パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その114 突入

 

 「こうして走ると結構距離があるわね!」

 アンジェリアさんと別れた後、謁見の間を出て入り口へと向かっていた。
 補助魔法はかけているけど、この廊下が意外と長い。
 
 「おい! そこの走ってくるメイド!」

 庭に出ようとしたあたりで、前方から声をかけられた。鼻の下に髭のある年配の騎士だった。
 私は走りながらその騎士に大声で答える。

 「私ですかーーーー!」

 「うるさ!? そうだ! 火事を報告しようとしたが隊長も副隊長も姿が見えん! 見ていないか!」

 「私は何もーー! あ! 謁見の間に不審者が侵入しましたーー! 助けてくださいーー!」

 「今『あ!』って言わなかったか!? というか警備は何をやっていたのだ! おい、お前! 案内しろ! 止まれ!」 

 段々と近づいてきたが、スピードを緩める必要は無い。このまま突っ切る!!

 「ダメです! 怖くてもう戻りたくありません!!」

 「ど、どんなヤツだったのだ!」

 ここでほぼ一人分の距離まで近づいた。
 
 「こんなヤツよ!!」

 「何だと!? うお!?」

 通りすがりに飾ってあった壷を掴み、すれ違いざまに騎士の頭へぶつける! それが見事ヒット!
 ドサリと倒れる年配騎士。

 「ごめんなさい! 急いでいるの!」

 聞こえたか分からないが、一応謝っておく。
 そのまま疾走し、ついに出口へと到達する。


 「あの金髪の三つ編みは……フレーレ!!」

 遠目から見ても分かる。
 本当に助けに来てくれたんだ……ちょっと涙が出そうになったけど、今はそれどころじゃない。泣くのは終わってからだ。近くにはウェンディとイリス、それと知らない人? が、居た。

 近くに行くとウェンディに声をかけられた。

 「そこのメイド! どこへ行くのだ?」

 「ウェンディ! 良かった、無事だったのね! フレーレとイリスも!」

 私の言葉に「?」が浮いている面々。
 
 あ、そうか。

 「えっと……どなたでしょうか?」

 フレーレに言われて、私はかつらを取りながらフレーレの前に立つ。

 「私よ! まさか追ってくるとは思わなかったわ!」

 「ル、ルーナ!? そ、その格好は……」

 知らない人以外が驚愕の表情で出迎えてくれた。

 「一応逃げる時にバレないよう変装をね」

 「そうなんですね! でも良かった、それじゃあこのまま行きましょう、荷物も持っているみたいですし!」

 私の手を引っ張り、行こうとするが、それを知らない人の言葉で止まることになる。

 「……オリビアと妹さんはどうしたのかしら? 計画では3人来る予定だったはずよね?」

 事前にエリックが話したのね。知っているなら話は早い。

 「……その事で相談があるの……」

 「?」

 時間も余り無いので、手短に話す。協力を得られなくても一人で戻るつもりだ。
 するとフレーレが怒りながら答えてくれた。

 「もうもう! 妹ってライノスさんの妹さんですよね! 攫った人の妹を助けに行くなんてお人よし過ぎますよぅ!」

 やだ、腕を振ってじたばたするフレーレ可愛い。でも無理だったか……いまなら巻き込まれないし、早く逃げてもらおう。
 
 「まあそうよね……でも少しの間だったけど、エレナとオリビアさんのおかげで助かったこともあるしね。私は行くわ! ごめんね、ここまで来てもらったのに……先に逃げて追いつ……」

 「仕方ありませんねルーナは! 早く終わらせて帰りますよ! レジナ達も居なくなったから探しに行かないといけませんし!」

 「え!?」

 ダブルショック! フレーレが着いてくるのは勿論、レジナ達が居なくなった!?

 「山の宴には?」

 「しばらく居ましたけど今は居ません……。さ、行きましょう」

 「え、ええ……」

 私が困惑していると、知らない人から声をかけられた。

 「さ、話はまとまったかな? 行く前に自己紹介させてね? ルーナのことはフレーレから聞いているわ。私はフォルサ、フレーレの母です」

 握手を求められたのでその手をぎゅっと握る。

 「あ、どうもルーナです……ってお母さん!? あれ!? 孤児じゃなかったっけ!? 見つかったの!? いつもフレーレにはお世話になってます! 今回もわざわざ助けに来ていただいて……」

 「フォルサさん!? どうしてそうサラリと嘘をつくんですか!? ルーナも信じないでください! どう見ても私みたいな大きい子が居る歳じゃ……フォルサさんって何歳なんです?」

 「さ、行きましょう。どこへ行けばいいのかしら?」

 フレーレが質問しようとしたが、フォルサさんはもう奥へと進んでいた。早い!?

 「あ、謁見の間です! そこに地下へ行くための階段があるんです!」

 「もう、学院長は……!! ルーナ、あの人の言う事は真に受けたらダメですからね!」

 おお……フレーレがぷりぷりしている……学院長……?

 「あ、あの私たちも行っていいでしょうか……?」

 「隊長も行ったのでありますよね……?」

 イリスとウェンディが会話に入れず困っていたが、そろそろ大丈夫と判断したのか私達に聞いてきた。
 アンジェリアさんが心配なようだ。

 「もちろんよ! 是非お願い! それじゃ……<フェンリル・アクセラレート>」

 フレーレ達に補助魔法をかけ、前を行くフォルサさんを追いかけるとたちまち追いつくことが出来た。

 「それいいわねぇ、私にもかけて?」

 「あ! いいですよ!」

 走りながら補助魔法をかけ、前方を見ると先ほどの年配騎士が立ち上がって頭を振っているのが見えた。
 流石は騎士ね、鍛えてあるわ。

 
 「あたた……くそ、何だったんだ。あの駄メイドめ……今度あったら……あ! お、お前!?」

 「さっきはごめんなさい! やっぱり戻りますね!」

 「逃がすと思うか!?」

 廊下に怒声が飛び、段々年配騎士が近くなっていく。さて今度はどうしようかと考えていると、フォルサさんが急に加速した!

 「な、何だお前は!? ……よく見れば中々好み……」

 「邪魔よ」

 膝からいった! 『邪魔よ』と言った時にはすでに顔へと膝がクリーンヒット!
 何故か笑顔で倒れる年配騎士。

 「安らかに眠ってください……」

 通りすがりにフレーレが祈りを捧げていた。

 「いや、死んでないわよね!?」

 「急ぎませんと! 隊長ぉぉぉぉ!!」

 ウェンディも補助魔法で足が速くなりテンションが上がっていた。
 
 「大丈夫、かしら……」

 一人、イリスだけが冷静に状況を見ていた。

 そして謁見の間へと辿り着く私たち。階段へ向かおうとしたその時だった!



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 ルーナ達が謁見の間に辿り着いた頃、入り口では……。



 「慌しいな……門番は居ない? 城に門番が居ないとは一体……」

 放った火は鎮火がまだ出来ておらず、使用人たちや女性騎士、メイド等が消火活動にあたっていた。
 門番はイリスとウェンディが気絶させ、近くの茂みに隠している。本来なら門が開け放たれているなど許されないが、今はクーデターの最中なので混乱を呼ぶには丁度いい。

 <!……ジャンナの気配があるぞ! 今しがたまで居たようじゃ! 行くぞレイド!>

 「本当か!? 城の中へ行ったということはルーナちゃんもそこに居そうだな。チェイシャは俺の後ろで全体を見渡してくれ、俺より目がいいだろ? おっと、念の為に顔を隠そう。ファウダーは俺の懐へ」

 <あいよー! へへ、ワクワクしてきた!>

 <こういう状況になるとまともになるんじゃのう……まあええ、いくぞい!!>







 午前6時13分、この時点でルーナを巡る関係者が城へと……



 シャ! シャシャ!


 「わふ!」「わん!」「きゅんきゅん!!」


 ……『全て』の関係者が城へと至ったのである。

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