パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その123 女神

 

 「さて、いざ話すとなるとどこから話したものか迷うな」

 パパが腕を組んでそんな事を言う。というか女神様の確執をパパが知っていることが不思議なんだけど、それは後で聞いてみようと思う。

 『……この世界はボクと姉のアルモニアが作った。この世界以外にも別の世界があるし、それはやっぱり別の神、または女神が作ってできるんだ』

 話したくないって言ってたのに自分から話しはじめた!?

 『世界の土台、そして人間と動物、植物といったものも勿論ボク達が作る。まだ二人とも若かったからね、初めて作った世界を見て一喜一憂したもんさ』

 「両親とは違った『産みの親』って感じですね」

 「間違っていないだろうな、少なくとも女神が居なければ俺達はここに居られない」

 「まあそんな存在がここに座っているのが驚きなんだけどね……」

 フレーレが呟き、パパが答える。
 私は隣に居るエクソリアさんに心臓がドキドキだ。中に居るアルモニアの感情も汲み取っているのかな?

 『やがて人間が数を増やすと、地上はほぼ人間の手によって開拓され発展していった。別の世界だと『獣人』や『エルフ』なんて異種族を作る神も居るらしいけど、初めてだったから人間だけにしたんだよね。で、発展すると起こるのが……』

 「……争いや諍いという訳だな」

 ベルダーが目を瞑って喋った。

 『そう。そこでボク達は<恩恵>というものを作った。恩恵をもらえばそれに即した能力が飛躍的に伸びる。となると、やるべき事が自ずと限られてくると思ったから争いが無くなると考えた。だってそうだろう? パン屋志望が二人居て、一人は恩恵があって美味しいものを作れてもう一人は美味しいものを作れないなら、諍いは起こらない。諦めるしかないんだから』

 うーん、分かる気がするけど……それって……。

 『そしてさらに人間が増え、恩恵もどんどん増やしていった。動物も魔物の増えているからそれに対処できるようにと戦闘系の恩恵も増やした』

 最初は良かったそうだ。国を作り、人と人が仲良く暮らしていく、『国王』の恩恵もうまく役割を果たしてくれた。

 しかし……

 『人間は良いやつばかりでは無い。それこそさっきのビューリックの王のようにゴミのような性格の者がなるとと、弱者は虐げられ、搾取される。そして国同士の争いも起こった』

 「人間は一枚岩ではないからな、恩恵が無くても努力して魔法を使えるようになるものも居れば冒険者になるものも、悪事に身を染めるものも出てくる」

 カルエラートさんもイスに座りながらエクソリアさんの話に相槌を打つ。パパは黙ったままだ。

 『それに嘆いた姉のアルモニアは、考えた。ならば全ての人に平等の恩恵を与えればいいと』

 「……それが勇者と呼んでいる恩恵。俺やレイド君が持っているものだな?」

 エクソリアさんはこくんと頷き、話を続けようとしてパパが遮った。

 「ここからは俺が話そうか。実験的に何名かの人間に与えてみた恩恵は思い通り、全ての能力に対して恩恵があり、何をしても上手くいく……そんな人間が出来上がった」

 「それっていい事なんじゃないの? 何をやっても成功できるなら……」

 「そうは言うが、何でもできるのが何人も居たらどっかで必ずぶつかるだろう。さっきのパン屋の話じゃないが、パン屋とパン屋がぶつかってどっちも同じくらいできるなら決着はつかないだろ?」

 なるほど……そういう懸念があるのか……。
 パパは尚も話を続けていた。

 「しかしアルモニアは勇者……本当は違う名前なんだろうが、この万能恩恵を全ての人間に上書きしようとしていた……」

 『だがディクラインが語ったように、そんなことをすれば世界が崩壊するのは目に見えている。恐らくゆっくりと、しかし確実に。どうやってもすでに恩恵というシステムは破綻し、手遅れになっていたんだ。要するにボク達は世界作ることに失敗したんだ』

 自嘲気味に笑うエクソリアさんを横目に、パパが衝撃の事実を語りだした。

 「もはや恩恵を取り除いても動乱は起こる。そしてエクソリアは……この世界の人類を全て消す事に決めた」


 『……姉さんはどうしても今の人間を残したいみたいだけどね。ボクはもうこのいたちごっこに飽きちゃったんだ』

 「なんだと!?」

 「……ようするに一からやり直す、そういうことね?」

 レイドさんが驚き、フォルサさんが呟いた。テーブルに乗ったチェイシャ達は黙って聞いている。

 『そう。しかし、今すぐに滅びを起こす事はできなかった。もちろんアルモニアが邪魔をするからね? そしてボクは勇者に対抗するための恩恵「魔王」を作った。魔王という脅威を置けば、人はそれを排除するために団結するだろう。そして万能な能力を持つ勇者がそれに対抗する。その間に、ボクはアルモニアを倒すための準備を始めたんだ』

 そして100年前、ついに封印することに成功したそうだ。そこからエクソリアさんが眠りについている間も、魔王が倒されても別の魔王が現れ、人間世界は魔王の脅威に一致団結する事になる。
 
 <古い話じゃが……わらわ達にとってはまだ昨日の事のようじゃな>

 <ま、その前にオイラ達にも色々あったからねー>

 「あなた達も戦ったの?」

 チェイシャ達が懐かしそうに言うけど、この#女神__ひと__#、人間を滅ぼそうとしているのよ!?
 ここでパパが再度会話の主導権を取り、話を続けた。ここからがパパの目的と私に関すること?

 「ここまでなら、この姉妹喧嘩を経てエクソリアが目覚めた後に俺達が滅びる。それで終わりのハズだった。だが、一人の魔王がこれを良しとしなかった」

 そして謁見の間の玉座を見るパパ。薄暗くてよく見えないがその時、雷がカッと光った。

 ゴロゴロ……

 「「ひっ!?」」

 私とフレーレが短く悲鳴をあげ抱きしめあう。

 一瞬だけ見えたその姿は……

 「……魔王……魔王ヴァイゼ……」

 豪奢なローブに身を包んだ白骨化した死体を見て、レイドさんが汗を流しながら一言呟いていた。魔王……パパに倒されたって……あう!?

 「うっ……な、何? 今……何か思い出しそうに……」

 「どうしたんですかルーナ!」

 私を一瞬見たが、そのまま話を続けるパパ。

 「……魔王の恩恵を受けたものは、敵対するものが近くに来ると理性を失う。そうだな?」

 『ああ、代わりに能力が飛躍的にあがるように調整したよ。でないとすぐ倒されるしね』

 「だが、この魔王はヴァイゼは……それを覆したんだ。ヴァイゼはレイド君達と戦い、その後、俺達が相対する……そして俺達は現在行おうとしている計画を画策する事になる」


 そしてパパが語りだす。

 その時、魔王ヴァイゼが理性を取り戻しパパに何を告げたのかを……。

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