディクラインの紅い剣が突き刺さり、その切っ先はルーナの体まで貫いていた。
 
 「あ、ああ……」

 ルーナの目から光が消え、しばらくして沈黙し手から女神の水晶が転がり落ちる。

 「そ、そうだ……それで、いい……後は頼む……女神を倒してくれ、人間に未来を……」

 その後を追うように、ルーナを抱きしめたままヴァイゼは息絶えた。










   

    【第五部:終わりの始まり 完】







           





           To be continued……【第六部:救済か破滅か】

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